2ntブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
目次
2017-12-31-Sun  CATEGORY: 目次
☆もくじ☆

ご案内です。是非ご一読ください。

BLという言葉を知らない方や男性同士の恋愛話に興味のない方、嫌悪感のある方は入らないでください。
閲覧は大人の女性の方を対象にしております。
18歳未満の方のご訪問はお断りいたします。

私の趣味の世界であることをご理解の上、ご訪問ください。
(一切の責任は負いませんのでご了承ください)
非現実的な部分など多数あります。苦情はどうか御遠慮くださいますようお願いいたします。

***コメントについては基本的に頂いた記事でお返事させていただきます(拍手コメさまについても同様です)
数話分の合わさったコメントについては新記事で返信ということもあります。そのあたりは臨機応変に対応させていただきます。

=注意:秘コメさまでも名を伏せての文章を転用してのレスになります。
嫌な方は一筆添えていただけるとありがたいです。(引用不可、レス不要など)


当家は機械音痴な人間が運営しております。
日々の更新ではあちゃこちゃ飛んでいてつながりがなくてイライラする方もいるかもしれません。
一応、目次はおいてあるので、御面倒でもそちらから一話ずつ進んで頂くのがいいと思います。
(すみません。記事をupするだけでいっぱいいっぱいの人間なんです。)

【2010.5.17 追記】目次の編集が分からず、下にどんどんと長くなっちゃうんですけど許してください。見づらくてすみません。
基本的にどこも、上から下へ行って話が繋がります。
どこかに不具合(つながってないよ、とか)がありましたら隠しコメでもなんでもいいですからお知らせいただけると嬉しいです。


***初めてご訪問していただいた方へのご案内を兼ねて。***
複雑なので、参考までに順番を書いてみました。(2012.7.30現在)
簡単な略式案内追記:読み順
相関図相関図

♪は性描写があります。閲覧にはご注意ください。



『策略シリーズ』策略シリーズは全て完結しております。

《策略はどこまでも》大学時代に知り合い長いこと、思いを打ち明けられずにいた二人。社会人 高柳久志×社会人 桜庭那智(共に26歳)(2009.6.29~)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 ♪21 ♪22 ♪23 ♪24 ♪25 ♪26 27 28 29 3031 32 33
《策略 : 番外ヒサ編》 たぶんこれを読まないと意味が通じません。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ♪13 14 15 16 17 18 19
《続:策略はどこまでも》
34 35 36 37 38 39 40 41 ♪42 ♪43 ♪44 ♪45 ♪46 47 48 49 50 51 52

《週末の夜 : 策略はどこまでも 番外編》
1 2 3 ♪4 ♪5 ♪6 ♪7 8 9 10 
《色男の憂鬱》 策略番外 滝沢視点です
1 2 3 4 5 6 7 おまけ

《策略 SS》
配達依頼 
 配達員(2013.1.31) 配達員2(2013.2.1)

こちら ↓ に進む前に、【淋しい夜~シリーズ】を読まれることをお勧めいたします。
《ちょうどいいサイズ》 策略からスピンオフ 安住&一葉【完結】弁護士(38歳)×社会人(26歳)(2010.3.15~2010.6.15)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 40-1(安住) 41 42 43 44 ♪(?!)45 46 47 48 49 50 51 52 ♪53 ♪54 ♪55 ♪56 ♪57 ♪58 ♪59 60 61 62 ♪636465 ♪66 ♪67

《囁きは今日も明日も》 スピンオフ 磯部&中條 【完結】自動車販売店所長(39歳)×他社営業社員(38歳)(2010.8.28~2010.10.16)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 ♪12 ♪13 14 15 16 ♪17 ♪18 ♪19 20 21 22
花見(2013.4.7)

《眼差し》 恋人を失った佐貫と家族を失った成俊の物語 【完結】刑事(38歳)×社会人(26歳)(2010.12.10~2011.2.15)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 ♪15 ♪16 ♪17 ♪18 19 20 21 22 23 24 ♪25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 ♪36 ♪37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 ♪53 ♪54 ♪55 ♪56 57 58 ♪59 ♪60 束の間(2012.12.26)

《心と魂》『眼差し』番外編 【完結】
1 2 3 4 5 6 7

《やすらぎ》 栗本佳史&譲原望 《心と魂》を読了の上お進みください。【完結】医師(38歳)×弁護士(38歳)同級生(『眼差し』の登場人物です)
1 ♪2 3 4 5 6 7 ♪8 
風邪(2013.3.3)

【SS】
《鎧》 佐貫・成俊 安住・一葉 【完結】
1 2 3 

100000hit様リク 花園凛&竹島虎太郎 
《Door of fate》 囁きは今日も明日もスピンオフ。【完結】リーマン×自動車整備士(2011.3.9~2011.3.25)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 ♪10

《Opened door》 『Door of fate』の続編です。【完結】(2011.3.30~2011.4.6)
1 2 3 4 5 ♪6 ♪7 8

【SS】とある夏の日 花園凛&竹島虎太郎(半分遠足混じり)(2011.8.31)

【SS】2011年冬企画 《甘い人》 栗本佳史&譲原望(2011.12.6~2011.12.14)【完結】
1 2 3 4 5 ♪6 ♪7 8 番外
2012 クリスマス
お花見(2013.4.6)

2013年夏企画(【珍客】シリーズってものを作りました)
【策略SS】《珍客の訪れ》高柳久志×桜庭那智(2013.7.2~7.11)【完結】
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 番外 W番外1 W番外2
【策略SS】《珍客の土産》栗本佳史×譲原望(2013.7.15~7.21)『珍客の訪れ』続編【完結】
1 2 3 ♪4 ♪5 ♪6 7 
長流 ピンク電話
【珍客】続編 榛名千城×英人(2013.7.23~8.1)【完結】
1 ♪2 3 4 5 6 ♪7 8 9 朝焼け 番外
那智余談嫉妬
紅葉久志&那智の小旅行(2013.11.21)
《冬の珍客》同級会(2013.12.6~12.16)【完結】
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

『淋しい夜』シリーズ 目次移動しました。
こちらから→淋しい夜
 


《くだらないSS》
お見舞い
七夕SS



『想―sou― 一夜物語』から始まる話シリーズ 目次移動しました。
策略~、淋しい夜~、ちょうどいいサイズが集まった、ほとんどパロディです。覚悟していってください。
こちらから→『想―sou―』


《その他》 短編中編 目次移動しました。
こちらから→読みきり


☆観潮楼企画参加作品 目次☆
新しいウィンドウが開きます。



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『オーロラ』という話を
2014-02-11-Tue  CATEGORY: 未分類

すみません。
内容を削除させていただきます。
ありがとうございました。


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無題
2014-01-13-Mon  CATEGORY: 未分類
内容を削除させていただきます。

*追記
不快な思いをさせてしまいました方にお詫びいたします。

こんな時なのに、つい・・・と軽率に考えて行動をとってしまったところがありました。
本当に申し訳ございません。


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お詫びさせてください。
2014-01-07-Tue  CATEGORY: 未分類
人のブログに書くのもどうかと思いましたが、お伝えするにはここしかないと思いましたので、書き込みさせていただきます。


頼まれてもいない記事まで削除してしまいました。
焦っていたとはいえ彼女にも皆さんにも悪いことをしました。
今更書き直せと言われても無理なことで謝るしかありません。
頼まれたとはいえ、勝手にいじってすみませんでした。
中途半端にしている話は、その都度連絡を受けていたので、何から消せばいいのかもだいたい分かっていましたが、突然すぎました。
最初は、聞かされていた言葉だけを入力して終わりにするはずだったのですが。
ブログ村の緑のマークをクリックすると、過去の記事が閲覧できることを知って、削除したはずの冒頭文が残っていることも知って、消すべきではなかったのかと今でも後悔があります。
もう一度、書き直してほしいと思うのはこちらも一緒です。


記事を削除する方法だけは聞いていましたが、
一定期間を置いて、ブログごと抹消していいと言われておりましたが、急なことで、それはどれくらいの期間なのかこちらも悩みます。




1月2日午後、急な体調変化があり、心臓に負荷がかかったことでの急逝と連絡がありました。
夜の6時過ぎくらいでした。
治療中の病気とは関係がなく、御家族も非常に悔しく思っていました。
こちらも信じられなく、何度も聞きなおしてしまったものです。




こちらは葬儀の時に御両親からいただいた言葉です。

苦しまずに旅立ってくれたから、それだけが唯一の救いだったね・・・・・


どれだけ辛くて苦しい闘病生活だったのか。
泣きごとを言わずに、息抜きだからとパソコンを手放さなかった人でした。
あらためて、これだけの人の集まりになぜ彼女が大事にしたのか分かる気がします。
消してしまったこと、本当にすみませんでした。


綺麗なお顔でした。



今後、もう、過去の失敗がないように、このブログはいじらないようにします。




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たつみきえは逝去されました。
2014-01-03-Fri  CATEGORY: 未分類
誠に勝手ながら、事情により無断での閉ブログとなりました。

今までの閲覧感謝いたします。
長い間のご愛顧ありがとうございました。


たつみきえ。
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あけましておめでとうございます。
2014-01-01-Wed  CATEGORY: ごあいさつ
改めまして、昨年は大変ご心配をおかけし、またお世話になりました。
駄文にお付き合いくださいまして感謝しております。
たくさんのポチや拍手にどれほど励まされたことか。
本当にありがとうございました m(__)m

また今年も、拙い作文(文章か?)を強引に押し付けて行きたいと思います。
どうぞ本年も宜しくお願いいたします。




さて、私の正月といえば恒例の初売り走り です。
今日は二か所回ってきました。(昔みたいに4、5か所回らないだけゆっくりですね)
ショッピングモールは一か所で2個をゲットし、
ちょっと離れた場所のドラッグストアまで車を飛ばして3個目を。

こちら ↓ 両方とも1000円ですよ~。

2014 福袋 1
写真が上手く撮れなくてすみません…。
シャンプーとかヘアエステとかのお風呂商品が主です。


2014 福袋 2

↑ は、500円の商品券もついています。


ショッピングモールの中はは、もう一店舗に行きたかったのですが、
この店を優先させたせいか、人だかりですごいことになっていて断念。
あ、こちらは9時開店でした。
(優先登場組に入るために、朝7時から並んでいたという…)
なのですぐさま頭を切り替えて、10時開店のドラッグストアへ。
だって、こっち、限定30個なんだもん…。
で、15分頃に着いたら、全然客がいない(4人しか…)。
我が家は結構近いところにあるので、旦那に電話をかけたら、なんとまだ寝ていたと言う…。
「早く来てっ」と電話をしたら、スエットの上にロングのダウンコートを羽織ってきた…。
でも、おかげで30名の中に入れたので、2個ゲットです♪♪♪

あ、っていうことは、4個手に入れてきたのか…。

相変わらずな私でした(笑)


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クリスマスだね
2013-12-23-Mon  CATEGORY: 『想』―sou―
私は、イラストを描くとか出来ないので、こんな記事で、クリスマス感を…と思いました。
もう、いつものバーです。




お子様全員、サンタ仕様。

日野「おまえら、パンツはけよ~っ」(←上半身しか来ていない姿に文句が出る)

英人「だってないんだもーん」
那智「ね~ぇ」
一葉「(モジモジ)出ていけないよ…」
成俊「(かくれんぼしているのかな…←お尻丸出してあちこち漁る)」

どこの世界に『サンタスカート(しかも下半身丸出し)』を望む保護者がいるのか、また、お互いの衣装を見せ合うことに必ず文句を言われそうで、日野はタオルを渡して徹底的に隠した(下半身を)

自分は興味がないからいいけど…。
状況に冷汗が出る。
日野「ヒサシ…、店頭に並ばせるなっっ」
久志「だって、ここ、看板ないし、分かりづらいし、売り上げないし」
日野「恋人を"売り"にしているところが恐ろしい…」
久志「那智、そんなんじゃねぇっ」

ところが楽しんでいるサンタが…。
外商?
那智「いらっしゃいませー。本日、ドリンクいっぱい無料~」(←営業)
英人「絵画見学も無料」(もともとです)
一葉「お酒苦手な人にはコーヒーも…」
成俊「安全保障付き警官配備(←)です。ごゆっくり~」


サンタが呼びこんでくれる売り上げに、何も言えなくなる日野である。
そこまでして、営業成績、苦しくないけど…と思った。

何せ採算度外視が集まっているようなところ。
呼び込みも、一種の"遊び"と思えば何も言えなくなるけれど。

ナンパ野郎が住人を狙っては、即座に久志を促した。
この店のボディーガードだ。

 頼むから、着ぐるみパジャマは店内だけにしてほしい…と願ったのは日野だけではないはず…。
「さっさと寝ろっ」と日野は誰の目にも付かない場所に追い払った。
 もう、この日の『サンタパジャマ』は、自宅できてくれ、と本心から願っていたのだ。
 日野には興味がなくても、この時、久志の目がランランと輝いていたことは黙ってやるから。


メリクリ
さえ様よりいただきました。お持ち帰り厳禁です。
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ただ、ありがとう
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冬の珍客 同級会 9
2013-12-13-Fri  CATEGORY: 珍客
布団
さえ様が撮ってきてくれました。お持ち帰りはしないでくださいね。

 一運動終えて、佳史は眠りかけている望をたしなめた。
「望、飲み過ぎだろう」
「そう?そんなことないよ~」
 呂律が回っていないところから、『そんなことない』はずがないと思うのだが。
 心地よく疲れてくれているのは満足していると捉えられるから佳史もあえて言いたくはなくても…。
「磯部さんは大人で理解力があるから、まぁ、いいとしても…。一葉君や成俊君は、安住や佐貫の昔話を聞いて気分は良くないだろう」
「えー、聞きたがっていたじゃん」
「望が言うからだよ」
 普段は口が堅いのに、どこかで箍が外れる。
 黙ることの反動が、身近な人たちの前で披露される。
 本当に誰もが信頼を置いてくれる人たちだから、半分は笑って見すごせるものになるけれど。
 相手の精神状態を思うと、ただの笑い話にできないのではないかと危惧してしまう。

「誠と安住は対照的だよね~」
 友人の過去を望は振り返る。
『いつまでたっても手を出さない』とヤキモキしていた話も中條から聞いたことがある。
 安住は仕事はパッパッと済ませるのに、いざとなった時の度胸のなさが一葉の前で晒されたようだ。
 反対に中條は突き進んでいくタイプで、それが磯部の心を掴んだのだろう。
 いつまでも待ったのは、佳史も…なのだろうが。
 体だけの関係だけはあったから、ジッと待っていたとは違う。

「もう、あまり、余計なことを口走るなよ」
 一応釘は刺したけれど、夢心地の望はどこまで聞いているのだろうか。
「余計なことって何? 安住が相手に誘われるまま、襲われる形で抱く初体験しちゃったこと? 佐貫に告白した子が悔し紛れに『自殺してやる』って脅して付き合っていたこと? 誠が先輩のために…」
「望、もう、寝ろ。ホント、聞かせられないよ。知っているのは本人だけでいいだろ」
「ちょっとした『昔話』じゃん…」
「俺は望の過去は聞きたくないけれどね」
 佐貫に思いを寄せていた頃の苦しさを目の前で見せられた。
 何故自分に乗り変えてくれないのかと心も病ませた。
 離婚問題ばかりを扱う望は、『別れる』ことが前提であったから、佳史を拒んでいたと知ったのはいつだったか。
 ずっとそばにいて、離れることはないと信じ込ませるのに随分と時間を使った。
 ただの友達ではなく、『恋人』として…。
 隣で安心したように目を閉じてくれる人が心底愛おしいと思う。
 眠りを促しながら、まだ話したそうな唇を、自分のもので塞いだ。
 それがまた、新たな火種になる。

「おしゃべりが過ぎた体にお仕置きでもするかな…」
 呟く声をどこか嬉しそうに受け止めてくれる。
 露天風呂で声をあげたら聞こえるだろうが、部屋の中でなら遮ってくれる壁がある。
「あ…、佳史…」
 名前を呼ばれて、もっと愛おしさが増した。

…明日の朝は間違いなく、二日酔い対応の薬が必要だな…。
 それを何人分用意すればいいのか、医師である立場が脳裏を巡る。
 酩酊状態の浮遊感に溺れる姿は奔放でいいけれど。

 一葉や成俊が年上の恋人の前でどれだけ可愛いのか、少しだけ知りたかったが、やっぱり目の前の、ある意味強情な人が一番可愛いことに変わりはなかった。

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珍客って誰が珍客なんだか…。
結局、話しすぎる望なんだろうね。



↓ ※間違って削除してしまったものが見つかりましたので追記にしておきます。


冬の珍客 同級会10(最終回)



 現地集合現地解散が、『同級会』の基本らしい。
 何で佐貫&成俊 と 栗本&譲原が 一緒に行くことになったかというと、佐貫の仕事がどうなるか分からない状況にあったからとのことだ。
 成俊を一人でヤキモキと待たせるくらいなら、栗本と譲原に話し相手になってもらい、一緒に待っていてもらったほうが良いのではないかとのことで。
 では、他の連中は…と言ったら、ドライブ好きな磯部と中條は、さっさと出かけた後だったし、安住と一葉も自分たちなりにプランを立てて旅だった後と知ったからだった。
 年寄り二人(←怒)が一番のんびりしていて、佐貫にしてみたら「捕まえられた組」だったそう。
 それでも遅れそうだったら、先に三人で出発していてくれ、と言われたとしても、成俊としては居心地悪いだけで、ドタキャンでもいいと思えるところだった。
「後から覆面パトカー」で追いかける案が佐貫にはあったのだろうか…。

 何があったかはともかく、朝食時間は自然と一緒になってしまう。
 集まれば繰り広げられる会話は、この後どうするとかということ。
 ドライブコースには定評がある磯部たちのプランを耳にしては、安住と一葉も目を輝かせ、「寄るところなんて考えてなかったし~」という残りの四人は、自然な流れで、くっついていこうという意見になった。
 しかし、車で移動してきた磯部たちとは違い、公共機関を使った六名は、当たり前ながらその車に乗り込むことはできない。
 大人しく帰ってくれ、と祈ったのは磯部と中條。
 まぁ、中條だけは、同級生のよしみから賑やかなのは困らなかったのだけれど。

 結局、職権乱用を多大に利用して(←出来ませんから)磯部が到着地営業所に放置することで6名乗りのレンタカーを手配した。
 付け加えられたのは佐貫の存在と、安住と譲原の雄弁さだったが。
(なぜ6人乗りか?! そこは磯部の意地です)

 こうして、様々なところに立ち寄り、楽しんで無事家まで辿り続ける。
 充実した『同級会版、冬の遠足』は無事幕を閉じた。


 後日、話を聞いた那智と久志が、「俺たち、どこにも行ってねぇ―」と文句を垂れた。
 でも誰も「『26歳組』で行ってこい」と言う人はいなかった。
 旅行に保護者がいないのは、どれだけ危険かを知っている人たちだ。
『お互いの家を泊まり歩く旅行プラン』を口走ってくれたのは誰だったか…。
 まぁ、お料理は出てくるから、食いっぱぐれない那智と久志の旅行になるだろう。


―完―


すみません。ちょっと間があいてしまいましたが、ここで『冬の遠足』(←)は終了になります。
それぞれ楽しんだかなぁってところで。

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冬の珍客 同級会 8
2013-12-12-Thu  CATEGORY: 珍客
 さすが『医者』だなと磯部雅彦は思う。
 『癒し』を知っている。
 栗本佳史が選んだ温泉は素晴らしかった。
 誘われてドライブだと言って車を走らせ、集合時間に遅刻したけれど、誰も何も言ってこない。
 好きに過ごす人たちは磯部にとっても付き合いやすい。

 酔っては口を開く人の話に引き込まれ。
 誠がいつぞや、好きだった人に派手に振られた話はきいたことがあったが、振る奴が信じられなく、また振られて良かったと思うのは、この年にして出会えたことがあるからだろうか。

「誰だっけ?先輩?誠が言い寄ったのって…」
 譲原が呟くことを栗本が制する。
…黙らないでほしい。聞きたいのは、その先なんだけれど…。
 営業の話術で、さりげなく、促してしまう。
 譲原は簡単に乗ってくる。
「誠、積極すぎるところがあるから、嫌煙されたみたいだよ?」
「望。恋人の前でバラすものじゃないって」
「積極って?! マサだってそこに乗っかってきたのにっ」
「あー。やっぱり誠から食い付いたんだ」
 自分たちの恋愛話を聞いても面白くないだろうが、譲原が興味深げに尋ねてくればつい、答えてしまう。
 これも酔いのうちだ。
「いえ。そこがいいんでしょう。ここまで果敢に来てくれる人はいませんでしたからね」
 磯部としては、本当に嬉しい出来事だった。
 中條が寄ってきてくれなかったら、叶わなかった恋物語。
 自分の不得手も実感させられるけれど。

 露天風呂付きの客室に戻って、改めて誠の体を抱いた。
 過去を知る人を羨ましいと思うのか、憎たらしいのか。
「しつこいって思わない?」
 そう、誠が聞いたから、「ありえない」と言う。
 いつだって敵わない魅力を発揮してくれる人で、刺激的だった。
 生きてきた人生、こんな人はいなかったから、余計に好きになる。

 本当は聞きたくないけれど、知りたい過去はあった。
「なぁ…。好きだった人って、どんなヤツだったの?」
 湯船の中で、体を撫でながら問うたら、首を振られた。
 やっぱり、答えたくないんだ…。
 自分と比べるのも嫌だけれど、誠が惚れる人は、かっこいいヤツでいてほしいな…。

 しばらく黙っていたあと、「マサに逢えてよかった…」と呟かれて、理性が吹っ飛ぶ。
 露天風呂は外だ。だから声が響く。
 だけど我慢できなくて。
 年甲斐もなく、突っ走ってしまう。
「あ…っ、マサ…」
「声、上げるなよ…」
 無茶なことを言いながら、くちづけで唇を塞いだ。
 たぶん、誰もが聞いているのだろう。
 そして、届く声があるのかも。
 同年代の誰より、幼い自分たちかも、とふと脳裏を過っていった。
 欲望に勝てない…。
 滾る熱は温泉よりも熱くて翻弄してくれる。
「好きだ…」
 そういうのが精一杯なほど、呼気が乱れた。

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そうだね。雅彦さん、一つ年上なんだよね。まぁ、一つや二つ、違ってもどうってことない年だよね。
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千城と英人の年末の旅行
2013-12-12-Thu  CATEGORY: 淋しい夜
英人は寝る前 必ず風呂を要求する。
決して汚くはないと言っても洗いたいようだ。
千城も自分で洗えることを喜んでいた。
世話を焼けることが何故か嬉しくて。
仔猫を洗っているみたいだ。

風呂場での英人は、ベッドの上と違って艶が増す。
それが千城には怖かったが。

今年はみんなでの旅行が出来なかったから淋しがったのではないかと気遣ったが、千城がいてくれればいい態度に迎えられてホッとしてしまう。
いつだって、どこにだってつれていってやろうと思う。

そういえば…と少し脳裏を過った。
野崎は、恋人である人を、旅行に連れて行ってやったのだろうか。
宮原は野崎よりも年下だからなのか、我慢しているように思えた。
休暇をやるというのに、『仕事をサボる』と言われ続けた。
サボってくれと言っても聞かないカタブツがようやく休みを取った年末年始がある。
どうやら、温泉に行くらしい。
何もこんな近場でなくても…と千城は思ったが。
温泉国日本は素晴らしいところがあるから薦められるが。

「ねえ、千城…」
「うん?なんだ?」
英人が飛行機の中で行き先を問う。
南半球は温かな『夏』だ。
どこぞかの社長も、新婚旅行に南国を選んでいたとか。
いつだって英人を連れては『新婚旅行』だけれど。

「着いたら…」
それだけで何を望まれるのか分かる。
痴態はもう幾度も拝ませてもらった。
「あぁ…」
千城は短く答えた。
言葉にしなくても分かるのは、愛する心があるからだろうか。
長い移動で、やっぱり体は洗いたいのだろう。

自然から湧き出た温泉がある国。
広い、湖がある、と伝えると、誰に見せるわけではないのに恥ずかしがる姿がある。
もちろん、水着は着せるが…。
紅くなる肌があった。
喜んでくれるだろう。

機内でも「抱いて」と素直に身を寄せてきた英人は恐ろしいほど可愛い。
この身にほだされないひとがいるのなら見てみたいと千城は何度も思った。
縋るのは自分だけでいいとも。
他には絶対に与えたくはない。
英人は自分のものだ。

千城は競争社会の中で生きながら、初めて失いたくないものを見た。
それが英人だ。
掃いて捨てて、どうでもいい人間が多かった中。大事にしたいと思ったのは初めてだった。
縋ってくる小さな体が愛おしくて…。
いつも体を売っては金が欲しかったのかと思うと悔しくなる。
そんな"はした金"だ。

「愛している」
もう幾度囁いただろう。
それでも納得しない英人がいる。
立場が違うせいだろうか。
姓を変えても追いついてこない。

くっついてくる体がただ千城には嬉しくて。

あぁ、風呂がある国に連れて行ってあげようと千城は選んだ。

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冬の珍客 同級会 7
2013-12-11-Wed  CATEGORY: 珍客
 出雲
さえちゃんからもらいました。お持ち帰りはしないでくださいね。

 安住が「後輩の子に言い寄られていた」と教えてくれたのは譲原だ。
 安住としては知られたくない過去なのだろうが。
 一度聞いてしまうと一葉も少しだけ興味がある。
 でも結局、曖昧に誤魔化された。
 過去を誤魔化したい人ばかりだったようだ。
 佐貫も恋人を失っていたし、成俊も傷があった。
 譲原も振られた時があって、栗本はようやく出会えた愛情に巡り合っている。
 誰もが、順風ではなかった経験者なのか。

 安住享利がとなりにいてくれて、朝比奈一葉は改めて幸せ感に浸る。
「享利さん…」
「どうしたの? 一葉が寄りそってくるなんて珍しいね」
 いつも恥ずかしくて自分から近寄れない。
 だけど、温泉という特別な場所が、一葉を奔放にさせてくれるのだろうか。
 そばにいたいと思わせる。
「お風呂に入ろう」と促したのは一葉だ。
 何も身につけない場所に向かう。
 安住の全ても、見られる。

 いつも施されるばかりだが、たまには、与えたいと思う。
 何が出来るかは分からないけれど。

 年上だから、悟るものもあるのだろうか。
 一葉の動きにすんなりと従ってくれる。
 大浴場とは違って、一緒にお風呂に入って、客室の狭いかもしれないけれど寄りそえる場所に落ちついて…。
 一葉からけしかけたことが、安住には本当に嬉しかったようだ。
 そんな幸せそうな顔が見られたら…。

 優しく後孔に指が入り込む。
 幾度も感じさせられた体験に、もっと心地よいものを浅ましくも早く望んでしまった。
「あ…、享利さん…」
「一葉から挿れてもらえるかな…?」
 湯船の中で、体を抱かれる。
 太腿を跨ったら、硬い勃起したものが狭間に当たった。
 自分の体を相手に、こんなになってくれるなんて…。
 自分から入れる…。
 もちろん恥ずかしさはあったけれど、なにより、嬉しさが上回って…。
「あ…っ」
「一葉…。ゆっくりでいいよ…。僕のほうが持っていかれそうだ…」
 悔しそうな、だけど喜びに満ち溢れる顔が見えたら、一葉の内壁が締まった。

 後輩の子より、安住を取りこめるだろうか。
 なんだか、一番平穏な人生を生きているような気がしてしまう。
 全ては、守られている周りがある。

 守られるだけではなくて、攻め込んでもみたい。
 だからこうして抱きついて、安住を翻弄したいのだろう。
 自分に夢中になってくれと思いを込めて…。

 幾度か揺すぶっただけで、体内の中で大きく膨らむものがあった。
「あっ、きょ…」
「一葉…っ」
 下から突き上げられる動きが加速する。
 我慢できないと、吐き出すための行為に火がついた。
 体の奥がすぐに熱くなる。
 自分だけのものだと、より一層締め付けた。
 荒い息とくちづけが注がれてくる。
 
「もっと僕を欲して…」
 安住から囁かれた言葉にはどこか焦りがあったようだ。
 好きなのに、安心できないのは、歳の差なのだろうか。
 繋がれる絆が、他の人よりも、薄そうに思えたから…。

「好き…」
 恋愛に不得手な一葉はその言葉を精一杯の気持ちで伝えた。
 経験値は少なくても、思う気持ちだけは負けない。

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アンケートありがとうございました
2013-12-10-Tue  CATEGORY: あんけーと

年末 誰にしようかと模索して、結局色々書いているところですが。

一位は和紀&日生で、もう揺るがないですね。
2001票をいただきました。

二位は千城&英人です。
お子様劇場ではなく、ラブラブが見たいのでしょうかね。
うん…書きたい気持ちはあります。

三位 久志となっち
四位 尚治&長流

五位みこっちゃん(69)
(もう、訳分からんわ~と思った作者です)

なんで?
安住と一葉(55)のほうがラブラブそうなのに、何でかみこっちゃんなのですよね。
書けたら書きますが。

いっぱい、投票、ありがとうございました。



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病んでも
2013-12-10-Tue  CATEGORY: コラボレーション
「年末の旅行に行こうよ」
 そういったのは世羅だ。
 べつに畏まる必要もなかった。
 昔から慣れた人だから、どうしたって普段通り。
 年末の金額が高い時なんだけれどな。
 美星が心配しても、そこは三良坂の家が持ってくれるところがあるのだろう。
 司法界の父親はどんな時だって配慮してくれた。
 まるで、息子の不甲斐なさを読んでくれたように。

 自分だって支払えると思ったのはいつだったか。

 大学の時から、司法界の父は何かと世話を焼いてくれた。
 自分がここまでこれたのは、あの父のおかげだ。
 そんな環境を美星は羨ましく思う。
 世羅にとっては『普通』のことなのだろう。
「少しは感謝しろよ」
 美星が言って、ようやく気付く始末かもしれない。
 遅くても…。
「美星がいてくれたらいい」
 そう言われたこともあった。

 結婚したって、結局彼女と合わなくて別れた。
 別れた時にホッとした。
 別れた情けなさに愚痴をこぼしたって、「おまえがいるからいい」と言われて喜んで…。
 世羅はいつだって、美星を見てくれていた。
 あの、転校してきた時から…。

「すきだ」って気付いたのはいつだろう。
 一緒に住める時、心なしか喜んだ。
 決して伝えはしないけれど。

 彼女と別れてくれて良かったと言ったら失礼だろうか。
 彼女よりも幸せにしてあげると言ったら、間違いだろうか。

「好きだ」と胸の奥から呟く。
 世羅が父に薦められたように、美星も見合いはあったが、断ったのは好きな人がいたからだろう。
 美星は一度も答えなかったけれど。それは、ある意味、世羅を満足させたのだろうか。

 和紀には感謝している。
 誘われなければ、同居はなかった。
 共に暮らせる空間。
 体を重ねたら、すぐにでも合わさった。
 喜びが快感を生む。

「世羅…」
 初めて呼んだ言葉かも。
「美星」
 初めて呼ばれた言葉かも。
「好きだ…」
 もう一度言ってみた。
 聞こえたようだ。
 体の奥に熱いものが注ぎこまれる。
「世羅…」
 美星は美しい声を響かせていた。

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冬の珍客 同級会 6
2013-12-10-Tue  CATEGORY: 珍客
 風呂
さえさまからいただきました。お持ち帰りはしないでくださいね。

柔らかな泉質だった。
 部屋に温泉があって…。

 繋がれた肉体が重苦しそうに震える。
「成俊…」
 鼓膜に響いてくる声がとても気持ち良くて、もっと聞いていたいと強請ってしまう。
「みつや…」
 体に籠る熱は、苦しくはないけれど。
 そばにいてくれることがただ、嬉しい。
 もう、絶対に離されたくないとどれだけ思ったことか。

 光也の体には幾つか傷がある。
 それを撫でるたびに、帰ってきてくれと思う。
 傷つけられるのはもう嫌だ。
 一番大切な人だっだ。

「どうした?」
 抱きながら、求める声が聞こえる。
 相手に応えてやりたいと何度も思う。

 傷はお互いに負った。
 成俊は昔話にこれといって参加はしないけれど。
 自分だって離婚話があるから、佐貫の過去も口をだそうとは思わないが。

 抱かれて嬉しいと思える瞬間がある。
抱きしめられて嬉しい瞬間がある。
「抱きたい…」
 性急すぎる声は珍しいほどで。
 成俊は素直に頷いていた。
 こうやって、近づいてくれるひとがいる。

 充分に昂った性器は、もっと刺激を求めた。
 軽く唇を噛んで、行為を流す。
「あ…、みつ…」
 待ってくれないのは相手も同じだろうか。

 待てない、そのことが何故か嬉しかった。
 待たなくていいと言いそうになる。

「みつや…」
 張り詰めた雄は着実に体内を犯していく。

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冬の珍客 同級会 5
2013-12-09-Mon  CATEGORY: 珍客
一泊の予定は二泊に変わった。
ゴルフで疲れた人は、帰る気がないようだ。
年寄りだから…とはいわないけれど。

成俊も一葉も、のんびりと過ごせる環境に喜びを見せた。
その姿を見ては、安住と佐貫も頬を緩めていた。
なかなか時間がとれないことを二人とも気にしていた。
成俊も一葉も、いちいち言ってくる性格ではないから、甘えているところもあるのだろうか。
今度は、同級会ではなくて、二人きりの旅行に連れて行ってやろうと思う。


望は敷かれた布団の上で、つい、昔を振り返った。
和室の部屋は趣きがある。
いろいろ、あった…。
自分のことも、他人のことも。

佐貫との色恋沙汰を黙って受け止めてくれる人が目の前にいる。
人を思う気持ちを大事にしてくれた人だった。
いつ、嫌われてもおかしくないのに、ずっと待っていてくれた人を、今は自分から『愛している』と言える。
「佳史…」
小さく囁いたら、覆いかぶさってくる肉体に巡り合った。
浴衣を脱いだ体は、いつまでも年を感じさせない逞しさがある。
人を守り、自分を守ってくれる存在。
佐貫とは違う、力強さが漂う。

優しいくちづけはやがて深くなる。
望の心には、これが一番気持ちが良い。
浸食されていくことが、恐怖であっても、苦痛ではない。
佐貫を思っていた頃は、いつも苦しかった…。

「考えるな…」
胸の内を知ったかのように、佳史の声が響き渡る。
この人に抱かれて、違う人を思うことはいけないと分かっていても…。
全てを分かった人は、何もかもを許してくれた。
思い出のひとつとして…。

体の全てを知っている人。

唇は喉を辿って胸に向かう。
刺激はダイレクトに腰に届く。
「あ、…っよし、ふみ…っ」
「感じろ。抱いているのが誰なのかを知れ…」
嫉妬が蔓延している。
いつも冷静なはずなのに、こんな時は感情をむき出しにしてくる。
愛されていることが嬉しい。
知れることがまた、嬉しい。
ずっと待っていたのは、自分だった。
佳史を待たせていたけれど。
出会えた奇跡はここにもある。
ただの幼馴染ではなくて…。

尖った乳首が差し出されるように浮く。
「ぁあっ」
吸いつかれてさらに赤みが増す。
硬くなった性器が佳史の太腿にぶつかった。
「よし…」
「まだ解していないから挿れられないよ…」
気遣ってくれるのは分かっていても、待てなかった。
少しでも早く、一緒になりたい。

「好き…。佳史だけだよ…」
ずっと待っていてくれた人は…。
充てられた肉棒がこすれる。
一度、出してしまいたいと思ったのは、どちらもだ。
望は苦笑いを見つめた。
情けなさはお互いでも、自分を相手に昂ってくれることは喜ばしい。
「望…」
鼓膜に響く声が温かかった。
なにもかも、委ねられる。
「好きだ…」
もう一度、声をあげたのはふたりとも。
声が聞けて、もっと深く交わった。

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冬の珍客 同級会 4
2013-12-08-Sun  CATEGORY: 珍客
大人はゴルフを楽しんでいた。
全くもってプレーが分からない成俊と一葉は温泉街をウロウロとする。
温泉まんじゅうを食べて、差し出された熱燗を飲んで(←いえ、普通ないです、熱燗)
気分良く温泉街を歩いていれば…。

「美琴さ―んっ」
どこからか声が響く。

遠くに出かけなかった人はここにもいたらしい。
誰も彼も、海外旅行はないのだろうう。

一瞬見回してしまった周りには『社長』はいない。

一葉と成俊は見なかったことにした。
それが『大人』としてのやり取りだと、客商売の二人は思う。

夕食前「動物園」に行くのかと聞いたら「好きにすればいい」と言われた。
一夜だけ、友人同士の同級会があったようだ。
まぁ、きっと明日もみんなで移動するのだろうけれど。
あらゆることが聞ける日は、悔しくても嬉しい日になった。

光也だけではなく、安住の昔話も心をときめかす。
まぁ、一葉は聞いて嬉しくはないだろうけれど。

栗本が留めながらも、譲原からじんわりと過去話はこぼれた。
「安住と佐貫は、昔からモテたんだよ」

 知らない世界を知っている人がいる。
 内緒話はここだけだ。

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冬の珍客 同級会 3
2013-12-08-Sun  CATEGORY: 珍客
 部屋に戻って「酔いの後の入浴は良くない」と光也にたしなめられる。
 この温泉地に着いてひと風呂あびていたかから、とべつに光也の言葉はわかっていても。
 気持ちが良かったのだ。
 裸になって全身を晒せられること。
「光也がいてくれたらいい…」
 どちらかといえば、彼の方が酔っているのではないか。
飲んだ酒量を思ってしまう。しかし、微塵も感じさせないのが、この男だ。
 途中で瞼を閉じてしまったから…。
 成俊は手招きで光也を呼んだ。
「一緒に入ってくれないの?」
 もう、どこの殺し文句だと、うなりたくても唸れなかった光也だ。
 大浴場に入らせなかったことが救いなのだろうか。
 パッと着ていた浴衣を脱ぎすてた。
 成俊にしか見せたことのない裸体が樽風呂のそばで披露される。
「沈んでしまえ」
 と思ったのは誰にも見せたくない光也の思いであったけれど…。


 部屋についた露天風呂に身を投げた。
「きもちいいっ」
 無邪気に喜ぶ望の姿を見ては、佳史も笑みを浮かべる。
 宿泊券をもらったのは、たまたまの偶然だったのだが。
 初めは一室だったが、同級会を思いたっては、すぐさま対応してくれた弁護士がいてくれた。
 望の先輩はなにかと顔がきくらしい。
 自分が手配しても良かったが、顔を立ててやるべきだろうとは背後関係で知る。
 見れば、誰もが忙しい人たち。
 一葉君も成俊君も、我慢していたところがあるのだなぁと、触れ合うごとに思う。
 相手を思うから、言いださないだけだ。
 それは、望も同じだろう。
 年が明けたら、医院の隣に事務所を構えると言う。
 そばに来てくれることは、何より嬉しかった。
 表立って声にはしないけれど。
…抱きしめてもいいだろうか…。
 細い体は、本当に誘っているようだ。

 佳史も浴衣を脱ぎ棄てる。
『裸を見られるのは恥ずかしい』と言ったのは誰だったか。
 合わせればなんの問題もないだろう。
 勃起した下半身はともかく…。
 それをいったら自分の方が恥ずかしいが。
「望…」
「あ…、よしふ…み…」
 重なる体温は温泉よりも熱かった。


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え…えちかいてもいい?
大人のえちってどうなんだろう…。
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冬の珍客 同級会 2
2013-12-07-Sat  CATEGORY: 珍客
 離れたところに大浴場があるとは聞いても、すぐそばにある樽風呂で満足できそうだった。
 何といっても動き回らずに温泉が楽しめる。
 到着が遅かったから、のんびり温泉…というわけにもいかなかったが、光也の同年代が、まず先に体を清めているのは必然的に知れてきた。
 だから光也ものんびりと湯に体を浸けたし、時間も気にしていない。
 もちろん、温泉に身を委ねたい成俊のことも知られていて、光也は「遅れても問題がない」と言ってくれる。
 疲れたのは光也のほうだろうけれど、そんな愚痴は一つも洩らされない。

トロトロとした柔らかな泉質。
 肌を包み込むぬるりとしたお湯は決して嫌なものではない。
 クスッと光也は笑うだけだ。
 責められることもない、この空気が、成俊にとって、本当に心地よいものであった。

 二人で浸かっても狭くもない樽風呂に身を寄せて、数十分。
 見えた筋肉に、ひょろりとした自分と比べてしまって、守ってくれるのだと言う安心感が伝わってくるだけで、変に卑屈になることもない。
 時間を忘れた。
 集合時間に気付いたのは、内線電話が鳴ったからだった。

 そう、ゆっくりとはできない到着時間だったことを忘れていた…。

 何を言われるのだろうと思っても、浴衣を着た面々は成俊に挨拶をするだけで、続く言葉はなかった。
 ホッとしてしまうものでもあったけれど。

 囲炉裏が設けられた食事処は両脇に膳が整えられている。
安住と一葉が座る隣に、成俊は促されて素直に従った。
 目の前に栗本と譲原が落ちついて…。計8名席。譲原の隣の空席2名は誰だろう…と考える。

 すかさず、安住が、「誠、遅れるみたいだよ」と状況を打ち明けた。
 続いて、理解する同級生が「まぁ、先にはじめていて、文句はないでしょ」と杯を手にする。
 隣の一葉が烏龍茶のグラスを持っているから、成俊もそうあるべきなのかと思った。
 変に酔って迷惑をかけたらいけないと思うのだが…。

「成俊君も飲みなよ」
 譲原から薦められたら断れない。
 無礼講の宴会は、堅苦しくもなく、楽しめるものだったけれど…。
 聞いていいのか悪いのか、昔話には思わず耳を塞ぎたくなる。
 大人の会話は刺激的すぎた。

譲原「あぁ、享利って昔っから後輩好きで~」
栗本「そこは黙っておこう」(←グラスをウーロン茶に変える)
譲原「佐貫も~」
佐貫「おい、こいつ、もう、寝かせろよ」(←マズイことは避けたい)
成俊「みつやぁ、なにかしたのぉ?」(←半分酔っ払い)
佐貫「するかっ。あのなぁ…。付き合ったのは相手の都合で…ウンヌン」(←酔っ払い相手に必死に言い訳)
一葉「享利さんは昔っからモテモテなんだね…(ノд-。)クスン」
安住「一葉…。気にしなくていいんだよ。向こうから近づいただけの人なんだから(←勝手に?あっそぅ…)」
中條「おまた~…せぇ…」
磯部「え?もう出来上がりなの? 情けねぇ。朝比奈っ(一葉)。(←営業としての付き合いに叩き起こされる)」
譲原「あー、大丈夫。大人の時間はまだあるから」
なんの、大人の時間だか分からないが。

とりあえず、お子様は寝かせてしまえと言ったのは誰か…。
成俊は一葉と一緒に、隣室に敷かれたお布団の中に潜った。
一日、光也のことで緊張して焦って、ヤキモキさせられていたから、ここにいることに安堵が広がる。
お酒に弱い一葉も、がんばったのだろう。それでも睡魔には勝てない。
「明日ね、水族館にいくの…」
眠りに落ちながら、一葉は言う。
成俊にそんな計画はなかったけれど…。
まぁ、間違いなく、年寄りは昼まで起きないだろうなと思ったことは正しかっただろうか。
 いえ、早くに起きられましたが…。

一葉が眠ってしまっては布団を抜けだし、「いつまで飲んでいるの? ほら、おつまみも体に入れてよ」と甲斐甲斐しく世話を焼く存在に誰かは何かを思ったようだが何も言われなかった。
 みんなの口を閉ざしたのは、年下の自分なのだろう。だけど、今更、聞きたくもないものだった。
 光也に愛した人がいたのは知っている。その人を守りきれなかったことも。
 今は自分だけを見てほしい。思い出話はしてほくない。
 そう思ったら我が儘だろうか。

 同級生の話を中断させたことは身に沁みて分かっていても、振り返らせたくはなかった。
「みつや…」
 酔ったふりで甘えたら、「もう、解散にしよう」と低い声が皆を促す。
 誰も反論はしない。

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冬の珍客 同級会 1
2013-12-06-Fri  CATEGORY: 珍客
 武田成俊は大きめのボストンバッグに必要なものを詰めた。
 着替えが主だ。
 別に家出を企てているわけではない。
 今年は、同年代の友達が集まっての『冬の遠足』はないそうだ。
 みんながそれぞれ忙しい立場で、状況は理解できている。
 恋人の佐貫光也も、昨日は帰ってこなかった。いらない事件が起こってくれたおかげで、貴重な連休の一日を潰された。
 不貞腐れているわけでもないし、仕事のことについて文句を言う成俊でもない。
 でも、楽しみにしていた時間を待っていたことは確かで、子供じみた我が儘が胸の内に湧き起こる。
 決して、自分の自由にはならない恋人だとは、付き合い始める前から知っていたけれど…。

 成俊が勤めるインテリアショップは元旦以外の日は『営業日』だった。だから日をずらして連休が取れたりもする。
 つまり、光也の動きに合わせられるのだ。
 そうして練られた計画も、一つの事件で覆ってしまうのだから…。ここは、拗ねても良いのだろうか…。
 もちろん、そんなことは出来なかったけれど。
『平和』を望む人が就いた職に、何の口出しができようか…。

 ピンポーンと来客を告げる音が響いた。
 モニターを覗きこむと、『休暇中』を思わせる、ラフな格好をした譲原と栗本が映し出された。
 譲原は普段はスーツ姿だが、さすがに今日はざっくりと編まれた濃紺のセーターにグレーのダウンコートを羽織っている。栗本も白衣の代わりに保温性の高そうなこげ茶色のウールのコートを身に着けていた。
 光也はまだ帰ってこない…。

「はい…」
 返事をして、成俊は部屋に栗本と譲原を迎え入れた。

 26歳みんなでの『遠足』は無くなってしまったけれど、栗本がなにかの伝手で、良い温泉旅館を取ってくれたと聞いたのは数日前。
 別に、栗本と譲原のふたりきりで行けばいいじゃん…と内心で文句をたれたけれど、光也と一緒に出かけることが少ない成俊は、言葉にしなくても願望を眼差しで告げていたらしい。
 それを汲み取って、光也は暇そうな(←失礼だ)同級生と旅行することに決めていた。
 結局は『現地集合』で、光也の同級会が開かれることになっていた。
 年上の輪の中に入るのは気が引けても、安住の恋人である朝比奈一葉が来るのだと分かれば少しばかり心も安らぐ。
 年上とはいえ、今更、気を使うような人たちでもない。
 だから成俊も、落ちつけた。

 雪がチラチラと目の前を通って、地面に辿りついては消えた。
「こりゃ、明日は凍るな…」
 最寄駅から送迎してくれるマイクロバスの中で、光也は外を眺めながらポツリと呟く。
 普段とは違う光景が、心なしか成俊のテンションをあげていたが、騒がない人たちを前にしたら、自然と口は閉じられた。
 自分が子供っぽいと言われているようだ。

 マンションに栗本たちがやってきて間もなく、光也は帰宅した。
 急いて着替えたのは、予約した列車の時間がギリギリだったこともある。
 温泉地まで、幾つか電車を乗り換えなければならなかった。地方に行くごとに、本数が減る事実は、同時に一本遅れたら、とてつもなく時間を無駄にする結果になる。
 ギリギリまで仕事をして、帰ってきてくれたことに成俊は瞼の奥が熱くなりかけた。
 我が儘を言ったつもりはないが、どこかで感情を読みとってくれるのは、やはり年の差なのだろうか。
 栗本と譲原が先に現れたことで、半分諦めていたところがあった。
 ドタキャンに慣れてしまった…といったら、光也に悪いだろうか…。

 駈け足で乗り込んだ新幹線。
 午後の日差しは低く、横から差し込んでこられて、眩しさにブラインドを下ろした。
 手近なところで買った駅弁と缶ビールを流し込みながら、向かい合わせの指定席は、早くも宴会気味になる。
 光也は忙しさで、まともに食事もとっていなかったのだろうか。心配になって様子を伺ってしまう。
 しかし、疲弊した感じは微塵も見当たらなかった。これが"佐貫光也"という人間の意地なのだろうか。

 旅館に辿りつく前に酔いつぶられては困ると、酒量を気にしながら、成俊は買いこんだつまみを差し出す。
 まだあと二時間近くかかる予定だ。
 もう、安住と一葉は到着しているのだろうか…。
 そんなことが過ったが、空気を壊すようで口には出せない。

 そうしてようやくたどり着いた最寄駅。もう日は影っていて、一日の終わりの速さを感じる。
 成俊では想像しなかった高級旅館だった。
 赤いじゅうたんには花柄があしらわれていて、持ってきたボストンバッグを仲居の女性が持ってくれようとする。
「あ…」
 女性に荷物を持たせるのはどうかと抵抗が生まれれば、横から栗本が「そういえぱ、佐貫、宿泊の準備ってしたの?」と声がかかった。慌ただしかったのは、家で待っていた人には充分なくらい知られている。
 一日くらい、着替えがなくてもどうにかなる…とは、現場で生きていた人間の持論なのだろうか。
 すぐ成俊が「光也の分は、用意してきたから…」と告げると、譲原は「できた嫁だねぇ」と皮肉気に呟いてくれた。
 大きめのボストンバッグに詰められた、二人分。
 日常生活に、特にこだわるわけではない光也の性格は、また成俊にとっても気が楽なところだった。
 旅館に最低限必要なものが用意されているという甘えもあった。

 一度、それぞれの部屋に案内されて、個室となる夕食会場の説明を受ける。つまりは、宴会なのだけれど。
 部屋に樽風呂の温泉があったことに、何よりも驚かされた成俊だった。

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3パターン(成俊、望、一葉)で進んでもいいですか?
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病めた時
2013-12-05-Thu  CATEGORY: コラボレーション
「テメーッ、このクソ忙しい時に、風邪なんかひいてんじゃねーよっ」
 朝、まだ事務員が出社しない家の中に哲多美星(てった びせい)の声が響き渡る。
 マンションの一室。広々とした室内は当初とは違って改装をしてあるが、住居と事務所が同居していることは変わらない。
 5LDKの一般住宅に事務所を移すことになった最大の原因は三良坂世羅(みらさか せら)の離婚問題が起因だった。
 なんとなーく結婚した夫婦は、数か月で別居状態に陥り、一年たらずで離婚協議に入った。
 今更顔を合わせたくもないのか、世羅は面倒事を避けようとする。他人の事なら何でも突っ込んでいける精神があっても、自身のことは後ろめたさしかないと本人が分かるのだろう。
 ボロが出るくらいなら、他人に任せたほうがいい、と的確(?)に判断しては、後輩の離婚を専門に扱う弁護士に全てを委ねてしまった。
 結果、誰がどうみても世羅にしか非がない状況は覆ることもなく、ほぼ全額の相手希望の慰謝料が認められる。
 さすがにこればかりは、弁護にあたった譲原望(ゆずはら のぞむ)も手を焼いたことだろう。
 同じ"弁護士"という立場から、美星は同情したくらいだ。
 だからといって、上手く事を運べる内容は微塵もなく、逆に相手側を有利にさせる事項だけが美星には浮かんでくるのみだ。
 デートの約束は平気で反故にするし、休日にふたりで出かけたという話も聞かない。
 仕事が終われば飲み歩いて、せっかく用意してくれた夕食に労いの言葉もかけず、「外で食ってきたからいらない」と寝室を共にしないベッドにそそくさと潜り込まれたら、『妻』という人はどんな気分なのだろう。
 そもそも、なんで結婚なんかしたのか。
 お互い、出世意欲が勝ったのだと、今なら振りかえられる。
 もっとも、彼女の場合、出世は友人よりもステイタスの高い位に自身を置くことであり、サラリーマンとは違う職種を選んでの結果だったのだろうが。
 旦那の職業を自慢できても、中身がなければ何の意味も満たさない。
 世羅も親に背っ突かれて『適当に』決めた程度の相手だったのだ。
 だから、何もかもが"気が進まなかった"と言う。
"努力"という言葉が皆無なのは、美星が中学二年の時に転校してきてから知り尽くしていることで…。
 血筋なのか、子守唄が法学だったのか、揉め事には敏感に反応しても、感情はどこか置いてきぼりだった。
 他人を思いやる、というよりは、形にはまった思考力を持つ…とでもいうのか。
 飄々と普通に過ごしている様子ばかりを見せるから、でも、やたらと成績が良かったせいで、憧憬と嫉妬は同時に向けられていた。
 その容姿の良さで、努力しなくても女は近づいてきていた。

 転校生だという理由だけで、昔からのクラスメイトの輪に入れてもらえなかった美星を真っ先に気にかけてくれたのも世羅だった。
 移動教室の時も「一緒に行こう」と迷子にさせなかったし、考えこむ仕草を見せただけで「何か聞きたいことがある?」と常に表情を見てくれる。
 美星にはうっとおしいくらいでもそれが嬉しくて…。
 だけど、世羅にとってそれらは、『義務』のようなものでしかなかったのだな…。
 歳を追うごとに分かっていても、離れていけなかったのは、雛が最初に見たものを親と思う習性に似ていたのかも。
 同じ高校に進学して、同じ大学、同じ学部に進んだ。
 一緒に勉強していたから、かどうかは分からないが、司法試験の合格も一緒だった。
 世羅の父親が司法界にいたことも大きい。世羅にくっついてまわる美星は、「勉強熱心だ」と、適当にやり過ごす息子より温かい目で見られていた。
 一番美星が驚いていたのは、他人にほとんど無関心といっていい世羅が、美星だけは心の内に入れてくれること。
 型にはまったやり方とは違うのを、いつのころか気付いていたが、あえて比較する問いは出来ずにいた。
 就職活動の段階で、世羅が父親の弁護室に収まるように、美星も誘いこまれた。それはもちろん、色々な目で見られることになったが、将来を考えたら損なことではない。
 だから、安堵していたところがあった。何が?と問われたら、世羅のことだったのか、将来のことだったのか、曖昧だ。
 世羅が「結婚することにした」と言いだした時はさすがに目を見開いたが、事情があってもおかしくない家庭だと、問いただしたりもせず、御祝儀をくれてやったものだ。


…が、気付けば、目の前でアザラシのように転がっている大人がいる。
 熊だ、熊!! いや、熊は意外と動きが素早いから、やっぱりこれは、トドかアザラシだ。
 ナマケモノでもいい。

 請け負っている企業顧問は、世羅の父から受け継いだものだ。
 現社長はハネムーンに出かけていて、社長及び秘書がその行程の真っ最中であり、指揮官は副社長に任せられている。
 信用がないわけではないが、手腕の度合いが違うのは育ちの違いでもあった。
 同時に美星は世羅を越えられない何かを悟っている。
 まさに"育ちの違い"。

「社長がいなくなった途端にテメーッまで、休みがあるかぁぁぁっ」
 残された仕事を"適当"にしたい世羅の仮病を美星は見抜いた。これも長年の付き合い。
 要するに頼れるのは世羅しかいないという言葉の裏返しなのだが。
 片付けなければいけない要項は年内中、山ほど残っている。

…あぁ、気付けば、30年来の付き合い…。
 自慢したいのか落ち込みたいのか、悩まされたくもなる。
 世羅のさばき方の巧さは、今に感心させられることではなくても…。

 美星は決して、膝の上に乗るタイプではないけれど。
 現社長の恋人、伴侶を、『羨ましい』と思ってしまうのは、ささくれた精神のせいだろうか…。
 可愛いのに憎たらしく思えてくる時もある。無邪気で無垢で、純粋(水)培養された人。
 自分はあんなふうに、素直にはなれないから。
 歳を追うごとにそれを感じる。
 甘えられる時はすでに過ぎた…。今更、だ。
 キングサイズのベッドを置いた、この家、唯一の個室。
 世羅の頭下から気持ちよさそうに眠るための寝具、枕を勢いよく引っこ抜いては、羽根枕を世羅の顔面に叩き落としていた。
「起きやがれっ。本当の風邪なら、粥くらい作ってやるっ。ただの二度寝なら社長が帰ってくるまで安静にして、俺に指一本触れるなっ」
 ピクッと起きあがった奴に何と言ってやったらいいのだろう…。
 和紀社長のご帰還は2週間後だ。

―完―  (←そう。これ、入れとかないとね)

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別宅に旅日記書いておきました~。
読んでもつまらないと思うので、興味のある方だけ行ってください。→2泊4日
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病める時も 健やかなる時も 13(最終話)
2013-12-04-Wed  CATEGORY: 新しい家族
 和紀の胸に顔を押し付けられたままで、どれくらいの時間が経っただろうか。
 聞こえてくる人の喧騒は、同じ船から降りた人々のものだ。多国籍の人間が多く存在する。
 クルーズ船に、どれだけの人間が乗っていたのか…ということでもあったが。
 和紀は、『世界を巡るツアー』の中の一部だけを乗船していた。だから自分たちはたったの三泊四日なのだが、他の乗客は一年近くをかけてゆったりと航海する。
 数多くの島々が連なるこの地は、ある意味で『滞在型』だったようだ。
 もちろん、寄港地から寄港地だけのクルーズもあるようで、最初から最後まで乗りこんでいる必要はない。
 船と一部の乗客だけが、地球を一周しているとでもいうのか。

 和紀の腕の力が緩んで、日生は顔を上げた。周りを見渡せば、肌の色も違う人々が、自分たちと同じように寄港地を愉しもうという雰囲気で包まれている。
 自分が一瞬でも気を取られた人はそこにはいない。
 自分たちと同じ国の出身だと思われる人はチラホラと見受けられたから、日生も和紀も見間違えたのだろうと思われた。
「ひな、島内を散策してこようか」
 この島に滞在する時間は僅か一日だけで、夜にはまた移動して同じようにあと二島に立ち寄って、日生たちが泊まるホテルの本島に戻っていく。
 船に戻ろうとせず、島内に残ろうとするのも、あの男の存在がないからだと分かる。
 良く似た人は世の中に何人かいると聞いたことがある。
 きっと、"周防"もその一人だろう。

 そう思えたら気にしていた自分に気付かされる。
 あんな話を聞いてしまったからだろうか。和紀が全てで、和紀の言うことを信じようと決めたばかりだったのに、と自分を叱咤した。
 避けてくれたのは和紀であり、周防であり、奈義で…。
 目に見えた世界にいない男は、きっと周防と奈義が天から退けてくれた結果だろう。

…日生は和紀との人生を楽しんで幸せに過ごしていけばいい…。
 言い聞かされているようだ。

 坂道になる通りを、小さな商店が並んでいる。
 貝殻で作られたアクセサリーや、近海で獲れた魚料理を出すレストランや、フルーツをふんだんに使った洋菓子店やジェラート店など。
 それらをひやかしながら、また買ったりして登頂…というのだろうか。港町が見渡せる場所まで昇りきった。
 何やら騒がしい箇所があって、近づいてみれば、展望台となった場所の突き出したところに、鐘がある。
 それぞれ、愛する人と共になのか、一本の紐をふたりで握って鳴らしている光景が、誰からも祝福されているように見えた。
 和紀が「俺たちも鳴らしてこよう」と日生の背中を押す。
 みんなの前で…というのは日生に少々の抵抗を思わせたが、先日の結婚式が、牧師だけに見守られたものであったのに対して、こちらは大勢の人がいるだけに、和紀とのことを許された気分になれた。
 改めて人からの祝福を受ける幸せ。
 日生の薬指に嵌められた指輪が一層の輝きを放つ。
 おまけに和紀がその場でキスなどしてくれたから歓声は一際大きくなった。

 ここには他にも『新婚旅行』で来ている人も大勢いるのだろう。

 恵まれた環境。愛して愛される人と共にいられる奇跡。
 日生はまた感慨深く涙を浮かばせてしまえば、和紀が唇で掬ってくれた。

 あっという間に一日が終わろうとしている。
 散策時間は長いとは言えなかったが、島を巡るのには充分な時間だった。
 また船に乗り込んで、豪華なディナーとショーを満喫した。
『贅沢』な時間だと思うのに、それらが当たり前になっていく日々。
 周防に出会えたことも、和紀と巡り合わせてくれたことにも心底喜びが湧き起こる。
 船の中から見た夕焼けも、日生は生涯忘れない出来事になるだろうと胸に刻んだ。

 新年の初日の出を見たのは、二人きりのヴィラ内でだった。
 水平線から徐々に浮かび上がり、神々しい明かりが地上を照らしていく。
 ベッドの中で、生まれたままの姿で、また日生は生まれ変わるのかもしれないと漠然と思っては、隣にいる和紀にしっかりと抱きついた。

『ひなは三隅家の子だよ』
 その言葉を胸に、新たな人生を歩み出す。
 少しばかり気にかけてしまった昔は、もう二度と思い出すことはないはずだ。なぜなら、誰よりも幸せだと思える時が、『今』あるのだから。
 決して和紀を苦しめることはしない。そのためにも。

 優雅な時を過ごし、のんびりと日常を忘れて、休暇は幕を閉じる。



 帰国して、お土産を持って清音のもとを訪れれば、すぐにでも指輪の存在に気付いてくれた清音から「おめでとうございます」と涙ぐまれた。
 ただの家政婦だけではない、母親としても見守ってくれた清音にも見せてあげたかったと振り返っても、きっと清音は持ち前の謙虚さから、邪魔をしなくて良かった、くらいに思っていることだろう。
 これからもずっと、ずっと自分たちを大事にしてくれる人はここにもいる。
 和紀も日生も、周防に似た人がいた、とは口にしなかった。
 もしかしたら、幻を見たのかもしれないと感じたのは、滞在中、彼に出会うことはなかったから。
 あの後、出発の前にもう一度名残惜しげに教会を訪れたが、誰も出てこなかったのだ。
 まるで、ふたりの行く末を心配した周防が降臨して確かめたかのごとく…。
 伝えたら、清音は会いたがるだろうか。
 それもまた、それぞれの心に残された『思い出』を上書きするようで、怖いのかも。

 愛する気持ちは、個人が持てばいいだけのこと。

 同じように隣の弁護士事務所に出向いて、留守中のことをうかがった。
 会社関係は緊急事態が起これば休暇中に関わらず和紀に連絡が入るが、それもなかったとは、順風満帆な日々だったことだろう。それはこちらも同じ。
 三良坂が応接室となったリビングで、何の迷いもなく煙草に火をつければ、哲多がお茶を置いたトレーで思いっきり後頭部を叩いていた。
 懐かしい光景に和紀と顔を見合わせてはクスクスと笑ってしまう。
 その姿を見られて呆れも含んだ表情で「おまえらはいいよなぁ…」と三良坂がボソッと呟くから、また微笑ましくなってしまう。

 みんながいる…。
 日生は、もう恐怖に脅える日が来ない幸福感を深く味わいながら、過去に、静かに幕を下ろした。

―完―

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年末企画として出しておきながら、ここで終わってしまいました…。
早くに始めるとこんな結果になるのですね…。

最後、思わせぶりなことを書いてしまいしまたが、実親を出すことはできませんでした。
そこが英人とは違ったところかな。
日生には周防がいたから、他は必要ないでしょう。
何故出したかといえば、心に巣食いかけたものを排除するためであったのです。
改めて現実にはいないと知ることで、きにかけることはないと。
話を聞いて、思い出さないつもりでも、どこかで引っかかっていたものがあったのかな。
すっきり、すっぱり、流してくれたことと思います。

さて、貼ってあるアンケートどうしましょうか。
とりあえず、締め切りまで待って、今後対策を考えるか…(←)
お付き合いありがとうございました。
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病める時も 健やかなる時も 12
2013-12-02-Mon  CATEGORY: 新しい家族
 二週間の滞在の中、確かに飽きてくることはある。
 最初の日は移動で終わり、次ぐ日は愛を確かめる行事があった。
 小さな島は、一日あれば巡れてしまえる。
 現地ガイドを頼んで、新鮮な果物を食しながら回った。観光するところは決まっているのだろう。
 離島はあまりにも小さい。
 教会に行けば、また"周防"に出会えるだろうか。
 そんなことを思う日生を和紀は連れ出す。

「クルーズ?」
 夜、本館のレストランで食事をとっているときに、和紀に明日からの予定を提案された。
 ちょうど、本島に立ち寄ってくれる大型のクルーズ船があるらしい。
 三泊四日でまたこの地域に戻ってくることは、和紀にとって暇つぶしだったようだ。
 こんな急に…。
 日生はそう思っても、きっと、和紀のことだ。計画済みだったのだろう。
 一緒に行けるなら、どこだっていい。
 日生は首を縦に振った。

 初めて乗る船は11階建てだという。
 港にそびえたつビルのようで、一瞬日生は息を飲んだ。
 その豪華さは、入り込んだ人しか知らないだろう。
 世界中の裕福な人間が集う場所。
 乗り込んだ先にはグランドピアノと音楽隊がいて、乗船の歓迎セレモニーが繰り広げられる。
 怖気づいて声も出ない日生を、和紀は腰を抱えて誘導した。
 幼い頃から格式高いところに周防が連れて行ってくれたことを思い出す。
 決して恥じないように。教えられたことは今でも生きている。
 和紀が選んでくれた、南国の民族衣装は、同じように着ている人も多数いたが、日生の肌の白さか、目立っている。
 エンジ色の生地に黒とグレーの幾何学模様。
 その幾何学模様は、日本でいうところの『家紋』だと教えられたのは、数時間前だ。
 和紀が特注で頼んでいたもの。
 ホテルの客室係に確認を求めたのは、これだったのか…と今更ながらに知るのだが。
 結婚式よりも重要性をおいたのが、用意の仕方で知れてくる。
 たぶん"周防"の登場は、予想していなかったことだ。
 分かっていたのなら、もっとしっかりと、"親の手前"と思ってやったことだろう。

 着せられた服にはあの客室係りを思い浮かべる。見事な紋様を見せていた。あの男もきっと、格式のある家の出なのだろう。
 自分が身につけられることを、誇りに思う。

 薄汚いトレーナーが、昔の日生の衣類だった。暑い日には汚れるからと、下着だけで過ごしていたかもしれない。
 言葉も満足に分からず、親の機嫌を伺うように、部屋の隅で暴力を振られないように脅えて過ごした。
 目で言葉を知る…。

 今は、目で、愛を知る。

 船に乗り込んで、広がる海を眺めた。エメラルドグリーンの水面。弧を描く水平線。
 逃げ場がない場所だ。でもなくていいと思う。
 そばに和紀がいてくれるから…。
 初めて出会った日のことを和紀は語ってくれる。
『あの時からひなは大事な存在だった。守ってやりたくて、もう苦しめたくなくて…。たぶん、出会ったその時から、ひなに恋していたんだ…』
 恋も愛も分からない年だったのに…。和紀が抱えたものは日生が思っていた以上に深い。だから苦しんだ時があった。
 日生を守るために遠ざけた日々は、お互いに必要だった時間。
 ようやく、重なることができた。
 
 海を見たらすれ違う船が遠くに見えた。
 どこかの外国籍の船だろうか。
 船乗りは今日も荒波の中で働いているのかな…とふと過る。
 今日のディナーは魚料理だと前もって聞かされていたから、もしかしたら、あの漁師が釣ったものかも…と身近な考えが浮かんでしまった。
 実際は、前もって食材は積みこまれているのだが…。
 夢を抱くことは悪いことではない。
 釣ってくれるひとがいることに感謝もする。

 日生は和紀からもらった指輪を隠すことはしなかった。
 確かに派手すぎるものかもしれないけれど。
 日生が身につけてしまったら、特におかしいと思わせないところがある。日生の華奢な見た目もあるのかもしれないが、厳かな雰囲気が全身から漂うのだ。
 そばにいる、和紀と周防。もしかしたら、奈義もだろうか。
 周防と和紀の気持ちが込められていると思ったら、とても外せない。
『愛している。そばにいてほしい…』
 和紀はあの後、何度も何度も日生にそう言った。
 いてほしいと願ったのは日生もだ。
 これ以上の幸せは願わないと深く胸を焼く。
 輝くものは、日生と和紀を飾り包み込む。

 立ち寄った港町。
 レモンの香りが漂う。
 爽やかな海風と共に広がる清々しさ。
 日生はたった数時間の滞在でも、この島の何かを吸収しようと降り立った。
 港を行き交う人の温かな眼差し。
 偶然の出会いは、直後に訪れる。
 最初に気付いたのは、和紀だった。
「ひなっ」
 何かを遮るように抱きこまれる。
 視界の片隅に見えたのは…。

 日生は何も見なかったことにしようと思った。
 周防のためにも、和紀のためにも。

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病める時も 健やかなる時も 11
2013-12-01-Sun  CATEGORY: 新しい家族
「ようこそ」と牧師はまた言葉にする。
 ここに、何のために訪れたのかを衣装で理解する人は、男同士の関係も厭わなかった。
 
 周防にまた出会えた…。そう思ったらいけないだろうか。
 周防ではない。分かっていても、見守ってくれる人は、周防にしか思えなかった。
 動揺したことを和紀は素早い言葉で牧師に説明した。
 あまりにも似すぎる。早くに亡くなった父親がいること…、愛する人と改めて誓いを交わしたいこと。生涯、日生だけを愛する宣誓がしたいこと…。逐一言葉にされる全てが嬉しくて…。
 和紀が牧師に告げると、やはり、温かな笑みで答えてくれる。
「人を愛することは自由です。そして、幸せなことです」
 ピクンと日生の体が跳ねた。諭される口調はやっぱり似ている。
 和紀は苦笑を浮かべた。
「『ひなを幸せにしないなら承知しない』ってまるで、親父に釘を刺されているみたいだ…」
 本当のところ、牧師はそうは言わないだろうけれど…。
 牧師は答える。
「あなた方に出会えたことを、幸運に思います」
 見届けてくれると言う意味なのだろうか。

 和紀は、日生を幸せにすることの重要性を改めて感じている。
 そばにいることが大事だと肌越しにつたえる。
「幸せにするから…」
「和紀くん…」
 これ以上は望まないと思うのに…。
 人に、幸せの頂点とはあるのだろうか。
 毎日のご飯がある。抱きしめてくれる人がいる。愛されていると分かる瞬間がある…。

 周防に良く似た牧師は、一度キリストに向かいあって礼をした。
 それに伴って、和紀と日生も頭を下げる。
 そこにいるのは周防…、見守ってくれた父親。
 目の前に立った牧師に、姿を重ねて、まだ生きてくれていると姿を追ってしまう。。
 宗教にこだわるものなどなかったが、今だけは、周防に出会えた気がしたのは、日生だけではない。
 なにもかも、見られている…。いや、見守られているのか…。

 愛を交わす行事は淡々としていた。
 だけど、静けさから漂わされる空気はとても重い。
 和紀がどこからともなく、輝く指輪を差し出した。
 ふたつの輪を受け取った牧師が、絹織物の上でそれらを掲げる。
 結びつけるもの。
 牧師の声が聖なる場所に響く。
「病める時も 健やかなる時も…」
 永遠の愛を誓うのかと問われて、何の迷いもなく、日生は頷いた。
 誰も、他の人間は入り込まない。
 和紀だけが日生を翻弄して包み込む…。

 周防の前で誓う。どんな時だって、見守ってくれる人は周防という人だったと思う。
 ここに来て、再会できたことが嬉しかった。
 人を愛する喜びをくれた人に、「ありがとう」と何度も言う。
 和紀を与えてくれたことに、深く感謝する。

 交互に「誓います」と発して、先に温かな唇が呼気を止めそうに塞がれる。
 順番が違う、と驚いたのは牧師だったようだが、それらも温かく微笑まれただけで何も咎められることはなかった。
 命を繋ぐのも、永らえさせるものも相手次第…。
「和紀くん…」
「ひな…。魂がある限り、永遠に愛し続ける…」
 魂は永遠に生き続けるだろう。

 唇を離して牧師から差し出された銀の輪は…。
「あ…」
 思わず日生から声がこぼれたなら、和紀は「安物だから気にしなくていい」と言う。
 どこまで『贅沢』なのだろうか。
 小さな八つのダイヤが埋め込まれた指輪は、男が身につけるには派手すぎるだろう。
 艶消しが施されたプラチナの上に瞬くもの、また和紀の方には、一つの石が輝く。
 八歳だった日生と出会った年の数。
 周防がいる、天の川だ…。
 重ねたら、天(十)に満たない、九つの星。
 満足しないからこそ、あがいて、求めあえる日々がある…。
 不安ももちろんあるけれど…。
 全てを分かりあえない隙間を残したように。
 寄りそう…。

『病める時も 健やかなる時も…』
 何があっても和紀から離れることはない。答えは一つだ。
 そばで笑ってくれた"周防"の笑みに、こみ上がった感情は涙となって溢れた。
 牧師は周防の化身かもしれない。なんでもいい、周防が認めてくれたと思えたから…。

「ありがとう…。出会えてよかった…、愛してくれて嬉しかった…」
 周防だけではない。いったい、何人の人に出会って、愛されたのか…。
 周防も清音も、奈義も…。
 その言葉を日生は何度も繰り返した。
 和紀の腕に包まれる喜び。
 和紀に出会えたこと。周防に愛されたこと。
 白い衣装は、『三隅』の色に染められても何の反論もないと表す。
 いや、染めてもらえることが、嬉しいだろうか…。

『ひなは三隅家の子だよ…』
 和紀だけではなく、周防が望んだ世界。
 何より大事にしたい響きだった。
 
 牧師を見返した時、何かを分かったように頷いてくれた。
 祝福してくれている。
 和紀は自分のものだと、今まで以上の独占欲が日生を包んでくる。
 見知らぬ土地で決して一人にはされない。

 目に見えた父親は、やはり温かく見守る姿勢だ。
「幸せになる…幸せになるからっ」
 周防に伝えるかのように、日生は幾度も呟いた。

 誰よりも和紀を幸せにするから…。
 約束したのだ…。
 最後に周防と約束した。
『和紀を、支えてやってくれ…』

 引き取った時から日生を束縛したかもしれなくても。
 謝られることなど何一つない。
 周防が永遠の眠りにつく直前、語られたその気持ちはきっと誰も知らない。
 最期に望んだのは息子の幸せだった。
 もちろん、日生という"息子"も同じく…。

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この指輪、英人が作ったのでしょぅかね。(ボソボソと言ってみる…)
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病める時も 健やかなる時も 10
2013-11-30-Sat  CATEGORY: 新しい家族
 翌朝、ホテルの本館で朝食…というよりはブランチを食したのは時計の二本の針が頂点を僅かにずらしたころだった。
 月あかりに照らされて、情事に溺れて、いつの間にか朝日が昇っていて…。
 うつらうつらと、眠りを貪った。
 移動で疲れた体があったのだが、それ以上に疲れさせてくれたのは和紀だ。
 現在、和紀は寝不足でもないのか平然と、また、堂々としているが…。
 飛行機内で充分寝たというが、それほど眠れる状況だっただろうか…と振り返ってしまう。
 うるさい音は睡眠妨害ではなかっただろうか…。
 腰回りが痛い日生は、昨夜、自分が強請った結果と思って、何も言わなかった。
 何度も和紀を求めてしまったのだ…。痛くても充実している時間だった。

 食事をとっていると、日生たちがつくテーブル席に、見たことのある民族衣装を着た男が近づいた。
 レストランの給仕係りとはちがうのは、衣装と態度で知られてくる。
 ボーイは全て洋服のはずだ。
「コンニチハ」
 ニコニコと微笑まれて、初対面ではないだけに、こちらからも愛想笑いが浮かぶ。
 最低限の日本語はわかるのだろうか…。そんなことはどうでも良かったけれど。
 和紀と男は親しげに英語で会話を交わしていた。
 時間がどうとか、準備は万全だとか、外国語に困らない日生は聞きかじる。
 何かを企てていることはすぐにでも悟れた。
「和紀くん?」
 男が去ると同時に疑問の声を吐き出せば、「ご飯を食べたら、民族衣装を買いにいこう」と誤魔化された。
 日生があの衣装に気を取られたのを知ったのだろうか。
 きっと滞在中しか身につけないものは、無駄遣いに思われるのに、和紀にしてみたら、雰囲気を愉しむものにしかなっていないようだ。

…2週間分の衣類の一部と思ったなら、まぁ、良いかもしれないけれど…。

 どうせこの地からでることはない、"休暇"だ。
 島内の景勝地を巡るツアーを頼んでも、海で泳いでも、時間はあまり余るほど余っていた。
 ただぽぅっと過ごすだけでもいいと思ってしまう。全ては和紀がいるから。
 その自由時間が、裕福さを浮かばせる。

 ブランチ後、日生はホテル内にある、衣装ショップに連れられた。
 日生が客室係りに目を留めたように、並ぶ衣類に視線が向く。買い求めたい客はいるのか、需要があるというように艶やかな民即衣装が並んでいた。
 何人もの観光客がひきりなしに訪れて購入していく。

 和紀と店員に薦められて、白地に鳥が舞うものを手にした。
 日生も肌の色が白かったが、それとは違う光沢がある。裾で羽を広げるのは白鳥だろうか。袖口の赤い花はハイビスカスだ。
 自然豊かな色彩に目を奪われた。

 和紀は濃紺の青色の生地の服。胸に月のあかりがあって、そこから広がる明るさがグラデーションで表されていた。それこそ、日本版甚平だろうか。しかし、厳かな印象は保たれている。失われない趣き。
 幾何学模様が幾重にも絡んで、何かを纏わせる輝きがあった。
「なんか、変…」
「なにが?」
 華やかであり、目を引かれる誘惑的なものは、和紀が身につけているからだろう。一層幻想的なものが宿る。あまりにも馴染んでいた。
 店員も手放しで喜んでいる始末だ。
 洋装の多い日々からしたら、意外性の高いものになった。見慣れないせいか…。日本の民族衣装に似るところがあり、あまりにもしっくりと似合いすぎているところが、また目を惹く。
 その場で抱き寄せられては、くちづけを贈られて幸せを味わった。
 日生の心臓は、激しく動いて色っぽさを一層漂わせる。ドキドキと心臓が跳ねる。
 和紀の逞しさに見惚れていた日生も、袖口から白い肌を覗かせて、項には昨夜和紀が付けた痕を晒しているのだが…。

 着付けをしてもらって、和紀とホテルの中を横切る。
 和紀の手は日生の腰を掴んでいた。
 すれ違う人が目を輝かせて、拍手と「Congratulations(おめでとう)!!」と言ってくれることが、日生にはわけが分からなかった。
 言葉の意味は理解できても、何故に自分たちに目を留められるのか…。
 だけど、通路を横切り、行きついた先に見えた教会には…。
 いたずらを施したと思われる和紀を見上げれば、今更隠す気はないように肩をすくめて見せるけれど。はっきりとは言わない。
 着せられたこれは、結婚式の衣装なのだな…と、今更ながらに知った。
 だからすれ違う人は、おめでたいと喜んでくれたのか…。
 日本で言うなら、白無垢といったところだろうか。

…本当に結婚式を挙げる気だったんだ…。

 観音開きの扉は、日生が初めて『三隅家』に訪れたときのようだ。あのマンションにあるリビングの入り口も、観音開きだった。
 開かれると同時に、ぱぁっと差し込む太陽光。神々しい光りはスポットライトのようだ。
 目の前のガラス窓の向こう、広がるのは、弧を描く水平線。
 正面に磔にされたキリストが、見守るように掲げられている。
 誰もいない、静かな、空間。
 窓の一部には、ステンドグラスがはめ込まれていて、天井では天使がラッパを吹いている。

 ギシッと最奥から木製のドアが重みのある音を立てて開いた。
 天から注ぐ光りは、今度は彼を照らす。
 黒の衣装と、胸元に飾られるシルバーの十字架。
 随分と年齢が重ねられているとは、目尻の皺と、雰囲気だけで伝わってくる。
 牧師は静かに「結婚式ですか…? ようこそ」とこちらを尋ねた。
 地元の人間に比べたら肌の色素が薄い。それがより、日本人に近いものをうかがわせる。

 目の前に広げられる優しい笑みと、包み込む温かさ、黙って受け入れてくれる雰囲気は、周防だ…。

 言葉を失ったのは、日生だけではない。
「親父…?」
 和紀もそう呟いてしまうほど、良く似た人間が、そこに佇んでいた。

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みこっちゃん、とうとう安住&一葉を抜いたんですね~。
現在5位争いですけれど。
(強いなぁ。ホント、何がいいんだか不思議です)
あ、一位はダントツ和紀日生で二位は千城英人です。
三位はヒサなっちで、四位は何故か(←こっちも分からない)神戸日野でした。
あと、佳史にコメありがとうございました。
『佳史がいいんです』ってどこかのサッカー解説者を思い浮かべてしまった私でした(笑)
夏の『珍客』に続いて、冬の『珍客』が書けるかな。
いっぱい妄想しながら旅行してきますね。
予約投稿しておきますので、とりあえず日生をもてあそんでください。
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病める時も 健やかなる時も 9
2013-11-29-Fri  CATEGORY: 新しい家族
R18 性描写があります。閲覧にはご注意ください。


 大きなベッドがある部屋にも、蝋燭の明かりが幻想的に輝く。赤く、また蒼く燃え上がる炎は胸の内に燻る感情のようだった。愛情と劣情。どうしたって、譲れずに、求めてしまうもの。
 すべてを包み込まれて安堵するかたわらで、炎情は熱く体を燃やすように宿る。決して、失えず、焦がされ続けたいもの。
 日生にとって、和紀だけだろう。
 この身を焦がすほど惹かれて、愛した…。

 バスルームで解された後孔は容易く和紀の指を飲み込む。
 一番感じるところを摩(さす)り、しとどに濡れる可愛らしい茎を口に含まれる。
「あぁぁぁっ」
 喘ぎなのか吐息なのか、声がこぼれてしまうことも、日生は羞恥ではないと教えられていた。
 だから和紀を見つめて、愛おしさを増して、もっと…と求める。
 恥ずかしいところは、大事な人だけが、大事にしてくれるものと、日生は分かっている。
 どんどんと射精感だけが襲ってきて、ブルッと体を震わせたら、太腿に手を当てた和紀も分かるのだろう。
「イッていいよ…」
 口に含まれながら動かされた唇と舌は日生にとって、充分な刺激になった。

 昔から、和紀は日生に我慢などさせたことがないと思う。
 初めて挿入を果たした時、あの時に、最初の"我慢"があったのかもしれない。
 それまで、日生を抱くことがあった和紀も、"こすり合い"で済ませていたから、タイミングが分かりすぎていた。
 一緒に達せることの喜びも味わってきた。
 それだけに、一人だけ追い上げられることが、今の日生には納得がいかない。
「和紀、くん…、や…っ、挿れて…」
 そして、共に満喫しよう…。
 ささやかな願いはきちんと受け止められる。
 日生は自ら受け入れられやすいように足を広げて、腰も少し上げる。
「ひな…」
 従順になりすぎる日生を、どこか咎めたい気持ちが和紀にはあるのかもしれないが、喜ばしいことでもあった。
 こんな時しか、対等になれないと日生は思う。だが、和紀は、充分日生に従わされている自分も感じていた。

…なにもかもが、日生を中心に回っている…。

 それが嫌ではない。それどころか、日生がいなかったら、なにもかもが意味もなく過ごして見送られた日々だっただろう。
 和紀は想いを込めて、繋がれる場所に、硬く熱く、滾る雄を充てた。

 決して日生を傷つけることはない動きは、とても緩慢だ。
 ゆっくりと注がれる熱棒は徐々に日生を浸食していく。
 喰われて嬉しいと思うのも、絶対に和紀だけだと実感する。
 幾度も眼をつけられた人はいたかもしれないが、全てが気持ち悪かった。許せる人が目の前にいる。
…いや、喰っているのだろうか…。
 和紀を決して離さないと、独占欲の塊が、注ぎ込まれる剛直を締め付ける。
「ひな…っ」
 苦しそうに息が吐き出されて、夢中になりすぎる自分を知った。
 和紀に対してだけ、貪欲になれと教えたのも、和紀だ。
 
 素直な行動の表れは、卑しさに嫌われてしまうだろうか…。

 だけど和紀は苦笑を洩らす。
「ヤバい…。こっちが、すぐ、イきそう…」
 何が和紀を焚きつけるのかは分からないが、興奮しているのは自分も同じだった。
 中に入る"和紀"を感じようと、内肉が蠢くのが、和紀にはたまらないらしい。
「ひな…っ」
 咎められるような口調がこぼれたが、本当に嫌がっていないのは、過ごした年月で分かることだった。
 ゆっくりだった注挿が動きを速めていく。
 日生の感じる体内を執拗に攻められて、あっという間に白濁が飛び散った。
「あぁぁっ、あっ、わっ…っく…んっ…」
 同時に、体の奥が熱くなる。
 弛緩する体はどちらも同じ…。
 被さってくる和紀の重みがとても心地よい。

 一頻り、荒い息をどちらも吐き続けた。
「ひな…」
 ようやく落ちついて、静かに呟きながら和紀は手を重ねてくる。貝のようにぎっちりと握りこまれる指。右手と左手。
 左手のそのひとつを、和紀の唇が撫でた。薬指の上だ。
「明日、…ここに…」
「『ここ』…?」
 途切れた言葉の意味を聞こうとしたが、和紀はクスッと笑みを浮かべただけで、それ以上は語らなかった。
 何か思惑があるのだろうな…とは薄々感じたことではあったけれど…。
 疲れた体は深く追求しようとする精神はありそうにない。
 体の中に収まった雄芯が張り詰めたこともある。
「あ…っ、わっくんっ」
「もう少し、付き合って…」
 耳朶に吹きこまれる甘い囁きに、日生が拒むことなどできようか…。
 終わるには『早い…』と思ったのは日生も一緒。

 満点の星空。そこに周防がいるような気がして…。
 ふと、カーテンを開けられた窓の外に視線を流しては、気付いた和紀が「俺がいる」と意識を変えさせる。

…いま、この平和で安らぎがあるのは、周防と和紀のおかげだ…。

 見られても決して恥じることなどないだろう。
 そう、育ててくれた。

「大好き…」
 誰に向けて放たれた言葉か。
 耳にした和紀は、深く、そして濃いくちづけを落としてくれる。
 この休暇の、熱い、始まりだった。

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たしかなこと
原本が見当たらなかったのでこちらで…。
このお話を書くのに、聞きまくった曲でした。
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