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BLの丘
配達依頼 (策略SS)
2009-09-21-Mon  CATEGORY: 策略はどこまでも
今書いているお話(英人)があまりにも暗いことになってきちゃって、反動のように甘いのを書きたかっただけです。本当にくだらないです。一話完了です。


「おーい、那智。そんなとこで寝たら風邪ひくから」
いつものように呆れたような久志の声が響いてきた。
引っ越しを済ませてしばらく経つというのに、部屋の中にはまだいくつかの段ボールが重ねられていた。
リビングにあったソファの上で疲れた身体を休めても、文句の声が降り注いでくる。別に引っ越しの後片付けで疲れていたわけではない。
月末ともなり、那智の仕事は忙しく、先週末の土曜日だって休日出勤を余儀なくされた。そこにきて久志が日曜日休みだったので身体を休める暇もなかった。
真面目に久志の会社に電話をかけ、黒川部長に週末休暇を取り下げてもらおうかと思ったほどだ。
今日はまだ水曜日。週の真ん中だというのに那智の疲労感は週末並みだった。いや、それ以上かもしれない。

「んー…」
仕事を終えて帰宅したのは夜の10時を回っていた。
軽く汗水を流し、いつものように缶ビールを片手にダイニングテーブルに着いた。
すでに帰宅していた久志が夕食の準備も済ませていたが、温かいスープを口にしただけで、固形物を胃に入れる気分にはなれなかった。
残業の日は、中條がたい焼きを買ってきてくれたり、事務員からお菓子をもらったりして夜を過ごしているので、空腹感はそれほどない。そんなことはいつものことで、久志も慣れたようで無理に食べさせようとはしない。
一口二口の食事を終えてソファで寛ぐのだが、疲れた体にアルコールを入れれば酔いもあっという間で、久志と並んでテレビを見ていても気付けは船を漕いでいた。

一人暮らしをしていた時よりもリビングは広くなった。それに昔はリビングの続き間にベッドがあったので、なんとか這うようにしてでもベッドにたどり着こうと言う意思があった。
寝室まで遠くなってしまった現在。…遠くなったと言っても数歩の距離を歩き、扉を二つ越えるだけなのだが…。
それでも自らの力で動く気力もなくしている。

ある時、那智はひらめいた。
何も自分で動かなくったって、ここに運送会社の人間がいるじゃないか…と。
「配達」
目を開けるのも億劫で、ぽつりと呟く。

「それやられると俺、すっげー煽られるんだけど」
呆れたような、けど嬉しそうな久志の声が聞こえる。だからって久志の希望は絶対に聞かない。
平日は何もしないっていう約束だった。久志もそれはわきまえているらしい。
冗談で言っているのだろうか。久志には申し訳ないな…と思うところもあったが、疲れ果てている時に相手はとても無理だ。
もっとも、疲れていなければ自力で動いてるっていうの…。

久志は那智の望んだままにしてくれる。
そっと身体を抱きあげて寝室まで運んでくれる。僅かに歩く距離の中でも、那智の意識は夢の中へと誘われる。
今までよりもずっと大きくなったベッドに下ろされた時に、久志から那智に付き合った返事がある。
「配達完了」


こんな状態でも久志は嬉しかった。
言葉だって『配達』の一言で、配達して、とか、お願いしますとか続くものもない。
だけどこうやって久志を頼ってくれる、甘えてくれる姿が愛おしかった。
那智はいつも強気な態度で甘えることなど滅多になかったから、その変化だけでも充分なくらいだったのだ。
たぶん、もう眠りの世界に入ってしまっただろう那智の額にそっと口付ける。

那智に頼まれたら何だって聞いてあげるよ…と心の中で呟きながら…。

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コメント | | 2009-10-14-Wed 16:33 [編集]
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