学生の夏休みに突入すれば、和紀はほとんど家にいる。
周りの友達がバイトだ、デートだと忙しい中、経済的にも困っていなかった和紀は、ひたすら子育てに励んでいた。
清音が買い物に行くと言い出せば、これまでと同じように付いていこうと日生も出かける支度をする。
和紀は最初、暑い中、また日生を外に出して、何かあったら危険…と思っていたが、家の中にばかりいてもやはりつまらなかった。
「清音さん、お昼ごはん、外で食べちゃおうよ」
「あら、でも私がいては…」
『家族』の中に入り込む気がない清音は遠慮するが、今となっては一緒にいてくれたほうが安心する。
どんなときだって対応が早いのは年の功というものがあるからだった。
日生も目にすれば欲しいものなどあるだろう。
清音はそう簡単に買い与えてくれなさそうだし、自分が甘やかしてあげるしかないと変な義務感にとらわれた。
大きなショッピングモールの中では、見るところもあるし、屋外ではないので比較的涼しい。
食材の買い出しは一番最後と決めて、おもちゃ売り場や服飾雑貨、本屋などをハシゴした。
フードコートなどもあったが、古き良き時代、ともいうか、昔、懐かしいと思わせる一角にあるレストラン街に足を踏み入れたのは、清音がいたからだった。
幾つかのテナントがコンセプトを決めて、『路地裏』を演出している。
ラーメン屋や定食屋、駄菓子屋から暖簾のかかった飲み屋まである。
どちらかといえば『茶色』の印象が強く、タイムスリップしたような空間に日生はきょろきょろとしていた。
「あちらの洋食店、息子さんが跡を継がれたのよ」
「暖簾分けしたって言ってたね。清音さん、常連客だったりして?」
「そんなに裕福ではなかったわ。たまに、自分へのご褒美で立ち寄ったの。ナポリタンが好きでね」
昔話を懐かしそうに語る清音と、相槌をいれる和紀の会話には、口を挟むことができない日生は、迷子にならないようにだけ気を付けて、徐々に足を進めた。
やがて着いた店舗前で、綺麗に盛り付けされた料理がガラスケースの中に並んでいて、目を惹かれた。
誰の手もないのに、フォークの先に丸められたスパゲティ―が空中に浮かんでいたり、クリームソーダーの泡は溢れているのにいつまでたっても、下まで落ちなかった。
「じゃあ、今日はここにしようよ。お墨付きの味ならひなだって大喜びだよ」
和紀は一応確認を取るために日生を覗きこんだが、すでに食品サンプルに釘づけになっている。
「ひな、何が食べたい?ハンバーグ?カレー?…あぁ、プリンはご飯食べたあとだよ」
デザートまで約束されて、何度もウンウンと頷いた。
さすがにお昼時で混雑していて、少しの間だけレジ前の空間で待たされる。
清音がやはり懐かしいものを見る目で、目じりを緩めた。
「あら、懐かしいわ。まだあるのね」
その声に和紀と日生も引き寄せられる。
和紀は理解したようだが、日生はなんのおもちゃだろう…と首を傾げた。
「飾りかな。まだ使えるの?」
和紀が内輪話のように清音に問うと、近くで耳を傾けていた年配の女性店員が微笑んでくれる。
「ご利用になれますよ。まだまだ現役は引退しておりませんので」
「へぇ…」
「あら。現役だなんて、私と一緒みたい♪ 今の世の中は誰もが『携帯電話』を持っていますからね」
そういう清音も、周防達からの連絡があるため、仕事道具の一部になってしまっている、と笑う。
ツッコミどころを忘れた和紀だった。
日生はまた首を傾げた。
「でんわ?」
「そうだよ。あ、ひな、お兄ちゃんの番号にかけてみようか」
暇つぶしに遊びを提案された日生は、家の中でやっているような"もしもしごっこ"を喜んで受け入れる。
もともとは日生に"電話のかけかた"を教えた結果なのだが。
きちんと機械を通して聞こえてくる声は、いつもと少し違うものになるのだとも教えられていた。
「じゃあ、ひな。お兄ちゃんがお金入れてあげるからね」
「おかね、いるの?」
「そう。これはお金を入れないと動かないの」
「ちょきんばこ?」
「ちがうけど…。えーと、人のものを使った時にお礼するのと一緒。この電話はひなのものじゃないでしょ」
「うん…」
日生は『カシャン』というコインが落ちた音の後に、和紀から促されて、「はい、ダイヤルして。まず、"0"だよ」と言われて書いてある数字の上を、小さな指で押した。
その瞬間、日生の動きを、その場で見守っていた全員が一斉に「あっ」と声を上げた。
「うん?」と咄嗟に顔を上げてしまう。
『数字を押すのだ』と教えられていた日生は、間違えたことをしたのかと焦った。
だけど誰も怒ったりしないので、もう一度"0"に指を伸ばした。
「ひな~、ひな~っ。この電話はね。『まわす』んだよ。こうやって、ここのアナに指入れて~」
小さな指に和紀の手がかぶさってくる。
意外と力のいることなのだと気付かされたが、『ジーコロコロコロ』と戻ってくるダイヤルに次の番号を忘れてしまう。
記憶力の良い日生は、それぞれの呼び出し番号くらい暗記していたのだが、見つめている間に先程、いくつを押した(指いれた)のか吹っ飛んでしまったのだ。
何番を押したのか確認するための画面もない。
「わかんない…」
一度は諦めた日生だったが、知ることは良いことだと、その日の帰り、おもちゃ売り場で懐かしのオモチャコーナーに立ち寄っていた。
そして持ち帰った品々に、周防も一緒になって遊ぶ姿を見た時、和紀は、『親父の脳のボケ防止にもいいかも』とか思っていた。
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タイトル、なんか意味ちがうなぁ…と気付いたけど『珍』続きってことで…。
周りの友達がバイトだ、デートだと忙しい中、経済的にも困っていなかった和紀は、ひたすら子育てに励んでいた。
清音が買い物に行くと言い出せば、これまでと同じように付いていこうと日生も出かける支度をする。
和紀は最初、暑い中、また日生を外に出して、何かあったら危険…と思っていたが、家の中にばかりいてもやはりつまらなかった。
「清音さん、お昼ごはん、外で食べちゃおうよ」
「あら、でも私がいては…」
『家族』の中に入り込む気がない清音は遠慮するが、今となっては一緒にいてくれたほうが安心する。
どんなときだって対応が早いのは年の功というものがあるからだった。
日生も目にすれば欲しいものなどあるだろう。
清音はそう簡単に買い与えてくれなさそうだし、自分が甘やかしてあげるしかないと変な義務感にとらわれた。
大きなショッピングモールの中では、見るところもあるし、屋外ではないので比較的涼しい。
食材の買い出しは一番最後と決めて、おもちゃ売り場や服飾雑貨、本屋などをハシゴした。
フードコートなどもあったが、古き良き時代、ともいうか、昔、懐かしいと思わせる一角にあるレストラン街に足を踏み入れたのは、清音がいたからだった。
幾つかのテナントがコンセプトを決めて、『路地裏』を演出している。
ラーメン屋や定食屋、駄菓子屋から暖簾のかかった飲み屋まである。
どちらかといえば『茶色』の印象が強く、タイムスリップしたような空間に日生はきょろきょろとしていた。
「あちらの洋食店、息子さんが跡を継がれたのよ」
「暖簾分けしたって言ってたね。清音さん、常連客だったりして?」
「そんなに裕福ではなかったわ。たまに、自分へのご褒美で立ち寄ったの。ナポリタンが好きでね」
昔話を懐かしそうに語る清音と、相槌をいれる和紀の会話には、口を挟むことができない日生は、迷子にならないようにだけ気を付けて、徐々に足を進めた。
やがて着いた店舗前で、綺麗に盛り付けされた料理がガラスケースの中に並んでいて、目を惹かれた。
誰の手もないのに、フォークの先に丸められたスパゲティ―が空中に浮かんでいたり、クリームソーダーの泡は溢れているのにいつまでたっても、下まで落ちなかった。
「じゃあ、今日はここにしようよ。お墨付きの味ならひなだって大喜びだよ」
和紀は一応確認を取るために日生を覗きこんだが、すでに食品サンプルに釘づけになっている。
「ひな、何が食べたい?ハンバーグ?カレー?…あぁ、プリンはご飯食べたあとだよ」
デザートまで約束されて、何度もウンウンと頷いた。
さすがにお昼時で混雑していて、少しの間だけレジ前の空間で待たされる。
清音がやはり懐かしいものを見る目で、目じりを緩めた。
「あら、懐かしいわ。まだあるのね」
その声に和紀と日生も引き寄せられる。
和紀は理解したようだが、日生はなんのおもちゃだろう…と首を傾げた。
「飾りかな。まだ使えるの?」
和紀が内輪話のように清音に問うと、近くで耳を傾けていた年配の女性店員が微笑んでくれる。
「ご利用になれますよ。まだまだ現役は引退しておりませんので」
「へぇ…」
「あら。現役だなんて、私と一緒みたい♪ 今の世の中は誰もが『携帯電話』を持っていますからね」
そういう清音も、周防達からの連絡があるため、仕事道具の一部になってしまっている、と笑う。
ツッコミどころを忘れた和紀だった。
日生はまた首を傾げた。
「でんわ?」
「そうだよ。あ、ひな、お兄ちゃんの番号にかけてみようか」
暇つぶしに遊びを提案された日生は、家の中でやっているような"もしもしごっこ"を喜んで受け入れる。
もともとは日生に"電話のかけかた"を教えた結果なのだが。
きちんと機械を通して聞こえてくる声は、いつもと少し違うものになるのだとも教えられていた。
「じゃあ、ひな。お兄ちゃんがお金入れてあげるからね」
「おかね、いるの?」
「そう。これはお金を入れないと動かないの」
「ちょきんばこ?」
「ちがうけど…。えーと、人のものを使った時にお礼するのと一緒。この電話はひなのものじゃないでしょ」
「うん…」
日生は『カシャン』というコインが落ちた音の後に、和紀から促されて、「はい、ダイヤルして。まず、"0"だよ」と言われて書いてある数字の上を、小さな指で押した。
その瞬間、日生の動きを、その場で見守っていた全員が一斉に「あっ」と声を上げた。
「うん?」と咄嗟に顔を上げてしまう。
『数字を押すのだ』と教えられていた日生は、間違えたことをしたのかと焦った。
だけど誰も怒ったりしないので、もう一度"0"に指を伸ばした。
「ひな~、ひな~っ。この電話はね。『まわす』んだよ。こうやって、ここのアナに指入れて~」
小さな指に和紀の手がかぶさってくる。
意外と力のいることなのだと気付かされたが、『ジーコロコロコロ』と戻ってくるダイヤルに次の番号を忘れてしまう。
記憶力の良い日生は、それぞれの呼び出し番号くらい暗記していたのだが、見つめている間に先程、いくつを押した(指いれた)のか吹っ飛んでしまったのだ。
何番を押したのか確認するための画面もない。
「わかんない…」
一度は諦めた日生だったが、知ることは良いことだと、その日の帰り、おもちゃ売り場で懐かしのオモチャコーナーに立ち寄っていた。
そして持ち帰った品々に、周防も一緒になって遊ぶ姿を見た時、和紀は、『親父の脳のボケ防止にもいいかも』とか思っていた。
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タイトル、なんか意味ちがうなぁ…と気付いたけど『珍』続きってことで…。
指で軽く触れるだけで繋がるプッシュ式と違って ダイヤル式は、
ヒナには ちょっと難しかったかな?
で、何かあった時の為に慣れさせないと、思って 買っちゃったんだろうなぁ(笑)
これも お勉強の一環だもんね♪(⌒^⌒)b うん
ダイヤル式の電話と言えば 田舎の祖母の家にありましたね。
懐かしいわぁ~...( = =) トオイメ
ヒナには ちょっと難しかったかな?
で、何かあった時の為に慣れさせないと、思って 買っちゃったんだろうなぁ(笑)
これも お勉強の一環だもんね♪(⌒^⌒)b うん
ダイヤル式の電話と言えば 田舎の祖母の家にありましたね。
懐かしいわぁ~...( = =) トオイメ
けいったんさま こんにちは~
日生にはまだ難しかったかも~。
けど、少しでも体験しておくとはいいことです。
お勉強は大事(`・ω・´)ノ
うちは昔 有線という、電話とは違う物体がありました。
地区内の情報網?!
(黒電話が二つならんでいるので、よく間違えました)
父が戦中、戦後の時代を過ごした人だからかもしれませんが
とにかく物は大事にされましたね。
その名残か…。
今でも実家には、本体から線がびびーっと伸びた、通称「リモコン」完備のエアコンがあります。
…いや、稼働するだけでエコじゃないよね…。
どんだけ電力つかっているんだろう…怖いので調べない。
でも毎年フィルターの掃除していることに頭が下がります。
(我が家は10年掃除不要という言葉に惹かれて買った…)
【懐かし】シリーズ???
腐部隊のために、そんな懐かし企画、つくらないわよ~っΣ(T▽T;)
(ここのところBGMも♪なかないで~♪とか♪毎日×2僕らは鉄板の とかだし…)
だってきえちんが知らない世界だもの(←← ヤリ攻撃)
情報収集に行ってまいりますε=┏(; ̄▽ ̄)┛
みんな、またね~ (^^)v♪
日生にはまだ難しかったかも~。
けど、少しでも体験しておくとはいいことです。
お勉強は大事(`・ω・´)ノ
うちは昔 有線という、電話とは違う物体がありました。
地区内の情報網?!
(黒電話が二つならんでいるので、よく間違えました)
父が戦中、戦後の時代を過ごした人だからかもしれませんが
とにかく物は大事にされましたね。
その名残か…。
今でも実家には、本体から線がびびーっと伸びた、通称「リモコン」完備のエアコンがあります。
…いや、稼働するだけでエコじゃないよね…。
どんだけ電力つかっているんだろう…怖いので調べない。
でも毎年フィルターの掃除していることに頭が下がります。
(我が家は10年掃除不要という言葉に惹かれて買った…)
【懐かし】シリーズ???
腐部隊のために、そんな懐かし企画、つくらないわよ~っΣ(T▽T;)
(ここのところBGMも♪なかないで~♪とか♪毎日×2僕らは鉄板の とかだし…)
だってきえちんが知らない世界だもの(←← ヤリ攻撃)
情報収集に行ってまいりますε=┏(; ̄▽ ̄)┛
みんな、またね~ (^^)v♪
我が家には繋がってない黒電話ありますよ~♪
しかも汚れないようにラップでぐるぐる巻きにされてます(笑)
ほぼ玄関のオブジェです。
ひなちゃんは知らないよね~。
そうそう個展会場入り口にひーちゃん呼び寄せ用にプリン置いて待ってるんだけど~(*^^*)
きえちんまだ~?
しかも汚れないようにラップでぐるぐる巻きにされてます(笑)
ほぼ玄関のオブジェです。
ひなちゃんは知らないよね~。
そうそう個展会場入り口にひーちゃん呼び寄せ用にプリン置いて待ってるんだけど~(*^^*)
きえちんまだ~?
☎~♪♪~♪♪
腐源カフェの電話が鳴る
腐メイド「珍しいわ、ここの電話が鳴るなんて …ハイ、モシモシ」
隊長『もしもし、俺だ』
腐メイド「ハイ、ですからどちら様でしょう?」
隊長『だからオレだっ。最近隊員が増えて資金が足りねーンだよ(>_<)』
腐メイド「…なにかしら、最近流行りの アレかしら…」
(通りすぎる掃除腐を呼びとめる)
掃除腐「どうせなら受け渡し場所 ここにしてもらいましょう」
腐メイド「そうね。いくらでも追加資金、用意できるし」
腐カメラマン「ヾ(  ̄▽)ゞホホホ 私のピカイチな腕前で激写よぉ」
腐カメラマン2号「ピンク電話にかけてくる人もレアな人ですね~」
きえ「……隊長の生写真って金になるのかなぁ……」(←追加資金準備中)
なんでこんなもの書いているかって?
暇だったから…(>_<)
腐源カフェの電話が鳴る
腐メイド「珍しいわ、ここの電話が鳴るなんて …ハイ、モシモシ」
隊長『もしもし、俺だ』
腐メイド「ハイ、ですからどちら様でしょう?」
隊長『だからオレだっ。最近隊員が増えて資金が足りねーンだよ(>_<)』
腐メイド「…なにかしら、最近流行りの アレかしら…」
(通りすぎる掃除腐を呼びとめる)
掃除腐「どうせなら受け渡し場所 ここにしてもらいましょう」
腐メイド「そうね。いくらでも追加資金、用意できるし」
腐カメラマン「ヾ(  ̄▽)ゞホホホ 私のピカイチな腕前で激写よぉ」
腐カメラマン2号「ピンク電話にかけてくる人もレアな人ですね~」
きえ「……隊長の生写真って金になるのかなぁ……」(←追加資金準備中)
なんでこんなもの書いているかって?
暇だったから…(>_<)
け「隊長か…懐かしいわ…...( = =) トオイメ」
ち「隊長を いかに 凛々しく撮るか…σ( ̄、 ̄*)ん~~ 」
す「そ・それは、…非常に 難しいと 思います(`・ω・´)ノ ァィ」
さ「今頃 ヒナちゃんは、プリンを食べてるかしら♪(〃▽〃)。o ○」
ni「今度は どんなコスプレでしょうか?o(@^◇^@)oワクワク」
と、てんでバラバラな事を思いながらも いざという時には
見事なチームワークで活躍する 腐レンジャーであったとさ。。。
け「…、この電話 何か 変なんだよねー( - ゛-) ジッー」
き「∑( ̄◇ ̄:)エッ!? 盗聴 ばれた!?」
ち「隊長を いかに 凛々しく撮るか…σ( ̄、 ̄*)ん~~ 」
す「そ・それは、…非常に 難しいと 思います(`・ω・´)ノ ァィ」
さ「今頃 ヒナちゃんは、プリンを食べてるかしら♪(〃▽〃)。o ○」
ni「今度は どんなコスプレでしょうか?o(@^◇^@)oワクワク」
と、てんでバラバラな事を思いながらも いざという時には
見事なチームワークで活躍する 腐レンジャーであったとさ。。。
け「…、この電話 何か 変なんだよねー( - ゛-) ジッー」
き「∑( ̄◇ ̄:)エッ!? 盗聴 ばれた!?」
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