2ntブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
意外な展開 1
2013-07-24-Wed  CATEGORY: 珍客
今日の千城の帰りは早い。
ただでさえ、野崎が怪我をしたとかで不在になり、スケジュールは大幅に変更されたと英人は耳にしていた。
会社内の詳細に首は突っ込まないが、生活に関わることはきちんと聞いている。
千城は「野崎がいないと仕事にならない」…とどこか言い訳を作って『仕事』そのものを敬遠しているように思えるが…。
早く帰ってきてくれるなら、まぁいいか、とされるがままに流されていた。
この日、英人が千城を迎えたのはベッドの中だった。

「おかえり」
「身体は大丈夫か?」
ベッドルームに足を踏み入れてきた千城は、着衣の一つも崩すことなく、英人が横になるベッドサイドに腰をおろした。
数日前、神戸の撮影に付き添って飛び立つはずが、『夏バテ』らしい症状を訴えた英人に、大事をとって休ませたのは千城である。
何がどうあろうが、パスポートを取り上げられては渡航はできない。
たった数日の行程に、今以上の身体を酷使するようなことはしなくていいと遠ざけられた。
神戸に向かって「たった一人の従業員の体調不良で会社全体のスケジュールを変えるバカがいるか」と、何やら説いていた。
神戸に何一つ言わせない発言で、『予定通り』ことを進めさせる。
神戸が日本にいないのであれば、英人も出社する必要がない、とはもちろん千城の勝手な解釈で言い分である。
ちょうどある会社の社長と昼食を共にする機会があり、英人がこちらにいるのなら…と、英人との個展を紹介する意味も含めてホテルのレストランで会食を組んだ席があったのだが、肝心の英人が出向けないのでは…と予定を変更してもらった。
次の機会に英人が同席できるかどうかの確約はできない。
個展に案内されたことの喜びと、英人に会えることを楽しみにしていた相手には、頭を下げるしかなかった。
たとえそれが社交辞令の表現だったとしても、快い返事を聞かせれば耳に残る。
突然のキャンセルに、用意した席を無駄にするのもどうかと、千城は相手側に「良ければお好きな方と利用されてください」とゆずった。
千城にとっては、雑誌やテレビなど世間で騒がれたとしても『行き慣れたレストラン』のひとつでしかなかった。
『子供を連れても大丈夫か?』と前もって尋ねられたのは、どちらの顔にも泥を塗らないための事前の配慮だろう。
昨今、騒がしく過ごす年代に制限を設ける施設も少なくない。
誰でも連れていけばいい、と豪語したのは千城である。
千城の力をもっては、『個室』を用意させることくらい、朝飯前のできごとである。
それも結局は「リザーブしていただいた席を無駄にした」とわざわざ連絡をくれたくらいで、変わりに「宿泊をひとつ頼みたい」とそのホテルを利用したい旨を伝えてくる。
どのみち、自分たちが行かなければ空いてしまう部屋はある。
その一件はホテル側に任せることにして、千城は自宅に帰宅したのだ。

英人はベッドから起きあがろうとして、千城の逞しい腕に止められた。
「無理するな」
「無理じゃないよ~っ」
千城は何かにつけて、英人の行動を制限する動きを見せる。
気にかけられているのだと思えて、またそれが嫌でないのだから困るところだった。
身をかがめられて口づけを落とされて…。
帰宅後のいつものスキンシップが繰り返されれば、横になったままの英人の身体が、放ったらかしにされていた分、疼くような気がしてしまった。
千城しか感じさせられない…。千城しか、英人を感じさせることができないのだから、どんな動きでも反応してしまうのは仕方ない、と開き直りたい。
そうは言っても、英人が家にいるのをいいことに、夜の営みは普段よりしつこいのだと実感している。
またそれも嫌とは思えず応えてしまうのだから、こちらも困りものだ。
繰り返される啄ばむくちづけをどうにかいなしながら、こぼれる吐息の中から、"今日の出来事"を、気にかけているふりをして尋ねてみる。
変更に変更が重ねられた会食に、相手の不機嫌は買わなかったのだろうか。
一緒に説明を交えながら見学したいと言ってくれた相手がいる。
今更『榛名』の名に、誰もが目を瞑ってしまう現実は知らされていたが、『個展への評価』も加わってくれば他人事にできない。
「今日…の人は…、不都合、なかったの…?」
突然発される、この場にそぐわない人物名は千城の機嫌を損ねるには充分だった。
意識を反られるにも役立ちはしたが…。
顔を上げた千城は、束の間黙って英人の瞳を覗きこんでくる。
この、何もかもを見透かしてしまう視線は、幾度重ねたところで慣れるものではなかった。
伝達の良さに助けられ、でも躊躇も読みとられる。
今、英人が口にした"出来事"も、このままベッドインすることを恐れる英人の心情を晒していた。
展開に抵抗したのではなく、早すぎる自分の反応を誤魔化したかった。
要点だけを簡潔にまとめて伝えてくるのは千城の性格でもある。
「個展にはまた日を改めて…とおっしゃっていたぞ。英人の作品を以前から気に入ってくれていたらしい。今週いっぱいという期間にも気を焦らせていたようだが、近々また別の形で、今度はもっと広いギャラリーを使うからと、安心させておいた」
場所だけが変わって、展示される作品が同じ…とは良くある話だ。
『期間限定』に気を揉めてくれたのかと聞かされてはこそばゆく顔が火照る。
「広い…?…そんなに描けないよ…。神戸さんてば…」
描きあげた作品のほとんどは神戸に預けてしまっている。
暗黙の了解で『好きにしていい』と伝えているようなもので、展示スペースも一任したままだ。
ギャラリーを使用するとなれば、かなり大がかりなイベントになるのは、容易く想像できる。
当然、現在ある作品はそれだけの数には及ばないことも…。

さりげなく反らしたつもりなのに、新しく伝えられた内容には不満もこぼれる。
『絵画』のためだけに時間を費やす気はなかったからだ。贅沢な悩みだとは充分承知しているが。
また千城と神戸の間で勝手に話が進められていることも納得がいかなかった。
いつだってそうやって、事後報告で、口を出す隙すら与えられていない。
頭では充分なほど分かっている。理解している。納得もしている。
素人が口を出すより、神戸のような玄人に任せた方がいいことも…。

続いた千城の言葉には、煽られかかった身体も冷水がかけられた気分にさせられる。
「コラボレーションさせる気なんだろう。湯沢さんも『カメラマン』としての発表は長年、していないからな」

湯沢雄吾(ゆざわ ゆうご)とはアメリカのニューヨークで暮らす実の父である。
新聞記者となった、血のつながりのある父は、もともと写真を売って生計を立てる『カメラマン』だった。
自分たちと生き別れになってから、それまでの生活が一変したとは、改めて口にはされないが悟ることくらいできる。
好きな仕事すら、捨てたのだ…。

千城や神戸の考えることが全く分からず、瞠目しては、瞬きすら忘れた。
「コラボ…???」
掠れた声に、「英人が嫌ならやめさせるが」と淡々と語られる。千城にとっては毎日の出来事のひとつでしかないのだと気付かされる。

公私混同するな、とは誰から教えられたことだろう…。

お互いの生活があるから、決して『親子』とは紹介されないはずだ。
調べ上げれば気付く人間いるだろうが、そんなものは『榛名』の力で容易く潰せる。
千城と神戸が何を求めたのか…。

英人は、いつしか共に回ったことのある『近所』を思い出した。
たった一コマの風景すら、特別なものに変えてしまう『力』が滾っていた。

スカイツリー
さえ様にいただいた画像を少し直しました。お持ち帰りなどはご遠慮ください。

一瞬にして瞼に焼きつくもの…。
それは優しい思い出であり、戦う炎に化ける。
どこかの世の中で『親のあとを継ぐ』と職人根性に火を焚きつけられるものもあるだろう。

『同じ』空間に在(た)てるのだろうか。立ってもいいのだろうか…。
感性はそれぞれ異なる。
自分が持つ印象は、『足元にも及ばない』 それだけだった。

「コラボ…だなんてね…」
小さなつぶやきにかぶさってきた声にとても安心していた。

誰の目にかなったのか…。
その答えはベッドの上で聞かれることになる。

見る人によって作品は変わる、とは幾度も神戸から言われた。
『榛名』の名を借りて個展を開くことの妬ましさも、そっと伝えられる。
全てが良いもの…と判断するには早いはずなのに。

『おまえは何心配もすることはない。…いつだって護ってやる』

鼓膜の奥に響く声は、何よりの安堵。
「ちしろ…」
応えてしまう声は、もう止められない。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ 
ポチっとしていただけると嬉しいです(〃▽〃)

いろーんな話が、これでもかと詰め込まれた気がしていますm(__)m
なんでもこじつけるきえちんですから(´∀`;)

ここで終わりにしてもいいのですが…。
一話完結とかあり得ないよね???
関連記事
トラックバック0 コメント3
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
わ~い♪
コメントさえ | URL | 2013-07-24-Wed 02:16 [編集]
ひーちゃん久しぶり~(*^^*)
夏バテ!?大変お見舞いにいかないと\(゜ロ\)(/ロ゜)/
パパとコラボなんてひーちゃんよかったね~(/_・、)
続き楽しみにしてま~す♪
朝から 蒸し暑いって~~!。゚(゚´ω`゚)゚。ピー
コメントけいったん | URL | 2013-07-24-Wed 13:59 [編集]
ヒナに続いて 英人も ダウンしたんだぁ
で、廻り回って 佳史と望が 素敵な時間を過ごせたんだね♪

Σ(・д・o)ハッ! 千城と会ったのは 周防さま!?
あぁ その場に居たかった!((“o(>ω<)o”))クヤシイー!!

でも 今度の 英人とパパのコラボ展には 絶対に観に行くから いいもんねー(。・`ε´・。)ムゥ
それとも 腐レンジャーとして出動するかもね♪('0ノ'*)オーホホッ
みなさま こんばんは~
コメントたつみきえ | URL | 2013-07-24-Wed 20:48 [編集]
また今回もまとめレス、失礼いたします。

さえちゃん、お待たせしました~。
いや~ぁ、個展の入り口付近で プリン持ってウロウロしている人がいるのは気付いていたんですけれどね~。
入口の『飲食物の持ち込みはご遠慮ください』の張り紙に、中に入れなかったのね(笑)
しっかり栄養つけて、英人も夏バテ解消されることでしょう。


けいったんさま こっちも蒸していました。
気温が上がらなかったから過ごしやすくはあったけれど…。

そうなんです~。周防と千城 何やら約束していたみたいですね。
誰かの不幸が別の人の幸せを運んでくるのです(←コラコラ)
どこまでも裏で話をくっつけていく私の脳内に、皆さんがついてきてくれれば嬉しいですが。
コラボ展では 腐レンジャーともコラボする???


拍手コメk様

> 久々のゴールデンカプ、嬉しかったですよ。もちろんお話は続きますよね、…ね?(笑

他の面子がSSらしい長さがあっただけに、このCPをここでは終わらせられませんよね(笑)
ゴールデン(爆) …そうかぁ、なんか納得できるネーミングだ。
楽しみにしてくれて嬉しいです。

あと にっちん。
あっちにコメありがとうです。
あんな僻地までお疲れさまでした。
また暇つぶしになにか飾りに行きますね。
そうそう、クイズの答え(?)3番目はきえちんでした~。
諦めずに にっちんもいっぱい撮ってくださいね。

みなさま コメントありがとうございました~。
トラックバック
TB*URL
<< 2024/03 >>
S M T W T F S
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -


Copyright © 2024 BLの丘. all rights reserved.