2ntブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
意外な展開 3
2013-07-26-Fri  CATEGORY: 珍客
バスルームで一頻り喘いだあと、千城に抱きあげられてベッドルームへと戻った。
特注で作られた広々としたベッドは、英人の重みを受けて音もなく沈む。
千城がベッドサイドに置かれた腰の高さほどの冷蔵庫の中からミネラルウォーターのボトルを取り出し、グラスも用意せずに英人の脇に座った。
羽織ったバスローブの胸元は緩く開き、厚みのある筋肉をのぞかせている。
この後、口移しで飲まされる飲料水の存在に、少しばかり大きな吐息がこぼれていた。
これが一旦の"休憩"になるのか"終了"になるのかは、千城への対応次第だろう。
激しく抱かれている時だけでなく、静かに抱きしめられているだけでも安堵し、満足を得られる落ちつきがある。

重ね合わされる唇の端からこぼれた液体を気に留めることなく、英人は欲求のまま水分を喉奥に流し込んだ。
カラカラに乾いた体は千城の愛情と共に沁み渡って潤していく。
酸素を取り入れようと息をつく間に、千城は流れた後を追って舌を這わせる。
顔を上げてはまた水を飲ませてくれる。
そんなことを幾度繰り返しただろうか。

「千城…、ごはんは?」
帰宅するなり機嫌を損ねて、過ごすべき時間の優先順位が変わったことを振り返る。
千城の態度は子供がすねたようなもので、英人を非難したつもりでも、結局は従順な英人に満足してくれているのが雰囲気から伝わってくる
わざと口実にした不機嫌さも、すっかりなりを潜め消え去っている。
食欲よりも性欲が勝ってしまう自分たちの暮らしぶりだが、栄養価に対して口うるさいのも千城だった。
ただでさえ体調が良くない状況下で、空腹のまま放っておくはずがない。
一戦交えたくらいでは体力の消耗もまだまだ…のはずなのだが、そこは『バスルーム』という場所が疲労速度を速めている。
できることなら、このまままったりとした時間を過ごして、翌朝くらいはベッドの中以外の場所から千城を送り出してやりたい思いが湧いていた。
食後に激しい運動は、消化にも良くないだろうと、うんちくを述べたくなった。
きっと何かと言葉を並べられてはぐらかされるのだろうが…。

「あぁ、まだだな。用意でもしてくるか」
用意といっても常に届けられるこの家では、ダイニングテーブルに並べるだけで済む。
ベッドまで運ばれることもあるが、『用意をする』という言葉には、激情に流されて過ごす一夜でないのだと教えられているようだった。
しかし英人のささやかな願いは後に霧と化す。
神戸が帰ってくるまで、あと数日。
翌日の朝、英人と千城は同じ会話を繰り返していた。

「だるい…」
「『夏バテ』がまだ続いているみたいだな。体調が悪い時は無理をしないことだ。横になっていろ」
ベッドに寝転がったままの英人の裸体にシーツをかけ直し、きちんと身支度を整えた千城が出社前の挨拶のくちづけを落としに来る。
ビシッと撫でつけられた髪型と鋭い視線は、威圧感満載だが、英人に向けられる眼差しの柔らかさに見惚れる。
英人だけが知る千城の内面を見るようで、こんな状況下にありながら、英人も何度も唇の感触を求めて催促してしまうのだった。


神戸が帰国する日は、さすがに出社していないとマズイだろう、と千城が出社する時の車に乗りこんだ。
それでもすでに予定した出社時間を大幅に遅れていたのだが。
クライアントの関係などで直行直帰する人間も多く、気にかけられることが少ないところは救いだった。
全ての社員のタイムスケジュールをソラで把握している人など神戸を除けばいないといえるほどである。
オフィス内は、それぞれに受け持っている仕事の話だったり、最近の話題入りだとか、多種多様の情報が溢れていた。
そんな中で一際目立っていたのが、『帰国組』の連中だった。
一番奥にいた神戸が目敏く、出入りする人の中から英人を見つけ出す。
銀糸のストライプが縫いこまれたブルーのワイシャツ姿の神戸は、涼しげであり、また華やかだった。
違ったジャンルで千城と張り合える…と容姿の良さを内心で褒めていた。
堅苦しい恰好を要求される職場ではないため、英人も肌が透けない綿のシャツとGパンだ。
ニヤッと口角をあげた神戸に、一瞬冷たいものが背中を流れた気分にさせられた。
「英人君、具合は平気なの?『今日』に合わせたように出社できるようになるなんて奇遇だねぇ」
チクリチクリ刺さってくる嫌味が鋭利な刃物のようだ。
生活事情など、今更口にしなくても知られた人物に、言い訳の一つも出てくることはない。
千城がわざと作りだした英人の『体調不良』も、どんな理由があってなのかまで理解した男は、諦めたように首をすくめて見せた。
お互いが納得の上で損得勘定をし、"取引"されていたのだ。
嫌味は、もう少し英人から千城を説得させられるくらいの言動をとってほしい願いの表れだった。
しかし、それはまた、現在ある関係性の均衡が崩れることになっていくので、夢見ている程度である。
千城の無茶ぶりも承知していたから、「ごめんなさい…」と真っ先に謝ってしまう癖がついてしまった。
フフフと笑った神戸は周りの人への配慮もあって、それ以上つっ込んでくることもなく、「お土産、食べてよ」と読めない言語で書かれたチョコレート菓子の包みを渡してくれた。
別段、仕事に影響がでたわけでもなく、いちいち構っていられるほど暇でもない。
英人は菓子を受け取りながら、すっかり話題を変えた神戸に、「そうそう。あとでちょっと話したいことがあるんだ」と早い段階での『自由時間』を要求されて瞠目した。
明らかにビジネスの話ではないと、察知することができた。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ 
ポチっとしていただけると嬉しいです(〃▽〃)
関連記事
トラックバック0 コメント2
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
☀⌒晴れ⌒☀‥汗 ━(il`・ω・´;) ━タラァァ~ン
コメントけいったん | URL | 2013-07-26-Fri 08:18 [編集]
ほんと 今日も 暑いですね。
太陽が 2つあるんじゃないの?と感じるくらい(;´д`)ノはうぅ

確か 英人のお休みは、夏バテだったはずですが、
それに 便乗?しての お休み延長させたのは 千城の濃い愛情表現のせいですよね~(@´゚艸`)ウフウフ

帰国したばかりの神戸に 見抜かれたのは、
英人から漂う甘い空気からか…
千城の すこぶるご機嫌な様子からから…

まぁ 何はともあれ 皆が 幸せそうなのが いいわぁ~
゚+.☆ヾ(◎´∀`*)ノндρρyヾ(*´∀`◎)ノ☆.+゚
けいったんさま おはようです
コメントたつみきえ | URL | 2013-07-26-Fri 08:41 [編集]
ご一緒したみたい~♪

こちらは雨模様です。くもり…かな。
でもムシムシしてて過ごしにくーいっ!!!
太陽を待っているの… ジーッ (@ ̄_ ̄) ・・・・・凹.・゜゜・△センタクモノ

千城ってば故意的に"夏バテ"にしたようですね(笑)
まったく困った恋人サンだわぁ。
神戸もいない 野崎もいない 束の間の幸せ時間をもらった千城だったようで~。
(え?なんで休みにしなかった? だって一応 他の人も働いているし…汗)

さぁ、こっちはどんな幸せな話が待っていることでしょう (←今から考えるきえちん…)

けいったんさま 夏バテ起こさないように気を付けてね~(^^)/~~~
コメントありがとうございました。

トラックバック
TB*URL
<< 2024/04 >>
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -


Copyright © 2024 BLの丘. all rights reserved.