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BLの丘
病んでも
2013-12-10-Tue  CATEGORY: コラボレーション
「年末の旅行に行こうよ」
 そういったのは世羅だ。
 べつに畏まる必要もなかった。
 昔から慣れた人だから、どうしたって普段通り。
 年末の金額が高い時なんだけれどな。
 美星が心配しても、そこは三良坂の家が持ってくれるところがあるのだろう。
 司法界の父親はどんな時だって配慮してくれた。
 まるで、息子の不甲斐なさを読んでくれたように。

 自分だって支払えると思ったのはいつだったか。

 大学の時から、司法界の父は何かと世話を焼いてくれた。
 自分がここまでこれたのは、あの父のおかげだ。
 そんな環境を美星は羨ましく思う。
 世羅にとっては『普通』のことなのだろう。
「少しは感謝しろよ」
 美星が言って、ようやく気付く始末かもしれない。
 遅くても…。
「美星がいてくれたらいい」
 そう言われたこともあった。

 結婚したって、結局彼女と合わなくて別れた。
 別れた時にホッとした。
 別れた情けなさに愚痴をこぼしたって、「おまえがいるからいい」と言われて喜んで…。
 世羅はいつだって、美星を見てくれていた。
 あの、転校してきた時から…。

「すきだ」って気付いたのはいつだろう。
 一緒に住める時、心なしか喜んだ。
 決して伝えはしないけれど。

 彼女と別れてくれて良かったと言ったら失礼だろうか。
 彼女よりも幸せにしてあげると言ったら、間違いだろうか。

「好きだ」と胸の奥から呟く。
 世羅が父に薦められたように、美星も見合いはあったが、断ったのは好きな人がいたからだろう。
 美星は一度も答えなかったけれど。それは、ある意味、世羅を満足させたのだろうか。

 和紀には感謝している。
 誘われなければ、同居はなかった。
 共に暮らせる空間。
 体を重ねたら、すぐにでも合わさった。
 喜びが快感を生む。

「世羅…」
 初めて呼んだ言葉かも。
「美星」
 初めて呼ばれた言葉かも。
「好きだ…」
 もう一度言ってみた。
 聞こえたようだ。
 体の奥に熱いものが注ぎこまれる。
「世羅…」
 美星は美しい声を響かせていた。

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