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BLの丘
策略はどこまでも 17
2009-07-08-Wed  CATEGORY: 策略はどこまでも
何がなんだか分からなかった。
いきなり引き寄せられた那智の体が水の膜を作る高柳の肌に触れた。勢い余った額が、厚くて硬い筋肉の胸板に当たる。
力強い太い腕が那智の細い腰をグルリと抱え込んだ。
肩口に落とされた高柳の顔は見えない。
「ねえ那智、エッチしよう」

「はあぁぁっ?!」
突然の行動と想像もし得なかった言葉に目を剝いた。那智の頭では高柳の動きが何を意味しているのか、理解するのに時間がかかっていた。
「エッチしたい」
背中に回った腕に、さらに力強く引き寄せられると、腹に男の欲望が当たった。それが何を望むものなのかは容易に判断できる。
「な、な、な…何、…え?…えぇ?!」

軽くパニックに陥って、それでも状況を整理しようとするのだが、男女間の経験だってあまりなかった那智には到底余裕を取り戻すことなどできなかった。
顔を上げた高柳が、那智の尖った顎の先に指を添えると、白い首を大きく反らせた。見上げた格好の那智の瞳に、悲しげな高柳の視線が飛び込んでくる。
見たことのある悲哀を含んだ瞳だった。
那智の心の中で、パンドラの箱の鍵が開くような気がした。
「俺のこと、嫌い?」
低い声が降ってくる。湿ったバスルームの中で、高柳の声にはさらに妖しさが増したように聞こえる。
この質問はどういう意味で聞いているんだろうか…。友情…?それとも……?

「キスしてもいい?」
無言のままの那智に再び声が聞こえた。返事をする間もなく、那智の柔らかくて紅くぷっくりとした唇が高柳のものと重なる。
高柳の薄い唇の間から肉厚の舌が飛び出して、呆然とした那智の歯列を割った。
もはや声など出せる状態ではなかった。高柳の舌は逃げようとする那智を追った。舌を絡めとられ、歯列や頬肉まで全てを蹂躙される。こんなに激しいくちづけは自分でしたこともなかったし、もちろんされたこともなかった。
じんわりと高柳の熱を移されたように、口内がジンジンと疼いて痺れてくる。
百戦錬磨と言われたほどの高柳の相手をするには、自分は幼稚過ぎる気がした。高柳にとって相手にする者はどうやってきめられるのだろう…。

「…んふっ…」
抗う気力も失った頃、那智の膝がカクンと崩れると同時に、ため息のような吐息が漏れた。
自分で上げた声に、那智は驚いていた。何もかもが奪われるようで怖かった。
パンドラの箱が開いてしまったことを、この時那智は感じた。
呼吸も整わないほどに荒い息を繰り返す那智は、こぼれ落ちそうな涙を見られないように、そっと高柳の胸元に顔をうずめた。



大学に入ってしばらくしてから、高柳久志の存在を知った。周りにいた女子がやたらと褒め称えているので、嫌でも耳に入ってくる名前だった。
講義を受けているうちに、岩村卓也と仲良くなった。彼は誰とでも分け隔てなく親しくなっていたし、気さくな性格は那智とも合った。
彼の親しい友人の中に高柳がいて、最初那智は意外に思ったものだ。どちらかといえば品行方正といったタイプの岩村が、遊び歩いているような高柳と親しいことが意外だった。だが高校の時の同級生だと聞き、また那智が思っているほど高柳は遊び歩いてもいなかった。

高柳は入学当時、高校から続けていたラグビー部に入部していた。190センチを越える長身とその運動量で鍛えられた体つき、おまけに顔までいいときたら女子が放っておくはずもなく、彼の周りを勝手に女子が囲んでいただけらしい。

そのうちに、岩村が「サークルの先輩に頼まれたから人数合わせで合コンに参加してほしい」と言ってきた。特に予定もなかったし、色々なつながりを持つ一つの手段として、那智は参加を快諾した。
その席には高柳もいた。女子のほとんどの視線を集めていたため、参加した男からはブーイングもあったのだが、突如始まった王様ゲームで、高柳とのキスの相手を那智は見事引き当ててしまった。

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現実から離れていくこの回想シーン…
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