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BLの丘
策略はどこまでも 29
2009-07-14-Tue  CATEGORY: 策略はどこまでも
「いーかげんにしろよ」
貪る行為をやめてくれたことにホッとしながら、那智は上がる息を落ち着かせようとする。
睨みあげてみたところで高柳が堪えないことくらい分かってはいたが、それでもやめてもらわなければ困ると思った。

身体が先に反応すると分かれば、羞恥心以外の何物でもない感情が沸き上がった。それと同時に那智の胸を叩いたのは昨夜も感じた虚無感だった。
高柳にとって、自分の価値がいくらかと改めて知らされたような言葉に胸は痛むものの、あえてそれは隠した。

「那智が悪い」
不意に額を指でつんつんと押され、謂れのない非難を口にされ眉間に皺が寄った。
いたずらっぽい表情は悪意がないのが見て取れたが、一方的に責められたのでは納得がいかない。
「何で、俺?」
「那智が誘うから」
「誘ってないしっ」
「時間ギリギリまで寝かせてくれたらこんなことしなくて済んだのに」
「また寝ろよ」
「一緒に?」
「やだ」
「冷たくない?」
「ふつう」

埒の明かない会話を繰り返しながら、それでも高柳の下から逃げ出そうとする。体を捩れさせようとして、再び激痛に襲われた。
「く…っ!!」
背骨が砕けるんじゃないかと思う痛みに眉が寄る。驚いた高柳がそっと体をずらした。
「大丈夫か?」
心配そうに高柳の掌が那智の背中を撫でた。

「お…っまえのせいだろ…っ」
触るなっ!と手を弾き飛ばしたいのに、それすらも叶わない。意識せずとも、じんわりと涙が浮かぶ。
「ごめん。俺も余裕なくしてたし。次からはもうちょっと気ィ使うよ」
ねぇよっ、次なんか!!

言い返す気力もなくして痛みが去るのを待っていると、起き上がった高柳がシーツごと那智をくるみ始めた。所々に残る昨夜の残滓が肌に触れて気持ち悪い。
「なに?」
突然の高柳の行動を理解できずに疑問を投げかければ、当たり前のような返事があるだけだった。
「なにって、責任持って体洗ってやるよ」
さっさとベッドから抜け出した彼の屈強な体のラインがはっきり見えて、那智は正視できなかった。
その体に何をされたのか、嫌でも思い浮かべさせられる。

ベッド脇に立つと、あっという間に那智の体の下に腕を入れ、軽々と那智を横抱きに抱えあげられた。咄嗟のことに那智はパニックになった。
「ちょっ…!いいよ、行けるから」
「こんな体でかよ。無理しないで甘えとけって」
そういう問題じゃない。だいいち、洗う…って?!
昨夜のバスルームでのことを思い浮かべ、那智は更なる羞恥心に襲われる。

那智の抗いを「落とす」と一喝して大人しくさせられた。見える視界は、普段の那智では目にすることのない高さで、那智を黙らせるには充分な効果があった。
スタスタとバスルームまで歩いていくと、床の上にそっと立たせられた。
足腰に力を入れられず、崩れそうになる体を高柳は抱えるように腰に手を回し、抱きながら熱いシャワーを体にかけてきた。
冷えていたとは思わなかったのに、全てを拭われるような肌の上を滑る水流を気持ちよく感じる。
それと同時に柔肌を撫でる骨張った皮膚の硬い掌の心地よさに陶酔した。

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