「信じらんないっ!!一葉ってばっ!!」
「さくらちゃん、ここはもういいから。中條と先に帰ってね」
連れて行かれた先はトイレだった。
「気持ち悪い…」と訴えると同時に安住に抱きかかえられるようにして運ばれてきた。
慌てた那智が追ってきたらしい。
飲み過ぎた挙句、苦し紛れにゲーゲーと吐きまくる一葉の背を、安住の掌が撫でる。
どんな状況になっているのか、呆然としたような頭はかろうじて理解していたが、身体は全く意思を無視していた。
涙目になりながら吐き出す消化されていないものが安住の手にかかっているのも見えた。
「呑ませ過ぎちゃってごめんね。全部吐いちゃっていいよ」
ほとんど無理矢理といっていいほど喉奥を攻めてきた安住の指先にこらえることのできなかった吐瀉物が便器の中へとこぼれた。
全てを吐き出せば、いくらか気持ちの悪さが軽減されたようにも思える。
自分がどれだけの醜態をさらしているのか、もう考えたくもなかった。
「でも、安住さんっ!!」
「迎え、来ているんでしょ。待たせるのは悪いよ。一葉ちゃんは僕が預かるから心配しなくて大丈夫」
「でも…」
「お願いだからね」
那智と安住の会話は一葉が声を上げる間もなく進んでいるようだった。
一葉は何一つ言葉を返せなく、そして那智にも有無を言わせない口調で安住に告げられれば従うしかなくなったのか、ドアを閉ざす音が聞こえた。
…なにもかもを消し去りたい…
酔いすぎた頭はすでに思考力などなかったが…。
一葉はもう一度だけ胃の中の物を吐くと、そのまま意識を失った。
目覚めた時、柔らかな毛布の中にいた。
明らかに自分の部屋ではない場所に戸惑いが浮かぶものの、頭をガンガンと襲う痛みや、胃を締め付けるような苦しさに起き上がることすらできない。
そんな中で、昨夜の醜態を思い出した。
十中八九、間違っていなければここは安住につれて来られた場所だ。
休日前の日を選んでもらっていたから出社の心配はなかったとしても、これほどの二日酔いは過去に経験すらしたことがない。
だいたい、今は何時なのだろうか、ここはどこなのだろうか…。
思うことはたくさんあるのに、目をあけるのさえ億劫だった。
再び眠りについてしまいたいと甘えた感情が浮かんだ時、カチャリと部屋のドアが開けられるような音がした。
衣擦れの音が自分へと近づいてくるのが分かる。
言葉を上げることもなく、眠りについているのだと思っている一葉の額に温かな掌が触れた。
それと同時になんとか瞼を上げる。
起きたのだと分かる仕草に優しい顔つきの安住が飛び込んできた。
「起こしちゃったかな、ごめんね。まだ寝てていいからね。気持ち悪いとかない?」
見慣れない私服姿はカッチリとしたいつもよりもずっと穏やかな印象がある。静かな口調で問われて、一葉はこれ以上の迷惑もかけたくなく、ただ頷くしかなかった。
「お水とか飲める?脱水症状になっているでしょう。いっぱい水分を取って。楽になれるはずだから」
安住はそういって、一葉の身体を少し起き上がらせると、いつの間にか用意されていたグラスを口元に持ってきた。
正直喉は乾いていた。だから、水が体中に浸透していくように思える。
水というよりも何か入っているようだったがとにかく水分が欲しかった一葉はごくごくと飲みほした。
ふぅ…と息を吐けば、また横にされる。
「安住さん…、ここ…???」
疑問が口に乗れば、安住は分かったように状況を説明してくれた。
「ここは、僕の家だからゆっくりしていいよ。昨日は見境なく一葉ちゃんに呑ませてしまって申し訳なかったね。あんな席は久し振りで僕もはしゃいだのが悪かったよね」
酒席でのペースすら守れなかったのは自己責任のはずなのに…。それすらも押し付けて来ない安住にむしろこちらのほうが申し訳ないと思わされる。明らかに自分の方が悪い。
状況をまともに判断できなかった頭が徐々に動き出した。
ただの毛布だと思っていた場所はベッドの中のようだった。
そして気付いた時、自分は裸だったのだ。
下着一枚も身につけていない姿で、毛布の中にうずまっていた。
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お気に召しましたらぽちってしていただけると…(嬉)
「さくらちゃん、ここはもういいから。中條と先に帰ってね」
連れて行かれた先はトイレだった。
「気持ち悪い…」と訴えると同時に安住に抱きかかえられるようにして運ばれてきた。
慌てた那智が追ってきたらしい。
飲み過ぎた挙句、苦し紛れにゲーゲーと吐きまくる一葉の背を、安住の掌が撫でる。
どんな状況になっているのか、呆然としたような頭はかろうじて理解していたが、身体は全く意思を無視していた。
涙目になりながら吐き出す消化されていないものが安住の手にかかっているのも見えた。
「呑ませ過ぎちゃってごめんね。全部吐いちゃっていいよ」
ほとんど無理矢理といっていいほど喉奥を攻めてきた安住の指先にこらえることのできなかった吐瀉物が便器の中へとこぼれた。
全てを吐き出せば、いくらか気持ちの悪さが軽減されたようにも思える。
自分がどれだけの醜態をさらしているのか、もう考えたくもなかった。
「でも、安住さんっ!!」
「迎え、来ているんでしょ。待たせるのは悪いよ。一葉ちゃんは僕が預かるから心配しなくて大丈夫」
「でも…」
「お願いだからね」
那智と安住の会話は一葉が声を上げる間もなく進んでいるようだった。
一葉は何一つ言葉を返せなく、そして那智にも有無を言わせない口調で安住に告げられれば従うしかなくなったのか、ドアを閉ざす音が聞こえた。
…なにもかもを消し去りたい…
酔いすぎた頭はすでに思考力などなかったが…。
一葉はもう一度だけ胃の中の物を吐くと、そのまま意識を失った。
目覚めた時、柔らかな毛布の中にいた。
明らかに自分の部屋ではない場所に戸惑いが浮かぶものの、頭をガンガンと襲う痛みや、胃を締め付けるような苦しさに起き上がることすらできない。
そんな中で、昨夜の醜態を思い出した。
十中八九、間違っていなければここは安住につれて来られた場所だ。
休日前の日を選んでもらっていたから出社の心配はなかったとしても、これほどの二日酔いは過去に経験すらしたことがない。
だいたい、今は何時なのだろうか、ここはどこなのだろうか…。
思うことはたくさんあるのに、目をあけるのさえ億劫だった。
再び眠りについてしまいたいと甘えた感情が浮かんだ時、カチャリと部屋のドアが開けられるような音がした。
衣擦れの音が自分へと近づいてくるのが分かる。
言葉を上げることもなく、眠りについているのだと思っている一葉の額に温かな掌が触れた。
それと同時になんとか瞼を上げる。
起きたのだと分かる仕草に優しい顔つきの安住が飛び込んできた。
「起こしちゃったかな、ごめんね。まだ寝てていいからね。気持ち悪いとかない?」
見慣れない私服姿はカッチリとしたいつもよりもずっと穏やかな印象がある。静かな口調で問われて、一葉はこれ以上の迷惑もかけたくなく、ただ頷くしかなかった。
「お水とか飲める?脱水症状になっているでしょう。いっぱい水分を取って。楽になれるはずだから」
安住はそういって、一葉の身体を少し起き上がらせると、いつの間にか用意されていたグラスを口元に持ってきた。
正直喉は乾いていた。だから、水が体中に浸透していくように思える。
水というよりも何か入っているようだったがとにかく水分が欲しかった一葉はごくごくと飲みほした。
ふぅ…と息を吐けば、また横にされる。
「安住さん…、ここ…???」
疑問が口に乗れば、安住は分かったように状況を説明してくれた。
「ここは、僕の家だからゆっくりしていいよ。昨日は見境なく一葉ちゃんに呑ませてしまって申し訳なかったね。あんな席は久し振りで僕もはしゃいだのが悪かったよね」
酒席でのペースすら守れなかったのは自己責任のはずなのに…。それすらも押し付けて来ない安住にむしろこちらのほうが申し訳ないと思わされる。明らかに自分の方が悪い。
状況をまともに判断できなかった頭が徐々に動き出した。
ただの毛布だと思っていた場所はベッドの中のようだった。
そして気付いた時、自分は裸だったのだ。
下着一枚も身につけていない姿で、毛布の中にうずまっていた。
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安住さん、どこまでいい人なんでしょ。
御礼しに来ておきながら酔いつぶれただけでなくゲロゲロだし、おまけにお泊りってこんな醜態ないわ~
どこをとっても、申し訳なさ過ぎて消えてしまいたいくらいですぅ。。。。ってのが一葉ちゃんの心境でしょうか。
そのうえ、マッパ???
(酔ってご迷惑かけるのはイヤだけど、こんなふうに優しくお世話されてみたいです、紳士な安住さんに)
御礼しに来ておきながら酔いつぶれただけでなくゲロゲロだし、おまけにお泊りってこんな醜態ないわ~
どこをとっても、申し訳なさ過ぎて消えてしまいたいくらいですぅ。。。。ってのが一葉ちゃんの心境でしょうか。
そのうえ、マッパ???
(酔ってご迷惑かけるのはイヤだけど、こんなふうに優しくお世話されてみたいです、紳士な安住さんに)
甲斐様
こちらにもどうもです♪
> 安住さん、どこまでいい人なんでしょ。
最強に優しいお方でございます。
一葉、生きた心地していないでしょうね。
でも今日up分でまた図々しくも眠りこんだし。
> そのうえ、マッパ???
当然、脱がせたのは安住ですし。
もう何も隠すことなんかなくなっちゃったよ、一葉ちゃん
って安住の心の内側が聞こえてきそうな感じです。
> (酔ってご迷惑かけるのはイヤだけど、こんなふうに優しくお世話されてみたいです、紳士な安住さんに)
ハイ、私も頭撫でられて「もっと寝てていいよ」っていーこいーこされたいです。
素敵な紳士のまま進んでいければいいんですけどね~ぇ。
コメントありがとうございました。
こちらにもどうもです♪
> 安住さん、どこまでいい人なんでしょ。
最強に優しいお方でございます。
一葉、生きた心地していないでしょうね。
でも今日up分でまた図々しくも眠りこんだし。
> そのうえ、マッパ???
当然、脱がせたのは安住ですし。
もう何も隠すことなんかなくなっちゃったよ、一葉ちゃん
って安住の心の内側が聞こえてきそうな感じです。
> (酔ってご迷惑かけるのはイヤだけど、こんなふうに優しくお世話されてみたいです、紳士な安住さんに)
ハイ、私も頭撫でられて「もっと寝てていいよ」っていーこいーこされたいです。
素敵な紳士のまま進んでいければいいんですけどね~ぇ。
コメントありがとうございました。
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