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BLの丘
ちょうどいいサイズ 15
2010-04-10-Sat  CATEGORY: ちょうどいい
これは、お願いを聞く…という部類でいいんだろうか…。

『夕食を共にして』という誘いは素直に頷けるものではなかった。
硬直した一葉に、「それは難しい相談かな」と柔らかく反らされれば、自分が拒絶したと受け止められているのだと判断できた。
「あ、ち、ちが…、そ、んなんじゃなくて…」
慌てふためいて否定をしてみたところで、安住は「無理しなくていいからね」と一葉を宥めるだけだ。
こんな状況で誘っては一葉の負担にしかならないと思っているのだろう。
安住自身、口を滑らせたかのような態度で「気にしないで」と言ってくる始末だった。

「そう、じゃないです…っ。あの、その…、だって俺なんかが居たら、中條さんとか…」
「誠?どうして?」
「だって…」
二人の中を疑い、言葉を紡げないでいる一葉に、安住はそれとなく中條とのことを危惧している一葉の心境を読んだようだった。
一葉の頭の中には先程まで繰り広げられていた、気安くお互いを信頼し合う間柄が離れずにいる。
親しい友人、という括りであると何度言われたところで、隠しているのかと思ってしまえばそんな二人の関係もありなのかと、深く関わるのはいけないと思えた。

またもじもじと俯いてしまった一葉に、溜め息が聞こえた。
「誤解をされているようだけれど、誠とは心配されるようなことは何もないから。僕が心配するのは一葉ちゃんのほうだよ。突然こんな話を持ち出してしまって悪かったよね。一葉ちゃんにだって都合はあるでしょ」
暗に付き合っている人間がいるのだろうと問われる内容に一葉は思いっきり首を振った。
これまですごした恋愛経験だって、内向的な性格が災いしてか、近寄れたことすらない。
いつも遠巻きに誰かの姿を見て満足して、散った。

「そんなことないです…、べつに、俺、いつも一人だし…。今日のご飯もすごく美味しかったし、俺、こういうの、作れないし…」
「いつもどんなものを食べているの?迷惑でなかったなら、本当に寄ってほしいよ。僕も一人で淋しいんだ」

安住が「誰かと食べる食事は美味しい」とさきほど呟いた言葉が脳裏を横切っていく。
受けてやりたい、こたえてやりたい…。だけどその先にあるのは…???
完全なる間違いの思いこみ…。
一葉は自分が傷つくと分かっていながら、この誘いを断れなかった。
仕事とか、付き合いとか…、磯部の言う『おとしまえ』とかでもない。
一葉自身が安住の傍にいたかったのだ…。

「いつもコンビニのお弁当とか…。最近は作るようになったけど、上手くいかなくて…」
自炊生活の内側を晒してしまえば、安住がクスリと笑う。
「働きながら料理なんて大変だよね。迷惑にならない範囲でいいよ。都合がついたら、ね。話相手になってくれる人がいるって僕も嬉しいんだ」

やっぱり『毒』だ…と一葉は思った。
恋愛の経験が少ないから余計にそう思うのだろうか。
安住が纏っている力に確実に引き寄せられていた。
そう、「恋」という重力が自分を襲う…。

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コメント

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誰かと食べる食事は美味しいですよね
コメント甲斐 | URL | 2010-04-10-Sat 15:11 [編集]
安住さん「一人で淋しい」って。
お相手ならいくらでもいそうなこんな素敵な人が・・・なんで、僕くなんかを??と戸惑う一葉ちゃんがかわいいです。

安住さんてストレートに感情を口にしたり、したいことやほしいものを素直に求められる人なんですね。
どこをとっても欠点のない人だ。
こんな完璧な素敵な人に、興味を持たれた一葉ちゃんなんですね。

Re: 誰かと食べる食事は美味しいですよね
コメントきえ | URL | 2010-04-10-Sat 15:39 [編集]
消えた、書いていたら消えた…
甲斐様、いつもありがとうございます。いいタイミングだったのに。
いっぱい書いたのに消えた…。

> 安住さん「一人で淋しい」って。
> お相手ならいくらでもいそうなこんな素敵な人が・・・なんで、僕くなんかを??と戸惑う一葉ちゃんがかわいいです。
>
> 安住さんてストレートに感情を口にしたり、したいことやほしいものを素直に求められる人なんですね。
> どこをとっても欠点のない人だ。
> こんな完璧な素敵な人に、興味を持たれた一葉ちゃんなんですね。

安住は結構ストレートな人間です。
一葉も誘われています。
お体のお付き合いが始まるかはまぁビミョーなころなんですけどね。
(つーか、書けない…。安住さん、清すぎて…)
でもためらっていると他人の手が一葉を襲うので、そんな嫉妬も安住らしいかもしれません。
長続きします、このお話。
別宅にもちょこっと書いたのですが、すんなりといかない話になりました。
(どこまでも安住を苦しませるようで苦情の嵐です…)
コメントありがとうございました。
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