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BLの丘
ちょうどいいサイズ 23
2010-04-21-Wed  CATEGORY: ちょうどいい
「しょ、しょちょ…」
「なんだぁ?俺の仕事ぶりが間近で見られるんだ、感動だろう?」
磯部は一葉を覗き込むように笑みを向けてきたが、悪魔か鬼にしか見えない。
これ以上小さくなりようがないくらいに縮こまった一葉の腕を引きつれ、押し込むように助手席に乗せられる。
運転をするのは当然磯部で、迷いもなくどこかに向かうようだった。
「あ、あのどちらへ…?」
「俺がずっと受け持っている建設会社。間もなく車検が来るんだけど、だいぶ使いこんでいるからな。ここら辺でまとめて買い替えてもらえないかってアポ取った。前もって資料は送ってあるから話は早いと思うんだけど。…最低でも5台くらい、上手くいけば10台くらい替えてくれないかな~」
最後は磯部の独り言のようだったが、こんな近くにいては耳に入る。

…じゅ、10台…?!
一葉の1年分と言っていい数字である。

こんな得意先を持てるようになれるとはとても思えなくて一葉は心の中で悲鳴を上げた。
新人からやり直しと言われたって、レベルが違いすぎる…。

車中で一葉の携帯電話が鳴って、どうしようかと躊躇えば、「俺のことは気にするな」と促された。
だが相手が恵亮とあっては手も伸び辛い。
振動を続ける音に「早く出ろっ」と怒鳴られて一葉は泣く泣く耳に当てた。
『一葉ぁ、この前言ってた点検って、日を変えてもらえない?ちょっと出掛けたいんだよね~』
たとえどれだけ親しみのある言葉遣いであっても、内容が仕事の話で良かったと安堵した。
いつもの元気な声は耳から離していても聞こえてくるくらいだ。
万が一磯部に聞かれても言い訳は充分できる。
出先なので折り返し電話をすると伝えてさっさと切ろうとすれば、恵亮はまだ話をしたがっているようだった。
『ねぇねぇ、安住さんとはうまくいったんでしょー?ちゃんとやることやって帰ってきたぁ?』
「なっ、に言っ…っ…っ」
途端に顔がボンッと赤くなる。
チラリと磯部の視線が一葉を見たようで、思わず俯くように前かがみになった。
『バックバージン捧げてきたのかって聞いてるの。えー、一葉ってまさか経験済みだったの?』
恵亮はありえないと言いたげだった。
当たっているだけに反論の余地もないが、こんな昼間から話題にされたいことではない。
「め、め、め、め、めぐるくん…」
一葉の声は今にも消えそうである。
『ラブラブ生活の話でも後で聞かせてよ。キューピット役やってやったんだからご飯くらい付き合ってよね。いくらなんでも昼間っから安住さんちに入り浸っているってことはないでしょ?あ、安住さんちの近くの定食屋さんでいいや。そしたら帰りに一葉、寄れるっしょ。日にち決まったら連絡してね~』
恵亮は言いたいことだけ言って電話を切ってしまった。

残された一葉は赤くなったり青くなったりと目まぐるしい変化を遂げていたが、車内に立ちこめる剣呑とした雰囲気は嫌でも感じる。
明らかに『聞こえていた』と言いたそうな態度で磯部が存在していた。

一葉は顔を動かすことなくチラリと視線だけ横に動かした。
そんな一葉の姿に気付いたのかフンっと磯部が鼻息を荒げた。
「プライベートが充実するのは構わないがな、勤務時間中に油売ってる暇があったら何をするべきか分かっているんだろうなぁっ!!」
「ひっ」
耳を塞ぎたくなる内容である。
「仕事中くらい、そのバラ色の頭をなんとかしろっ!!今年の新人より成績が悪かったらクビにするぞっ!!」
「ふぇぇぇぇ」
「根性と気合がたりないんだよっ!!泣くなっ、甘ったれるなっ。何のために俺が連れてきたと思ってるんだっ!!」
発破をかけられたところで、確実にやってくる未来が見えて、一葉は落ち込むしかなかった。

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落ち込んだ一葉にどうか愛の鞭…じゃなくて飴玉を…。
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