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BLの丘
ちょうどいいサイズ 40
2010-05-11-Tue  CATEGORY: ちょうどいい
布団の中に潜り込んだとはいえ、30分も過ごせば限界だった。
安住は一葉を待って朝食を食べないでいるのだろうか、それとも一人で淋しく済ませてしまっているのだろうか。
この家に越して一度として共に過ごさなかったことのない朝食の時間が、一日をスタートするための貴重な空間だった。
仕事があれば一日の予定を聞き、休みであれば「どこかに行こうか」と誘われたりする。
結局これまでに何度も過ごした羞恥心との戦いの中で身に着けた『開き直り』で一葉はベッドを飛び出した。
今ではすっかり慣れたパジャマ姿のままでリビングに入ってみれば、いつもと変わりのない颯爽とした安住が「おはよう」と出迎えてくれた。

やっぱり気にしていたのは自分だけだったのか…。
そう思わされるような落ち着きぶりだった。
安住は読んでいた新聞を丁寧に畳んだ。

ダイニングのテーブルの上に並べられている料理を見れば、安住はまだ食していないのだと分かる。
「起しちゃったかな?二日酔いとかになっていない?また加減なく飲ませちゃったね」
申し訳なさそうに告げられることに、一葉の心がちくりちくりと痛んだ。
まるで昨夜の出来事など、どうでも良かったような雰囲気さえ見えてくる。

初めてキスをもらったことで浮かれていた心はあっという間にしぼみ、一葉は泣きたい気分になっていた。
そんな態度に気付いたように、安住が立ち尽くした一葉の前に近寄ってきた。
「どうしたの?まだ眠いかな?」
垂れた前髪を掬われ、額にいつものように「おはよう」の唇が落ちてきた。
さっきまで、恥ずかしいと思っていた気持ちが消え去って、こんなのでは納得できないという思いがむくむくと湧いてくる。
覚えていないとはいいたくないが、はっきりとした現実の世界で安住の唇に触れてみたかった。
柔らかだった唇の感触がこびりついたように残っている。
こうやっていつも触れるのとは違うような弾力。
かといって、自らくちづけるような行動に出られる勇気はまだない…。

問われたことに対して小さく首を振った一葉は「顔を洗ってくる…」とその場を逃げ出した。
安住の優しさが心苦しい。
もっと強く自分を求めてくれたら、何の抵抗もなく、その腕に抱かれてしまうのに…。
そして、その時を願っている自分がいるのも確かだった。
…やっぱり自分からなんて、誘えないよ…

リビングのドアを閉める寸前、安住の小さな溜め息が聞こえた気がした。

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短いですがどうか許してくださいっ!!
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コメント

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恥じらい
コメント甲斐 | URL | 2010-05-11-Tue 10:03 [編集]
そうだよね、ここまで来たらもっと強く求められたいかも。
心の準備は万全じゃなくても、「いいよ、たぶん」くらいは思ってるけど、だからといって、どうぞとか抱いてだなんて一葉ちゃんにはいえないし、そのそぶりも難しそう。
成長を待つ気の安住さん、子供は知らないうちの大きくなっちゃうんですよ・・・。
Re: 恥じらい
コメントきえ | URL | 2010-05-11-Tue 13:38 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> そうだよね、ここまで来たらもっと強く求められたいかも。

曖昧な態度に一葉もどうしたらいいのか…と悩んでいます。
もう少し積極的に動いてくれないと私も困っちゃうよ、安住さん…って感じでいますが。
一葉から、なんてとてもじゃないけど言えないし。
お酒の力を借りて、昨夜のアレがやっとの一葉なんだから、ねぇ…。

> 成長を待つ気の安住さん、子供は知らないうちの大きくなっちゃうんですよ・・・。

あぁ、そうだ、あれだっ。
あの、手とり足とり指導してくれる人のところにまた転がり込んで…(大人になりすぎるか?!)
一葉も成長しましたね…。
コメントありがとうございました。
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