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BLの丘
策略はどこまでも2
2009-06-29-Mon  CATEGORY: 策略はどこまでも
那智は大学を卒業しても、大学からそれほど遠くない会社に就職が決まった。一度は引っ越しをしたものの、電車に乗っての移動距離は30分と離れていないので、その界隈に残った連中とは今でも良く会う。
そんな中に高柳もいた。
「なっちー、お疲れさん。案内状、届いた?」
特にこれといった挨拶もなく、いきなり本題に入るとこはいつものことだった。昔から高柳は思ったら即行動という部分がある。きっと那智同様、帰宅後に郵便物を見つけて内容を確認し電話をかけてきたのだろう。
とは思っても、つい今しがた見ていた件を早速口にされれば苦笑いが浮かぶ。まるで自分の行動を見られていたかのようだ。
バスルームに行くのを諦めて、リビングのソファにぼすりと腰をおろした。

高柳の声はもともと低いが、電話を通すとさらに低く聞こえる気がする。だからといって聞きづらいものでもない。
『あの声が体中に響くのよ』といつぞやの女の子が言っていたのを、電話で声を聞くたびによみがえらせていた。
高柳はモテた。いや、現在でもその人気は健在なはずだ。高校の時からラグビーをやっていて、大学ではアメフトに転向したが、そこで鍛えられたがっしりとした長身の体に、見事なまでに整えられた顔のパーツは、通り過ぎる者を振り向かせていた。
付き合うことを目的として寄ってくる数も相当数で、那智が知っている大学時代だけでも10本の指が簡単に折れてしまうほどで、一人の人間に定着したことがない。
そんな高柳の顔を思い出しながら、笑い声を抑えて言葉を返した。
「うん、見た。今日届いていたみたい」
「うちも今日来た。でさ、12月だって?」
「え?年末?」
詳しい日程まで確認していなかったから、高柳から告げられた言葉に驚きを示した。
就職している人間が大半の今、何も選んだように忙しいと分かる12月に同窓会なんて開かなくてもいいだろう…と。
「ちゃんと読んでんの?」
電話の向こうで呆れたような声がする。『見た』って何を見たのだ?と言いたそうだ。
電話機を顎と肩で挟みながら、リビングテーブルに投げ置かれた書面を再度手に取る。
しばしの沈黙も苦にならず待っていてくれるのは、那智が改めて、届いた案内を読み返しているのが分かっているから。
「ホントだ。…ってか、12月なんてヒサ、無理じゃん」
卒業後、高柳は物流会社に就職した。全国に支社を持つ大手の物流会社で、12月は年間の中でも一番の多忙を極める月と、この数年で何度も聞いた話。
休みは交代制だったから土日休みの那智と合うことも少なく、それでも休みが合えばほぼ必ずといっていいほど一緒の時を過ごした数少ない親友の一人で、何を思って電話をかけてきたのか即座に那智には理解できた。
同窓会が開かれるのは土曜の夕方から。
一番忙しい時に自分の都合よく休みが取れるわけんないじゃん、と那智は勝手に決め付けていた。
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