久志は頭を抱えたくなった。
研修に行っていたのは事実だし、滝沢と一緒にいたことも間違いない。
部屋を取り間違えたことは仕方なかったとしても、『ダブルベッド』というだけで、卑猥にしか聞こえないのは何故だろうか。
「なんにもしてませんよ。俺がちゃんと確認してなくて…シングルルームを取れなかったんです。満室で他に空きがないっていうから仕方なく…」
いくらなんだって研修を口実にして他の誰かとやましいことをして過ごしていたのではないかという想像などしないでもらいたいと、顔を渋くした。
疑わしい目を3人揃って向けられれば、自分の信用性ってどんなものなのかと落ち込むしかない。
確かに見た夢はとても人に話せるようなものではなかった。目覚めた先にあった滝沢の身体にも申し訳ないことをしたと思っている。
それがつい数時間前の出来事で、皆の疑いを完全否定できない痛い部分もあったが、認めるわけにはいかない。
「そりゃぁ滝沢も気の毒だったな。おまえなんかと一緒の部屋じゃ安心して眠れなかっただろうに」
「何でですかぁ?」
「いつ襲われるかってビビってたんじゃないのか?おまえが一人で大人しく寝てる姿が想像できねェよ」
「ひどっ」
「ま、何にもなかったっていうおまえの言葉を、一応信じてやるから」
「一応…って…」
久志と黒川の本気とも冗談ともとれない会話を大友と石田はケラケラと笑って聞いていた。
否定はしてみたものの、万が一滝沢の口から今朝の事実がバレた時には一体どこまで責められるのかと不安が芽生えた。
とりあえず、今日は出勤しないので安心だが、他の部ともなればいつも会話に聞き耳を立てているわけにもいかない。
滝沢のことだから、心配するような軽口をたたかないとは思うが…。黒川などに突っつかれれば表情の一つも変えてしまうだろう。
特に用がなくても運行部と物流部の事務所を行き来している黒川が話を切り出すのは時間の問題だった。
やたら久志のことが話題に上るこの会社内で、どこで口を滑らされるか分からない。
「じゃあ、この請求書、処理しちゃっていいんですね。もう、びっくりするから、次からはこういう部屋を使うときは前もって教えてくださいよ」
「もう二度と使いません」
あんなに心臓に悪い朝は初めてだ。
これまで自分で関わった情事はすべて合意の上だったし、目的を遂げるという意思があった。意識せずとも腕の中に抱えたなんていうことは過去になく、起きた時の動揺を思い出せば、次からの確認作業は徹底するだろう。
石田がふざけて話しかければ、久志も半ば仏頂面になって反応した。
相変わらず黒川がニヤニヤと久志を見ている。
このまま事務所にいれば、暗澹とする気分を見透かされそうで、久志は早々に現場に逃げることにした。
「じゃあ、俺、現場行ってきますから」
「おうっ。しっかり働いてこいよ」
「はぁぁい…」
「やっぱりお疲れっぽいですね」
やる気のなさそうな返事をすれば、すかさず石田の茶々が入るのだから参る。どうやったって、そっち方面の話に持っていきたい気らしい。
半分うんざりしながら黙って事務所を後にすると、背後では好き勝手に妄想を広げているみんなの声が響いてきた。
これは何が何でも滝沢の口を塞がないとなぁ…。
廊下を歩きながら、久志は大きな溜め息をついた。そして思いっきり反省をした。
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昔、私が勤めていた事務所内での会話みたいなもので…
なんとなーく、書きやすいです。この連中。
というより、仕事の話よりきわどい下ネタのほうが多い所でしたね(o´艸`o)
こんなに大人しい会話ではありませんでしたが…(どんなとこだぁ!?)
研修に行っていたのは事実だし、滝沢と一緒にいたことも間違いない。
部屋を取り間違えたことは仕方なかったとしても、『ダブルベッド』というだけで、卑猥にしか聞こえないのは何故だろうか。
「なんにもしてませんよ。俺がちゃんと確認してなくて…シングルルームを取れなかったんです。満室で他に空きがないっていうから仕方なく…」
いくらなんだって研修を口実にして他の誰かとやましいことをして過ごしていたのではないかという想像などしないでもらいたいと、顔を渋くした。
疑わしい目を3人揃って向けられれば、自分の信用性ってどんなものなのかと落ち込むしかない。
確かに見た夢はとても人に話せるようなものではなかった。目覚めた先にあった滝沢の身体にも申し訳ないことをしたと思っている。
それがつい数時間前の出来事で、皆の疑いを完全否定できない痛い部分もあったが、認めるわけにはいかない。
「そりゃぁ滝沢も気の毒だったな。おまえなんかと一緒の部屋じゃ安心して眠れなかっただろうに」
「何でですかぁ?」
「いつ襲われるかってビビってたんじゃないのか?おまえが一人で大人しく寝てる姿が想像できねェよ」
「ひどっ」
「ま、何にもなかったっていうおまえの言葉を、一応信じてやるから」
「一応…って…」
久志と黒川の本気とも冗談ともとれない会話を大友と石田はケラケラと笑って聞いていた。
否定はしてみたものの、万が一滝沢の口から今朝の事実がバレた時には一体どこまで責められるのかと不安が芽生えた。
とりあえず、今日は出勤しないので安心だが、他の部ともなればいつも会話に聞き耳を立てているわけにもいかない。
滝沢のことだから、心配するような軽口をたたかないとは思うが…。黒川などに突っつかれれば表情の一つも変えてしまうだろう。
特に用がなくても運行部と物流部の事務所を行き来している黒川が話を切り出すのは時間の問題だった。
やたら久志のことが話題に上るこの会社内で、どこで口を滑らされるか分からない。
「じゃあ、この請求書、処理しちゃっていいんですね。もう、びっくりするから、次からはこういう部屋を使うときは前もって教えてくださいよ」
「もう二度と使いません」
あんなに心臓に悪い朝は初めてだ。
これまで自分で関わった情事はすべて合意の上だったし、目的を遂げるという意思があった。意識せずとも腕の中に抱えたなんていうことは過去になく、起きた時の動揺を思い出せば、次からの確認作業は徹底するだろう。
石田がふざけて話しかければ、久志も半ば仏頂面になって反応した。
相変わらず黒川がニヤニヤと久志を見ている。
このまま事務所にいれば、暗澹とする気分を見透かされそうで、久志は早々に現場に逃げることにした。
「じゃあ、俺、現場行ってきますから」
「おうっ。しっかり働いてこいよ」
「はぁぁい…」
「やっぱりお疲れっぽいですね」
やる気のなさそうな返事をすれば、すかさず石田の茶々が入るのだから参る。どうやったって、そっち方面の話に持っていきたい気らしい。
半分うんざりしながら黙って事務所を後にすると、背後では好き勝手に妄想を広げているみんなの声が響いてきた。
これは何が何でも滝沢の口を塞がないとなぁ…。
廊下を歩きながら、久志は大きな溜め息をついた。そして思いっきり反省をした。
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昔、私が勤めていた事務所内での会話みたいなもので…
なんとなーく、書きやすいです。この連中。
というより、仕事の話よりきわどい下ネタのほうが多い所でしたね(o´艸`o)
こんなに大人しい会話ではありませんでしたが…(どんなとこだぁ!?)
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