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BLの丘
囁きは今日も明日も 14
2010-09-23-Thu  CATEGORY: 囁きは今日も明日も
月曜日の午前中(とはいえ、お昼前だ)のうちに、朝比奈の車を返却しに行った。
安住の家には朝比奈の車の代わりに中條の車が置いてあった。
帰りは中條に営業所に送ってもらえばいい。(自分の車は会社に置きっぱなしなので)
こちらにも仕事を休んだ、という人間が一人いた。
朝比奈だ…。
あの喫茶店はそんなに『自由業』だったのだろうか…。
朝比奈からも、中條からも安住には『詳細』は伝わっているようだ。

そして、見慣れないガタイの良い男がいて、来客ならすぐに帰ろうと思った。
客…とは思えない、随分とラフな格好ではあったが…。
車に異常はなかったし、特に報告することもない。
それに朝比奈自身も車に全く無知なわけではない。
だが、気を使った磯部とは対照的に、男の姿をとらえた中條が笑顔で近づいていった。
「みっちゃん、来てたんだ~」
「おう。誠の車があるのにいないからどうしたのかと思ったぜ」
誰だ?!こいつは…。と磯部の脳内にクエスチョンマークが浮かぶと同時に、あまりの親しさに訝しさも湧いたが表情に出すほど人間ができていないわけではなかった。
「うん、ちょっと享から頼まれごとをされちゃって」
「一葉君の車の点検、代理で行かせられたんだって?享利も人使いが荒いからな」
「失礼な。…あ、磯部さん、わざわざすみません。お休みのところ、ここまで来ていただいて」
“みっちゃん”と呼ばれた男と中條の繰り広げる会話に、奥から顔を出してきた安住が磯部へと向き直った。
磯部は即座に営業スマイルを張り付けて少し頭を下げる。
「いえいえ。こちらこそなかなかご挨拶にも寄れずに…。今日はちょっと中條さんにも頼みたいことがありましたので…」
会社から直帰した、とはさすがに口に出しづらい。
「そうなんですか」
安住も分かってはいるのだろうが、それ以上は突っ込んではこなかった。
それからすでに”みっちゃん”の横に座ってしまった中條の隣を進めてくる。
「今コーヒーを淹れますから、どうぞ、掛けていてください」
「しかし、お客様では…」
「マサ、大丈夫。客でもなんでもないから」
「口の悪さは相変わらずだな。で、どちら様?」
一応恐縮する磯部だったが、飛び交ってくる言葉は、”心配ご無用”と伝えてきた。

「一葉ちゃんが以前勤めていたところの所長さん、磯部さん。こっちは高校の時の同級生で佐貫光也(さぬき みつや)。だから気にしなくて大丈夫だよ」
同級生ということは安住も一緒か…と磯部は頭を巡らせたが、それにしてはそれぞれ歳の取り方が違うな、と感じてしまった。
中條は若作りのところがあるし、佐貫は自分よりも年上に見える貫禄のようなものがある。
どことなく、人を見定めるような鋭さが見え隠れするようだった。

「所長?!まだ若いのに大したもんだな」
「佐貫!仮にも年上の人に向かって失礼過ぎだよ」
「安住さん、そんな…。私のことなら…」
「それは失礼しました。誠があまりにも親しげにしていたものでつい…」
安住に咎められた途端に、スッと居住まいを正した佐貫がぺこりと頭を下げてきた。
先程の寛いだ姿から一瞬にして変わる態度も”大した”ものだ…。
磯部は苦笑を浮かべながら、見た目は逆だろうと内心で思っていたが。
「年上って一つしかちがわないじゃない。それにみっちゃんのほうがずぅっと年上に見えるから気を使う必要なんてないんだよ」
磯部が感じたことを中條に堂々と告げられては返す言葉もない。

「で、なんでみっちゃん、ここにいるの?その格好、仕事じゃないでしょ?」
中條が場を宥めるように話題を振った。
普段、どんな格好で仕事をしているのかは知らないが、寛いだ風貌は、自分同様、本日が休日なのだと思わせる。
中條の問いかけに苦笑いを浮かべて口端を上げた。

「事故ったんだよ…。マンションの壁に激突。自爆だったからまぁいいとしてもさ…」
「事故ぉぉぉぉ?!」
「車、お釈迦にしたんだって」
中條の問いに隙なく安住が口を挟んでくる。
車が大破するほどの事故と聞けば、その体にも衝撃がなかったのかと心配してしまう磯部だったが、頑丈そうな体は『被害は車だけ』と主張していた。
「車は治りそうにないって言うしさ。そういえば一葉君が販売に『知り合い』でもいたっけぇって思い出して寄ったってわけよ」
めちゃめちゃ安くしてくれるなら車種は選ばない、といった感じの佐貫が、ちらっと朝比奈を伺っていた。
その視線は、当たり前のように、自分に戻ってくる。

「売り上げのない所長さん…。いいネタ掴んだみたいだね」
中條が、ここぞとばかりに磯部を振り返った。
休日ではあったが、四の五のといっていられない。
素早く名刺を差し出せば、「休日までそんなもの、持ち歩いているの?!」と中條が眼鏡の奥を光らせた。
「基本だろ」
しかめっつらをされたところで、これまでのスタンスが変わるわけではない。

中條の意見など無視して、「今すぐにでもお話を」と含ませれば、あっという間に却下された。
まぁ、当然のことと言えばそうなのだが…。
「その話はまたの機会にしてもらえませんか?誠がいたんじゃ、まともな話にもならないでしょ?」
言葉の裏には『今日は休みだろ』と言われるような仕草があった。
中條を出すのは口実なのだろう。
すぐに口を出してくる…と嫌味を交えていても、相手に気を使わせない。
が、磯部にしては、中條について知り過ぎることがきにいらないことでもあった。
付き合いの長さは今更覆せるものではないのに…。

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別宅にも書きましたが23日~25日までプチ旅行に出かけます。
更新できる文を今書いていますが、なかったら見捨ててください。
次はいつ、パソに向かえるか…。
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コメント

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磯部の 嫉妬ですねー
コメントけいったん | URL | 2010-09-24-Fri 17:20 [編集]
はい 中條は もう 磯部の恋人ですからねッ。 何でも 知りたいんですよねー。そして 独占欲も 発揮しても いいんだもんねー♪

中條のような 誰にでも 愛想がいい恋人を 持つと 大変だわ。  こんな事くらい どーって事ないさッと、 鷹揚に 構えて下さいね。

きえ様、プチ旅行ですか、羨ましい~。 私は ネットの世界で プチ放浪を 楽しんでおきます(yy)...いいなぁ~...byebye☆
コメントきえ | URL | 2010-09-27-Mon 11:59 [編集]
ら様
こんにちは。
レスすっかり遅くなりましたm(__)m

>安住家訪問~って言うか車を返しに来ただけですが。。。磯部さん、いいところでお仕事見つけましたね^^ 安住さんに関わるとお仕事がもらえる?!  一葉。。。いないと思ったらいたのねw話の中に入らないからわからん。。。大人達の会話に入れなくて呆気に取られてただけ?(爆)

安住に関わるとお仕事がもらえる?!
ホント、そうですね。一葉も頂いたし。
一葉、一応、いるんです。出番がなかった…。
大人の会話に圧倒されて一言も発せられず…でしょうか。
コメントありがとうございました。
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