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BLの丘
眼差し 10
2010-12-20-Mon  CATEGORY: 眼差し
数日と置かずに、譲原は高音に連絡を入れたようだ。
突然の『専門家』の登場には高音が一番驚いていたようだ。
当然、そんな予算が成俊の手にあるとは思ってもいない。
弁護士を立てたことで、自分の理不尽な要求が通らないことくらい、高音だって承知しているはずだった。
それからは、高音がヒステリックに叫ぶ日々が続いた。
高音が泣きついたのは高音の実家の両親で、対等に物事が進められない娘を不憫に思ってか、高音にも弁護士が付くという状況になった。
そのことを譲原に伝えれば、「そのほうが話がスムーズですよ。お互い、知識があるもの同士がやり取りをしますからね」と、今まで以上に力の滾った声音で応えられる。
それが譲原が持つ『自信』だと分かるまでに、たいした時間を必要としなかった。
譲原にしてみれば、それこそが”やりがいのある仕事”になるのだろう。

だが、成俊は益々家に帰りづらくなった。
たとえ顔を合わせなくても、同じ空間にいるということが耐えられなくなりつつある。
いずれにせよ、このマンションに一人で住む気はなく、高音に譲るなり転売するなりの措置がとられることになると思えば、いますぐにでもアパートでも借りて出ていきたかった。
しかし、家計の全てを預けてしまった今、成俊が自由になる金などなく、費用がかさむばかりの引っ越しを安易に決められるはずもない。

久し振りに日野の店に顔を出せば、日野の目が向くのが嫌でも分かった。
「お…、まえ、ちゃんと食ってんのかよ…」
そんなに驚かれるほど、外見が変わってしまっただろうか…と思わされる発言だった。
先日譲原に会った時も「生活は大丈夫?」と心配されたなぁと振り返る。
心労が伴うのは覚悟の上だったが、正直、ここまで精神的に追い詰められるとは予想していなかった。
弁護士同士の話し合いはそこそこに進展を見せているらしいが、弁護士同士が譲らない”意地”のようなものがあるらしい。
一番、納得できないと喚いているのは高音らしいが。
「うー、ん、…まぁ。適当に…」
「適当に…って…。…今、どうしてんの?」
日野に紹介してもらって詳細を伝えていないのも酷い話だとは思うけど、プライベートな話題を突っ込んで聞きたがる奴じゃない。
普段から要所要所での連絡のやりとりはあったが、逐一報告するようなことはなかった。
日野も安住に任せた時点で、好転すると信じ切っているのだろう。
成俊は日野に、現状の生活状況をそれとなく伝えた。
まだマンションに住んでいること、話が決裂するたびに当たり散らされること、できることならマンションを出て自分の時間を作り冷静に考えたいこと…。
最近の生活は『泥沼』というに等しい。
食欲が落ちている原因もそこにある、と知り得れば、日野から予想外な言葉が飛び出した。
「成さー。うちにくるか?」
一瞬、どう言う意味か理解できずに口をポカンと開けてしまった。
「そんな、辛い思いしてまで一緒にいること、ないだろ?とりあえず避難場所としてうちで生活するか?って聞いてんの」
「で、でもそれじゃ、尚治が…」
成俊が戸惑えば日野はクスッと笑って肩を竦めた。
「正直、あんまり、あそこに帰ってないんだよね。留守番代わりにいてくれると助かるんだけど」
成俊にしてみれば、それはつまり、恋人のところに入り浸っている…としか聞こえない。
だったら何も別々の家など持たずに一緒に住んでしまえばいいことではないかと、安易な考えが生まれるが、それはそこ、二人の何かが押し留めているのだろう。
だからといって、これ以上日野に甘えて、首を縦に触れる内容ではなかった。

「無理…だよ、そんな…。俺、自分で何もしてない…。こんな情けないの…」
「今みたいな成を見続ける方が俺としてはやるせないんだけど。いつか、どこかの路頭でグズグズになっている姿とか見たくねーし。今がおまえの踏ん張りどころじゃん。俺は成が努力する人間だって知ってるから、将来に投資するとでも思ってくれればいいよ」
成俊はカウンターに肘をついて、頭を抱えて項垂れた。
何でみんな、こんなに自分の為に良くしてくれるのだろう。
その優しさが嬉しくて、素直に感謝したいのに、喉に詰まった嗚咽をこらえることで言葉にならなかった。
日野は今日も、それ以上何も言わない。

成俊は日野に言われたように、当面の生活で必要なものだけをボストンバッグに詰め込んでマンションを出た。
高音はいかにも清々したといった様子だった。
最初の数日だけは日野も様子を見に、自宅に帰ってきていたが、やがてパタリと足音が途絶え、店以外の場所で会うこともなくなった。
帰ってこないと分かるたびに、成俊の脳内では、男同士の行為がどのようなものなのか…と未知の世界を想像するようになってしまった。
男女間とは明らかに違う”交流”があるのだろう。
そんなことを考えれば、二人の容姿を知るだけに一人勝手に顔を赤くし、ベッドの中でモゾモゾする日が続いた。
これまででは下半身に熱が集まることなどなかった。
ようやく生まれた安堵であり余裕なのだとも思えた。

そんなある日、譲原から「至急会いたい」という緊急を要した電話が入った。
電話機越しから聞こえる声も、普段とは違う硬さが感じられて、最近落ち着いていた成俊は何事かと心臓をバクバクとさせる。
「できることなら人目のないところで」と伝えてくる譲原に、事の重要性を悟った。
終業時刻を待って、譲原の事務室に辿り着いた時、いつもなら笑顔で迎えてくれる譲原には緊張すら伺える。
早速、とテーブルの上に差し出された、書類を折ることを拒む大きさの封筒を差し出される。
震える手で中身を取り出せば、中には数枚の写真が入っていた。

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コメント

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写真→スキャンダル!?
コメントけいったん | URL | 2010-12-20-Mon 14:53 [編集]
仕事と 日々の生活を やっと送れるだけの 疲れきった成俊には 何も無いはずなのに...

譲原を 緊迫せる写真って いったい どんなのを 撮られたの?
(ToT)/~~~byebye☆
Re: 写真→スキャンダル!?
コメントきえ | URL | 2010-12-20-Mon 16:57 [編集]
けいったんさま
こんにちは~。

> 仕事と 日々の生活を やっと送れるだけの 疲れきった成俊には 何も無いはずなのに...

何もないはずなんですよ~。
でも成にはなにかがぶつかってきてしまったんですね。

> 譲原を 緊迫せる写真って いったい どんなのを 撮られたの?
> (ToT)/~~~byebye☆

なにをとられたんだー?
間違っても日野とのラブシーンじゃないだろうなぁ。
そんなものを見せるゆずはらじゃないだろうし。
コメントどうもでーす。
続き、頑張ったて書きまーす。
写真(*゚ロ゚)!!
コメントらぅら | URL | 2010-12-20-Mon 17:17 [編集]
どんな写真を送ってきたんだろう。。。?
高音ってば、怖すぎる(((=ω=)))ブルブル

成俊は何もないはずだから、(。ェ)ぇ?って言うような写真なのだろうけど。。。
Re: 写真(*゚ロ゚)!!
コメントきえ | URL | 2010-12-21-Tue 06:51 [編集]
らぅら様
おはようございまーす。

> どんな写真を送ってきたんだろう。。。?
> 高音ってば、怖すぎる(((=ω=)))ブルブル
>
> 成俊は何もないはずだから、(。ェ)ぇ?って言うような写真なのだろうけど。。。

高値が送ってきたわけではありませんでしたー。
でも内容は衝撃的だったΣ( ̄□ ̄;)
えぇ、成俊にはなにもありませんよ~。
たぶん、…きっと…。
コメントありがとうございました。
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