離れていく手に、まるで縋るようだった。
「親子じゃなかった…」
ぐるぐると渦巻いていた感情がまた零れていく。
佐貫は言葉を発さなかった。
黙って、喉を震わせるような成俊の声を聞いてくれる。
譲原にも言えなかったことが、どうして佐貫を前にすると自然と口が緩み伝えることができるのか…。
もう一度触れてほしいと思う温もりを手に入れるための切り札のようだ。
「譲原さんが、妻の行動を調べてたんだ…。見せてくれた写真にはどこかの男の姿があった…。莉音に、娘に良く似ていた…」
昨夜、写真を見た途端に身体が震えたというのに、今のこの落ち着きはなんだろう。
全てに裏切られたと、自棄を起こした自分がいたはずなのに一筋の明りを見出したような気分になっている。
佐貫がもたらす雰囲気なのか、先程背中を押してもらった言葉があるせいか。
「DNA鑑定などはしていないんだろう?決めつけるのは…」
微かな希望を持たせてくれる佐貫に、成俊は小さく首を振った。
「そんなの…。分かるよ、あれ、見れば…。親の、勘かな…」
泣きそうになる頬に、再び佐貫の掌が訪れた。
ためらうことなく、その手に擦り寄ってしまう。
心境を理解した佐貫の表情に陰りが見えた。
寄り添って縋ってしまえば佐貫の負担になるだけなのだろう。
「ナリトシはどうしたいんだ?」
初めて聞かれた質問だった。
成俊は頭を巡らせた。
何から考えていいのか分からない問題ばかりだ。
離婚で、どれだけのものを妻に渡すとか渡さないとか、娘に何をしてやるべきなのか、今後の自分の身の置き場所など、成俊の頭では到底整理などつかない。
そのために譲原がいるのだろうとは頭で分かっていても、譲原が見るのはあくまでも表面上のことだ。
精神的な部分はまた別問題になる。
「わかんない…。ただ、淋しいだけ…」
悲しさもある。全てから裏切られたような、この世から消滅させられそうな…。
人の温もりが欲しかった。
我を忘れられた昨夜が恋しいとすら思ってしまう。
そばにいてくれる人の優しさには、これまでにも味わってきたが、佐貫は他の人間とはどこか違っていた。
多くを語らずとも理解してくれるようなところ、本当に欲しいものだけをさり気なく差し出してくれる懐の大きさ。
頼れる、信じられる、と思えたから、こうして内情までも吐露できるのだろう。
「がんばってきたんだな…」
何気なく発された台詞に、ギリギリのところで留まっていたものが決壊していくのを感じた。
昨夜の二の舞…、いや、それ以上かもしれない。
感情がはっきりとしているから余計染み込んでくるようだ。
「さ、ぬき…さ…」
「おまえはなんでも溜め込むタイプだな。自分でどうにかしようとする。だけど最終的にパンクして方向を見失うんだ。人に甘えるっていうのは悪いことじゃない。もっと素直になれ。今みたいに正直な気持ちを吐き出せばいい」
佐貫とは出会ってまだ2度目のはずだ。
それなのに、成俊の性格を見てきたように指摘してくれる。
ズケズケと言うくせにトゲがない。
その隙間に堕ちていく自分を感じる。
自然と涙がこぼれてきた。
優しく拭ってくれる指先を『欲しい』と思うのはいけないことだろうか…。
にほんブログ村
遅くなりました―。相変わらず短くてすみません。
20← →22
「親子じゃなかった…」
ぐるぐると渦巻いていた感情がまた零れていく。
佐貫は言葉を発さなかった。
黙って、喉を震わせるような成俊の声を聞いてくれる。
譲原にも言えなかったことが、どうして佐貫を前にすると自然と口が緩み伝えることができるのか…。
もう一度触れてほしいと思う温もりを手に入れるための切り札のようだ。
「譲原さんが、妻の行動を調べてたんだ…。見せてくれた写真にはどこかの男の姿があった…。莉音に、娘に良く似ていた…」
昨夜、写真を見た途端に身体が震えたというのに、今のこの落ち着きはなんだろう。
全てに裏切られたと、自棄を起こした自分がいたはずなのに一筋の明りを見出したような気分になっている。
佐貫がもたらす雰囲気なのか、先程背中を押してもらった言葉があるせいか。
「DNA鑑定などはしていないんだろう?決めつけるのは…」
微かな希望を持たせてくれる佐貫に、成俊は小さく首を振った。
「そんなの…。分かるよ、あれ、見れば…。親の、勘かな…」
泣きそうになる頬に、再び佐貫の掌が訪れた。
ためらうことなく、その手に擦り寄ってしまう。
心境を理解した佐貫の表情に陰りが見えた。
寄り添って縋ってしまえば佐貫の負担になるだけなのだろう。
「ナリトシはどうしたいんだ?」
初めて聞かれた質問だった。
成俊は頭を巡らせた。
何から考えていいのか分からない問題ばかりだ。
離婚で、どれだけのものを妻に渡すとか渡さないとか、娘に何をしてやるべきなのか、今後の自分の身の置き場所など、成俊の頭では到底整理などつかない。
そのために譲原がいるのだろうとは頭で分かっていても、譲原が見るのはあくまでも表面上のことだ。
精神的な部分はまた別問題になる。
「わかんない…。ただ、淋しいだけ…」
悲しさもある。全てから裏切られたような、この世から消滅させられそうな…。
人の温もりが欲しかった。
我を忘れられた昨夜が恋しいとすら思ってしまう。
そばにいてくれる人の優しさには、これまでにも味わってきたが、佐貫は他の人間とはどこか違っていた。
多くを語らずとも理解してくれるようなところ、本当に欲しいものだけをさり気なく差し出してくれる懐の大きさ。
頼れる、信じられる、と思えたから、こうして内情までも吐露できるのだろう。
「がんばってきたんだな…」
何気なく発された台詞に、ギリギリのところで留まっていたものが決壊していくのを感じた。
昨夜の二の舞…、いや、それ以上かもしれない。
感情がはっきりとしているから余計染み込んでくるようだ。
「さ、ぬき…さ…」
「おまえはなんでも溜め込むタイプだな。自分でどうにかしようとする。だけど最終的にパンクして方向を見失うんだ。人に甘えるっていうのは悪いことじゃない。もっと素直になれ。今みたいに正直な気持ちを吐き出せばいい」
佐貫とは出会ってまだ2度目のはずだ。
それなのに、成俊の性格を見てきたように指摘してくれる。
ズケズケと言うくせにトゲがない。
その隙間に堕ちていく自分を感じる。
自然と涙がこぼれてきた。
優しく拭ってくれる指先を『欲しい』と思うのはいけないことだろうか…。
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遅くなりました―。相変わらず短くてすみません。
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成俊を「ナリトシ」と 佐貫が 呼ぶ度に 徐々に 身を委ね 心も委ね 堕ちていく。。。
きっと佐貫の人柄そのままな 率直で包み込む優しさが 声から 伝わってくるのでしょう
佐貫の魅力的な声で 私の名前も 呼んで欲しいわ～(*･ω･*)
離婚問題が 片付いて 成俊の心の負担が 少しでも 早く軽くなれば、佐貫との関係も もっと・・・(o´･ω-)b ﾈｯ♪...byebye☆
きっと佐貫の人柄そのままな 率直で包み込む優しさが 声から 伝わってくるのでしょう
佐貫の魅力的な声で 私の名前も 呼んで欲しいわ～(*･ω･*)
離婚問題が 片付いて 成俊の心の負担が 少しでも 早く軽くなれば、佐貫との関係も もっと・・・(o´･ω-)b ﾈｯ♪...byebye☆
けいったん様
こんばんはー
> 成俊を「ナリトシ」と 佐貫が 呼ぶ度に 徐々に 身を委ね 心も委ね 堕ちていく。。。
> きっと佐貫の人柄そのままな 率直で包み込む優しさが 声から 伝わってくるのでしょう
> 佐貫の魅力的な声で 私の名前も 呼んで欲しいわ～(*･ω･*)
>
呼び名は私の中で萌えつぼです。
どんなふうになっていくんでしょうね。
佐貫の声はきっと魅力的…ww
> 離婚問題が 片付いて 成俊の心の負担が 少しでも 早く軽くなれば、佐貫との関係も もっと・・・(o´･ω-)b ﾈｯ♪...byebye☆
はい、まず第一段階をクリアしないと。
二人の関係、焦れ焦れでいくかと思いますが…。
コメントありがとうございました。
こんばんはー
> 成俊を「ナリトシ」と 佐貫が 呼ぶ度に 徐々に 身を委ね 心も委ね 堕ちていく。。。
> きっと佐貫の人柄そのままな 率直で包み込む優しさが 声から 伝わってくるのでしょう
> 佐貫の魅力的な声で 私の名前も 呼んで欲しいわ～(*･ω･*)
>
呼び名は私の中で萌えつぼです。
どんなふうになっていくんでしょうね。
佐貫の声はきっと魅力的…ww
> 離婚問題が 片付いて 成俊の心の負担が 少しでも 早く軽くなれば、佐貫との関係も もっと・・・(o´･ω-)b ﾈｯ♪...byebye☆
はい、まず第一段階をクリアしないと。
二人の関係、焦れ焦れでいくかと思いますが…。
コメントありがとうございました。
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