思い当たることがあったからか、成俊がそれとなく頬を染めると日野の表情が険しくなった。
「おいっ!おまえ、今、問題が片付いたって…!」
離婚問題で散々悩んでいたはずなのに、その陰で色恋ごとがあったなどとは、人には聞かせられない話だ。
高音側にばれれば、こちらこそ文句を言われかねないとも思ってしまう。
しかも相手が、神戸の言うとおり『男』となれば、日野の反応も理解できるものだった。
自分の態度がどんなふうに見られたのかと、焦るものの、日野とは対照的に神戸は落ち着き払っていた。
「もしかしてショウに触発されちゃった?対象、女の人だけじゃないんだ?」
単刀直入に告げられることに、更に動揺する。
自分だって、男相手に何かを思うなんて、これっぽっちも思ったことがない。
ますます俯く成俊に、日野が「冗談だろ?」と小さく呟いた。
それを追って神戸が「組み合わせって男と女か、男と男か、女と女の三種類しかないんだよ」と平然と言い放つ。
「だからって、長流…」
一般常識から離れている世界に成俊が足を突っ込んだことは、日野にとっても大きな戸惑いだったらしい。
「なんでだよ?いつ?相手、誰だよ?」
心配してくれている口調なのは、長年の付き合いで分かった。
決して世間から良い目で見られないのだとは、日野自身が一番良く知っているのだろう。
佐貫が言ったように…、譲原に勧められたように…、生きていく世界は甘くないのかもしれない。
それでも、安らげる空間を与えてくれた佐貫の存在は大きく、たとえ譲原に止められても、成俊の中では頼りたいものの一つとして削ぎ落すことができずにいた。
一時は諦めようとしたはずなのに、離れれば離れるほど、もう一度縋りつきたくなる。
佐貫がもたらしてくれた空間は、成俊にとって、初めて味わった安堵だったのかもしれない。
そして付いてきたのは、我を忘れる快楽と絶頂。
もちろん、そんなことを、いくら日野でも話せる度胸の良さは持ち合わせていなかった。
「そんなんじゃない…」
力なく反論してみるが、日野のことだ。きっと見透かされているのだろう。
更に問い詰めたい日野を、神戸が制している。
たぶん、きっと、こういった相談事は日野よりも神戸の方が適しているのだと、なんとなく知れた。
譲原と佐貫の関係も気になっていた。
調停中は佐貫とのことを一切話題に出さない譲原だった。
安住のことを知る神戸なら、譲原と佐貫がどういう関係なのかも分かるのだろうか。
まだ知り合ったばかりの二人について、成俊が想像できるものは少ない。
ただ、譲原が佐貫に対して好意を寄せているのかもしれない、漠然とした思いしか気付くことができない。
これを神戸の目から見てもらえば、また違う、もっとはっきりとした意見が聞けるのかもしれなかった。
成俊の変化に気付いたように…。
「ショウ、お客さん、待ってるから」
さりげなく、神戸は日野を遠ざけた。
テーブル席にいる客に対して、日野を顎で促す。
客相手と分かれば仕方がないのか、渋々成俊の前から離れていく日野の姿があった。
そこを狙って、神戸が小声で囁いてきた。
「君くらいの子と一戦交えられたって、相手、いけてるのかもね。しかも、君にそれだけの色香を纏わせたんだから」
成俊には、神戸の言う言葉の意味の、半分も理解できなかった。
何より、心云々よりも、すでに身体の関係を持ったと断言できる神戸の洞察力に呆然とするしかなかった。
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「おいっ!おまえ、今、問題が片付いたって…!」
離婚問題で散々悩んでいたはずなのに、その陰で色恋ごとがあったなどとは、人には聞かせられない話だ。
高音側にばれれば、こちらこそ文句を言われかねないとも思ってしまう。
しかも相手が、神戸の言うとおり『男』となれば、日野の反応も理解できるものだった。
自分の態度がどんなふうに見られたのかと、焦るものの、日野とは対照的に神戸は落ち着き払っていた。
「もしかしてショウに触発されちゃった?対象、女の人だけじゃないんだ?」
単刀直入に告げられることに、更に動揺する。
自分だって、男相手に何かを思うなんて、これっぽっちも思ったことがない。
ますます俯く成俊に、日野が「冗談だろ?」と小さく呟いた。
それを追って神戸が「組み合わせって男と女か、男と男か、女と女の三種類しかないんだよ」と平然と言い放つ。
「だからって、長流…」
一般常識から離れている世界に成俊が足を突っ込んだことは、日野にとっても大きな戸惑いだったらしい。
「なんでだよ?いつ?相手、誰だよ?」
心配してくれている口調なのは、長年の付き合いで分かった。
決して世間から良い目で見られないのだとは、日野自身が一番良く知っているのだろう。
佐貫が言ったように…、譲原に勧められたように…、生きていく世界は甘くないのかもしれない。
それでも、安らげる空間を与えてくれた佐貫の存在は大きく、たとえ譲原に止められても、成俊の中では頼りたいものの一つとして削ぎ落すことができずにいた。
一時は諦めようとしたはずなのに、離れれば離れるほど、もう一度縋りつきたくなる。
佐貫がもたらしてくれた空間は、成俊にとって、初めて味わった安堵だったのかもしれない。
そして付いてきたのは、我を忘れる快楽と絶頂。
もちろん、そんなことを、いくら日野でも話せる度胸の良さは持ち合わせていなかった。
「そんなんじゃない…」
力なく反論してみるが、日野のことだ。きっと見透かされているのだろう。
更に問い詰めたい日野を、神戸が制している。
たぶん、きっと、こういった相談事は日野よりも神戸の方が適しているのだと、なんとなく知れた。
譲原と佐貫の関係も気になっていた。
調停中は佐貫とのことを一切話題に出さない譲原だった。
安住のことを知る神戸なら、譲原と佐貫がどういう関係なのかも分かるのだろうか。
まだ知り合ったばかりの二人について、成俊が想像できるものは少ない。
ただ、譲原が佐貫に対して好意を寄せているのかもしれない、漠然とした思いしか気付くことができない。
これを神戸の目から見てもらえば、また違う、もっとはっきりとした意見が聞けるのかもしれなかった。
成俊の変化に気付いたように…。
「ショウ、お客さん、待ってるから」
さりげなく、神戸は日野を遠ざけた。
テーブル席にいる客に対して、日野を顎で促す。
客相手と分かれば仕方がないのか、渋々成俊の前から離れていく日野の姿があった。
そこを狙って、神戸が小声で囁いてきた。
「君くらいの子と一戦交えられたって、相手、いけてるのかもね。しかも、君にそれだけの色香を纏わせたんだから」
成俊には、神戸の言う言葉の意味の、半分も理解できなかった。
何より、心云々よりも、すでに身体の関係を持ったと断言できる神戸の洞察力に呆然とするしかなかった。
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ダメ生徒成俊を ご指導ご鞭撻のほど 宜しくお願いします<(_ _)>
「成俊、先生の お話しを しっかり聞いておくんですよッ!」
「アッ...ハイ...(*・・*:)」
(*´-д-)フゥ-3...byebye☆
「成俊、先生の お話しを しっかり聞いておくんですよッ!」
「アッ...ハイ...(*・・*:)」
(*´-д-)フゥ-3...byebye☆
けいったん様
こんにちはー。
先生の言うことをしっかりと…(汗)
> ダメ生徒成俊を ご指導ご鞭撻のほど 宜しくお願いします<(_ _)>
ダメ性徒ですか?!
どんなご指導が?!
> 「成俊、先生の お話しを しっかり聞いておくんですよッ!」
> 「アッ...ハイ...(*・・*:)」
いやぁぁぁんな展開がいっぱい。
先生がそもそも間違ってる(?!)
> (*´-д-)フゥ-3...byebye☆
きっと成俊はいいように成長します(?)
コメントありがとうございました。
こんにちはー。
先生の言うことをしっかりと…(汗)
> ダメ生徒成俊を ご指導ご鞭撻のほど 宜しくお願いします<(_ _)>
ダメ性徒ですか?!
どんなご指導が?!
> 「成俊、先生の お話しを しっかり聞いておくんですよッ!」
> 「アッ...ハイ...(*・・*:)」
いやぁぁぁんな展開がいっぱい。
先生がそもそも間違ってる(?!)
> (*´-д-)フゥ-3...byebye☆
きっと成俊はいいように成長します(?)
コメントありがとうございました。
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s様
おはようございます。
> 佐貫が再登場?かと、思っていたらなんと神戸&日野ですね。良い?アドバイスがもらえるのでしょうか?ちょっと心配です。真面目にお願いしたいです…。
佐貫、登場させられなくてすみません。
本人たちだけでは解決しそうな方向にないので助っ人出してみました。
真面目に…。真面目に…。真面目に……。
(心配されてるし…)
ちびっこシリーズではないのでギャグにはならないはずです。
もうちっとお付き合いくださると嬉しいです。(焦れ焦れでごめんなさいね)
こめんとありがとうございました。
おはようございます。
> 佐貫が再登場?かと、思っていたらなんと神戸&日野ですね。良い?アドバイスがもらえるのでしょうか?ちょっと心配です。真面目にお願いしたいです…。
佐貫、登場させられなくてすみません。
本人たちだけでは解決しそうな方向にないので助っ人出してみました。
真面目に…。真面目に…。真面目に……。
(心配されてるし…)
ちびっこシリーズではないのでギャグにはならないはずです。
もうちっとお付き合いくださると嬉しいです。(焦れ焦れでごめんなさいね)
こめんとありがとうございました。
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