成俊が勤務する店には常に様々な客が訪れる。
新婚かと思われる客を相手にすれば自分の破綻した生活と照らし合わせてみたり、男同士で家具を選ぶ姿には叶わない佐貫との暮らしを夢見ていた。
売り場に立ち、迷う客にアドバイスを入れたり、購入を促したり、と日常は忙しなく過ぎていく。
昼過ぎの店内で、目的のものを見つけた…という客と目があった。
ただ、その客の目的は、売り場にあるものではなく、そこに居る『成俊』なのだと、無言の目が語っていた。
30歳を過ぎているように見えた。
身なりは決して良いとは言えなく、古着のようなものを纏っている。
髪も適当に切ったと言わんばかりのボサボサで、口周りには無精髭も見えた。
だからと言って、『客』を拒絶することなどできない。
「なにか、お探しですか…?」
決められたような台詞が、恐々と成俊の口からこぼれると、いかにも接客をしている風を見せろという態度に出られる。
「あんた、佐貫とイイ仲なのか?」
唐突に突き付けられた質問に瞠目した。
バチっと目を見開いた成俊に、確信を得たように一枚の写真が目の前に差し出される。
車の中で抱きしめられ、唇を合わせる…、最後の夜に成俊が強請った行動が、映し出されていた。
自分と佐貫が何をしていたのか、他人の目から見られると、こう映っていたのか、と思わされるようなものだった。
成俊が中途半端に開けてしまったドアのせいで、車内には照らすように明りが灯っていた。
そのせいで余計に二人の姿がはっきりと見えてくる。
男女のような、人目をひく綺麗なものではないかもしれない。
だけど、あの時の温かさが身体の中に甦って来る。
同時に、これを撮られたことに対しての冷えた空気が成俊の背をなでた。
「こ、れ…」
佐貫の立場など考えていなかった。
欲のままに強請り、自己満足を得ようとした時…。
こんなものが佐貫の前に出されれば、彼の失脚を招くようなものだ。
今までとは変わる勤務についたことは、以前安住の事務所で又聞きした。
それは彼の職場では『昇格』という名前のものだったはずだ。
自分の離婚問題が片付いた今、こんなものを出されるとは、目的は佐貫しかいないだろうと思われた。
見せられた写真はスッと男の胸元のポケットに消えていった。
「あんな男の何がいい?自分の恋人が強姦されている時にのうのうと仕事をして、最終的に自殺にまで追い込んだ奴」
成俊は相手の男が何を言っているのか、理解しようとその言葉を反芻させた。
彼の優しさを知るから、そんなはずがないと脳が拒絶して意味を分からせてくれない。
強姦…?自殺…?
成俊には聞き慣れない言葉だった。
男の口元が歪む。
「大した出世街道だな。ヤツを潰したくなかったら俺たちに応えろよ。おまえが”来る”んだ。脅しじゃない。”同意”だろ?」
小さなメモを手渡された。住所しか書いてない。
男の眼は無言の圧力で『佐貫には伝えるな』と言っていた。
男は佐貫と成俊が深い関係なのだと思っているようだったが、そんなことはない。
しかし成俊にはそれを否定することができなかった。
逆らえば佐貫が危険にさらされる…。
何より、この男は佐貫の過去を知っている。
安住や譲原と、誰に聞いても答えてくれなさそうなことを、話してくれるのではないか…。
そんな単純な考えだった。
「勤務時間くらいは待ってやるよ」
“商談”をつけたと言わんばかりの態度で、男は店を出て行った。
にほんブログ村
いきなり「明日休み」と昨夜言いだしたバカがいる…。
また朝から書いちゃったよww
昼更新…とか言いながら今日パソチン見られそうにないから今のうちにupしときます。
週末?!…あぁ、もう諦めててね…。
34← →36
新婚かと思われる客を相手にすれば自分の破綻した生活と照らし合わせてみたり、男同士で家具を選ぶ姿には叶わない佐貫との暮らしを夢見ていた。
売り場に立ち、迷う客にアドバイスを入れたり、購入を促したり、と日常は忙しなく過ぎていく。
昼過ぎの店内で、目的のものを見つけた…という客と目があった。
ただ、その客の目的は、売り場にあるものではなく、そこに居る『成俊』なのだと、無言の目が語っていた。
30歳を過ぎているように見えた。
身なりは決して良いとは言えなく、古着のようなものを纏っている。
髪も適当に切ったと言わんばかりのボサボサで、口周りには無精髭も見えた。
だからと言って、『客』を拒絶することなどできない。
「なにか、お探しですか…?」
決められたような台詞が、恐々と成俊の口からこぼれると、いかにも接客をしている風を見せろという態度に出られる。
「あんた、佐貫とイイ仲なのか?」
唐突に突き付けられた質問に瞠目した。
バチっと目を見開いた成俊に、確信を得たように一枚の写真が目の前に差し出される。
車の中で抱きしめられ、唇を合わせる…、最後の夜に成俊が強請った行動が、映し出されていた。
自分と佐貫が何をしていたのか、他人の目から見られると、こう映っていたのか、と思わされるようなものだった。
成俊が中途半端に開けてしまったドアのせいで、車内には照らすように明りが灯っていた。
そのせいで余計に二人の姿がはっきりと見えてくる。
男女のような、人目をひく綺麗なものではないかもしれない。
だけど、あの時の温かさが身体の中に甦って来る。
同時に、これを撮られたことに対しての冷えた空気が成俊の背をなでた。
「こ、れ…」
佐貫の立場など考えていなかった。
欲のままに強請り、自己満足を得ようとした時…。
こんなものが佐貫の前に出されれば、彼の失脚を招くようなものだ。
今までとは変わる勤務についたことは、以前安住の事務所で又聞きした。
それは彼の職場では『昇格』という名前のものだったはずだ。
自分の離婚問題が片付いた今、こんなものを出されるとは、目的は佐貫しかいないだろうと思われた。
見せられた写真はスッと男の胸元のポケットに消えていった。
「あんな男の何がいい?自分の恋人が強姦されている時にのうのうと仕事をして、最終的に自殺にまで追い込んだ奴」
成俊は相手の男が何を言っているのか、理解しようとその言葉を反芻させた。
彼の優しさを知るから、そんなはずがないと脳が拒絶して意味を分からせてくれない。
強姦…?自殺…?
成俊には聞き慣れない言葉だった。
男の口元が歪む。
「大した出世街道だな。ヤツを潰したくなかったら俺たちに応えろよ。おまえが”来る”んだ。脅しじゃない。”同意”だろ?」
小さなメモを手渡された。住所しか書いてない。
男の眼は無言の圧力で『佐貫には伝えるな』と言っていた。
男は佐貫と成俊が深い関係なのだと思っているようだったが、そんなことはない。
しかし成俊にはそれを否定することができなかった。
逆らえば佐貫が危険にさらされる…。
何より、この男は佐貫の過去を知っている。
安住や譲原と、誰に聞いても答えてくれなさそうなことを、話してくれるのではないか…。
そんな単純な考えだった。
「勤務時間くらいは待ってやるよ」
“商談”をつけたと言わんばかりの態度で、男は店を出て行った。
にほんブログ村
いきなり「明日休み」と昨夜言いだしたバカがいる…。
また朝から書いちゃったよww
昼更新…とか言いながら今日パソチン見られそうにないから今のうちにupしときます。
週末?!…あぁ、もう諦めててね…。
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成俊、危ないヤツだなー
脅されただけじゃなくて、知りたいからって付いてっちゃいけないでしょう
これまでのところで浮かんだ成俊クン像は、
きっともともと華奢で可愛い系の男の子だったんじゃないかな
で、いろいろあって苦労してクールっていうか影のある感じとか
佐貫さんの言うところの放っておけない危なっかしいところとかあって
その手の人達の加虐心もそそられそうな感じ。
その上佐貫さんに出会って知った心とカラダの喜び、あふれる色香…(膨らむ妄想)
危ない、絶対危ないぞ
脅されただけじゃなくて、知りたいからって付いてっちゃいけないでしょう
これまでのところで浮かんだ成俊クン像は、
きっともともと華奢で可愛い系の男の子だったんじゃないかな
で、いろいろあって苦労してクールっていうか影のある感じとか
佐貫さんの言うところの放っておけない危なっかしいところとかあって
その手の人達の加虐心もそそられそうな感じ。
その上佐貫さんに出会って知った心とカラダの喜び、あふれる色香…(膨らむ妄想)
危ない、絶対危ないぞ
不定時間でも 更新されてたら嬉しいです!
佐貫の過去を知る男の登場!
とても気になる言葉を残し 成俊をこれから どうするつもり?
成俊は きっと その場所に 一人で行くんだろうなぁ、佐貫には 言わないで。
(´`:)ゞbyebye☆
佐貫の過去を知る男の登場!
とても気になる言葉を残し 成俊をこれから どうするつもり?
成俊は きっと その場所に 一人で行くんだろうなぁ、佐貫には 言わないで。
(´`:)ゞbyebye☆
s様
こんにちは
> 成俊くん、日野さんや神戸さんを思い出してよ~。
成俊、何考えてんだーっ!?って感じですね。
日野と神戸のような甘々な生活…。
男同士でも幸せな人はいっぱいいるんです。
コメントありがとうございました。
こんにちは
> 成俊くん、日野さんや神戸さんを思い出してよ~。
成俊、何考えてんだーっ!?って感じですね。
日野と神戸のような甘々な生活…。
男同士でも幸せな人はいっぱいいるんです。
コメントありがとうございました。
甲斐様
こんにちはー。
> 成俊、危ないヤツだなー
> 脅されただけじゃなくて、知りたいからって付いてっちゃいけないでしょう
ですです、うんうん。
> これまでのところで浮かんだ成俊クン像は、
> きっともともと華奢で可愛い系の男の子だったんじゃないかな
> で、いろいろあって苦労してクールっていうか影のある感じとか
> 佐貫さんの言うところの放っておけない危なっかしいところとかあって
> その手の人達の加虐心もそそられそうな感じ。
> その上佐貫さんに出会って知った心とカラダの喜び、あふれる色香…(膨らむ妄想)
> 危ない、絶対危ないぞ
日野に刺激されて(え?!)佐貫に調教されて(ちがうっ!)成俊の隠れた美が開きました。
可愛い系は当たっているのではないでしょうか。
佐貫も思わず手を出してしまう儚さ、初々しさ、無知さ…。
まさに『無意識に誘う男、成俊』かもしれません。
危ないです!
知らないって、知らないにもほどがある、成俊。(神戸にも注意されてたのに)
コメントありがとうございました。
こんにちはー。
> 成俊、危ないヤツだなー
> 脅されただけじゃなくて、知りたいからって付いてっちゃいけないでしょう
ですです、うんうん。
> これまでのところで浮かんだ成俊クン像は、
> きっともともと華奢で可愛い系の男の子だったんじゃないかな
> で、いろいろあって苦労してクールっていうか影のある感じとか
> 佐貫さんの言うところの放っておけない危なっかしいところとかあって
> その手の人達の加虐心もそそられそうな感じ。
> その上佐貫さんに出会って知った心とカラダの喜び、あふれる色香…(膨らむ妄想)
> 危ない、絶対危ないぞ
日野に刺激されて(え?!)佐貫に調教されて(ちがうっ!)成俊の隠れた美が開きました。
可愛い系は当たっているのではないでしょうか。
佐貫も思わず手を出してしまう儚さ、初々しさ、無知さ…。
まさに『無意識に誘う男、成俊』かもしれません。
危ないです!
知らないって、知らないにもほどがある、成俊。(神戸にも注意されてたのに)
コメントありがとうございました。
けいったん様
こちらにもコメいただき感謝です。
> 佐貫の過去を知る男の登場!
> とても気になる言葉を残し 成俊をこれから どうするつもり?
> 成俊は きっと その場所に 一人で行くんだろうなぁ、佐貫には 言わないで。
> (´`:)ゞbyebye☆
いよいよ佐貫の過去に迫ります。
成俊にとっては意味深な言葉を残していってくれました。
成俊はまたもや自分で抱えて行動するのでしょう。
佐貫が心配してましたねー。
『一人で悩んでパンクするー』って。
甘えとけばいいのに…。
一人できっと行ってしまいます。
その先のことは… _-)))コソコソ(←シェルターを作りに行っている)
コメントありがとうございました。
こちらにもコメいただき感謝です。
> 佐貫の過去を知る男の登場!
> とても気になる言葉を残し 成俊をこれから どうするつもり?
> 成俊は きっと その場所に 一人で行くんだろうなぁ、佐貫には 言わないで。
> (´`:)ゞbyebye☆
いよいよ佐貫の過去に迫ります。
成俊にとっては意味深な言葉を残していってくれました。
成俊はまたもや自分で抱えて行動するのでしょう。
佐貫が心配してましたねー。
『一人で悩んでパンクするー』って。
甘えとけばいいのに…。
一人できっと行ってしまいます。
その先のことは… _-)))コソコソ(←シェルターを作りに行っている)
コメントありがとうございました。
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