R18 痛く思われるシーンがあります。閲覧にはご注意ください。
成視(なるみ)という名前は初めて聞いた。
だが、何となく知っているような気がした。
冷たいコンクリートの床の上に、後ろ手に縛れて転がされた成俊は考える力を失っていた。
淡々と語る男の隣で、遊び疲れたと言いたそうな男2人が身支度を整えて、「じゃ、俺たち行くぜ」と建物を出て行こうとした。
『兄』の話などに興味はなく、単に甚振れる存在を目的に、ここに居たのだろう。
「ああ」
ひらりと手を翳した『兄』は短い別れ言葉を口にしたたげで、切り刻まれた成俊の衣類に近付いた。
その中から携帯電話を拾い上げると、転がって身動き一つできないでいる成俊の全身を撮影した。
「成視がいなくなった、と連絡した時も、佐貫は捜査中で、成視を探してもくれなかった。自分の恋人だっていうのに、後回しにされたんだ。明け方、ボロボロの姿で帰ってきた。体中痣と擦過傷だらけだった。病院に運んだと知らせても、アイツが来たのは面会時間が終わってからだ。成視は身捨てられたって思ってた。他の男で散々嬲られた体を汚らわしいと、佐貫に愛想を尽かされたんだと。夕方、目を離した時、成視は首を吊ってた」
生きて二人が顔を合わせることはなかったと続けられた。
成視の身に何が起こったのかは、残った身体で判断するしかなかった。
わざわざ言葉にしなくても分かることを、成俊から言わせることで佐貫に更なるショックと後悔を与えたいのだろう。
「俺は親切だからな。迎え、呼んでやるよ。この写真見て、”刑事さん”、どれくらいの時間で来てくれるかな」
今撮られたばかりの写真が佐貫に送りつけられるのだと知った。
携帯を操作する音が、成俊の拒絶する声と重なる。
今のこんな姿を佐貫に見られたくない。
どこまでも足を引っ張る人間と思われたくない。
元々は成俊がキスを強請ったことから始まっている。
成俊の掠れた声を遮るように、けたたましく着信音が鳴り響いた。
携帯の画面を見ていた男が忌々しそうに成俊を見下ろした。
「随分な違いだな。まぁいい。じっくりその姿見てもらえよ」
そう言うと、通話ボタンを押しただけの携帯電話を成俊の顔の横の床に置いた。
『ナリトシかっ?!今どこに居る?!何があったっ?!』
怒声が通話口から聞こえてきた。
佐貫の声が心配してだと分かっただけでホッとする気持ちと、嫌われるという気持ちが交錯する。
ツツーッと涙が床の上に落ちていく。
嗚咽が漏れれば、聞きとった佐貫が何度も同じ質問を繰り返してきた。
『ナリトシっ!!無事か?!どこに居るんだっ?!!』
佐貫の声は男にも聞こえているはずだった。
電話の向こうに聞こえないようにと、男の口が成俊の耳元に近付けられ囁かれる。
「言えよ」
メモに書かれていた住所は成俊の頭の中に残っていた。
それを言えば、佐貫は駆けつけてくれるのだろうか…。
「ひぃぃぃっ!!」
突然剥き出しのままの股間を強く握られて悲鳴が漏れる。
尚更慌てたような佐貫の口調が響いた。
『ナリトシっっ??!!』
再び恐怖の中に追い込まれた成俊は、男に促されるまま場所を伝えた。
…殺される…!!
『すぐ行くっ!!電話、切るなよっ!!』
電話の向こうのガタガタという音と、人と会話をする声が成俊の耳に届いた。
まだ仕事中だったのだろうか…。
男が、話は済んだといわんばかりにフッと口角を上げると、無言のまま出て行った。
解放されたのだ、という安堵が心に広がった。
身体の自由がきかない成俊には通話を終わりにすることなどできない。
絶えず洩れる泣き声に、幾度も佐貫が状況を尋ねてきた。だけど大したことなど言えなかった。
ただ、佐貫の声が聞こえる…、それが嬉しいだけだった。
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痛いシーンはなるべく書きたくなく…(だったらこんな展開にするな!!なんですけど…)
だいぶ削って書いてしまいました。
皆様のご想像に頼ってます(汗)
36← →38
成視(なるみ)という名前は初めて聞いた。
だが、何となく知っているような気がした。
冷たいコンクリートの床の上に、後ろ手に縛れて転がされた成俊は考える力を失っていた。
淡々と語る男の隣で、遊び疲れたと言いたそうな男2人が身支度を整えて、「じゃ、俺たち行くぜ」と建物を出て行こうとした。
『兄』の話などに興味はなく、単に甚振れる存在を目的に、ここに居たのだろう。
「ああ」
ひらりと手を翳した『兄』は短い別れ言葉を口にしたたげで、切り刻まれた成俊の衣類に近付いた。
その中から携帯電話を拾い上げると、転がって身動き一つできないでいる成俊の全身を撮影した。
「成視がいなくなった、と連絡した時も、佐貫は捜査中で、成視を探してもくれなかった。自分の恋人だっていうのに、後回しにされたんだ。明け方、ボロボロの姿で帰ってきた。体中痣と擦過傷だらけだった。病院に運んだと知らせても、アイツが来たのは面会時間が終わってからだ。成視は身捨てられたって思ってた。他の男で散々嬲られた体を汚らわしいと、佐貫に愛想を尽かされたんだと。夕方、目を離した時、成視は首を吊ってた」
生きて二人が顔を合わせることはなかったと続けられた。
成視の身に何が起こったのかは、残った身体で判断するしかなかった。
わざわざ言葉にしなくても分かることを、成俊から言わせることで佐貫に更なるショックと後悔を与えたいのだろう。
「俺は親切だからな。迎え、呼んでやるよ。この写真見て、”刑事さん”、どれくらいの時間で来てくれるかな」
今撮られたばかりの写真が佐貫に送りつけられるのだと知った。
携帯を操作する音が、成俊の拒絶する声と重なる。
今のこんな姿を佐貫に見られたくない。
どこまでも足を引っ張る人間と思われたくない。
元々は成俊がキスを強請ったことから始まっている。
成俊の掠れた声を遮るように、けたたましく着信音が鳴り響いた。
携帯の画面を見ていた男が忌々しそうに成俊を見下ろした。
「随分な違いだな。まぁいい。じっくりその姿見てもらえよ」
そう言うと、通話ボタンを押しただけの携帯電話を成俊の顔の横の床に置いた。
『ナリトシかっ?!今どこに居る?!何があったっ?!』
怒声が通話口から聞こえてきた。
佐貫の声が心配してだと分かっただけでホッとする気持ちと、嫌われるという気持ちが交錯する。
ツツーッと涙が床の上に落ちていく。
嗚咽が漏れれば、聞きとった佐貫が何度も同じ質問を繰り返してきた。
『ナリトシっ!!無事か?!どこに居るんだっ?!!』
佐貫の声は男にも聞こえているはずだった。
電話の向こうに聞こえないようにと、男の口が成俊の耳元に近付けられ囁かれる。
「言えよ」
メモに書かれていた住所は成俊の頭の中に残っていた。
それを言えば、佐貫は駆けつけてくれるのだろうか…。
「ひぃぃぃっ!!」
突然剥き出しのままの股間を強く握られて悲鳴が漏れる。
尚更慌てたような佐貫の口調が響いた。
『ナリトシっっ??!!』
再び恐怖の中に追い込まれた成俊は、男に促されるまま場所を伝えた。
…殺される…!!
『すぐ行くっ!!電話、切るなよっ!!』
電話の向こうのガタガタという音と、人と会話をする声が成俊の耳に届いた。
まだ仕事中だったのだろうか…。
男が、話は済んだといわんばかりにフッと口角を上げると、無言のまま出て行った。
解放されたのだ、という安堵が心に広がった。
身体の自由がきかない成俊には通話を終わりにすることなどできない。
絶えず洩れる泣き声に、幾度も佐貫が状況を尋ねてきた。だけど大したことなど言えなかった。
ただ、佐貫の声が聞こえる…、それが嬉しいだけだった。
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痛いシーンはなるべく書きたくなく…(だったらこんな展開にするな!!なんですけど…)
だいぶ削って書いてしまいました。
皆様のご想像に頼ってます(汗)
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s様
こんにちはーっ
> これからふたりは、どうなるの~!
> でも、きっとうまくいくと信じてます(>_<)。
どうなるんでしょうかー。
あーしてこーして、あんなことも、こんなことも…(???????)
ご期待、めちゃめちゃ高そうです(汗)
好きになった!(相手も喜んでくれた!!)うまくいった!!っていうふうなお話だったら良かったんですけどねー
コメントありがとうございました。
こんにちはーっ
> これからふたりは、どうなるの~!
> でも、きっとうまくいくと信じてます(>_<)。
どうなるんでしょうかー。
あーしてこーして、あんなことも、こんなことも…(???????)
ご期待、めちゃめちゃ高そうです(汗)
好きになった!(相手も喜んでくれた!!)うまくいった!!っていうふうなお話だったら良かったんですけどねー
コメントありがとうございました。
心も 体も ボロボロで ズタズタな成俊。
佐貫、こんな成俊を見て どうするの?
ただ願う事は 恋人だった成視を亡くした時の過ちは 繰り返さないで欲しい...
きえ様の<R20>を しっかりと 堪能させて頂きました。
面白かった!と、思う私は やはり 鬼畜でSなんでしょうね(o´ェ`o)ゞエヘヘbyebye☆
佐貫、こんな成俊を見て どうするの?
ただ願う事は 恋人だった成視を亡くした時の過ちは 繰り返さないで欲しい...
きえ様の<R20>を しっかりと 堪能させて頂きました。
面白かった!と、思う私は やはり 鬼畜でSなんでしょうね(o´ェ`o)ゞエヘヘbyebye☆
佐貫さん何もかも放り出してすっ飛んで来るようですね
それがまたこの男には許せないことなのでしょう
成俊さんは、この状況はキスをねだった自分が招いたことだし、その上迷惑をかけてしまうと自分を責めているところが辛すぎます。
それがまたこの男には許せないことなのでしょう
成俊さんは、この状況はキスをねだった自分が招いたことだし、その上迷惑をかけてしまうと自分を責めているところが辛すぎます。
けいったん様
おはようございます。
> 心も 体も ボロボロで ズタズタな成俊。
> 佐貫、こんな成俊を見て どうするの?
> ただ願う事は 恋人だった成視を亡くした時の過ちは 繰り返さないで欲しい...
佐貫は成俊に対してどんな気持ちを持っているんでしょう。
成視のことも引っかかっているんだろうなぁ。
> きえ様の<R20>を しっかりと 堪能させて頂きました。
> 面白かった!と、思う私は やはり 鬼畜でSなんでしょうね(o´ェ`o)ゞエヘヘbyebye☆
けいったん様もS~!!
詳しい描写は避けてしまいました私です.....(;__)/|
それなのに堪能していただけましたか。感謝。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> 心も 体も ボロボロで ズタズタな成俊。
> 佐貫、こんな成俊を見て どうするの?
> ただ願う事は 恋人だった成視を亡くした時の過ちは 繰り返さないで欲しい...
佐貫は成俊に対してどんな気持ちを持っているんでしょう。
成視のことも引っかかっているんだろうなぁ。
> きえ様の<R20>を しっかりと 堪能させて頂きました。
> 面白かった!と、思う私は やはり 鬼畜でSなんでしょうね(o´ェ`o)ゞエヘヘbyebye☆
けいったん様もS~!!
詳しい描写は避けてしまいました私です.....(;__)/|
それなのに堪能していただけましたか。感謝。
コメントありがとうございました。
甲斐様
おはようございます。
> 佐貫さん何もかも放り出してすっ飛んで来るようですね
> それがまたこの男には許せないことなのでしょう
> 成俊さんは、この状況はキスをねだった自分が招いたことだし、その上迷惑をかけてしまうと自分を責めているところが辛すぎます。
佐貫速攻で動き出しました。
過去があるから佐貫も必死だと思います。
佐貫のせいでこんな目にあっているはずなのに、原因は自分と思っている成俊って意外と(?)健気な子でした。
(いえいえ、悪い人を捕まえるのが刑事さんのお仕事ですから、お仕事の邪魔をしているってことはないんですよー、と教えてやりたい)
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> 佐貫さん何もかも放り出してすっ飛んで来るようですね
> それがまたこの男には許せないことなのでしょう
> 成俊さんは、この状況はキスをねだった自分が招いたことだし、その上迷惑をかけてしまうと自分を責めているところが辛すぎます。
佐貫速攻で動き出しました。
過去があるから佐貫も必死だと思います。
佐貫のせいでこんな目にあっているはずなのに、原因は自分と思っている成俊って意外と(?)健気な子でした。
(いえいえ、悪い人を捕まえるのが刑事さんのお仕事ですから、お仕事の邪魔をしているってことはないんですよー、と教えてやりたい)
コメントありがとうございました。
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