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BLの丘
眼差し 38
2011-01-23-Sun  CATEGORY: 眼差し
どれくらいの時間が経ったのだろう。
ずっと携帯電話から佐貫の声が聞こえていたから時間の感覚がなかった。
けたたましいサイレンの音が響いて来て、傍で止まった。
バタンッという勢いよく建物の扉が開く音と共に「ナリトシっ?!」と夢にまで見た声が機械を通さずにコンクリートの部屋の中に木霊する。
建物の中には小さな電気が灯っているだけだったが、照らされるライトがあり、丸裸の成俊を余計に明るく映しだした。
古びた事務デスクの下に、体中を縄で縛られて横たわった成俊を見つけた佐貫の瞳が大きく見開かれた。
途端に穢れた自分と彼を巻きこんだことに対する後悔で埋め尽くされる。
「いやだっ!見ないでっ!!見ないで―っっっ!!!!」
成俊から叫ばれる声も力なく掠れていた。
スッと上着を脱いだ佐貫が成俊の汚れた身体を覆った。
動揺と冷静…。
どちらとも判別がつかない佐貫の態度に、駆けつけてくれた嬉しさと仕事上慣れているような雰囲気が成俊を悲しくさせた。
佐貫にとってはこういった事件を片付けるのも”仕事”の一つであるはずだ。
「なんでこんなことになった?相手を覚えているか?!…とにかく病院に行こう。傷がある」
「嫌だっ!!」
凌辱された身体を人に見られるなど、絶対に嫌だと思った。
どんなことがあっても自分は『男』だ。
男に犯されるなんて話は、これまでの生きてきた知識の中にない。
縛られた縄を解きながら佐貫の温かな掌が汚れているはずの成俊の髪を撫でた。
顔面とその周辺に飛ばされた精子はすでに乾き始めていた。
「信頼のおける医者だ。大丈夫だ。何があってもおまえを守ってやる」
佐貫の言葉が胸の中にすーっと染み込んできた。
ほぐれた腕が、ようやく人の温もりを感じられると、佐貫に縋りついた。
汚れた身体であるはずなのに、抱きしめ返してくれた腕の力強さに涙がこぼれる。
「ごめんなさい…」
こんな状況でありながら、成俊は謝罪の言葉を喉奥から発して佐貫を驚かせた。
こんな目にまであっているのに、謝られる理由が佐貫には分からなかったからだ。

色々聞きたいのであろうが、憔悴した成俊の体と精神を気遣ったのか、佐貫は車から持ってきた毛布で成俊をくるむと、近くにあるという病院に成俊を運び込んだ。
大きな病院ではないが、入院できるくらいの設備まで整えられている。
すでに連絡はつけられていたようで、裏口から迎えてくれた人間は白衣を纏った医師1人だ。
外に出てきた彼は車に近づくと、ぐったりした成俊を見下ろした。
佐貫と年が変わらなさそうに見える、縁なしの眼鏡をかけた医師に向かって、「検査と…、風呂を使わせてくれ」と佐貫が一番に伝えれば、分かったように医師の首が静かに頷いた。
成俊に何が起こったのかも承知している医師の動きはあまりにもスムーズだった。
成俊は佐貫に横抱きにされて診察用のベッドに一度下ろされた。
横向きの体勢にされて、膝をくの字に曲げられると、孔の傷口を調べるように医師の持つ器具が恥部を擦った。
それらがHIVを検査するものだとは、成俊は知らなかった。

「一度洗おう。看護師を呼ぼうか?」
「いや、俺が」
運び込まれた成俊は、髪から足のつま先まで精子と汚水で汚れているような姿だった。
いくら体力に限界があったとしても、人に身体を洗ってもらうなど、ましてやこの状況下で人の手を煩わせるなど…と拒んだ。
だが佐貫に首を横に振られた。
「言いづらいが…、中にも大量に出されている。きちんと処理しないと、この後が辛くなるだけだ」
どういうことなのか、成俊には理解できなかった。
ただ優しい腕が成俊を抱えてくれるから、泣いて縋るだけだ。
嫌だ…と、か細い声で泣きながら、しかし逆らえずに佐貫に入院患者用の浴室に連れられて、浴槽に横にされた成俊は、丁寧な仕草で頭皮から足の爪まで綺麗に洗われた。
後ろの孔に指を入れられた時、『中』の意味を知った。
こんなことをされて許せるのはきっと佐貫だけだ。
それが分かっていたから、『看護師』という存在も佐貫は拒んでくれたのだろう。
湯が沁みることと指の動きにびくびくっと身体を強張らせる。
慎重な動きで身体を洗われた後、薄い前合わせの入院着を着せられた。
抱きかかえられて再び診察室に戻され、やはり横向きに寝かされて臀部を露わにされた。

「激しいな…」
医師の痛々しい言葉が見えない部分の状況を語ってくれているようだ。
風呂場でも痛みに悶え打つのに、「少しだけ我慢してくれ」と佐貫に、中に零された体液をかきだされた。
汚された身体が、そうやって綺麗になるのかもしれない、と錯覚を覚えた。
だが、この後にやってくる現実は、どうなのだろう…?
自分は”汚れた”のだ…と、医師の言葉で痛感させられる。

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コメント

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佐貫さ~ん
コメントshigetan | URL | 2011-01-23-Sun 11:49 [編集]
成俊を支えてあげてね。成俊も本当のことをちゃんと話すんだよ。
続きが気になりすぎで、大丈夫かな?私は…
Re: 佐貫さ~ん
コメントきえ | URL | 2011-01-23-Sun 17:09 [編集]
shigetan様
こんにちは。
速攻でコメくださったのですね。

> 成俊を支えてあげてね。成俊も本当のことをちゃんと話すんだよ。
> 続きが気になりすぎで、大丈夫かな?私は…

佐貫と成俊の関係、少しは近づくでしょうか。
それとも…。
楽しみにしてくださって嬉しいです。
私は大歓迎ですよ。
コメントありがとうございました。
はじめまして
コメント | URL | 2011-01-23-Sun 18:22 [編集]
毎日UPされるのが待ち遠しくてなりません!
展開もですがお医者さまも気になりますね~♪慣れてらっしゃるのでしょうか?
Re: はじめまして
コメントきえ | URL | 2011-01-23-Sun 21:48 [編集]
はじめまして様
こんばんは。

> 毎日UPされるのが待ち遠しくてなりません!
> 展開もですがお医者さまも気になりますね~♪慣れてらっしゃるのでしょうか?

できるだけ止めないように進めていきたいのですが、これがなかなか.....(;__)/|
でも待ってくれる方がいるって思うと嬉しく励みになります♪
お医者さん… 登場人物ばかり増えてますね~(笑)
こんな事件に慣れている医者っていうのも悲しいかな。
あ、それとも佐貫に慣れているっていうほうでしたかね。
はい、仲の良い方です(またそのうちどこかで…いつになるんだか)
コメントありがとうございました。
No title
コメント甲斐 | URL | 2011-01-23-Sun 22:01 [編集]
成俊は、汚れてしまった身体とそれを好きな人に見られ何があったのか知れてしまったと思うと、さぞ辛いことでしょう。
以前佐貫さんが大切に抱いてくれた思い出も汚されたように感じるのではないかと思うと、一層かわいそう。
こんなふうに手当てしてもらうのも苦しいと思う。
身体の傷よりも心の傷が深そう、佐貫さんが癒せるといいのですが…。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-01-24-Mon 07:44 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> 成俊は、汚れてしまった身体とそれを好きな人に見られ何があったのか知れてしまったと思うと、さぞ辛いことでしょう。
> 以前佐貫さんが大切に抱いてくれた思い出も汚されたように感じるのではないかと思うと、一層かわいそう。
> こんなふうに手当てしてもらうのも苦しいと思う。
> 身体の傷よりも心の傷が深そう、佐貫さんが癒せるといいのですが…。

心の傷はめちゃ深いと思います。
そこをなんとか、佐貫に頑張ってもらって…。
これから少しずつ展開していけたらいいんですけど…。
コメントありがとうございました。
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