佳史とは身体だけの関係を続けた2年…。
望が思う相手はひとりきりで、望を思ってくれる人も変わらない。
友人である安住享利(あずみ きょうり)が、『離婚問題を抱えている子がいるんだ』と突然連絡をしてきた。
安住も弁護士であったが、企業問題ばかりを請ける安住と望では専門分野が違っていた。
永遠の愛を誓ったはずなのに、別れるときは悲惨なやりとりがあることを望は嫌というほど見てきた。
いつか、佳史の手も失うのではないか…。
そんなことを思うから、友人から恋人へと移り変われないのかもしれない。
『佐貫がね、デリカシーのないことばっか言って。アイツの言葉で傷ついているようだったら慰めてあげてよ。まだまだ人生これからの子なんだ』
電話での会話で、自分の思い人と安住の家で顔を合わせたのが知れた。
直接的な言葉で相手と隙間を作らずにコミュニケーションをとろうとするのが佐貫光也(さぬき みつや)の性格と言えた。
そんなところに、望も惹かれている、とは安住には言えずにいる。
もちろん、悪気がないことは安住も充分承知しているし、付き合いが長いだけに嫌悪する部分もない。
「うん、分かったよ。でも”人生これから”って僕たちだってまだまだだよ」
若い子を相手にした言い分に苦笑すると、安住も『そうだね』と笑っていた。
話を聞けば、安住の知人からの紹介らしく、また安住の思い相手でもある人と同じ年らしく放っておけないのが分かった。
26歳で離婚問題か…。
ぽつりと内心で呟いてから、残されている他の仕事に取り掛かる。
話を聞いた時は、ただの”仕事”というくくりだった。
だが、実際にその彼を見た時、言いようもない危機感を覚えた。
誰かに似ている…。
気弱げで儚そうで…だけど彼には言い知れぬ努力する姿が垣間見えた。
不安を覚えたのは、佐貫の昔付き合った人間に似ている気がしたからだ。
そして、安住の家ですでに佐貫とも顔を合わせている。
唯一の救いだったのは、彼が離婚問題を抱える、つまり『女性を対象に付き合う人間』だったことだ。
そういう相手に佐貫は無茶をすることはない。
どれだけ好みといっても、男同士なんて特殊で異様な世界のはずだろう。
さり気なく佐貫の名前を出しても、特に反応も見せられなかったことに安堵していた。
今の彼にとっては、目の前の『離婚』のほうが切羽詰まった問題であることだし…。
それなのに、久し振りに佐貫から連絡があったかと思えば、「彼の勤務先を教えてくれ」というもので、何がなんだか分からず瞠目する。
確かに前日、彼にとっては衝撃的な『妻の浮気現場』の写真を見せた。
完全に消沈した姿は見ていたが、それがどうして佐貫と繋がるのか…。
『なんだかえらく落ち込んでいる風だった。そこをチンピラに絡まれていたんだ。今、少し熱もあるし、眠っているから仕事を休ませてやろうと思ってな…』
佐貫の性格を考えると、彼を泊めたのだろなとは簡単に悟ることができた。
気弱な彼の性格では、チンピラに絡まれた後など不安でどうしようもなかったのだろう。
その上、精神的なショックまで抱えている時だ。
嫌な予感はしたが、自分が口出しするのも変な気がして、諦観することにした。
彼が『男には向かない』と最後ののぞみを託して…。
再会した時の彼は、先日見かけた時よりもずっとスッキリしている態度をしていた。
嫌な予感が当たったのを知った。
『抱かれた…』
佐貫の家に居た一夜に何があったのか、即座に知ることができるくらい、彼が纏う雰囲気が激変していた。
自分は一度として、あの腕にかこわれることはなかったのに、どうして目の前の人間はいとも簡単に彼の心を捕らえることができるのか…。
悲しみと恨み。
積もり積もったものが大人げなく爆発していく。
「一時的な癒しに翻弄されて世界を見失うのは間違いだよ。武田君はこの後、幾らだって女性を愛せるし、それを望まれるご両親もいるよね?一度は手に入れたはずの子供を手放すというのはとても辛いことだと思う。ましてやこんな形で暴かれた事実を目の前にして、それでも気丈に振舞おうとしている。もう一度きちんと自分の子供を儲けたいと思うなら、頼るのは佐貫でなく、僕にしてくれないかな」
彼の希望の綱を絶ち切るものでもあったけれど、同時に望自身にまだチャンスがあると思わせたいエゴに見舞われた。
にほんブログ村
また短い…。ごめんなさい。
2← →4
望が思う相手はひとりきりで、望を思ってくれる人も変わらない。
友人である安住享利(あずみ きょうり)が、『離婚問題を抱えている子がいるんだ』と突然連絡をしてきた。
安住も弁護士であったが、企業問題ばかりを請ける安住と望では専門分野が違っていた。
永遠の愛を誓ったはずなのに、別れるときは悲惨なやりとりがあることを望は嫌というほど見てきた。
いつか、佳史の手も失うのではないか…。
そんなことを思うから、友人から恋人へと移り変われないのかもしれない。
『佐貫がね、デリカシーのないことばっか言って。アイツの言葉で傷ついているようだったら慰めてあげてよ。まだまだ人生これからの子なんだ』
電話での会話で、自分の思い人と安住の家で顔を合わせたのが知れた。
直接的な言葉で相手と隙間を作らずにコミュニケーションをとろうとするのが佐貫光也(さぬき みつや)の性格と言えた。
そんなところに、望も惹かれている、とは安住には言えずにいる。
もちろん、悪気がないことは安住も充分承知しているし、付き合いが長いだけに嫌悪する部分もない。
「うん、分かったよ。でも”人生これから”って僕たちだってまだまだだよ」
若い子を相手にした言い分に苦笑すると、安住も『そうだね』と笑っていた。
話を聞けば、安住の知人からの紹介らしく、また安住の思い相手でもある人と同じ年らしく放っておけないのが分かった。
26歳で離婚問題か…。
ぽつりと内心で呟いてから、残されている他の仕事に取り掛かる。
話を聞いた時は、ただの”仕事”というくくりだった。
だが、実際にその彼を見た時、言いようもない危機感を覚えた。
誰かに似ている…。
気弱げで儚そうで…だけど彼には言い知れぬ努力する姿が垣間見えた。
不安を覚えたのは、佐貫の昔付き合った人間に似ている気がしたからだ。
そして、安住の家ですでに佐貫とも顔を合わせている。
唯一の救いだったのは、彼が離婚問題を抱える、つまり『女性を対象に付き合う人間』だったことだ。
そういう相手に佐貫は無茶をすることはない。
どれだけ好みといっても、男同士なんて特殊で異様な世界のはずだろう。
さり気なく佐貫の名前を出しても、特に反応も見せられなかったことに安堵していた。
今の彼にとっては、目の前の『離婚』のほうが切羽詰まった問題であることだし…。
それなのに、久し振りに佐貫から連絡があったかと思えば、「彼の勤務先を教えてくれ」というもので、何がなんだか分からず瞠目する。
確かに前日、彼にとっては衝撃的な『妻の浮気現場』の写真を見せた。
完全に消沈した姿は見ていたが、それがどうして佐貫と繋がるのか…。
『なんだかえらく落ち込んでいる風だった。そこをチンピラに絡まれていたんだ。今、少し熱もあるし、眠っているから仕事を休ませてやろうと思ってな…』
佐貫の性格を考えると、彼を泊めたのだろなとは簡単に悟ることができた。
気弱な彼の性格では、チンピラに絡まれた後など不安でどうしようもなかったのだろう。
その上、精神的なショックまで抱えている時だ。
嫌な予感はしたが、自分が口出しするのも変な気がして、諦観することにした。
彼が『男には向かない』と最後ののぞみを託して…。
再会した時の彼は、先日見かけた時よりもずっとスッキリしている態度をしていた。
嫌な予感が当たったのを知った。
『抱かれた…』
佐貫の家に居た一夜に何があったのか、即座に知ることができるくらい、彼が纏う雰囲気が激変していた。
自分は一度として、あの腕にかこわれることはなかったのに、どうして目の前の人間はいとも簡単に彼の心を捕らえることができるのか…。
悲しみと恨み。
積もり積もったものが大人げなく爆発していく。
「一時的な癒しに翻弄されて世界を見失うのは間違いだよ。武田君はこの後、幾らだって女性を愛せるし、それを望まれるご両親もいるよね?一度は手に入れたはずの子供を手放すというのはとても辛いことだと思う。ましてやこんな形で暴かれた事実を目の前にして、それでも気丈に振舞おうとしている。もう一度きちんと自分の子供を儲けたいと思うなら、頼るのは佐貫でなく、僕にしてくれないかな」
彼の希望の綱を絶ち切るものでもあったけれど、同時に望自身にまだチャンスがあると思わせたいエゴに見舞われた。
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また短い…。ごめんなさい。
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- 関連記事
今日ようやくまとめ読みができました(;^_^A
前回のコメのお返事の件大変失礼しました(Тωヽ)とりあえず題名なんか打っておきます;;
実はあの時の裏側はこうだったんだ!という内容にニヤニヤしてしました♪♪
成君が知らないうちに成君はライバル(?)に!えらく厳しい言葉を言ってあったのも葛藤が故。
続き気になりますね~♪
前回のコメのお返事の件大変失礼しました(Тωヽ)とりあえず題名なんか打っておきます;;
実はあの時の裏側はこうだったんだ!という内容にニヤニヤしてしました♪♪
成君が知らないうちに成君はライバル(?)に!えらく厳しい言葉を言ってあったのも葛藤が故。
続き気になりますね~♪
しばしご無沙汰していました
譲原さんの葛藤や栗本さんの想いが溢れていて
苦しいですね
譲原さんが傍にいて見ていたのに受け入れてもらえない気持ちも
栗本さんが譲原さんの心の代わりに身体だけなんていう状況も切ない
上手くいかないものですよね
そこに成俊君という新キャラ登場で
停滞した関係に大きな変化が起こってくるわけでね
譲原さんの葛藤や栗本さんの想いが溢れていて
苦しいですね
譲原さんが傍にいて見ていたのに受け入れてもらえない気持ちも
栗本さんが譲原さんの心の代わりに身体だけなんていう状況も切ない
上手くいかないものですよね
そこに成俊君という新キャラ登場で
停滞した関係に大きな変化が起こってくるわけでね
s様
おはようございます。レス遅くなりました。
>おはようございます~!。やっと成俊君が登場ですね。はやく2人(望と佳史)で幸せをつかんでほしいです。未来がわかっていてもハラハラするものですね。できれば、心と魂の後の二人、特に望と甘やかすような、佳史に甘えたいのに甘えられない?望とか…、ラブラブ幸せぶりが見てみたいです。
未来は分かっているのに(o´艸`o)
苦しんだあとだからこそ、甘甘な暮らしをしていそうですが、その前に…。
成俊の登場で変わっていくのでしょう。
コメントありがとうございました。
おはようございます。レス遅くなりました。
>おはようございます~!。やっと成俊君が登場ですね。はやく2人(望と佳史)で幸せをつかんでほしいです。未来がわかっていてもハラハラするものですね。できれば、心と魂の後の二人、特に望と甘やかすような、佳史に甘えたいのに甘えられない?望とか…、ラブラブ幸せぶりが見てみたいです。
未来は分かっているのに(o´艸`o)
苦しんだあとだからこそ、甘甘な暮らしをしていそうですが、その前に…。
成俊の登場で変わっていくのでしょう。
コメントありがとうございました。
かすり様
おはようございます。
> 前回のコメのお返事の件大変失礼しました(Тωヽ)とりあえず題名なんか打っておきます;;
我が儘を申し上げてスミマセン。
自動的に「No title」と入るので、そのままでいいですよ~。
> 実はあの時の裏側はこうだったんだ!という内容にニヤニヤしてしました♪♪
> 成君が知らないうちに成君はライバル(?)に!えらく厳しい言葉を言ってあったのも葛藤が故。
> 続き気になりますね~♪
裏話です(ここまでくるとスピンオフか…)
なーんにも知らなかった成俊でしたね。
勝手にライバル視されていた…。
望には色々な葛藤があったようです。
そりゃあ5年も待っていれば…。
ほんの何日か前に登場した小娘(じゃないや、小息子?)にいきなりかっさられたようなものですから。
続き、頑張って書きます!
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> 前回のコメのお返事の件大変失礼しました(Тωヽ)とりあえず題名なんか打っておきます;;
我が儘を申し上げてスミマセン。
自動的に「No title」と入るので、そのままでいいですよ~。
> 実はあの時の裏側はこうだったんだ!という内容にニヤニヤしてしました♪♪
> 成君が知らないうちに成君はライバル(?)に!えらく厳しい言葉を言ってあったのも葛藤が故。
> 続き気になりますね~♪
裏話です(ここまでくるとスピンオフか…)
なーんにも知らなかった成俊でしたね。
勝手にライバル視されていた…。
望には色々な葛藤があったようです。
そりゃあ5年も待っていれば…。
ほんの何日か前に登場した小娘(じゃないや、小息子?)にいきなりかっさられたようなものですから。
続き、頑張って書きます!
コメントありがとうございました。
甲斐様
おはようございます。
> 譲原さんの葛藤や栗本さんの想いが溢れていて
> 苦しいですね
> 譲原さんが傍にいて見ていたのに受け入れてもらえない気持ちも
> 栗本さんが譲原さんの心の代わりに身体だけなんていう状況も切ない
> 上手くいかないものですよね
> そこに成俊君という新キャラ登場で
> 停滞した関係に大きな変化が起こってくるわけでね
また暗い話に…(笑)
譲原も栗本もどっちも苦しんでいましたね。
寄せ合うのは身体ばかり…。
そんな二人の流れを変える、いいきっかけができたのかもしれません。
とどめを刺したつもりでいた譲原。
なのに~っ、な結果になっていますけど…(笑)
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> 譲原さんの葛藤や栗本さんの想いが溢れていて
> 苦しいですね
> 譲原さんが傍にいて見ていたのに受け入れてもらえない気持ちも
> 栗本さんが譲原さんの心の代わりに身体だけなんていう状況も切ない
> 上手くいかないものですよね
> そこに成俊君という新キャラ登場で
> 停滞した関係に大きな変化が起こってくるわけでね
また暗い話に…(笑)
譲原も栗本もどっちも苦しんでいましたね。
寄せ合うのは身体ばかり…。
そんな二人の流れを変える、いいきっかけができたのかもしれません。
とどめを刺したつもりでいた譲原。
なのに~っ、な結果になっていますけど…(笑)
コメントありがとうございました。
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