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BLの丘
Opened door 3
2011-04-01-Fri  CATEGORY: Door of fate
目が覚めたのはバタンとドアの開閉がされる音で、だった。
「あ…」
ここはどこだ?と思うような山の谷間に田畑がひろがるのどかな光景が視界に飛び込んできた。
そこにポツンと一際にぎやかに見える売店がある。
農産物の直売もしているようで、買い求めに走る観光客の姿があちこちに見えた。
「こーた…」
一度車を去ったはずの虎太郎が、歩きながらも心配に思ったのか、振り返ると目覚めた凛と視線が絡まって戻ってくる。
「起きた?」
「うん、ゴメン、俺寝てた…」
「いいって。凛の寝顔見られたし。トイレ休憩に寄ったんだけど、凛も行く?」
「…、ん、行く」
自分では見られないものをさらりと口に出され、凛は恥ずかしさに手を口元に当てた。
口でも開けて馬鹿面を晒していたのではないだろうか。涎をたらしていなかっただろうか、という確認も含めて。
虎太郎はクスリと笑っただけでそれ以上言うことはない。

慣れたように目的地を探す姿は今までとは違った印象を与えた。
仕事場のつなぎを着ていても感じたが、私服だと尚更背後から見る姿は細さを表している気がする。
まぁ、一度脱がせてしまえば、意外にも締まった筋肉があって驚かされはしたが…。
だが突き進んでいく迷いの無さは潔くて格好良かった。
「いろんな物が売られているんだね」
凛が売店に視線を投げると虎太郎が頷いた。
「道の駅が今じゃあちこちにあるから便利だよ。こういうところで寝泊まりできるし」
「こんなところで?!」
「凛には想像つかないかな。中には温泉が併設されているところもあるし。だからビンボー旅行してるって言ったじゃん」
凛が目を見開けば苦笑されるだけだった。
虎太郎の給料がいかほどのものかまでは知らないが、趣味に使う部分が多いことだけは知れる。
こうして移動するための燃料費などを考えたら、宿泊代も浮かせたいのだろう。
凛としてもそれがどんなものなのか体験してみたい興味は確かに湧いていたが、人がごったがえしている光景を見てしまうと安眠できるとはとても思えなかった。
ましてや『運転する』という体力勝負がついてまわっている。
居眠り運転などされたら…と心配がむくむくと浮かんできた。
「こーた、そんなことしてたら…」
「ちゃんと鍵かけて寝てるって。それに周りに人がいるから犯罪も起きにくいんだよ」
「そーいう、意味じゃなくてさ…」
どうも心配する視点が違っている。
周りに人がいる…とは、似たような旅行をする人間がいる、ということなのだろうか。
凛が思うことを話してみると、カラカラと笑われた。
「夜は店なんてやってないから人の出入りなんて少ない。こういうことしてるとマナー守ってる人間も多いからさ。夜はすごい静か」
「そうなの?」
「そう。キャンピングカーとか自炊できる車もあるし」
「まさか買おうとか思ってる?」
「さすがにそこまでは…。停められる駐車場が見つけられないし。今はアイツで充分」
維持費などがかかる、と説明されると、「自分の給料じゃまだまだ無理」と返ってきた。
そんなものなのか…と凛はなんとなく納得してしまう。
自身の常識では考えられないことを、次々と虎太郎から教えられている気分だった。

道の駅を出発して走っていくと、遠くの山はまだ雪で覆われている。
観光名所ともなっているらしい渓谷も現れ、沢の脇の整備された道を歩む人の姿も見えた。
川に沿って車道ができているために下方に見える長々と続く遊歩道が何となく気になった。
「ハイキングコースなのかなぁ」
「歩きたい?」
「ちょっと降りてみたいけど…。時間とか平気なの?」
「計画なんか特にないし。行き当たりばったりも面白いでしょ」
虎太郎は手近な駐車場を探しあてると、車を停めて遊歩道へと降りられる道に案内してくれた。
すれ違う人とも気軽に挨拶や話を始めてしまう。
自分たちが何の情報も持たずにここに来てしまったから…ということらしいが、人懐っこさにはこれまた驚かされた。
「凛、この先に滝があるって。全長で10キロのコースだっていうから、それだけ見て車に戻るのでもいい?」
突然のことにも難なく対応してしまう行動力には、つくづく感心させられる。
もちろん、ハイキングの準備なんてしていない自分たちなのだから、虎太郎の提案に文句などない。
どっちを見たって、それなりの装備を身につけた人ばかりだ。
遊歩道から反れて川場に下りられる道も幾つか見受けられた。ただ、こちらは整備されているものではなく、人通りの中から自然と道になってしまったものなのだろう。
「下りてみたい」と凛が言えば、虎太郎は快く受けてくれた。
直接水に触れるような場所だった。
脇から出る小さな流れを飛び越えるように、調子良く対岸に飛んでいく虎太郎に凛も続いた。
が、運動神経の差は顕著に現れた。
バシャッという水音の後に「凛!!!」と慌てる虎太郎の声が耳に届く。
そして足元をひんやりとした水に覆われて、自分が水中に着地してしまったことを知った。

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No title
コメントらぅら | URL | 2011-04-01-Fri 23:45 [編集]
甘えたがり&心配性な凛( ´艸`)ムププ
かわえぇ~♪

虎太~、鈍ちん凛のお手手繋いでないとダメだよぉ~って
もう遅いか。。。(笑)
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-04-02-Sat 09:34 [編集]
らぅら様
こんにちは。

> 甘えたがり&心配性な凛( ´艸`)ムププ
> かわえぇ~♪

凛の性格が伝わればいいんですけどね~。
甘えたがりなのかな。
まぁこれまで頑張って来たお兄ちゃんですから。

> 虎太~、鈍ちん凛のお手手繋いでないとダメだよぉ~って
> もう遅いか。。。(笑)

遅かった~(爆)
いや、お手手繋いでたら自分も巻き添え食らったかも(笑)
コメントありがとうございました。
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