駅から連なるブランドショップは有名どころで、並ぶ店の数々に人がごった返していた。
一葉と成俊の趣味はどこか似通っていて寄る店も知れる。
ブランド…とは言っても二人とも貧乏性のところがあったから、ブティックの50パーセントオフにばかり手が向いてしまう。
入り易そうな店で幾つか試着を繰り返し、互いを見せあいながら、少ない数を購入する。
それぞれ与えられたカードや現金を手にしているものの、財布のひもは固かった。
途中、アイスクリームを購入し、甘さに酔いしれて歩き出した時だ。
一葉が背後から押される力を感じて、抵抗も出来ずに目の前にいた男の背にアイスクリームを持った手を押し付けた。
「あんっ???!なにすんだっ???!!!!」
一見して堅気ではないと思うチンピラが振り返った。
周りにいた数人の男も、逃げ道を塞ぐように立ちはだかった。
一度絡まれたことのある成俊は即座に、これが仕組まれていたのだと悟った。
一葉が背を押されたのはわざとなのだろう。
何も知らない一葉は、訳もわからなく囲まれてうろたえる。
「あ…」
「俺の背広にとんでもないもの、押し付けてくれたよなぁ」
確認してくる男の声に恐怖が混じり、震えながら謝罪した。
「ご、ごめんなさい。クリーニング代払いますからっ」
だが、そんなもので許すような連中ではない。
こういった連中はどこまでも貶めてくる。
「クリーニング代だぁ????精神的な慰謝料はどう払ってくれるんだぁ?背後、汚されたまま、歩かなきゃなんねーんだぞーっ?!」
わざとらしく脅しをかけてくるセリフに、返す言葉を失ってうつむくしかなかった。
成俊はすぐに携帯電話を手にした。
「みつ…」
だがすぐに、その手を振り落とされた。
「どこに電話してんだぁ、このばかぁっ」
一人の男の手が成俊の携帯電話を叩き落とし、踏みつけられて壊される。
更に、抵抗ができないようにと後ろ手に回された。
「あぁぁぁ、やめっ…」
「クリーニング代100万かな。二人で50万で済むぞ。安いなぁ。俺って良心的。それか体で払ってもらおうか」
しげしげと二人を見下ろしていたアイスをぶつけられた男が、ふと妙なことを口にし出す。
『体で…』というのがどういうことなのか、想像がついた。
嬲られる世界など御免だ。
男たちを相手にすることがなにをされるのか、過去の経験で成俊は知っている。
成俊は身をすくませて大人しくなった。
「この坊やのほうが正直だな」
訳も分からず泣きだした一葉よりも成俊の方に視線が向けられた。
体を押さえつけられたまま顎を掴まれて上向かされる。
凌辱されるような目にあいたいはずがない。
正直、というよりも恐怖と、拘束されているせいで動けないだけだ。
「すぐ近くに事務所があるから、そこで話をしよう」と連れ込まれたのは、どこかのビルだった。
一度捕まえたカモは逃がさないと完全に丸めこまれてしまった。
「な、何もしないで…、おかねならはらうから…」
一葉が咄嗟に口に出したのだが、そんなことを言えば図にのられるだけだ。
相手の言う金額など法外なもので、いつまでもつけ込まれる。
金で解決できて、体を使っての、あの辛さを味わなくて済むのなら、それに越したことはないが…。
「100万が即金で払えるのか。すげぇなぁ」
男が満足げに微笑んだ。
「すぐ?」
「当然だろう。俺の気持ちが満足できるようにふるまうのが謝罪ってもんだろうが」
「そんな…」
「だから体でもいいって譲歩してやってんだろう。ご奉仕してくれりゃ、状況によっちゃ勘弁してやるけどな」
「な、なにを…」
一葉は何も知らずに相手の言葉を鵜呑みにしていたが、成俊はそんなわけにはいかない。
「一葉君、黙って。何も言っちゃだめ」
佐貫に影響されているからではないが、人をかばって守ってやらなければいけないという精神が成俊にはあった。
しかし、余計な口出しをするなと、別の男が成俊の頬を張った。
「生意気だな。まぁ、こんなのが許しを乞うようになるのを見るのも一興だろう」
一葉には何もさせられなかった。
安住がどれほど一葉を大事にしているのかも承知している。
自分だって佐貫の思いを身に受けているから本当ならこんなことは言いたくはないけれど…。
最初からここに連れ込んだ時点で、何もせずに出す気なんてなかったんだと気付いた。
遅かれ二人して身を剥かれることになるのであれば、せめて一葉だけは何も知らずにいさせてやりたかった。
自分は一度穢れた。
安住にどれだけ世話になって、今の自分があるのか…。
きっと佐貫なら許してくれる…。
「一葉君には何もしないで。俺、するから…」
「随分殊勝だな。なんだ、そういう間なのか、おまえら」
成俊の申し出に目を見開いた男が、意地悪く笑った。
どっちがどうなんだ?と品定めをするかのような薄笑で、視線で撫でまわされる。
一葉と成俊を比べたら、経験には明らかな差があった。
少なくとも、暴力は振るわれないだろう。
一葉は無垢のままでいればいい。
「一葉君のいないところで…」
「あぁ、いいぜ。可愛がってやろう」
「だめだよ、成俊君。俺がぶつけちゃったんだ。なんで成俊君が…」
何故自分の失態の責任を成俊が負わなければいけないのかと、不思議がる一葉がボロボロと泣き始めた。
確かに自分は関係ないと一葉を見捨ててもおかしくない状況だが、成俊にはそれができない。
今あるのは、一葉を守ってやりたいと思う、母性本能のようなものと、責任感のようなものだった。
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あぅぅぅ、なんか視点変わってるけど…ゆるしてーっ。そして一度upしたのですが書き直して再登場ですm(__)m
一葉と成俊の趣味はどこか似通っていて寄る店も知れる。
ブランド…とは言っても二人とも貧乏性のところがあったから、ブティックの50パーセントオフにばかり手が向いてしまう。
入り易そうな店で幾つか試着を繰り返し、互いを見せあいながら、少ない数を購入する。
それぞれ与えられたカードや現金を手にしているものの、財布のひもは固かった。
途中、アイスクリームを購入し、甘さに酔いしれて歩き出した時だ。
一葉が背後から押される力を感じて、抵抗も出来ずに目の前にいた男の背にアイスクリームを持った手を押し付けた。
「あんっ???!なにすんだっ???!!!!」
一見して堅気ではないと思うチンピラが振り返った。
周りにいた数人の男も、逃げ道を塞ぐように立ちはだかった。
一度絡まれたことのある成俊は即座に、これが仕組まれていたのだと悟った。
一葉が背を押されたのはわざとなのだろう。
何も知らない一葉は、訳もわからなく囲まれてうろたえる。
「あ…」
「俺の背広にとんでもないもの、押し付けてくれたよなぁ」
確認してくる男の声に恐怖が混じり、震えながら謝罪した。
「ご、ごめんなさい。クリーニング代払いますからっ」
だが、そんなもので許すような連中ではない。
こういった連中はどこまでも貶めてくる。
「クリーニング代だぁ????精神的な慰謝料はどう払ってくれるんだぁ?背後、汚されたまま、歩かなきゃなんねーんだぞーっ?!」
わざとらしく脅しをかけてくるセリフに、返す言葉を失ってうつむくしかなかった。
成俊はすぐに携帯電話を手にした。
「みつ…」
だがすぐに、その手を振り落とされた。
「どこに電話してんだぁ、このばかぁっ」
一人の男の手が成俊の携帯電話を叩き落とし、踏みつけられて壊される。
更に、抵抗ができないようにと後ろ手に回された。
「あぁぁぁ、やめっ…」
「クリーニング代100万かな。二人で50万で済むぞ。安いなぁ。俺って良心的。それか体で払ってもらおうか」
しげしげと二人を見下ろしていたアイスをぶつけられた男が、ふと妙なことを口にし出す。
『体で…』というのがどういうことなのか、想像がついた。
嬲られる世界など御免だ。
男たちを相手にすることがなにをされるのか、過去の経験で成俊は知っている。
成俊は身をすくませて大人しくなった。
「この坊やのほうが正直だな」
訳も分からず泣きだした一葉よりも成俊の方に視線が向けられた。
体を押さえつけられたまま顎を掴まれて上向かされる。
凌辱されるような目にあいたいはずがない。
正直、というよりも恐怖と、拘束されているせいで動けないだけだ。
「すぐ近くに事務所があるから、そこで話をしよう」と連れ込まれたのは、どこかのビルだった。
一度捕まえたカモは逃がさないと完全に丸めこまれてしまった。
「な、何もしないで…、おかねならはらうから…」
一葉が咄嗟に口に出したのだが、そんなことを言えば図にのられるだけだ。
相手の言う金額など法外なもので、いつまでもつけ込まれる。
金で解決できて、体を使っての、あの辛さを味わなくて済むのなら、それに越したことはないが…。
「100万が即金で払えるのか。すげぇなぁ」
男が満足げに微笑んだ。
「すぐ?」
「当然だろう。俺の気持ちが満足できるようにふるまうのが謝罪ってもんだろうが」
「そんな…」
「だから体でもいいって譲歩してやってんだろう。ご奉仕してくれりゃ、状況によっちゃ勘弁してやるけどな」
「な、なにを…」
一葉は何も知らずに相手の言葉を鵜呑みにしていたが、成俊はそんなわけにはいかない。
「一葉君、黙って。何も言っちゃだめ」
佐貫に影響されているからではないが、人をかばって守ってやらなければいけないという精神が成俊にはあった。
しかし、余計な口出しをするなと、別の男が成俊の頬を張った。
「生意気だな。まぁ、こんなのが許しを乞うようになるのを見るのも一興だろう」
一葉には何もさせられなかった。
安住がどれほど一葉を大事にしているのかも承知している。
自分だって佐貫の思いを身に受けているから本当ならこんなことは言いたくはないけれど…。
最初からここに連れ込んだ時点で、何もせずに出す気なんてなかったんだと気付いた。
遅かれ二人して身を剥かれることになるのであれば、せめて一葉だけは何も知らずにいさせてやりたかった。
自分は一度穢れた。
安住にどれだけ世話になって、今の自分があるのか…。
きっと佐貫なら許してくれる…。
「一葉君には何もしないで。俺、するから…」
「随分殊勝だな。なんだ、そういう間なのか、おまえら」
成俊の申し出に目を見開いた男が、意地悪く笑った。
どっちがどうなんだ?と品定めをするかのような薄笑で、視線で撫でまわされる。
一葉と成俊を比べたら、経験には明らかな差があった。
少なくとも、暴力は振るわれないだろう。
一葉は無垢のままでいればいい。
「一葉君のいないところで…」
「あぁ、いいぜ。可愛がってやろう」
「だめだよ、成俊君。俺がぶつけちゃったんだ。なんで成俊君が…」
何故自分の失態の責任を成俊が負わなければいけないのかと、不思議がる一葉がボロボロと泣き始めた。
確かに自分は関係ないと一葉を見捨ててもおかしくない状況だが、成俊にはそれができない。
今あるのは、一葉を守ってやりたいと思う、母性本能のようなものと、責任感のようなものだった。
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あぅぅぅ、なんか視点変わってるけど…ゆるしてーっ。そして一度upしたのですが書き直して再登場ですm(__)m
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庇護欲をそそられる様な 可憐(?)な二人が歩いてたから 良からぬ奴に 目をつけられたの!?
成俊が このままでは 本当に ヤバイよーー(T▽T)
佐貫と安住は 間に合うの!!
とにかく 急げ~ε=ε=ε=┌(;´゚ェ゚)┘┌(;´゚ェ゚)┘...byebye☆
成俊が このままでは 本当に ヤバイよーー(T▽T)
佐貫と安住は 間に合うの!!
とにかく 急げ~ε=ε=ε=┌(;´゚ェ゚)┘┌(;´゚ェ゚)┘...byebye☆
けいったん様
こんにちは。
> 庇護欲をそそられる様な 可憐(?)な二人が歩いてたから 良からぬ奴に 目をつけられたの!?
そのようでございます~。
ちょうどいいエサが…(あ、いや、カモが…)
> 成俊が このままでは 本当に ヤバイよーー(T▽T)
> 佐貫と安住は 間に合うの!!
>
> とにかく 急げ~ε=ε=ε=┌(;´゚ェ゚)┘┌(;´゚ェ゚)┘...byebye☆
(走る~走る~おれーたーちーっ♪)
あ、いや、真剣にその場を探して追っています、保護者。
もうこれ以上辛い目になど合わせたくないですから、佐貫。かなり、切羽詰まって…。
成俊も何考えてこんなこと望んじゃったんだか…。
いやぁ、いい子なんですけどね。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> 庇護欲をそそられる様な 可憐(?)な二人が歩いてたから 良からぬ奴に 目をつけられたの!?
そのようでございます~。
ちょうどいいエサが…(あ、いや、カモが…)
> 成俊が このままでは 本当に ヤバイよーー(T▽T)
> 佐貫と安住は 間に合うの!!
>
> とにかく 急げ~ε=ε=ε=┌(;´゚ェ゚)┘┌(;´゚ェ゚)┘...byebye☆
(走る~走る~おれーたーちーっ♪)
あ、いや、真剣にその場を探して追っています、保護者。
もうこれ以上辛い目になど合わせたくないですから、佐貫。かなり、切羽詰まって…。
成俊も何考えてこんなこと望んじゃったんだか…。
いやぁ、いい子なんですけどね。
コメントありがとうございました。
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