性懲りもなく、またSS書き始めました…。
とりあえず、脳内の妄想劇を文(とはとても言えない稚拙さですが…)にしたいらしいです。
気の向いた方だけお付き合いください。
物流業界に入社して、間もなく1年が経過しようとしている。
12月の、一年で一番忙しいと言われる繁忙期を過ぎ、正月が明けた先には、昨年末の慌ただしさが嘘のようにのんびりとした空気が社内全体を覆っていた。
滝沢誠太(たきざわ せいた)は、数ある部署の中でも、企業から集荷された荷物に実際に触れ、幾つもある配送ルートごとに指示を出す物流部に配属になっていた。
初出勤の日に、何に驚いたかって…。
さすがに日本の運送業界でトップ企業に名を連ねる社内で扱われる荷物数にも驚いていたが、一番の驚きは運行部に在籍する高柳久志という人物だった。
物流部の女性陣を始め、各部署でも彼の名は良く聞いた。とにかく良い男である…。全ての物事を把握しているような鋭い視線といい、鍛え上げられた肉体美といい、そして文句のつけようのない顔の整い方。
誰しも、男という性別に生まれたなら、こうなりたいと思わずにはいられないような人間に遭遇した。
物流部の部長である倉林は何度も何度も繰り返したものだ。
「高柳が運行部って絶対に配置ミスだろ。あいつみたいな体育会系は物流でとことん鍛え上げるべきだ」と。
要するに運行部は基本的デスクワークなので、高柳さんのようながっしりとした人間は現場でバリバリ働けということらしい。
それが分かっているのか、一時的な人員不足で各部署にヘルプ要請を出した時には、運行部の黒川部長は何のためらいもなく高柳さんを貸し出してくれる。
普段は自前のスーツ姿で社内勤務に励む高柳さんだが、現場で作業をする際には、動きやすいように(たぶん汚れてもいいように)社から支給された作業着に着替えてくる。
どこか装ったようなスーツ姿よりも、肉体美を披露するようなポロシャツの作業着姿は社内でもかなり人気で、高柳さんが現場に下りると聞いた日には、関係ない部署の人間が意味もなく現場を行き来していたりする。
そんな高柳さんは当然モテまくってて、日毎に相手を変えるとか尻軽的な噂もあったのだが、年末に恋人がいると発覚してからは、さらにその人気に拍車をかけたようだった。
とどのつまり、かなり一途だったらしく、その健気ぶりが女性陣のハートを射止めたらしい。
とはいえ、自分の手に落ちることはないから、好き勝手を言う女性たちだったのだが…。
ある日の昼間、夜に出車する配車表を受け取りに行こうと、自社ビルの階段を昇りかけた時、上の階から響き渡る高柳さんの声が聞こえた。
各部署は階ごとに違っていたが、繋がる階段は一つで、たぶんこの声は各階に響いているのではないかと思うくらいの怒鳴り声だった。
話す内容を耳にすれば、どうやら電話で話をしているようだったが、いつもよりも怒気を含め低い声を唸らせている姿に思わず昇りかけた足が止まる。
「…っざけんなよっ!安住が来るとか聞いてねぇしっ!!ぜってー断れ、そんなのっ!!」
「高柳ぃ、痴話喧嘩は外でやれって。丸聞こえだから、おまえの声」
高柳さんの怒鳴り声に続いて黒川部長の制止する声が聞こえる。
「っっ!!切るなっ!那智っ!…バカヤローっっ!!」
その後も、携帯電話をピッピッと操作する音が聞こえたが、どうやら目的の相手に繋がることはなかったようだ。
恐れながらも運行部に顔を出すと、案の定事務所内は剣呑な雰囲気に包まれていた。
通路階段で怒鳴り散らしていた声は、当然ながらこの事務所にも届いていたのであろう。
広々とした事務所内ではあるが、実際働いている人間は少なく、空いた机に身を寄せた黒川さんが、半ば、高柳さんを宥めるように、合い向かいに座っていた。
仕事中だろうが、プライベートな話が平気で交わされるこの職場で、黒川さんと高柳さんが何の話をしているのかなどおおよその想像はつく。
事務所の手前に座っていた事務員の大友主任に配車表を出してもらっているときに、いつの間にいたのかと黒川部長が俺を見据えた。
「ちょうど良かった、滝沢っ!!今から倉林にも連絡を入れるから、お前も今度の土曜の夜を開けとけ」
全く意味が分からなかった。手元にある社内用無線機を掴んだ黒川部長は徐に物流部の倉林部長を呼び出す。現場で動き回っている人間には、内線とかよりも社内無線のほうが繋がりやすい。
当然、黒川部長の声は自分の胸元のポケットに収められた無線から響いてきた。(チャンネルが同じなら社内のどこでも通じる)
「倉林ぃ。高柳の恋人を見に行くから土曜の夜に宴会の支度をしろ」
全くもって仕事に関係ない話が無線で流れるのは日常茶飯事である…。
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ぜひポチッとしていってくださいナ…
とりあえず、脳内の妄想劇を文(とはとても言えない稚拙さですが…)にしたいらしいです。
気の向いた方だけお付き合いください。
物流業界に入社して、間もなく1年が経過しようとしている。
12月の、一年で一番忙しいと言われる繁忙期を過ぎ、正月が明けた先には、昨年末の慌ただしさが嘘のようにのんびりとした空気が社内全体を覆っていた。
滝沢誠太(たきざわ せいた)は、数ある部署の中でも、企業から集荷された荷物に実際に触れ、幾つもある配送ルートごとに指示を出す物流部に配属になっていた。
初出勤の日に、何に驚いたかって…。
さすがに日本の運送業界でトップ企業に名を連ねる社内で扱われる荷物数にも驚いていたが、一番の驚きは運行部に在籍する高柳久志という人物だった。
物流部の女性陣を始め、各部署でも彼の名は良く聞いた。とにかく良い男である…。全ての物事を把握しているような鋭い視線といい、鍛え上げられた肉体美といい、そして文句のつけようのない顔の整い方。
誰しも、男という性別に生まれたなら、こうなりたいと思わずにはいられないような人間に遭遇した。
物流部の部長である倉林は何度も何度も繰り返したものだ。
「高柳が運行部って絶対に配置ミスだろ。あいつみたいな体育会系は物流でとことん鍛え上げるべきだ」と。
要するに運行部は基本的デスクワークなので、高柳さんのようながっしりとした人間は現場でバリバリ働けということらしい。
それが分かっているのか、一時的な人員不足で各部署にヘルプ要請を出した時には、運行部の黒川部長は何のためらいもなく高柳さんを貸し出してくれる。
普段は自前のスーツ姿で社内勤務に励む高柳さんだが、現場で作業をする際には、動きやすいように(たぶん汚れてもいいように)社から支給された作業着に着替えてくる。
どこか装ったようなスーツ姿よりも、肉体美を披露するようなポロシャツの作業着姿は社内でもかなり人気で、高柳さんが現場に下りると聞いた日には、関係ない部署の人間が意味もなく現場を行き来していたりする。
そんな高柳さんは当然モテまくってて、日毎に相手を変えるとか尻軽的な噂もあったのだが、年末に恋人がいると発覚してからは、さらにその人気に拍車をかけたようだった。
とどのつまり、かなり一途だったらしく、その健気ぶりが女性陣のハートを射止めたらしい。
とはいえ、自分の手に落ちることはないから、好き勝手を言う女性たちだったのだが…。
ある日の昼間、夜に出車する配車表を受け取りに行こうと、自社ビルの階段を昇りかけた時、上の階から響き渡る高柳さんの声が聞こえた。
各部署は階ごとに違っていたが、繋がる階段は一つで、たぶんこの声は各階に響いているのではないかと思うくらいの怒鳴り声だった。
話す内容を耳にすれば、どうやら電話で話をしているようだったが、いつもよりも怒気を含め低い声を唸らせている姿に思わず昇りかけた足が止まる。
「…っざけんなよっ!安住が来るとか聞いてねぇしっ!!ぜってー断れ、そんなのっ!!」
「高柳ぃ、痴話喧嘩は外でやれって。丸聞こえだから、おまえの声」
高柳さんの怒鳴り声に続いて黒川部長の制止する声が聞こえる。
「っっ!!切るなっ!那智っ!…バカヤローっっ!!」
その後も、携帯電話をピッピッと操作する音が聞こえたが、どうやら目的の相手に繋がることはなかったようだ。
恐れながらも運行部に顔を出すと、案の定事務所内は剣呑な雰囲気に包まれていた。
通路階段で怒鳴り散らしていた声は、当然ながらこの事務所にも届いていたのであろう。
広々とした事務所内ではあるが、実際働いている人間は少なく、空いた机に身を寄せた黒川さんが、半ば、高柳さんを宥めるように、合い向かいに座っていた。
仕事中だろうが、プライベートな話が平気で交わされるこの職場で、黒川さんと高柳さんが何の話をしているのかなどおおよその想像はつく。
事務所の手前に座っていた事務員の大友主任に配車表を出してもらっているときに、いつの間にいたのかと黒川部長が俺を見据えた。
「ちょうど良かった、滝沢っ!!今から倉林にも連絡を入れるから、お前も今度の土曜の夜を開けとけ」
全く意味が分からなかった。手元にある社内用無線機を掴んだ黒川部長は徐に物流部の倉林部長を呼び出す。現場で動き回っている人間には、内線とかよりも社内無線のほうが繋がりやすい。
当然、黒川部長の声は自分の胸元のポケットに収められた無線から響いてきた。(チャンネルが同じなら社内のどこでも通じる)
「倉林ぃ。高柳の恋人を見に行くから土曜の夜に宴会の支度をしろ」
全くもって仕事に関係ない話が無線で流れるのは日常茶飯事である…。
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