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BLの丘
【バレンタインコラボ企画】 6
2010-02-13-Sat  CATEGORY: コラボレーション
食事が終われば帰るものだと思っていた。
それなのに、「ちょっとドライブでもしようか」という千城の言葉に、結城と薫も誘われて、薫は少し驚いていたようだった。たぶん早く帰りたかったんじゃないだろうか…。
それでも店先に止められたいつもよりも大きい車…リムジンに案内されてしまえば、英人は元より、薫は目をパチクリさせていた。
「こ、これ?!この車ですかぁっ?!」
英人だってこんな車に乗せてもらったことは数度しかない。
車内でシャンパンを用意されながらゆったりと過ごし、都内へのドライブでも行くのかと思ったらネオンが瞬いていた場所から暗闇の中へと連れ込まれた。
「なに?」
不安がる英人の手がそっと隣の千城の手に握られる。
「ケーキのお礼だ」

都内からはすでに外れている。たぶん埼玉県の方だろう。
英人は地理的なものは理解できていなかったから(特に夜など)、ただの広場のようにしか思えなかった。そこでリムジンは止まった。
目の前には真っ白な宇宙船が止まっているようにも思える。大きな機体が繋がれたように地面に留まっていた。
「えーっっ??」
声を上げたのは薫で、あまりの興奮に現実を忘れたくらい動揺し結城を何事かと仰ぎ見ていた。結城が満足そうに笑っているのを見れば、結城も承知済みだったということらしい。
飛行船…。

夢のような世界だった。
英人は当初あまり興味がなかったが、実際に飛んでみれば興奮の嵐だった。上空500メートルとはいうが、冬空の寒風の下に広がるビル群は宝石に近い。英人が自分で作った看板まで身近で見えるようだった。
流れはゆっくりで空を飛んでいるようには思えない。客室乗務員の女性が2名もいて、(たった4人の客なのに)最高級のワインやシャンパンを提供してくれる。
機内は浮上してしまえば移動も自由で、コックピットも後ろから眺めることができた。英人と薫は窓に額を擦りつけるようにして眼下に視線を送りっぱなしだった。
最初こそ席に着いて見ていたが、千城に「後方からも見られるぞ」と連れられ、キャビンを移動させられる。
大きな窓ガラスから見る風景は圧巻だった。
英人の背後に回り込んだ千城が英人の身体を包み込んだ。人がいようが関係ないのはいつものことだが…。
でも今だけは二人の甘い世界に浸ってしまいたい。

「いつの間にこんなこと考えていたの?」
窓ガラスに映った千城に尋ねれば、「英人たちが何かをしてくれそうだったから」と、薫との秘密作戦がとっくの昔にばれていたことを耳元で囁かれ知らされる。
驚かすつもりが驚かされたのはこちらのほうだった。こういった秘密事をつくるのはどうやったって千城のほうが一枚上手だ。
「気に入ったか?」
「最高…」
これだけのものを気に入らないなどとどうして言えるのだろう。
英人がうっとりとした声を上げれば、千城が「それは良かった」とにっこりと笑った。ガラス越しではなくてどうしても本物の顔が見たくて振り返れば、軽く触れるだけのキスをくれた。
薫と結城もそれぞれの世界に潜り込んでしまったようだ。

クルーズは2時間ほどで終わり元の位置へと戻った。
薫と結城も充分なほど楽しんだようだ。特に薫は興奮が冷めないようで、リムジンで成城の屋敷に送り届ける間もはしゃいでいた。
「ありがとうございました。とても素敵な日でしたよ」
車を降りた結城から挨拶をされ、英人もまた薫と会う約束をした。
今度はアトリエのほうに遊びに来てくれるらしい。結城も薫もまた絵が見られることを喜んでくれて嬉しかった。
「夜風が冷たいから早く家に入って」と言っても、二人は車が見えなくなるまで外に立っていてくれた。



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【バレンタインコラボ企画】 7
2010-02-14-Sun  CATEGORY: コラボレーション
こんなにはしゃいだ英人をみるのは久しぶりだった。フランスを共に旅行した時以来だろうか。
英人は非日常の世界をとても好む。もっとも日常があって変化があるから人は楽しいとか嬉しいとか感じるものなのだが…。
これが神戸の言っていた「刺激を受ける」ということなのだろう。

ベッドルームのサイドテーブルの上に、世界の各国から取り寄せた高級チョコレートの粒が入ったガラスの器が置かれていた。
「いったいいくらのお金を使ったの?」
バスローブを羽織った英人が気付いて、ベッドに腰掛けながら呆れたように見上げてきた
千城にしてみれば飛行船クルーズも集めたチョコレートも、痛くも痒くもない金額だったし、英人が喜んでくれるなら惜しいとも思わなかった。
チョコレートの粒をくるんでいる包みをみればどれも一粒ずつしかないのが一目瞭然だった。
実際にはパントリーの中にまだ仕舞ってあるのだが英人に見せるにはこの演出で充分だ。

そういえば、もうひとつ黙っていることがあるな…と千城の頭に浮かんだ。
ビルの管理のことだが、こちらは今まで維持費やらなにやらとかかっていたのだから、賃貸料が入ることを思えばたいして変わらないだろう。
『安全対策』というプレゼントもありかもしれない。
もちろん英人は気に入らないだろうが、『会社関係』と言ってしまえば文句の一つも出ずに千城に従ってくれる。
物件を探していたところに目を止められた、とでもいえば丸くおさまるだろう。

隣に並んで座った千城が、一粒目を英人の口元に寄せてみれば眉間を寄せて躊躇っていた。一粒数千円程度のものなのだが…。
「俺一人で食べるのは気がひけるんだけど…」
「一緒に食べればいいさ」
「?」
キョトンとした英人に「口をあけて」と促し、その中に入れた。
千城は英人の唇に自分の唇を落とした。まだ塊のままのチョコレートが舌先に触れ、くるくるとかき回しながら互いの口の中を往復した。
「ん」
ただでさえ部屋にただよっていたカカオの香りが口腔内の熱で溶けだし更なる濃厚な芳醇さを生み出しているようだ。
千城もチョコレートを味わいながら最後は全て英人の中に流し込んでやる。
英人の口端に茶色い筋ができてしまって、舌で舐めとり綺麗にした。
「もう一つたべるか?」
問いかけてみると英人は小さく首を振って、恥ずかしそうに千城の胸に顔を埋めてきた。
「チョコは明日でいい。…それより、…もう…」

バスルームですでに疼いていたのは知っている。それが今のキスでまた昂ったのだろう。
そっとベッドの上に横にすれば待っていたように両腕が伸びてきた。
再び口付ければ、まだ口の中に残った甘さが伝わってくる。
…愛しい…。
どんな甘いものよりも、この身体、英人の全てのほうがずっと甘くて美味しい。
英人が作ってくれた素朴なチョコレートケーキの味を思い出しながら、同じように飾り気のない英人を堪能したかった。

千城は英人の肌と同じ色をしたバスローブの胸元に手を入れた。
本当はこの白くて美しい裸体の上に選りすぐった品を飾ってみたかったのだが、そんなことをすれば機嫌を損ねるだけだろう。
せっかく満足してくれているこの気分を壊したくはない。
うまく騙すのは明日でもいいか…と、最後の計画を目論む千城だった…。

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一応これで終わりです。
お楽しみいただけたでしょうか。
千城の続編をご希望される方がいたら…。(季節外れ企画になってもいいわという方はぽちっと。(ヤッター○ンか…))
もしくは1カ月後のホワイトデーまで待ってやるよという優しい心の持ち主の方、あんなのがいいこんなのがいいってご意見くだされば。リクいただけるって、読んでくれている方がいるんだ…って思えるから嬉しいんですよ。隠しコメ大歓迎ですから。(書けるかは疑問ですが…))拍手もなければ立ち消えってことで。
とにかくありがとうございました。



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【バレンタインコラボ企画】の番外 被害者編
2010-02-15-Mon  CATEGORY: コラボレーション
突如思いついたSSです。

せめてバレンタインデーが土曜日だったら…と神戸長流(かんべたける こういう名前だったんです…。忘れていましたけど…)は思った。

野崎から「社長は日曜日の夜は飛行船クルーズに出掛けますので…」と連絡を受けた時は絶句した。
その日まで、すでに一週間とない。
一応、英人には黙っているようにと忠告を受けた。
なんだか良くは分からないが、千城とその友人とで結託してサプライズを用意しているらしい。
まず、絶対に月曜日に出勤することはないだろうと思われる英人に、突然の連絡を受けては可哀想だと気遣ってくれた野崎が前もって神戸に連絡を入れてくれた…というわけだ。
本当に休むかは本人たち次第だろうが、派手な企画を計画した千城が黙ってベッドに入るとはとても思えないのは神戸も同じだった。

呆れて物が言えない…と感じた神戸は、受話器を置きながら、愛くるしい笑顔で「昨日練習で作ってみた」と言って一口大にカットしたチョコレートケーキをスタッフに配っている英人を思わず睨みつけてしまいそうになった。
野崎には黙っていたが、話からすればお互いに秘密裏に『何か』を計画していて、その『練習』の成果が今のこの甘っとろい香りなのだろう…。

ケーキのお返しが飛行船っ?!

二人の素性を良く知りはするものの、その生活感の違いには相変わらず返す言葉もない。
以前から千城には、もう少し英人の生活の基準を知るべきだと伝えてきたが全く聞く耳を持っていない。
最近では英人も「榛名家」の人間に慣れてきたせいか、物の金額を知らなくなってきているが、それでも育ってきた過程があるだけにまだ判断がつく。

「神戸さんもどう?甘くないようにしてみたんだけど…。友達と作ってみたんだ」
無邪気なほどまでに微笑む英人が、通話を終えた神戸に近寄ってきた。
甘くないように…って充分すでに甘いよ…。
どうやったって臨時休暇は認めないと先に忠告したい気持ちも失せた。
今年に入って何度千城から電話を貰ったことだろう…。

どんな文句を言ったって怒鳴ったって一向に懲りない千城は自分の言いたいことだけを言えば電話が切れている。
そして出勤してこない『可愛い天才』がいる。
あとからついてくるのは無記入の小切手ばかり…。

カレンダーを見れば3月も同じ並びの日々だ…。
当然予定される休日も同じだ。

神戸は差し出されたケーキをピックに刺して頬張った。
…この子はケーキまで完璧な味で作り上げるんだろうか…。
コーヒーを混ぜたモカスポンジからはラム酒の香りまで漂ってくる。
確かに甘くなかったが、やっぱり甘い…。

大きな瞳でぱちぱちと瞬きをされ、「どう?」と見上げられれば、呟きたい言葉が全て溜め息に変わりそうだった。
これを食べて見つめられて黙っていられる恋人がどこの世界にいるというのだろう。

「うん。美味しいよ」
神戸は溜め息をつきたい感情を抑えて微笑んであげた。
千城ではないが、やっぱり自分も英人を可愛がっているのだ…。
文句は千城に言えばいい。聞きはしないだろうが、傷つかない分思いっきり言いたいことが言えるから。

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☆★お知らせ★☆
2010-03-05-Fri  CATEGORY: コラボレーション
いつもご訪問いただきましてありがとうございます。

さてさて…。

バレンタインデー特集(?)として以前妄想スパイラルのSKY様と千城&英人、結城&薫ペアを書かせていただきました。
お話はこちら→【バレンタインコラボ企画

このたび、結城さんと薫君が拙宅に「遊びに行ってもいいよ」とおっしゃってくださったので、お借りしましてホワイトデー企画として【ホワイトデー企画】:Studio を7日からスタートいたします。
13日までの計7話です。

注:今回はコラボじゃないです。


前回、かなり中途半端で終わった我が家…。
そしてほのめかしておきながら全く続かなかった千城編…。
余計なことはいうものではないと心に刻んでおります。
すみませんm(__)m

そしてお詫びがもうひとつ…。
アンケートなんて貼っちゃったんですけど、それを全く無視しての今回のホワイトデー企画です。
一応、英人視点っていうことはアンケート結果からでして…(ってまだ受付中なのに…)
いっぱい投票いただいているのに、こんなことで…。(オロオロ)

もう、本当にこんないいかげんな作者で申し訳ございません。
重ね重ねお詫びをいたします。
どうか見捨てないでやってください(/_;)

どうぞ今後とも宜しくお願いいたします。

たつみきえ

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【ホワイトデー企画】:Studio 1
2010-03-07-Sun  CATEGORY: コラボレーション
妄想スパイラル様》より結城さんと薫君が遊びに来てくださったホワイトデー企画です。
結城さんと薫君のお話が読みたい方はどうぞ上をクリック♪


「ホワイトデーにも何かしようよ」
と谷嶋薫(やしまかおる)から話を受けたのは3月に入ってすぐのことだった。
バレンタインデーには、脅かしてあげようと薫と二人してケーキ作りをしたのに、結局は英人の恋人である千城と薫のお相手の結城信哉(ゆうきしんや)にもっとすごいプレゼント(飛行船クルーズ)を送られて企画の差をまざまざと見せつけられた。
何をしたって千城には見透かされてしまう現実を知りながら、そんなことに懲りた様子もなく、薫はまた何かをしたいと言い出す。
よっぽど手作りケーキを褒められたことがうれしかったんだろうなぁ…。

夕闇が迫った時刻、営業途中だという薫がアトリエに姿を現した。
英人の名義にされたビルは、いつの間にか賃貸物件にされていたようで、最上階の5階には警備会社が入っている。
管理の担当は結城のようだったが、実際には薫が様子を見にきていた。
年も近いし、色々な意味で話が合うので英人としては歓迎していた。

オフィスの上司でもある神戸に「賃貸会社の人が来るので…」と早上がりを希望したらすぐに調整してくれた。
だからといって新しい入居者があるわけでもない。
千城の許可を得ずにビルに入れる人間などいるはずがない。
要は薫と雑談をするための口実に過ぎなく、神戸を騙していることにささやかな詫びはあったが、気兼ねなく話せる薫との時間は楽しいものだった。

薫とはバレンタインデーのマル秘チョコケーキ作戦以来、すっかりと仲良くなっている。
こうして営業回りで時間が空いたときなど、たまにアトリエを訪れてくれる。
英人が描く絵に感心してくれて、それは英人にとっても嬉しいことだった。
ただきちんとスーツを着た薫に比べて常にラフな格好の英人はどうしたって薫より年上には見えない。
オフィスでスーツを着る必要がなかったから今日も仕事帰りだというのに、浅葱色のTシャツに黒のドレープカットソーを重ね、ジーンズという姿だった。

部屋の端の方に置かれたデスクの上を適当に片付けてコーヒーを出してあげる。
薫と話をしていたところに英人の携帯電話が鳴った。
珍しく、表示されたのが『野崎』とあって英人の方が驚いた。
薫に失礼を詫びて電話に出てみれば、千城の秘書である野崎の声がした。
『すみません。社長は接待が延びておりまして…。夕食もお付き合いすることになりましたので、英人さんにはお食事を先に召し上がっていただきたいと…』
夕食時に帰ってこないと伝えられて淋しさもあったが、仕事では仕方ないとも思う。
特にこの時期は決算期など様々な事情が重なって帰宅は遅くなる一方だった。
「はい、分かりました」
しゅんとうなだれた英人に気付いたのか、電話を切ると薫が心配そうに英人を伺い見た。
「大丈夫?どうしたの?」

夕食を一人で摂るのは淋しいが彼を誘うわけにもいかないだろうと思う。薫にも待っている人はいる。
何気なく千城の帰宅が遅くなることを伝えれば、元気づけてくれるような薫のハツラツとした声が響いた。
「結城さんなら大丈夫だよ!今日は役員会があるし遅くなるんだ。俺も一人だしどうせなら一緒にご飯を食べようよ」
わざと言ってくれたのかどうかは分からない。
でも薫はいつも英人を元気にしてくれた。

「今日はイタリア料理の日なんだよね…」
デリバリーで届く食材は日々違う。
最近では英人もたまに料理をするようになったが、常日頃千城が口にしているものを英人が作るなど到底できなく、その上料理は使用人が作るものという環境で育っている千城は英人の『家政婦のような動き』を好まなかった。
すでにマンションに届いているだろう、夕食のメニューを口に出すと、「イタリア料理?」と薫から不思議そうな声が上がった。
「英人って料理も得意なんだぁ…」と感心されたように呟かれたが説明をするのも気が引けてくる。
食べてもらわなければ明日の朝には廃棄物になるだけだ。
家に連れて行ってしまえばいい…。
英人は薫の言葉に甘えて彼をマンションに招待した。

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