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ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
夢のような吐息 1
2010-04-08-Thu  CATEGORY: 吐息
新しい従業員が入ったというのに、未だに野崎美琴(のざきみこと)は水谷俊一(みずたにしゅんいち)の事務所通いをやめられずにいた。
通いつめて3カ月。暦はGWを越えた。(つっこまないで~っ!!季節を全く追っていません。あれが何カ月後?、これも数カ月後?…とか計算しないでください。成り行きです。本当にごめんなさい。書きたいときに書きたいことを適当にかいています。年齢だけは一応追いました。たぶんきっと今現在、これくらい。(超いい加減) 英人・日野は26歳(同い年)、千城・神戸は32歳(同級生)、野崎37歳。その他は適当に判断してください、冷汗)
資料のほぼ全ては誰が見ても咄嗟に判断できるくらいの整理のされ方をしている。
水谷が長年に及び弄くりまわした書類は無駄なものを省かれ、かつての3分の2ほどのスペースで事足りるくらいに整頓されていた。
水谷にいわせれば、ここまで深入りされた野崎に抜けられることのほうが痛手だ。

「お話が違うように思えるのですが」
「従業員育成がどれほど大変か美琴だって知っているだろう?宮原君が育つまで、俺だって店に顔を出していなきゃならないだろうが」
まだ仕えてほしいという態度に思わず野崎の愚痴がこぼれるが、水谷はさらりとかわしていた。
その割にはウィスキーグラスを持って事務所に下がっている人間に何と返したらよいのやら…。

椅子に座り、今日の処理を行う野崎の隣で、デスクに腰かけた水谷がグラスを傾ける。

税理士だったという宮原瑛佑(みやはら えいすけ)が事務所を辞め、このバーで勤め始めて1カ月ほどたつ。
異色の分野へと転職したと野崎は感じていながら、別段人の人生に深入りする気もなく、なにやら事情でもあったのだろうと、宮原はもちろん水谷にも聞く気はなかった。
履歴書の写真だけは見せてもらったが、夜の商売に慣れるのかと思うくらい黒髪を短く切り落とした颯爽とした人物だったが、実際あってみれば、何か弾けたのかと思うくらいに髪は茶色く染められ、耳には幾つもピアスが施されていたりする。
正直、履歴書の年齢(33歳)よりも数歳若く見えた。…というより、履歴書の写真が実年齢よりも上に見えた…というほうだろうか。
どうでもいいとはいえ、自分が関わる状況となればまた話も変わってくる。
全て…とはいわなくても、宮原の実力を垣間見れば、水谷のフォローも出来そうな予感がする。
あえて私財を晒す気はないといわれればそれまでだが、簡単に野崎に任せたことを思えば宮原にも託せる部分があるのではないか…。
もっとも申告する側の人間と運用する側の人間では考えは異なるものなのだが…。

「飲まないのか?」
「運転があるんです」
「泊まらないっていうことか…」
「営業はどうされたんですか?さっさと一人前のバーテンに育ててくださいっ」

暗に誘われる夜の情事に溜め息を交えながら、野崎はぴしゃりと水谷を押さえた。
身体を繋げて寝たのは一度だけだった。
今でも振り返れば不覚の出来事といってよかったが、溜め込むだけの野崎を知ってか、我を忘れさせてくれた水谷の思いやりに感謝するところもある。
『榛名』という名に縛られ、完璧を装った自身を一瞬でも忘れさせてくれた。
気付けばそうそうやたらな人間に体など預けられない状況になっている。
全ては『過ち』となる今…。
スキャンダルの一つが足を引っ張る。

引きずることもない後腐れのない情事はほんのわずかだけ野崎に躊躇いを与えたものの、全く変わりばえのない水谷の態度に全てを夢の中へと葬ることができた。

間違いは、繰り返そうと思えば何度だって繰り返せる。
だが『間違い』ではなく『癒し』を求めた『大人の時間』。
深入りすることが危険だと感じるから野崎はそれ以降をきっぱりと断り続けていた。
水谷も無茶はしない。

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懲りもせずまた書いた…。
連日更新はありません。書きたくて書いた…というだけです。気まぐれでupしていきます。どうかお許しください。
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夢のような吐息 2
2010-04-10-Sat  CATEGORY: 吐息
水谷が犯罪ともいえるべき高校生と別れたとはなんとなく耳にしていた。
もともと長続きしない男である。
別に興味もなかったし、驚きもしなかった。
人肌が恋しい時に、たまたま居たのが自分なのだろうとも野崎は察しがついている。
だからといって今も流されるのもどうかと自尊心が唸っていた。

「美琴ちゃん♪」
「お断りしますっ!!従業員がいる前で何を考えているんですかっ?!閉店時間まできちんと表舞台に立ってくださいっ」
「終わるまでいるか?」
「冗談じゃありませんっ!私にも明朝から業務があるんです」
「坊やのお守だろう」
「仕事ですので」
「あっ、そっ…」

一瞬諦めたのかと思いきや、不意につままれた顎先と塞がれた唇に息が止まる。
ほんの僅かな時間だったはずなのに、ねっとりと口腔内を蹂躙される舌の動きに、抵抗も拒絶も忘れた。
「…ふ…、は…っ…ぁ…」
喉奥まで熱されそうな口付けを受けてかろうじて酸素を吸った時、突然コンコンと事務所のドアを叩く音がした。
中の返事を待つ間もなく、開けられたドアに、僅かに離れただけの野崎と水谷の視線が同時に入口を向く。
入ってきた男が宮原だと分かった瞬間、野崎は羞恥に顔を反らしたし、水谷は何事だと平然と見返していた。
「あ…、すみません。オーナーに、お客さんが…。日野さんって方と神戸さん…って…」
明らかに動揺したという態度で、用件を告げれば、宮原は戻っていった。
水谷は「すぐ行く」と答えただけだ。
間違いなくいらぬ誤解を招いたことは確かだった。

「今日は休みにでもしたかな、二人揃って現れるなんて」
水谷同様、日野たちも気まぐれで店を開け閉めしているとはなんとなく噂で聞いている。
真面目な日野の性格は規定通りの時間で営んでいたようだが、神戸はちょこちょことそれに水を差しているようだった。
二人して顔を見せたとは珍しい。

宮原に与えた誤解などどうでもいいことのように、水谷は立ち上がった。
「もう今日はいいよ。美琴も顔を出せ」
良く知った人間が店に顔を出したからにはこちらからも挨拶を…という考えは理解できても、部外者に等しい自分が姿を晒すのはどうかと躊躇いすらあった。
確かに神戸や日野ともこの店では何度も顔を合わせたことがあるが、あくまでも客としてだった。
彼らの再会に水を差すようでもある。

遅れて事務所を出たものの、水谷には悪いが…と、カウンター脇の裏口からこっそり帰ろうとすれば、気付いた宮原に止められた。
「美琴さん、待っていますよ」
水谷に影響されているのか、自分をファーストネームで呼ぶ人間に嫌悪すら抱く。
そっと隠れて出ようとした身体も、宮原の一言でカウンターに座った人間と向かい合った水谷の視線を一身に浴びた。
「美琴」
水谷の声に外に飛び出しそうだった身体が固まった。

「『みこと』?」
「あぁ、野崎さんの名前。ショウ、知らなかった?」
「すっげ…、超以外っ!」
カウンターで繰り広げられた会話は嫌でも耳に入ってきた。
予想外の反応はこれまででも慣れてはいても、改めて伝えられることに全身から冷や汗が吹き出そうだった。
冷や汗…というより、羞恥だろうか。
良く知る人間だからこそ、名を知られてそのギャップに困惑する。
こんなことなら、最初から名刺でも渡して馴染ませておいたほうが良かったか…と思う時すらある。

水谷に促されて、カウンター内のスツールを出された。
「どうせ、客で座るっていうのにも抵抗があるんだろう?それにふたりの邪魔をするなよ。この辺に適当に座っておけ」

あまりにも意外な状況だった。
日野自身も慣れたカウンター内ではなく、客として佇んでいる。
そこに多少の居心地の悪さはあるようだった。
いつも『客』としてしか来なかった野崎がカウンター内にいる。
新しく入ったバーテンダーの存在。
ここはもう、見知った店ではなくなったという思いが、野崎の中を駆け巡っていった。

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これ、まだ書いてもいいですか?
拍手でしか判断できないんですが、人気ないようなので…
つづきどうしようか…
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夢のような吐息 3
2010-04-11-Sun  CATEGORY: 吐息
居心地が悪いわけではない。
ただ、多少の違和感を感じるというだけ…。
それは確実に宮原に伝わっていたようだった。
彼にとってこれほど屈辱的なことはないだろう。
どこまでも引きずられる過去はいい影響を及ぼさない。
宮原が辞めなければいいのに…と野崎は危惧した。

「じゃ、俺たち帰りますんで…」
気付いたように日野と神戸が、たった一杯のカクテルを飲みほしただけで席を立った。
日野の洞察力は以前にも増したようだ。
「ちょっと安心したんです。水谷さん、このバー、半分やる気無くしていたからどうなったかなぁって。でもちゃんと新しい人入れてくれたし。なんだか継がれたようで嬉しかったです。あ、なんか、すみません。年下の俺がこんなこと言っちゃって…」
日野は水谷と宮原を交互に眺めながら、去りゆくのは惜しいと言った感じを隠さなかった。
それでも今、守るべき場所があるという強みなのか、彼の態度は以前よりも堂々としているような気がした。
ただでさえ、実年齢以上の風格を持つ日野は、6つも離れた神戸と並んでも何の遜色もない。
「潰すかよ。俺が長年手を加えてきた店だぞ」
「ですよね。まだまだ現役で、今後の活躍も期待していますよ」
「年寄り扱いしやがって」
苦笑する水谷に爽やかな笑顔を向けた日野と神戸がカウベルの小さな音を鳴らして姿を消した。

客足はそう多くはないが、着実に売り上げは戻してきている。
定着する人間がいるというのが、この店の顔になるのだろう。
宮原に期待を込めた言葉は彼にも伝わっているはずだった。

「美琴は?もう帰るのか?こんなところまできてウーロン茶って味気ない奴だなぁ」
「明日も業務があると言ったはずです」
「はいはい」

たいして取り合う気もない水谷が奥の事務所へと引っ込んでいく。
野崎はこのまま帰ろうとしていた。
今日するべきことは終えているし、水谷一人でも充分であるほどの処理しか残されていない。
宮原が入って余裕すらあっていいはずだ。
それなのになぜ付き合っているのか、野崎自身不思議に思う所さえあった。

「それでは私も…」
宮原に一度挨拶をして立ち去ろうと腰を上げた野崎に、宮原が立ちふさがった。
水谷が『タチ』だと豪語するだけに認めるような体格がある。
ボディーガードとしても使えそうな強靭な体つきに野崎は一瞬怯んだ。
それでもまだ店の中だ…。

「美琴さんて、オーナーに可愛がられているの?」
囁きにも等しい台詞にかぁぁぁっと頬が火照るのが分かるくらいだった。
そんな立場に落された自身が情けない。

「馬鹿なっ…っ!」
「でもさっき事務所で…」
「それ以上言わないでください。けしかけられただけです。見境がない水谷さんのことは貴方も御存知でしょう?」
「ま、ね…」
見られたことを否定し、何もないと暗に伝えた。
小さく肩を竦めた宮原には、日野同様年下とは思えない潔さがあった。
本当に認めたかどうかに疑問があっても信じるしかないのだろう。
この男も1カ月という期間でどこまで知ったのだろう…。
頭を抱えたくなる現実を思い浮かべながら、野崎は「帰ります」と呟いた。

「簡単にキスとかしちゃうんだ。それを『見境ない』っていうんだよ」
宮原の声が野崎を引き止めた。

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夢のような吐息 4
2010-04-12-Mon  CATEGORY: 吐息
水谷と同類と取られるのは嬉しくない。
誰にでも簡単に身体を許す人間と思われたくもないから否定する。
見られてしまったことは不覚だったが、水谷の手の早さを知る宮原にはいくらだって言い訳ができた。
「水谷さんを悪く言う気はありませんが、一緒にされるのは気分がよくないですね。私の意思を無視して行動に出る方ですから」
「抵抗しなきゃ同意って受け止めるよ。美琴さんって開き直るのも早そうじゃん。『これくらいは…』って諦めるタイプでしょ。たぶん俺が手を出しても許してくれるよね」

身体がカッとなる。
当たっている部分があっても、彼が想像する低俗な人間の身分に落とされるなど益々気分が悪くなる。
「それ以上の発言はやめていただけませんか」
「美琴さんってスキあり過ぎだよ。だからオーナーに付け込まれるんじゃん。バリバリ仕事こなしているのに、身体だけは弱いって感じ。それで流される…」
「もうこの話はやめてくださいと申し上げたはずです。あなたも水谷さんの手腕に引っかからないようにお気をつけください」
「冗談。俺とオーナーじゃ立場一緒でどっちも堕ちないよ」
苛々する野崎とは対照的に、どこか余裕すらある態度で宮原は肩をすくめた。
野崎自身、会話の中で感情を表すことは滅多にない。
話題が性的なものをまとうから余計に苦手と受け止めるのだろうか。
店の中で、小声で囁き合うような会話だから尚更耳に纏わりつく。

野崎はこれ以上宮原と会話をするのが何故か怖かった。
隠し続けた何かを引っ張り出されそうな気がした。
いつか水谷の前で晒した身体のように、無防備なものが現れそうだった。

「帰ります…」
野崎が宮原の脇を通って裏口から外に出れば宮原が追ってきた。
少しの時間であれば店を空けても大丈夫なのだろうが、まだ話し足りないと言いたげな態度に溜め息がこぼれる。
店の中で話したくない内容があるのだと、その雰囲気から読み取れた。
「まだ何か?」
強気な口調に出てはみたものの、暗がりの中で動揺しいつもの自分でないのは野崎自身が良く分かっていた。
悩みの相談を受けるのとは少々違うようだ。
振り返った野崎と宮原の間が急速に縮まる。
宮原の腕に囲まれるように間合いを詰められて野崎は逃げ場がなくなった現実を知った。

素早さは水谷にも似ている。
「オーナーのじゃないんだったら俺のになってよ」

唇が触れる寸前で囁かれた言葉に野崎は耳を疑った。

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ハリネズミにもモテ期が?!(知らんっ!!もうっ勝手に動いてるし!)
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夢のような吐息 5
2010-04-14-Wed  CATEGORY: 吐息
『俺のに…』????

「ばっ…か…なっ…っ…、っ!!」
かろうじて発した言葉が宮原の唇の中に飲み込まれた。
今日二度目の接吻は、先程同様、気持ち良さの中に吸い込まれる。
絡め取られた舌先は襲われる…というより、宥められるという感じだった。
水谷の『癒し』とはまた違う。

「抵抗しないんだ…。こうやってオーナーに許していたのかってカンジ」
息が乱れる自分とは違って、平然と状況を伝えてくる宮原に畏怖の念が生じた。
簡単に許した覚えはないが、一度でも見られた宮原には否定のしようがない。
「なに、言って…」

「どこまで開き直った関係なわけ?別に美琴さんをせめたいわけじゃないけどさ。なんだか、すごいお疲れモードっぽい。そんでもってオーナーに気付いてほしいって見える。でもあの人、無理なんだって知っているんでしょ。そんなことしないでそろそろ自分を甘やかしてやったほうがいいんじゃない?」
「その相手を貴方が…と?」
「いいよ。やってあげる。そのつもりで声かけてるし。……ってか、もうオーナーのとこに通ってほしくない。あの人の身軽さが分かるだけに気の毒だよ。財務なんて俺だって処理できる。何よりもう必要ないはずだよな?わかっていながら通い詰めたって『好きなんだ』ってこと?」
「そんなことは…っ!!」

隠しても無駄だという態度に野崎は完全に怯んでいた。
水谷に対してどうこう思う気持ちもない。
たった一度の『癒し』に一晩だけ溺れた。
詰まる自分を解放してくれた存在だっただけで、水谷の性格も知っているから何も求める気はない。
「一時的な癒しよりもずっと隣にいてくれる人を求めたら?オーナーは絶対に美琴さんを仕事以外では必要としない。俺は美琴さんの力になりたいって思っただけ。無理のない仕事をしてくれたらいい。生き急ぐ必要なんてないんだから…」

あまりにも重い言葉に瞼があがる。
履歴書に書かれていた人生は”外れる”ことなど何一つなかった。
あのまま税理士という職業についていれば、少なくともこの歳でかなりの立場と収入が見込まれていたはずだ。

「なぜ、宮原さんはここに…?」
聞いてはいけないことのように感じたけれど聞かずにはいられなかった。
きっと水谷も知らない”過去”がある。
それを告げてくれるかどうかは別問題だったが、自分に声をかけた以上知らぬふりはできなかった。

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