それから2週間ほどの時が経った。
週末は磯部の休みなど関係なく、中條が訪れてくる。
数枚の着替えならすでにある、という状況だったが、本格的な引っ越しはまだ先のようだ。
磯部も部屋の中を片付け始めた。
3LDKという間取りだが、一つの部屋は物置に近い。
寝室にワークデスクもあったから、物置を片付けてデスクはそちらに移動させた。
物を詰め込んだだけの部屋も、片付けるのに良い機会だった。
「ベッドを持ち込んでもいい?」と中條に聞かれ、寝室は別になるのか?!と疑問に思う磯部に対して、「同じ部屋だけどぉ。たまには離れて眠りたい時もあるでしょ?」と、長年の一人暮らしを振り返られる。
いつもくっついて寝ては、寝不足になる日もあるのではないか、という配慮か…。
確かにのびのびと大の字になって寝たい日はあるかも…と磯部も了承した。
寝室としてだけの目的で使う部屋に、今のダブルベッド以外にも置くスペースは充分ある。
その他にも、使い慣れた『寝転がって映画を見るためには絶対に必要な居心地の良いソファ』とか、長年愛用の調理器具だとか、中條の捨てがたいものも全て受け入れた。
磯部自身、部屋にいることが少ないので、特にこだわりはない。
リビングダイニングは、一人暮らしで無駄なものがなかったし、スペース的には余っているといっていい。
中條が気持ち良く暮らしていければそれでいいと磯部は言った。
ある平日。
その日は中條から「仕事で外に出る」というメールをもらった。
『ランチできる?』
質問に何と答えようかと考えた。
磯部にはこの日、午前中に商談相手との取引が待っていた。
話が進めば、終わりがいつになるかなど分かったものではない。
約束をして待たせるのも嫌だし、とりあえずその予定を伝えて、『昼食の約束はできない』と送れば中條も状況を分かったようだった。
『享の近くの定食屋さんにいるから。終わったら享のうちでコーヒー、もらってる』
一日の予定を告げられて、『遅くなっても逢えるかもしれないよ』的なメールには苦笑するしかない。
案の定、粘り強く働いた磯部に、期待の承諾がもらえたのは昼を越えた時間だった。
迂闊に約束をして、中條を待たせることにならなくて良かったと安堵の息が漏れる。
直接安住の家に辿り着くと、すでに中條の車も停まっていた。
出迎えてくれた安住に挨拶をして中に進めば、中條の隣には思わず目を向けるほどの可愛らしい男の子がいた。
『子』とはいえ、朝比奈と同じくらいか幾つか上の子だろう。
きっちりとスーツを着こなしてはいるが、小柄なのは一目瞭然だ。大きな瞳がとても印象的である。
「お疲れ様。ごはん食べたの?」
ソファに座った中條が磯部に隣に座るよう促してくる。
「あ、ああ。コンビニでおにぎり買って食いながら来た」
こんな仕事についていると昼食などの時間はマチマチだった。
中條との約束を蹴っているだけに、心配される理由も分かる。
それよりも磯部には初対面である、中條の隣の男の子が気になって仕方なかった。
軽く会釈をされ、仕事柄というか、つい癖で名刺を出そうとしてしまう。
同じように咄嗟に名刺入れを取り出そうと動く彼だったが、それを中條に止められた。
どことなく機嫌が悪いように見えるのは気のせいか…?
「名刺一枚でも経費の無駄遣い。こちらは一葉ちゃんの”元”上司、磯部さん。この子は営業の子で『さくらちゃん』」
「中條さんっ、そういう紹介の仕方、しないでくださいよ~ぉ。桜庭です」
『さくらちゃん』という名前はどこかで聞いたことがあるな…と頭を巡らせる。
いつぞや聞いた、『顔で売っている営業』かぁ、と思い出す(←酷っ!!)。
再び頭を下げてきた桜庭に磯部も挨拶を交わした。
物怖じしない態度といい、快活な話具合といい、朝比奈とは雲泥の差だな、とも思った(←やっぱり酷っ!!)。
正体が分かれば磯部も桜庭の存在が気にならなくなった。
名刺を交換させなかったのは、中條の単なる嫉妬なのだとも理解する。
とはいえ、子供には全く興味のない磯部なのだが…。
「中條さんが引っ越すうちって、磯部さんのところなんですか?」
「そうだよ。そうそう、さくらちゃんのカレシが運送会社に勤めていてね。引っ越し部門に話をしてくれて、『社員価格でいいです』って言ってくれたんだ(笑)」
桜庭に返事をした後、磯部に向き直った中條が説明を始める。
引っ越しの手伝いをする、と磯部が言い出したとき、「業者に頼むから人手はいらない」と断られた。
忙しい身を心配してのことかと思えば、そんな裏事情があったのか…と納得する。
「『社員価格』って、そうしろって言ったの、中條さんじゃないですか…」
「誠ってば、またそんな無茶を言い出したの?」
ふわふわと湯気のたつコーヒーを運んで来ながら、安住が呆れた声を上げた。
その後ろから朝比奈がケーキの乗った皿を持ってきた。
今日はあの喫茶店は休みだったのか…と頭の隅で思っていたが…。
「値切るのが当然でしょ」
当たり前のように口にする『営業の強さ』に返す言葉もない…。
どんな無体を強いたのか、磯部は桜庭の顔を見られなくなる自分を感じた。
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終わんない、どうしよ…。
中條、敏腕ぶり発揮中。
ぽちってしていただけると励みになります。
週末は磯部の休みなど関係なく、中條が訪れてくる。
数枚の着替えならすでにある、という状況だったが、本格的な引っ越しはまだ先のようだ。
磯部も部屋の中を片付け始めた。
3LDKという間取りだが、一つの部屋は物置に近い。
寝室にワークデスクもあったから、物置を片付けてデスクはそちらに移動させた。
物を詰め込んだだけの部屋も、片付けるのに良い機会だった。
「ベッドを持ち込んでもいい?」と中條に聞かれ、寝室は別になるのか?!と疑問に思う磯部に対して、「同じ部屋だけどぉ。たまには離れて眠りたい時もあるでしょ?」と、長年の一人暮らしを振り返られる。
いつもくっついて寝ては、寝不足になる日もあるのではないか、という配慮か…。
確かにのびのびと大の字になって寝たい日はあるかも…と磯部も了承した。
寝室としてだけの目的で使う部屋に、今のダブルベッド以外にも置くスペースは充分ある。
その他にも、使い慣れた『寝転がって映画を見るためには絶対に必要な居心地の良いソファ』とか、長年愛用の調理器具だとか、中條の捨てがたいものも全て受け入れた。
磯部自身、部屋にいることが少ないので、特にこだわりはない。
リビングダイニングは、一人暮らしで無駄なものがなかったし、スペース的には余っているといっていい。
中條が気持ち良く暮らしていければそれでいいと磯部は言った。
ある平日。
その日は中條から「仕事で外に出る」というメールをもらった。
『ランチできる?』
質問に何と答えようかと考えた。
磯部にはこの日、午前中に商談相手との取引が待っていた。
話が進めば、終わりがいつになるかなど分かったものではない。
約束をして待たせるのも嫌だし、とりあえずその予定を伝えて、『昼食の約束はできない』と送れば中條も状況を分かったようだった。
『享の近くの定食屋さんにいるから。終わったら享のうちでコーヒー、もらってる』
一日の予定を告げられて、『遅くなっても逢えるかもしれないよ』的なメールには苦笑するしかない。
案の定、粘り強く働いた磯部に、期待の承諾がもらえたのは昼を越えた時間だった。
迂闊に約束をして、中條を待たせることにならなくて良かったと安堵の息が漏れる。
直接安住の家に辿り着くと、すでに中條の車も停まっていた。
出迎えてくれた安住に挨拶をして中に進めば、中條の隣には思わず目を向けるほどの可愛らしい男の子がいた。
『子』とはいえ、朝比奈と同じくらいか幾つか上の子だろう。
きっちりとスーツを着こなしてはいるが、小柄なのは一目瞭然だ。大きな瞳がとても印象的である。
「お疲れ様。ごはん食べたの?」
ソファに座った中條が磯部に隣に座るよう促してくる。
「あ、ああ。コンビニでおにぎり買って食いながら来た」
こんな仕事についていると昼食などの時間はマチマチだった。
中條との約束を蹴っているだけに、心配される理由も分かる。
それよりも磯部には初対面である、中條の隣の男の子が気になって仕方なかった。
軽く会釈をされ、仕事柄というか、つい癖で名刺を出そうとしてしまう。
同じように咄嗟に名刺入れを取り出そうと動く彼だったが、それを中條に止められた。
どことなく機嫌が悪いように見えるのは気のせいか…?
「名刺一枚でも経費の無駄遣い。こちらは一葉ちゃんの”元”上司、磯部さん。この子は営業の子で『さくらちゃん』」
「中條さんっ、そういう紹介の仕方、しないでくださいよ~ぉ。桜庭です」
『さくらちゃん』という名前はどこかで聞いたことがあるな…と頭を巡らせる。
いつぞや聞いた、『顔で売っている営業』かぁ、と思い出す(←酷っ!!)。
再び頭を下げてきた桜庭に磯部も挨拶を交わした。
物怖じしない態度といい、快活な話具合といい、朝比奈とは雲泥の差だな、とも思った(←やっぱり酷っ!!)。
正体が分かれば磯部も桜庭の存在が気にならなくなった。
名刺を交換させなかったのは、中條の単なる嫉妬なのだとも理解する。
とはいえ、子供には全く興味のない磯部なのだが…。
「中條さんが引っ越すうちって、磯部さんのところなんですか?」
「そうだよ。そうそう、さくらちゃんのカレシが運送会社に勤めていてね。引っ越し部門に話をしてくれて、『社員価格でいいです』って言ってくれたんだ(笑)」
桜庭に返事をした後、磯部に向き直った中條が説明を始める。
引っ越しの手伝いをする、と磯部が言い出したとき、「業者に頼むから人手はいらない」と断られた。
忙しい身を心配してのことかと思えば、そんな裏事情があったのか…と納得する。
「『社員価格』って、そうしろって言ったの、中條さんじゃないですか…」
「誠ってば、またそんな無茶を言い出したの?」
ふわふわと湯気のたつコーヒーを運んで来ながら、安住が呆れた声を上げた。
その後ろから朝比奈がケーキの乗った皿を持ってきた。
今日はあの喫茶店は休みだったのか…と頭の隅で思っていたが…。
「値切るのが当然でしょ」
当たり前のように口にする『営業の強さ』に返す言葉もない…。
どんな無体を強いたのか、磯部は桜庭の顔を見られなくなる自分を感じた。
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終わんない、どうしよ…。
中條、敏腕ぶり発揮中。
ぽちってしていただけると励みになります。
今更だ…という雰囲気を誰もが持っていた。
思わず身が小さくなりそうなのに、堂々とした態度といい、逆らえない雰囲気といい、中條の素振りは今に始まったことではなく、皆が分かり切っていることで…。
天下無敵の姿勢はどこでも有効なのか…と頭を抱えたくなりそうだ。
慣れたように、桜庭も口を閉ざすことはない。
それには磯部も感心したくらいだ。
この動じなさは天然なのか、中條が鍛え上げたものなのか…。
どちらにしても、朝比奈とは違いすぎるのが一目瞭然だ。
興味は沸いても気を惹かれるわけではない。
それなのに、どことなく牽制をいれてくる中條が何とも可愛らしかった。(口にはしないけど)
安住の家で一頻り会話を愉しんで、「そろそろ社に戻らないと…」という中條に続いて磯部も腰を上げた。
桜庭はこちらに気を使ってくれているのか、まだ出てくる様子もなく、車を前にして中條と二人で顔を合わせる。
「日曜日に引っ越しするから…」
「あぁ、大丈夫。急な仕事はないはずだし」
すでに予定を耳にしていた磯部は、中條の引っ越しの日に合わせて休みを取っていた。
いくら全部業者任せとはいっても、なにかしらやることはあるだろう。
ようやく、離れずに暮らせる日がくるのだと、感慨深いものがある。
「今日はごめんね。無理に呼んじゃったみたいで…」
「会えたからいいよ」
強引かと思えば些細なところに気をまわしてくる。
小さく俯く中條にフッと笑いかける。
外で会うのはいつものことなのに、今日は食事も共に摂れない余裕の無さがあったからだろうか。
どことなく中條に後ろめたさを漂わせるものがあった。
気にしなくていい、と宥めればふわりと笑顔を見せる。
人の家の前でなければ、唇でも合わせたいところだ…。
「今週はドタバタしてそっちにいけないけど、ちゃんとご飯、食べてよ」
「人のこと、言ってるなよ。まここそ、ちゃんと食えって。抱き心地悪くなる」
「昼間っから何言って…っ!!」
「これ以上痩せられたら困るってことだよ。ありのままのまこを受け入れるから心配するなって」
「もうっ…っ!」
中條が何かと体型を気にすることから、気を反らしたかった。
『食べての頑丈』とはよく言ったものだなぁ、とも思う。
健康でいてくれるのが一番ありがたい。
今週は会えないということに、離れ難い気を持ちながら、車のドアの陰で、そっと唇を合わせた。
中條の愛用した荷物が運ばれてきて、ようやく、「ふたりが一緒になるのだなぁ」と変な意識がわいた。
中條の頼んだ引っ越し業者は手早く荷を解いて生活がすぐにできるレベルにまで持って行ってくれた。
全てを見せることに嫌悪がなければ、素晴らしいサービスだとも思える。
寝室に運ばれた、中條の使い慣れたベッドは、これまでの磯部のベッドにくっついて並べられた。
高さが変わらないので繋げてしまえばキングサイズ(いや、それを越える…)並みだ。
どれだけでも転がれる…と磯部が思っていたのを中條が嗅ぎ取ったかどうか…。
リビングには中條専用ともいえる”寝転がりソファ”がお目見えした。
二人掛け用のものなのだが、肘掛も背もたれも倒れるもので、ここで寝転がるのが中條の喜びらしい。
こうやって少しずつでも互いを知っていけることが、また新たな空気を運んでくる。
居心地のいい空間。
穏やかに流れる時間。
まだ片付かない段ボールを見ながら、ようやくやってきた、”生涯を共にできる相手”を前に喜びだけが湧いてくる。
「ここに来てくれてありがとう」
磯部が囁けば中條も応えてくる。
「呼んでくれてありがとう」
合わせた唇の熱さを忘れない。
いつだって囁いてやる。
…「愛している」…
その一言を…。
―完―
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時間なくて全然読み直ししていない…。
ちょとドタバタな週末。
こいつら、終わってくれて良かった。
ポチいただけるともっとうれしいっすっ!
思わず身が小さくなりそうなのに、堂々とした態度といい、逆らえない雰囲気といい、中條の素振りは今に始まったことではなく、皆が分かり切っていることで…。
天下無敵の姿勢はどこでも有効なのか…と頭を抱えたくなりそうだ。
慣れたように、桜庭も口を閉ざすことはない。
それには磯部も感心したくらいだ。
この動じなさは天然なのか、中條が鍛え上げたものなのか…。
どちらにしても、朝比奈とは違いすぎるのが一目瞭然だ。
興味は沸いても気を惹かれるわけではない。
それなのに、どことなく牽制をいれてくる中條が何とも可愛らしかった。(口にはしないけど)
安住の家で一頻り会話を愉しんで、「そろそろ社に戻らないと…」という中條に続いて磯部も腰を上げた。
桜庭はこちらに気を使ってくれているのか、まだ出てくる様子もなく、車を前にして中條と二人で顔を合わせる。
「日曜日に引っ越しするから…」
「あぁ、大丈夫。急な仕事はないはずだし」
すでに予定を耳にしていた磯部は、中條の引っ越しの日に合わせて休みを取っていた。
いくら全部業者任せとはいっても、なにかしらやることはあるだろう。
ようやく、離れずに暮らせる日がくるのだと、感慨深いものがある。
「今日はごめんね。無理に呼んじゃったみたいで…」
「会えたからいいよ」
強引かと思えば些細なところに気をまわしてくる。
小さく俯く中條にフッと笑いかける。
外で会うのはいつものことなのに、今日は食事も共に摂れない余裕の無さがあったからだろうか。
どことなく中條に後ろめたさを漂わせるものがあった。
気にしなくていい、と宥めればふわりと笑顔を見せる。
人の家の前でなければ、唇でも合わせたいところだ…。
「今週はドタバタしてそっちにいけないけど、ちゃんとご飯、食べてよ」
「人のこと、言ってるなよ。まここそ、ちゃんと食えって。抱き心地悪くなる」
「昼間っから何言って…っ!!」
「これ以上痩せられたら困るってことだよ。ありのままのまこを受け入れるから心配するなって」
「もうっ…っ!」
中條が何かと体型を気にすることから、気を反らしたかった。
『食べての頑丈』とはよく言ったものだなぁ、とも思う。
健康でいてくれるのが一番ありがたい。
今週は会えないということに、離れ難い気を持ちながら、車のドアの陰で、そっと唇を合わせた。
中條の愛用した荷物が運ばれてきて、ようやく、「ふたりが一緒になるのだなぁ」と変な意識がわいた。
中條の頼んだ引っ越し業者は手早く荷を解いて生活がすぐにできるレベルにまで持って行ってくれた。
全てを見せることに嫌悪がなければ、素晴らしいサービスだとも思える。
寝室に運ばれた、中條の使い慣れたベッドは、これまでの磯部のベッドにくっついて並べられた。
高さが変わらないので繋げてしまえばキングサイズ(いや、それを越える…)並みだ。
どれだけでも転がれる…と磯部が思っていたのを中條が嗅ぎ取ったかどうか…。
リビングには中條専用ともいえる”寝転がりソファ”がお目見えした。
二人掛け用のものなのだが、肘掛も背もたれも倒れるもので、ここで寝転がるのが中條の喜びらしい。
こうやって少しずつでも互いを知っていけることが、また新たな空気を運んでくる。
居心地のいい空間。
穏やかに流れる時間。
まだ片付かない段ボールを見ながら、ようやくやってきた、”生涯を共にできる相手”を前に喜びだけが湧いてくる。
「ここに来てくれてありがとう」
磯部が囁けば中條も応えてくる。
「呼んでくれてありがとう」
合わせた唇の熱さを忘れない。
いつだって囁いてやる。
…「愛している」…
その一言を…。
―完―
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時間なくて全然読み直ししていない…。
ちょとドタバタな週末。
こいつら、終わってくれて良かった。
ポチいただけるともっとうれしいっすっ!
ドライブに行こうとメールで誘われたのは休みの前の日だ。
・・・この週末、仕事の日じゃなかったっけ?と、中條誠は首をひねりながら、深く追わずに、まぁいいかと返事をする。
車好き、ドライブ好きの相方 磯部雅彦は、自動車販売の営業所所長で、あまり自由がきくとはいえない。
そんななかで都合を付けてくれたのだろう。
営業職をいいことに、自由気ままに動いているところは黙っていてあげている。
誠は休みだったが、朝、きちんとした格好で一度は『出社』した人物は、さほど時間を置かずに戻ってきた。
「満開だぜ」
いつも走り回っているからこそ、見頃は分かっているのだろう。
連れまわしてくれることは、ある意味 嬉しい出来事でもある。
さえちゃんが撮ってくれたものです。持ち帰りはダメです。
普段、なかなか休みも合わないし、一緒に出かけることも少ないが、時々こんなふうにサプライズを贈ってくれることは嫌ではない。
運転している人はじっくり見るなんてことはできないだろう。
それでも、誠に見せてやりたいのだという気持ちだけは伝わってくる。
「パーキングに停めて、少し歩くか」
せっかくの晴天。
車内で過ごすだけはあまりにももったいない。
この週末、満開ということもあってどこも人ごみだ。
呼び出しの音が鳴るまで、束の間のデートに頬も緩む。
こんな時間を作ってくれる恋人に、悔しいけれど嬉しさも浮かぶのだ。
なかなか休みが合わなくても、不満に思わないのはこんなところだろうか。
お互いの都合は分かりきっている。
そんな中でも季節や時間を共に味わえることにささやかな幸せを感じていた。
とうとう『呼び出し』音が鳴っては拒みようがない。
この時間を作ってくれた人に、「まさ」と呼びかけて、振り返らせては唇を合わせた。
青空の下、人ごみのなか、驚いた態度はあったけれど、ふぅっと笑ってくれる。
「今夜 待っていろよ」
耳元でささやかれた言葉に誠の頬もぽぅっと染まった。
家に送り届けられて、たまには豪華な料理で もてなしてあげようかなと、誠はそのままスーパーに向かった。
通りかかった公園にも、気付かなかったけれど、桜の木が満開の花をつけていた。
・・・『言われなきゃ気付かなかったかな』・・・
花に興味がなかった・・・といえばそれまで。
だけど二人で見れば視点が変わる。
一緒に同じ世界を見ていくこと。
共に生きようと、改めて思う時だった。
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ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)
330000名様 ご来店ありがとうございました。
こんなに愛されてとても嬉しいです。
キリ番とか設定していませんでしたが、あたまカラッポの私に刺激くださるものなら受け付けますよ~。
どのCPが読みたいとか こういう話は? とか。
ヒントいただいて書き続けていけたらいいなぁと思います。
みなさま、活性酸素(←)くださいね~。ではまた。
・・・この週末、仕事の日じゃなかったっけ?と、中條誠は首をひねりながら、深く追わずに、まぁいいかと返事をする。
車好き、ドライブ好きの相方 磯部雅彦は、自動車販売の営業所所長で、あまり自由がきくとはいえない。
そんななかで都合を付けてくれたのだろう。
営業職をいいことに、自由気ままに動いているところは黙っていてあげている。
誠は休みだったが、朝、きちんとした格好で一度は『出社』した人物は、さほど時間を置かずに戻ってきた。
「満開だぜ」
いつも走り回っているからこそ、見頃は分かっているのだろう。
連れまわしてくれることは、ある意味 嬉しい出来事でもある。
さえちゃんが撮ってくれたものです。持ち帰りはダメです。
普段、なかなか休みも合わないし、一緒に出かけることも少ないが、時々こんなふうにサプライズを贈ってくれることは嫌ではない。
運転している人はじっくり見るなんてことはできないだろう。
それでも、誠に見せてやりたいのだという気持ちだけは伝わってくる。
「パーキングに停めて、少し歩くか」
せっかくの晴天。
車内で過ごすだけはあまりにももったいない。
この週末、満開ということもあってどこも人ごみだ。
呼び出しの音が鳴るまで、束の間のデートに頬も緩む。
こんな時間を作ってくれる恋人に、悔しいけれど嬉しさも浮かぶのだ。
なかなか休みが合わなくても、不満に思わないのはこんなところだろうか。
お互いの都合は分かりきっている。
そんな中でも季節や時間を共に味わえることにささやかな幸せを感じていた。
とうとう『呼び出し』音が鳴っては拒みようがない。
この時間を作ってくれた人に、「まさ」と呼びかけて、振り返らせては唇を合わせた。
青空の下、人ごみのなか、驚いた態度はあったけれど、ふぅっと笑ってくれる。
「今夜 待っていろよ」
耳元でささやかれた言葉に誠の頬もぽぅっと染まった。
家に送り届けられて、たまには豪華な料理で もてなしてあげようかなと、誠はそのままスーパーに向かった。
通りかかった公園にも、気付かなかったけれど、桜の木が満開の花をつけていた。
・・・『言われなきゃ気付かなかったかな』・・・
花に興味がなかった・・・といえばそれまで。
だけど二人で見れば視点が変わる。
一緒に同じ世界を見ていくこと。
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ヒントいただいて書き続けていけたらいいなぁと思います。
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