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BLの丘
夏の遠足 7
2011-07-22-Fri  CATEGORY: 『想』―sou―
充分な睡眠をとったお子様は翌日も元気だった。
…というより、朝から大興奮だった。
それというのも、近隣の村では週末のこの日、小さいながらも山車を引いての村を回る祭りが昼間から開催される。
村道への車の出入りを禁止した歩行者天国ではいくつかの屋台も並び、リゾート施設に訪れていた客たちの呼び込みも行われ賑わいを増す。
引きまわされる山車は地元の子供たちを中心に囲われるが、付いて回るのは自由参加だったので、4人仲良く揃えてもらった『祭』の文字の入ったハッピを着込むことにしたお子様たちだ。
その巡回には佐貫も参加している。佐貫は交番のおまわりさん用の制服を借りていた。(←普段の仕事でも着ることがないので佐貫も何気に楽しんでいる)
滅多に見られない格好はコスプレごっこみたいだとみんなの目にも新鮮に映った。
保護者は村内一周するのも少々面倒だったので、起点から少し付き合っただけで無駄話をして戻ってくるのを待つことにした。
龍太は万が一に備えてお子様に同行することにし、雅臣は待機組のおもてなし係に従事する。

一葉「村一周って疲れない?大丈夫かな~」
那智「一葉、昨日もバーベキューでいっぱい食べたんだから、動いた方がいいよ」
成俊「どうしてもだめだったら、緊急車両を通してくれるよ」
英人「いーなー、ぱとかー」
龍太「…(手押しの乗用玩具に乗せて引きずりまわしてやろうか…)…」
しかし一人を乗せれば喰いつかれるのは分かる。一人で4人を引っ張れるほど体力が余っている龍太でもない。
みんなで掛け声をかけながら引きまわされる山車の隣や後を続いていく。
が、龍太は途中で地元の人間のハッピ姿を、我が家のお子様(?)たちと見間違えていたことに気付く。人波に紛れてしまったのか4人の姿が見当たらない。(ただでさえ小柄なのだ)
龍太「ちょっ…っ!?冗談っ!!」
さっきまで確かこの辺りに…と目の前を歩いていたはずの『祭』姿を探すのだが、似た格好ばかりで判別が難しい。
ピーピー笛を鳴らして全体を見守っている佐貫も、行方不明者に気付いていない様子だった。

龍太「佐貫さんっ!!佐貫さ―――んっ!!佐貫さ――――んっっっ!!!!」
添乗員、大声を張り上げるのは得意である。
他の人たちと同じリズムでピーピーと吹いていた佐貫の笛が途切れた。
龍太「消えた――っ!!行方不明っ!!」(←要点だけで通じる)
佐貫はすぐに自分が見える範囲に視線を投げるが、やはり見当たらないようだ。
山車は少しずつ先に進んでいくが佐貫は立ち止まって、相変わらず例の機械をピコピコと操作する。
佐貫「後ろだ―っ!500メートルくらい後ろで止まってる!!」
龍太「了解っ!!」
『立ち止まっている』の言葉は時々怖い。事故などに巻きこまれていなければいい。
龍太は進んでくる人波をかき分けて逆走しだした。
『祭』のハッピを着込んでいる人間はほとんどが関係者で山車に付き添っている。自由気ままについて回っている連中は私服姿だったために見分けるのは難しくもない。
田舎町の祭りで大混雑が起こっていないのも救いだった。
やがて人波は縦に長い一本の紐のように連なるものになっていく。
佐貫が言っていた500メートルという距離は龍太にとってはすぐだった。

所々にある、細切れ状の屋台の一角にしゃがみこんだ4人の姿を発見した。
龍太「おまえらな―――っ」
園児が水浴びをするような円形のビニールプールがあり、その中には金魚が泳いでいる。
片手にお椀、片手に金魚すくい用のポイを持ち、金魚と睨みあっていた。
どうやら、山車の引き回しに飽きて、違う遊びに走ったらしい。
龍太「黙ってこんなところにいたら迷子になるだろーっ!!」
英人「あ、龍太さんだぁ」(あっけらかん)
那智「上手そうな人が来たぁ」
一葉「2回やって2回とも穴があいちゃったよ~ぉ.・゜゜・(/□\*)・゜゜・」
成俊「すぐ光也が見つけてくれるし」(淡々)
龍太「…(危機感なしかよ…)…」(ガックリ)
英人「龍太さん、釣れる?」
那智「ヒサねぇ。前、やったとき、5匹すくったんだよ~ぉ」(←自慢)
一葉「すごいねぇ」
龍太「…5匹!!(なんだか良く分からないが対抗心が芽生えてる)」
おじちゃん「にぃちゃんもやるかい?」(有無言わさずポイを握らされた)
お子様「わくわくわくわく」(←期待の目で見つめている)
龍太「しょうがないなぁ」(←すっかりやる気)
5人で円陣を組んでいる風景は些か異様ではあったが…。

龍太は真剣に挑戦して2匹まで穴を開けずにすくい、「おーっ」という歓声を浴び気を良くしたが、3匹目でポイに穴を開けた。
同時に「あ~」と落胆の声に「まだ半分ある!」と意地になる。
破れていない面を上手く使い、4匹まではすくったものの、目標とする5匹は遠かった。
龍太「くそぉぉぉ」
別に金魚が欲しいわけではなかったが、このまま負けた烙印を押されるのは納得がいかない。(負けず嫌いな体育会系)
龍太は椀の金魚をプールに戻し、「もう一回!」と言い放ち新しいポイをもらう。
一度水につけたポイも、狙いを定めて空中に待機させている間に風で乾かないかなぁ、などと意地汚いことを思いながら真剣勝負は続いた。
そして、3匹目まで穴を開けずにすくえたのを見て、心の内でガッツポーズを作っていた。
この調子なら6匹もいけるだろう。
ランランと目を輝かせるお子様の視線を感じながら、取らぬ狸のナンチャラ気分でいた時…。

「龍太―――――っっっっ!!!!」
全く予想のしなかった甲高い声が頭上から轟いてきて、焦りから手元が狂い、真ん中にドでかい通過されたあとが見えた。

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コメント | | 2011-07-22-Fri 22:53 [編集]
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Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-07-23-Sat 07:05 [編集]
レ様
おはようございます。

> この声は雅臣?
> 消えた報告以来お子様と一緒に道草くって、発見の報告をしなかったから保護者達が来たの?
>
> とりあえず龍太のお仕置きは決定だな!((´∀`*))ヶラヶラ

発見の報告はしなくちゃですよね~。仕事放棄してちゃいけません。
保護者、気が気でなく待っているのでしょうに。
しかも一緒になって遊んでいるわけで…。
お仕置きされちゃうんでしょうね。
コメントありがとうございました。
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