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BLの丘
待っているよ 12
2012-06-09-Sat  CATEGORY: 待っているよ
あっという間である。
あっという間に嘉穂の宿題全問が解決した。
指導して本人に解かせたのか、大野城が説明するだけで解決に至ったのかは疑わしくはあるけれど…。
「すっげーっ、こんな早く宿題終わったことない~っ」
自分で考えてはいないのだが…。それはそれで問題だと思う筑穂に、喜び勇んだ姿は、咄嗟に家を出ようとしていた。
「かわらっんとこ行ってくる~」
「嘉穂っ、もう遅いからっ」
「大丈夫っ」
筑穂が家を出る時間としては遅いと咎めても、勢いは止まってくれない。
電話で済ませるはずの話は、全問の答え合わせ、直接会うことに繋がったらしい。
筑穂の制止は全く聞こえず、宿題のプリントを手にして、玄関を後にしていった。
何が『大丈夫』なのかはこちらが聞きたいくらいだ。
筑穂はすぐさま、鞍手家の電話番号を押す。
状況をすぐさま悟ってくれる親子にまたもや感謝の念が湧いた。
歩く時間、やってくる存在。なにもかも受け止めてくれる地域社会があった。
嘉穂が行ってしまったのだと伝えても、それがなにか?と逆に兄弟間の触れ合いがあるような信頼に喜ばれる。
香春が一人っ子だったから、嘉穂一人でなく、津屋崎家全部が兄弟として見られていた。
鞍手の母親は、宿題の件に、『直接おしえてもらえるのねぇ』とかなり喜んでいる始末で…。
確かに押しかけて入るけれど…。
『帰りは主人に見送らせます』と、夜遅くの訪問も嫌がられていない。
香春のお母さんがいつものように嘉穂を見守ってくれる発言をしてくれて安堵する。
その隅に少しだけ甘えが出た。
「あの…、えと…、穂波の今後に、ちょっと今、先生が来てくれて…」
嘉穂の存在を邪魔するわけではないが…。
聞かせたくない事情など、電話口でも察してくれるらしい。
状況を聞いて母親はすぐさま、話を進めろと電話を切ろうとした。
『嘉穂くん、うちに、泊めてもいいのよ。ちくちゃんもいっぱい、先生と話して。妥協したらだめだから』
兄弟の歳が離れているだけに…、香春の両親ともそれほど離れているとは言えない筑穂だ。
親子…そして、兄弟と…も、どちらに位置付けされてもおかしくない立場にある。
白い目で見られても不思議ではないのに、香春の両親は決してそんな視線を向けて来なかった。
もちろん、幼いころからの付き合い、筑穂の頑張りを知っているからこそ。

「ありがとうございます。でもすぐ…」
『嘉穂くんがいてくれると、香春もぐずらずねてくれるのよねぇ』
筑穂がすぐにでも迎えに行くと言う台詞に、さりげなくその存在を拒否される。
寝静まるまで居てほしいとは、遠まわしな気の使い方なのだろう。
穂波の人生を決める時、悩める場所に、少しでも手を煩わせるものがないほうがいい。
わかっては、「すみません」と声が漏れた。
『ちくちゃん、…おばさん、こんなこと言うのはなんだけどね。…紙に書かれた学歴とか職歴が絶対にいいものじゃないのよ』
…先生が来た…というだけで、状況は知れたのだろうか。
筑穂が掲げる見栄えというのも、親しい人は知っていたのだろうか。
大野城が言ったように、学歴だけが全てではない。だけどそれを期待してしまったことは、嘉穂を通して鞍手家にも知られた本音だったのだろうか。
同じように穂波にも望んだ世界…。
“先生が来た”ことに、悩める家族を気遣ってくれる。弟の思いは、家族より、他人の方が知っていたのか…。虚しさも混ぜ合い筑穂の心は揺れ動いた。
『うちの主人、高卒なのよぉ』
『いちいち言ってんなぁ』
電話口の向こうに聞こえる和やかな声。
明るい弾みのある声音には学歴など気にしていない言葉。
やはり、自分のこだわりが間違いなのかと思わされる。
充分に”生きている”感動があった。

その背景に『ピンポーン』と電話口の奥に響いたいつものおと。
『あら、もう来たのね。じゃあね』
あっさりと切られた電話だった。
宿題を持った嘉穂は無事に親友の家に辿り着いたらしい。

嘉穂の行方は知れている。
分かっているから安心もした。
電話を置く間を待って、穂波と大野城が居住まいを正した。
先程までの、和やかな食風景はすでになくなっている。
三人にとって、何を話したいのかなど、知れたことだった。

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コメント | | 2012-06-09-Sat 04:52 [編集]
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Re: コメキエーズ
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-09-Sat 05:30 [編集]
内緒様
おはようございます。

> あ、また消えた。コメント。
>
> 二回は同じの書けない・・・

すみませーん。
なんでしょうね、消えちゃうの…。
でも懲りずにコメント残してくださいまして感謝です。

> 要約。
>
> 三兄弟、大好きです。
> かわらママ。良い人だ。美人さんに違いない。
> 兄ちゃん、頑張って!
> センセー、兄ちゃんをよろしく~!

きっと美人さんでしょう。
パパもかっこいいんだろうなぁ。
そして香春が生まれたんだろうなぁ。
一人巣立つ弟を見守って、傷心のお兄ちゃん、誰かに癒してもらいましょう。

> そして、きえさん、最後の行に誤字が。話すが離すになってますよ。忙しい中の更新ですもんね。仕方ないですよね。
>
> 明日も待ってまぁす!
>
> 以上でした。

誤字脱字、山ほどあります~。
ご指摘ありがとうございます。
私も勢いだけで動いている(書いている)人間なので…。
明日?!
粗大ゴミが動き出さないうちに、何か書けるかな…アワワ ヽ(□ ̄ヽ))...((ノ ̄□)ノ アワワ
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-06-09-Sat 09:26 [編集]
大野城が家まで来るとは!... Σ(゚ω゚)b
穂波の進路問題が気に掛かったのでしょうけど、
やっぱり 筑穂が心配だったんだよね~ダヨネェ(oゝД・)b

微妙な兄2人の空気を きっと肌で感じているだろうに...
わざと 知らん振りして(と、私は思った)末っ子独特の甘えた君の嘉穂は 兄2人の潤滑油みたいな存在ですね。
そんな嘉穂も香春の所に行っちゃたし!
三者面談開始ですね。
筑穂も穂波も 今度は興奮せずに しっかり話さなきゃダメだよ!
大野城先生、宜しく~_| ̄|○)) ...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-09-Sat 12:04 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 大野城が家まで来るとは!... Σ(゚ω゚)b
> 穂波の進路問題が気に掛かったのでしょうけど、
> やっぱり 筑穂が心配だったんだよね~ダヨネェ(oゝД・)b

心配でしたね~。
兄弟ともにって所なんでしょうけれど。
ウルウル涙目の筑穂に、なんか、惹かれたようです。
がんばりやさん、おにぃちゃんだからねぇ。

> 微妙な兄2人の空気を きっと肌で感じているだろうに...
> わざと 知らん振りして(と、私は思った)末っ子独特の甘えた君の嘉穂は 兄2人の潤滑油みたいな存在ですね。
> そんな嘉穂も香春の所に行っちゃたし!
> 三者面談開始ですね。
> 筑穂も穂波も 今度は興奮せずに しっかり話さなきゃダメだよ!
> 大野城先生、宜しく~_| ̄|○)) ...byebye☆

弟~。嘉穂、きっと分かっているんでしょうね。
やっぱりそこは敏い子なんだと思います。
自分のため~をダシにして、兄ふたりをまとめちゃう…。
可愛い弟に兄は妥協しちゃうところもありますしねぇ。
喧嘩しないで、にぃちゃん…って家族をまとめているのでしょう。
三者面談はどんなふうに進むんでしょうね。
もう逃げ場がないからね。感情的にならず話しあってほしいです。
コメントありがとうございました。


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