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BLの丘
待っているよ 20
2012-06-17-Sun  CATEGORY: 待っているよ
穂波とは結びつかない大人の存在としてその場に立つ。
筑穂を捕らえた男は、どうしたものかと突然の出来事に、申し訳なさそうにシュンとうつむいて、店主に促されるまま椅子に落ち着いた。
少しばかり、気の弱さがあるとはそれだけでも感じられた。
先に口を開いたのは店主だ。
「おまえ…っ、穂波くんに、何を言ったんだっ?!こちらはお兄さんなんだぞっ」
「え…お兄さん…?…あ…。初めまして…」
しっかりとした雰囲気を纏わせながら、だがまだ若さは見えてくる。
一瞬の戸惑いを見せながら、瞬時に状況を理解したのか、ペコリと頭を下げてきた。
下手に出られては、どんなことだって強くは出られない。
戸惑いをまじえ、黙ってしまった筑穂に、宥めるような大野城の手のひらが肩を叩いてくれた。
言いたいことはいえ…ということなのだろうか…。

四人が円を囲むように座って、改めて話が進められる。
「筑紫野浮羽(ちくしの うきは)です。あの…穂波くんとは…」
「どういうことだっ?!穂波くんがおまえと…っ、おまえと…っ」
続けられない、改めて言葉にできない親心というか、心情はものすごく良く分かった筑穂だ。
いずれ…と思っていても、本人を前に、また、まだ子供だと思っていた人物を前に表現できないことは多々ある。
しかし、父親の前というのもあるのか、思いを隠すこともなく、浮羽は観念したように一度額を抱えてから、「あー」と一声漏らした。
見た目よりかなりサッパリ、きっちりとしている性格なのだとは、その端々で感じられることだった。
「すみません。先にご挨拶をするべきでしたよね。ホナが『大丈夫』っていうことに甘え過ぎた…」
「おまえたち、何を隠していたんだ―っ」
比較的落ち着いた浮羽とは対照的に、意味が分からずにいる父親が声を荒げた。
ここまできては隠しようがない…。いや、隠す気はなかったと開き直ったような潔さが見える。
もちろん隠させる気はなかった筑穂は大野城に止められながらも問い詰めた。
「穂波はあなたと…って…っ」
一瞬の逡巡が見えた。彼も悩んだ結果だったのだろうか。
「最初、…反対したんです。個人経営って難しいものだし。それに、若いでしょ?…でも真っ向からぶつかってきて、真剣に取り組んでくれる姿に…ね…。店だけの問題じゃなくて…将来の俺のことも考えてくれて…。もちろん家族のことも…。お兄さん、ラクにしてあげたいとか、少しでも技術持って働いてって…。それは全て、自分で稼ぐっていうことに繋がるんだけど…」
何事にも一生懸命になる性格は、兄のほうが知っていたと思ったけれど…。
いずれ、浮羽と共に店をやっていきたい、その為の足場を作りたいと、今の時点で思ってくれたことに、戸惑いと嬉しさがあったこと…。
全てを見やる優しさに触れては、尚のこと穂波に惚れていったのだと…。
浮羽は誤魔化さなかった。
「見守っていきたい…。見守られるのかな…。年下とは思えないよね。しっかりしているし。お兄さんの育て方?…俺からこんなことを言うのはなんだけど…。ください…。あの子を育てたい…」

あまりの衝撃的な出来事に筑穂は声が出ない。
思考すら止まった。
ふたりの間ですでに進んでいた話は、誰も口をポカンと開くような出来事で…。
嫁を迎えても婿にやる気はなかった筑穂にとって、それはそれは気を失うくらいのやりとりであって何の言葉も出ない。
この場で冷静に物事を捕らえているのは、当の本人と…大野城くらいだろう。
店主も、今にも泡を噴いてたおれそうだった。
「う…う、う、…き…」
「父さん、ごめん。後継ぎ、残せないや。俺、ホナと一緒になる」
この場で宣言されたことに誰が納得いくというのか…。
それに肝心の穂波もいない。
「ふ、…ざけんなよ~っ!!」
筑穂にはまだ、一時の気の迷い…というほうが強い。
高校生を誑かしているんじゃねぇっと、煮えたぎるような思いが湧いた。
『パン』という世界に誘ったのは間違いなくこの男だろう。
出会わなければ、もっと違う…人生…、筑穂が望んだような…。
それは筑穂がどう言いくるめても修正できない進路ではあるけれど。
大野城が筑穂の全身を包んでくれた。
生きる道はそれぞれに違うのだといいきかせるように。
何があっても筑穂も家族も見捨てないという力強さが抱きしめられる全身から伝わってくる。
筑穂が憂いにかられる時、バタンと勢いよく店の扉が開いて息をきった穂波が飛び込んできた。
「な…っ?!」
「ホナ?」
「津屋崎…っ」
筑穂から順に突然の登場を訝る声が上がる。
全員を見回した穂波が、呼吸を整えながら「なんだよ、これ…」と呟いた。
全く伝えることのなかった密会を、勘というもので嗅ぎつけた。
相手を思うからこそなのか…。
穂波には、よってたかって嫁を虐める姿にしか映っていない。


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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-06-17-Sun 01:59 [編集]
おぉ~あっさり 穂波の間を認めたよ、浮羽!
穂波のことを ”ホナ”だてぇ~このこの~( * ̄▽ ̄)σ" ツンツン♪
しかし 筑穂にとって 「あぁ そうですか」と、認める訳には いかないよね!

『やっと 話し合いが始まったか。これで 少しは・・・ 』
「隊長ーー!」
『いったい何事だぁー!?』
「穂波が 話し合いに突入した模様であります!」
『何が何でも 阻止しろっーー!』
「「「("`д´)ゞ ラジャ!!!」」」」
εε=====≡゙ヽ(#`Д´)っ┌┛))ウラァァァォリャ⌒バタッ ○┼< バタッ ○┼< バタッ ○┼<
「・・・ちー隊員・・・後は・・・頼む・・・」。。。byebye☆

ホナっ!
コメントちー | URL | 2012-06-17-Sun 02:55 [編集]
パン屋さん、男前だねえ。
可愛いのに男前!
お父さんにもあっさり告白。
うん、好きだ!穂波、良い伴侶を見つけたわあ。

兄ちゃんは、嫁が欲しかったんだね?
自分は?兄ちゃん?
センセー、兄ちゃんは本当にただの同居と思っているかもよ?


「まったくあんたって子はっ!どこに行ってもセールスばっかりしてっ!」

「だって~」

ブルブル、ブルブル・・・

「だってじゃないのっ!だいたいさあ、なんなの?その肌艶、シワがないじゃないっ!もう、三十路なのにっ」

ブルブルブルブル・・・
ブルブルブルブル・・・

「ねえさぁん、電話みたいだよ?」

「は?あんたねー、いくらリア充だからって!・・・電話?はいっ?もしもし?もしも・・・」

「あ、甲賀ぁ?もうすぐ、帰るよ~。待ってて「あ、悪いわね、この子はまだ帰れないわっ。え?アフターよ、アフター。じゃねっ」

トゥルトゥルトゥルトゥル♪

「隊長!うちの精鋭部隊があっ。ホナに見つかった模様です。伊吹に入院保険金の請求手続きさせますからっ!」

ちー、頑張るよ!みんなっ。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-17-Sun 09:29 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> おぉ~あっさり 穂波の間を認めたよ、浮羽!
> 穂波のことを ”ホナ”だてぇ~このこの~( * ̄▽ ̄)σ" ツンツン♪
> しかし 筑穂にとって 「あぁ そうですか」と、認める訳には いかないよね!

そう簡単にはねぇ…。
本人たちはいいだろうけれど。
ただいまラブラブ中を自慢しております。

> 『やっと 話し合いが始まったか。これで 少しは・・・ 』
> 「隊長ーー!」
> 『いったい何事だぁー!?』
> 「穂波が 話し合いに突入した模様であります!」
> 『何が何でも 阻止しろっーー!』
> 「「「("`д´)ゞ ラジャ!!!」」」」
> εε=====≡゙ヽ(#`Д´)っ┌┛))ウラァァァォリャ⌒バタッ ○┼< バタッ ○┼< バタッ ○┼<
> 「・・・ちー隊員・・・後は・・・頼む・・・」。。。byebye☆

話し合いは無事進むでしょうかね。
隊長、隊員に任せて…。
みんな優秀ですから~。
コメントありがとうございました。

Re: ホナっ!
コメントたつみきえ | URL | 2012-06-17-Sun 09:39 [編集]
ちー様
こんにちは。

> パン屋さん、男前だねえ。
> 可愛いのに男前!
> お父さんにもあっさり告白。
> うん、好きだ!穂波、良い伴侶を見つけたわあ。
>
> 兄ちゃんは、嫁が欲しかったんだね?
> 自分は?兄ちゃん?
> センセー、兄ちゃんは本当にただの同居と思っているかもよ?

遅ればせながらきちんと報告してくる潔さはいいんですけれどね~。
筑穂には受け入れられるんでしょうか。
相手のお家に入っちゃうなんて、虐められないかと心配するんでしょうかね。
まだ世間知らずなお子様だし。

(一部省略 m(__)m)

> 「だってじゃないのっ!だいたいさあ、なんなの?その肌艶、シワがないじゃないっ!もう、三十路なのにっ」

恨み事が入ってる…(笑)
お手入れ、しっかりしているんですかね~。
あ、違う"栄養"をもらっているのか…。

> 「隊長!うちの精鋭部隊があっ。ホナに見つかった模様です。伊吹に入院保険金の請求手続きさせますからっ!」
>
> ちー、頑張るよ!みんなっ。

隊長にはゆっくり休んでもらわないとね~。
せっかく入った保険は有効活用(?)しないと。
ちー様、がんばって~。
コメントありがとうございました。

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