僕、鞍手香春(くらて かわら)。
中学校に上がったばかりなんだけど…。
まだぶかぶかな制服が少し重い…。
集団登校、なくなっちゃったし、学校からの行き来はちょっと不安な日々だったけど。
でも、でも。近所に住む津屋崎嘉穂(つやざき かほ)くんが、毎日一緒につきそってくれるんだ~。
玄関まで行くと、まず最初にお兄さんが出てきて、そのあと、慌てた様子で階段を降りてくるの。
そんなにあわてなくったって遅刻しないよ~。
そう思うよ~。でもその慌て具合が、なんとなく嬉しいの。
待たせたのかな~って思っちゃうし。
そしてね。背が高くって、スポーツ万能で、お兄ちゃんに習うのかお勉強も凄くできて…。
周りからは、もう、本当に、憧れの存在なんだよ~。
僕なんか放ったらかしにされていいはずなのに、いつだってそばにいてくれるし、怖そうな先輩からも守ってくれる。
ちょっとなんかあって(本当になんてことないんだけど)「香春くん…」と声をかけられるだけで、全身で「何があった?」って聞いてきてくれた。
それが嬉しくて、意味もなく話しかけたことも…何度か…。
そのたびに気にかけてくれて…。分かっては安心して…。
ごめんね、嘉穂くん…。
心の中で謝って、「おやつ、うちで食べよう」って家に誘って…。
嘉穂くんのうちは、少し前にお父さんとお母さんを天国に見送っていた。
一緒にいっぱい泣いたけど、『一緒に生きていく人はたくさんいるのよ』とお母さんに言われて、その一人になれればいいなって強く思っていた。
だから僕は、嘉穂くんから離れない。
朝のお迎えは僕の当番。そして特権。他の誰が望もうが、それより早い時間でいってやるからっ。
『ピンポーン』
今日もいつもの音が響き渡る。
少しの間を置いて玄関扉が開かれた。
「あぁ、香春くん、いつもごめんね…。嘉穂っ~っ」
「いいんです。僕、歩くの、遅いから」
爽やかな笑顔に出迎えられて、怒鳴り声に近い呼びかけの口調。
何もかもが当たり前で…。
それがあることが、今はなんだか幸せだった。
突然いなくなってしまったご両親のこともあったから…。
「嘉穂くんはいつも僕にあわせてあるいてくれるから…」
恥ずかしながら零せば、「嘉穂のやつ…」とちょっと照れくさそうに笑ってくれるお兄さんがいた。
僕だって、嘉穂くんがお母さんとかに褒め言葉を呟いているのを聞いて、気分が悪くなる事なんてなかった。
だからいっぱい呟きでもなんでも知らないところで聞かせてあげようと思う…。
これ、まちがっているのかなぁ。
少しすると、バタバタッと階段を駆け下りてくる姿があった。
前ボタンすらちゃんとはめていなくて…。チラッとでも見えた何もかもに、僕はポッとなりながら視線を反らしてしまう。
「シャツくらい、しまえーっ」
お兄さんの声がいつも通りなのに、なんだろう、この心臓のドキドキ。
チラ見えの胸板も、さり気なく視線を映してしまった股間も…。
自分とは違う生き物のようで、僕は目を閉じるしかなかった。
でもね…。朝の一番、迎えてくれる人は香春しかいないんだよ。
そんな勝手な思いがはびこっていく。
『香春がくるから起きる』
その言葉がどれだけ嬉しかったか…。
まだ小さかった時のままごとみたいなお約束事。
「ぼくねぇ。おおきくなったらかほちゃんのおよめさんになるの~」
「おれんち、かあちゃんもにぃちゃんもいるもん」
「おかあさんとおにいちゃんにいっぱいおしえてもらうもん~」
「だったらかわら、およめさんになれる~」
でも全部全部覚えているよ。信じているよ。
本当に、本当にいなくなると誰が想像しただろう。
嘉穂が好きなものがなんなのか、自分なりに探し始めた香春だったのだ。
もちろん、嘉穂の喜ぶ顔が見たいから。
母も協力してくれた。
彼を思う時が一番輝いていた表情なのだと、両親も認めたほど。
一度は断られたかもしれないが、諦めていない、結構根性の座った香春だった。
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ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)
兄弟、弟3段はここで終わりました。(えっ?!)
つか、この描き方が久し振りすぎて…。
一人称、難しいわ…マジで…。
最後、完全にちがったな…。
っで、終わりです。
中学校に上がったばかりなんだけど…。
まだぶかぶかな制服が少し重い…。
集団登校、なくなっちゃったし、学校からの行き来はちょっと不安な日々だったけど。
でも、でも。近所に住む津屋崎嘉穂(つやざき かほ)くんが、毎日一緒につきそってくれるんだ~。
玄関まで行くと、まず最初にお兄さんが出てきて、そのあと、慌てた様子で階段を降りてくるの。
そんなにあわてなくったって遅刻しないよ~。
そう思うよ~。でもその慌て具合が、なんとなく嬉しいの。
待たせたのかな~って思っちゃうし。
そしてね。背が高くって、スポーツ万能で、お兄ちゃんに習うのかお勉強も凄くできて…。
周りからは、もう、本当に、憧れの存在なんだよ~。
僕なんか放ったらかしにされていいはずなのに、いつだってそばにいてくれるし、怖そうな先輩からも守ってくれる。
ちょっとなんかあって(本当になんてことないんだけど)「香春くん…」と声をかけられるだけで、全身で「何があった?」って聞いてきてくれた。
それが嬉しくて、意味もなく話しかけたことも…何度か…。
そのたびに気にかけてくれて…。分かっては安心して…。
ごめんね、嘉穂くん…。
心の中で謝って、「おやつ、うちで食べよう」って家に誘って…。
嘉穂くんのうちは、少し前にお父さんとお母さんを天国に見送っていた。
一緒にいっぱい泣いたけど、『一緒に生きていく人はたくさんいるのよ』とお母さんに言われて、その一人になれればいいなって強く思っていた。
だから僕は、嘉穂くんから離れない。
朝のお迎えは僕の当番。そして特権。他の誰が望もうが、それより早い時間でいってやるからっ。
『ピンポーン』
今日もいつもの音が響き渡る。
少しの間を置いて玄関扉が開かれた。
「あぁ、香春くん、いつもごめんね…。嘉穂っ~っ」
「いいんです。僕、歩くの、遅いから」
爽やかな笑顔に出迎えられて、怒鳴り声に近い呼びかけの口調。
何もかもが当たり前で…。
それがあることが、今はなんだか幸せだった。
突然いなくなってしまったご両親のこともあったから…。
「嘉穂くんはいつも僕にあわせてあるいてくれるから…」
恥ずかしながら零せば、「嘉穂のやつ…」とちょっと照れくさそうに笑ってくれるお兄さんがいた。
僕だって、嘉穂くんがお母さんとかに褒め言葉を呟いているのを聞いて、気分が悪くなる事なんてなかった。
だからいっぱい呟きでもなんでも知らないところで聞かせてあげようと思う…。
これ、まちがっているのかなぁ。
少しすると、バタバタッと階段を駆け下りてくる姿があった。
前ボタンすらちゃんとはめていなくて…。チラッとでも見えた何もかもに、僕はポッとなりながら視線を反らしてしまう。
「シャツくらい、しまえーっ」
お兄さんの声がいつも通りなのに、なんだろう、この心臓のドキドキ。
チラ見えの胸板も、さり気なく視線を映してしまった股間も…。
自分とは違う生き物のようで、僕は目を閉じるしかなかった。
でもね…。朝の一番、迎えてくれる人は香春しかいないんだよ。
そんな勝手な思いがはびこっていく。
『香春がくるから起きる』
その言葉がどれだけ嬉しかったか…。
まだ小さかった時のままごとみたいなお約束事。
「ぼくねぇ。おおきくなったらかほちゃんのおよめさんになるの~」
「おれんち、かあちゃんもにぃちゃんもいるもん」
「おかあさんとおにいちゃんにいっぱいおしえてもらうもん~」
「だったらかわら、およめさんになれる~」
でも全部全部覚えているよ。信じているよ。
本当に、本当にいなくなると誰が想像しただろう。
嘉穂が好きなものがなんなのか、自分なりに探し始めた香春だったのだ。
もちろん、嘉穂の喜ぶ顔が見たいから。
母も協力してくれた。
彼を思う時が一番輝いていた表情なのだと、両親も認めたほど。
一度は断られたかもしれないが、諦めていない、結構根性の座った香春だった。
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兄弟、弟3段はここで終わりました。(えっ?!)
つか、この描き方が久し振りすぎて…。
一人称、難しいわ…マジで…。
最後、完全にちがったな…。
っで、終わりです。
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かわらちゃーん!かっわいい。
ラブリーだわぁ。
私の想像と違って、かわらちゃんのが末っ子ちゃんより、大人なんだ。
しかも、ずっと好きなんでしょ?
青春だね、良いね、良いね♪
こっちは、かわらちゃんに押し倒されて気づくパターンかなあ?
先が楽しみ~。
って、思ったら終わりだって。
兄ちゃ~ん、きえさんがぁっ。
ラブリーだわぁ。
私の想像と違って、かわらちゃんのが末っ子ちゃんより、大人なんだ。
しかも、ずっと好きなんでしょ?
青春だね、良いね、良いね♪
こっちは、かわらちゃんに押し倒されて気づくパターンかなあ?
先が楽しみ~。
って、思ったら終わりだって。
兄ちゃ~ん、きえさんがぁっ。
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