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BLの丘
原色の誘惑 14
2012-08-25-Sat  CATEGORY: 原色の誘惑
今まで隠していた二人の関係…とでも言うのだろうか。
自然と寄り添えなかった過去が払拭されてしまえば、割り切った気分になれたのは由利だけではなかった。
故意的に避けられてきたから興味を惹かれる対象になったのだとも、悟ることができた。
ベタベタ…するわけではないが、見慣れれば他の社員も意識を削がれていく。
つまり、周りにいる他の社員と同じ存在になっていくのだった。
何かあるごとに視線を向けられる回数も…減った気がする。

お昼休みになれば、食堂にいた由利と高畠たちに、「ユーリ」と声をかけてくる同じ顔があって、やはり由良の同僚の新庄瀬見(しんじょう せみ)がくっついてくる。
まぁ、由利にとっての高畠と湯田川のような存在だろう。
良くも悪くも由良を分かってくれている立場の先輩であった。
またこの新庄も高畠たちと同期ということで、あまり顔は見たことがなくても馴染むのは早い。
いつしか、必ず三人が揃う食堂の席だった場所は、五人が揃うことになり、見慣れれば他の人間も興味を失う、というものだろう。
そんな日々の中、時々、由利は外に出掛けていた。
出会う相手が誰であるのかは、全員が知ったことであって、もちろん止める人もいない。
ほんの短時間でも会いたがる他社の人間に、「由良が門限なんかつけるからだろー」と嫌味混じりの高畠の声がかけられる。
湯田川は「まさか、本気で守ってるのっ?!」と唖然としていた。
そこに新庄も、「本荘君は”お兄ちゃん”に従順なんだよ」と笑みを加えてくる。
兄の言うことが正しい…と教えられた意識は、なかなか抜けないらしい。

同じ顔がふたつ揃わなければ、そこにいるのが由良だと気付き始めた人間も多かった。
隣同士に並べば訳が分からなくなると言うのに、一人だけになると、なんとなく気付くものがある。
故意的になのか、伸ばしっぱなしだった由利の髪は、由良と同じくらいに切り揃えられていて、それがますます二人揃うと混乱を招いた。

待ち合わせをしているわけではないのに、自然と寄り添ってくる由利と由良で、何も言わずに「由良の分」などと由利は別の品を先に選んでいたりする。
それは由良も同じことで、先に辿り着いたものが、もう片方のオーダーまで済ませてしまっているのだ。
本当にそれが食べたかったかどうかは周りの人間には分からないが、嫌な顔をすることは決してない。
さらに平気でわけあって「あーん」とかしてくれるのだから…。
眼福ものなのか溜め息の嵐なのか…。少なくとも同テーブルは後者だった。
必ず由利と由良は隣同士に座る。由良を真ん中にして反対側には新庄だった。
前にいつものように高畠と湯田川が収まる。見慣れた光景の出来上がり。
「おまえたちの”普通”は、常識じゃ、通用しねーんだよっ」
呆れかえる高畠の言葉もどこ吹く風の態度。
「べつにいいじゃん。高畠さんも湯田川さんにしてあげればいいんだよ」
「由良、それ、キモ過ぎ…」
挙句の果てにはお互いの味を確かめるかのようにチューまで披露してくれるのだから…。
もう、そのサービスはいらない…と何人の人間が思ったことだろう。
どこで覚えたのか(←)色気をたっぷり含んで甘えていく姿の由利は、特に下半身に非常に良くない。
気付く訳もない由利は、そのあとで、躊躇うような仕草を含めながら、「あのね、由良…」と口を開いた。
言いづらいことがあるのだな、というのは、誰もが分かる態度である。
「あのね、あのね…」
黙ってその姿を見つめる人がいるのに、一つの溜め息をついただけで、由良は由利の頭を撫でていた。
「うん、いいよ」
全く会話が見えない…のは、いつものことなのだろうか…。
ふたりだけで会話をされている。
“知りたい”…。でもそこに踏み込んでしまっていいのだろうかという、躊躇いも確かにある。
いつでも何でも分かってくれる由良に、由利はまだまだ甘えていた。
周りなんてどうでもよかったのだ。
自然と振舞える環境が、居心地の良さを生み、余計に由利を奔放にさせているのかもしれない。

意味が通じていない新庄が、由良を覗き込む。
「なに?」
突っ込んで聞けるのは同僚という気を許した関係だからなのか…。
由良は一瞬躊躇いつつも、ニコリと笑みを浮かべては「うーん。ユーリのお泊まり?」とさり気なく現状を教えてしまった。
途端に恥ずかしがったのは由利である。
今後の予定を、一言でバラされた気分だ。
本当に、由良とはなんでもできるというのに、他人だと何故こんなに恥ずかしさが湧きあがるのだろう…。
「ゆら…」
「いいんだよ、ユーリ」
にこやかに微笑まれては、由良とのことを振り返られるようで、落ち着きが広がるのだから、これも不思議だ。
抱きしめてくれた由良の胸元に縋っては「うん…」と小さく返事をする。

「おまえら~っっっ」
「(高畠)萩生、怒るなよ。ってことは、由良は今夜一人か。飲みにでも行く?」
由利のように淋しがることはないとしても、気遣ってくれる存在は大きいだろう。
湯田川の誘いに、新庄もノってきた。
「いいね。由良はあまり出掛けること、ないからな~」
同僚としても付き合いが少なかったとは、一緒にいた人が一番良く知っている。
その影にあったのは、由利がいたから…とは誰も気付いてはいないだろう。
由良はいつも待っている人だった。
「誘われちゃった~。当然おごりだよね」
「ゆ、ゆら…」
他人に向けてはしゃぐ由良の姿も珍しい。図々しいことを平然と言ってくれる兄に、由利は戸惑うものの…。
見回した三人は、「ハイハイ」と寛容に受け止めてくれる。
由利と由良、ふたりの間に漂ったぎこちなさを、こうやって収めてくれている。
「ユーリも楽しんでおいで」
気にしなくていい、という態度に、先程まで抱えていた躊躇いがふわっと消えていった。
雄和と出掛けることの後ろめたさを払拭してくれる。
お互い一緒にいなくても、楽しめる空間がある…というのであれば、由利の心も軽くなった。
「ありがと…」
やっぱり抱き合ったふたりに、もう返す言葉などあるはずがない…。

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うちのパソコンも調子が悪くなっちゃったよ~っ.・゜゜・(/□\*)・゜゜・
外部記憶のデータを読み込んでくれない惨事に…。
慌てて書きなおしていますが。


暇だったらあっちもいってください。別宅
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コメント

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はうー。
コメントちー | URL | 2012-08-25-Sat 05:14 [編集]
コメント、送信できずにまた書き直しー(笑)

由利も由良も依存しあってるのか。
双子は仲良しだからどっちがどっちじゃ無いね。
まあ、私が同じ会社なら二人がチューしてたら写メるね。みんなと幸せを共有する~。

そうだ、先日ベビーカーに乗った双子ちゃんがいて。
思わず、由利由良を思い出してしまいました。
男の子だったんだもん。
暑いなか、一生懸命ベビーカー押してるお母さんに申し訳なかったです。なんとなく。


スマホに慣れるとパソコンてあんま見なくなって。
でも、iTunesとか使うから必要なんですよねー。
ノートにするかデスクトップにするか、MacかWindowsか・・・悩み中。


Re: はうー。
コメントたつみきえ | URL | 2012-08-25-Sat 09:11 [編集]
ちー様
こんにちは~。

> コメント、送信できずにまた書き直しー(笑)

ご面倒をおかけしております<m(__)m>

> 由利も由良も依存しあってるのか。
> 双子は仲良しだからどっちがどっちじゃ無いね。
> まあ、私が同じ会社なら二人がチューしてたら写メるね。みんなと幸せを共有する~。

このふたりはどこまでいっても依存しあっているんでしょうね。
そして受けとめちゃっているんでしょうね。
甘やかしたい、甘やかされたい、を存分に発揮しております。
(`・ω・´)ノ「仲良しで何が悪いっ」
ハイ、何も悪くありません。
私も写メ盗る~っっっっ。

> そうだ、先日ベビーカーに乗った双子ちゃんがいて。
> 思わず、由利由良を思い出してしまいました。
> 男の子だったんだもん。
> 暑いなか、一生懸命ベビーカー押してるお母さんに申し訳なかったです。なんとなく。
>

うちはねぇ…。
目の前の家が双子ちゃんなんですよ。
もう大きく(とはいえ、まだ保育園だ)なっているのでベビーカーはありませんが。
同じ姿がうろちょろして、パパママに怒られているのを見るとのほほんとします。
あぁ、男の子ですよ。たまに、子育て手伝いのばあちゃんと道端で話をし…(どっちの子???とね)
腐った妄想を抱いている私でした。

> スマホに慣れるとパソコンてあんま見なくなって。
> でも、iTunesとか使うから必要なんですよねー。
> ノートにするかデスクトップにするか、MacかWindowsか・・・悩み中。

パソコンって悩みますよね~。
私はDe●Lを使って以来、他のメーカー、買えなくなりました。
カスタマイズしてくれる点はもちろん。
うるさい機能が勝手についてこないところが、サクサクで嬉しくて。
とはいえ…、パソコンもだけれど、スマホも使いこなせるのだろうか。
三種の神器って今、何なのだろう。
コメントありがとうございました。
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