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BLの丘
原色の誘惑 22(最終話)
2012-09-02-Sun  CATEGORY: 原色の誘惑
雄和はマンションの前まで送ってくれた。
もうすでに日は落ちている。
この時間になって家に入ることを躊躇った由利だったが、いつまでもここに佇んでいるわけにもいかない。
昨夜の魔法にかけられたような時間から現実に戻されるのは、扉の向こうに由良がいたからだからだろうか。
でもそこは不安のようなものではなく、安堵だったのだけれど…。

離れる間際、抱きしめてきて、「またね」と腰に響く声を残して行った。
由利とは違う余韻をあからさまに残していく。
そんなことがあるから、由利は雄和にますます惹かれていかれるのだろう。
付かず離れず…。そう表現したら悪いのだろうが、確実な関係が由利を惹きつける。
そして安心させる。

「ただいま…」
小さな声で呟いた先。
ダイニングからは良い香りが漂っていた。由良が何やら、料理をしていた証拠だろう。こういったところは、由良のほうが手際が良い。
「ユーリ?」
空気の流れを感じるのだろうか。
すぐに感じてくれた由良に、自然と由利は近付いていく。
目の前の姿に、戸惑いながらも、由利は、「あ、あの」と口籠った。
朝帰りどころか…夕帰りである。
やはり後ろめたさが浮かぶのに、招き入れた由良は変わらずに由利の体を引き寄せた。
「俺、ゆうべ、飲み過ぎちゃったから、今夜もさっぱりメニュー。いい?」
何も気にしていない態度に癒される。
うんっと元気よく頷いては隣に立った。
由利が雄和の元に飛び立ったとしても、由良は由利を受け止めてくれる。
今までと変わらない関係に安堵することもある。

梅干を叩いて馴染ませたドレッシングで作ったサラダ。
白身魚はレモン汁でサッパリとホイル焼き。
添えられたのはさらさらと流せるお茶漬け。

豪華な料理など二人とも期待していないし、どちらが食事当番で作っても、出てきたものに手の込んだものはなく、ささやかな料理で充分満足してきた。
まさに”庶民的”を地でいっていたのだ。
だから今も不満は一つもない。
「お茶づけに卵いれて…」
由利がそっと脇から囁く台詞に由良は微笑む。
すでに分かったことなのだろう。
もう夕ご飯の時間だというのに…。
まるで雰囲気は寝起きの朝のまま。

その夜、由利と由良は一緒に寝た。
離れた一夜を埋もれさせるため…というわけではないが、どちらからともなく寄り添ってしまった。
ただ、全裸になることはない。
お互いの体温を感じるのは布越しでも充分。
生まれた時の繋がりを今でも大事にしたいためなのだろうか…。
淋しがる由利の体を由良は何のためらいもなく包んでくれる。
その違いを少しずつ感じていく由利なのかもしれない。
由良も雄和も慌てさせない。

そしてまた素直な言葉が零れていく。
「由良…とは、ちょっとちがったかも…」
達する時の感激まで知らせる必要がどこにあるのだろうか…。
でも由利が口にすれば由良は何も言わずに聞き入ってくれる。
恥ずかしさが抜け落ちた関係だからなのだろうか…。

「ユーリが幸せだって思ってくれたら、俺はいいよ。嫌ならここにいればいいんだから」
また言われて、由利は涙ぐみそうになる。
その体を抱えてくれる人がいる。
「ユーリ…」
幸せの空間に戻ってきたはずなのに、少しずつそこから押し出されていた。
わかっているのか、大丈夫…と由良は抱き寄せてくれる。

同じ顔、同じ体…。どこが違うのかと悩むところもないほど近付いた存在で安心していた。
でも人の体に抱かれたら違うことを理解する。
今までとは違う密着感に、もう由良に対して性欲を表すことはなかった。
でも近付いてしまう。
抱きついてくちづけて…。
それは単なるスキンシップでしかなかったけれど…。

「由良…」
囁いた先に与えてもらえる体温。
フッと緩んだ唇をいつものように由良は啄ばんできた。
それからいたずらを含んだように声を発する。
「あまりユーリと一緒にいたら嫉妬されちゃうなぁ」
「そ、そんなことないよ…」
「ふん。そうかなぁ」
どこか悪戯を含んだ笑みは怖かったけれど、何があっても…という安心感だけは消えない。
ここにいれば守られているという安堵。
くっついた体から、また、重ねた体温の先から、くっついてくる唇を受け止めた。
雄和とは全く違う…。
これはただのスキンシップなのだと更に思わせてくれる。
だから雄和も文句を言わないのだろう。

「由良…」
「なぁに?」
微笑みあう薄闇の中で、なにかあったとしても自分たちは離れないのだと知らさせる。
そのことに安心して、隣に居座った由利は由良にくちづけを求めた。
その行為に由良は少し苦笑を浮かべるけれど、由利の思いを感じて応じてくれる。
“親の体の中から行われた行為”は、今更抵抗も羞恥もない。

いつもと変わらない日々。
そこに他人が入ってくるなど、由利も由良も想像はしていなく、今は二人の時間を過ごしていたのだ。
そう。いつものように。寄り添って眠って…。

―完―

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ずっとご来店ありがとうございました。
いろいろ残しているところはあるかもしれないけれど、とりあえずこちらは完了します。
付箋はそのうち回収しにきます…((@∀@;)いつ…???)

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コメント

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お疲れさまでした。
コメントちー | URL | 2012-09-02-Sun 04:50 [編集]
最後、え?ここかい?って思いました。
双子の魂、百まで(違うけどー)

由利も由良もお互いのパートナーが出来たとしても、離れられないんでしょうね。
だって、生まれた時からじゃなくてお腹にいたときから、くっついてチューしてたんだもの。

雄和に感じるものとは違うってわかっただけ良いかな?
由利と由良。いつまでも仲良くお幸せに。
王子様も大切にね。

きえさん、次々書いて下さってありがとうございます。
更新できないと書かれてても、更新されてたりするのが嬉しかったです。まだまだ、暑いので無理せずに更新してくださいね。
Re: お疲れさまでした。
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-02-Sun 07:59 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 最後、え?ここかい?って思いました。
> 双子の魂、百まで(違うけどー)

ここで終わり?!って感じでしょうか。
ま、由利が無事釣ったものはあるんだしね。
あとはこの二人の問題だけってことで…。

> 由利も由良もお互いのパートナーが出来たとしても、離れられないんでしょうね。
> だって、生まれた時からじゃなくてお腹にいたときから、くっついてチューしてたんだもの。
>
> 雄和に感じるものとは違うってわかっただけ良いかな?
> 由利と由良。いつまでも仲良くお幸せに。
> 王子様も大切にね。

パートナーができてもいっつも一緒にいるんでしょうね。
本当に、物分かりの良い相手でないと大変です。
生まれる前から寄りそって来たんですから。
そう簡単には離れませんよ。
四人で仲良くやっていければいいんじゃないでしょうか。

> きえさん、次々書いて下さってありがとうございます。
> 更新できないと書かれてても、更新されてたりするのが嬉しかったです。まだまだ、暑いので無理せずに更新してくださいね。

こちらがとりあえず終われてホッとしました。
書ける時は書けるんですけれど、ダメなときは一文字も進まなくて…。
読んでくれる方がいると分かると張りきれます。
いつもコメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-09-02-Sun 08:59 [編集]
甘えん坊の由利
雄和と始まったばりの今は、まだ 由良に寄り添う部分が大きいでしょうが

これからは 徐々に 由良との関係も新しいものへと変わって行く気がします。

完結お疲れ様です(o*。_。)oペコリ
これからは、アンケ1位の みこっちゃんに 一点集中して書いて下さいませ~♪
ヾ(=・ω・=)o☆バイバイ☆ヾ(=・ω・=)o   
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-02-Sun 12:15 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 甘えん坊の由利
> 雄和と始まったばりの今は、まだ 由良に寄り添う部分が大きいでしょうが
>
> これからは 徐々に 由良との関係も新しいものへと変わって行く気がします。

由利の甘えん坊ぶりはまだ続きそうです。
由良も納得の上で受け入れているから、由利はなかなか抜け出せないでしょう。
でも違いははっきりとしてきたしね。
兄弟愛と恋人に向けるものは同じではないです。

> 完結お疲れ様です(o*。_。)oペコリ
> これからは、アンケ1位の みこっちゃんに 一点集中して書いて下さいませ~♪
> ヾ(=・ω・=)o☆バイバイ☆ヾ(=・ω・=)o   

こちらこそお付き合いくださいまして嬉しかったです。
みこっちゃん、頑張ろうと思います。
コメントありがとうございました。
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