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BLの丘
淋しい夜に泣く声 51
2009-10-10-Sat  CATEGORY: 淋しい夜
「何をしていた?」
澄んだ瞳が英人を捕らえて離さなかった。
暗闇の中で問いながらも分かり切ったように英人の唇を引き寄せ塞いだ。
英人の長い睫毛を纏った瞼の奥から、膨れ上がった涙がつっと榛名の頬の上に零れた。
「どうした?何が不安だ?」
英人の涙を拭うこともせず、榛名の身体の上に乗った英人をぎゅっと抱き寄せる。
英人は何をどう言葉にしていいのかも分からなくて、榛名の顔の横に埋めた首をひたすら、何でもないと振った。
「こんな状態でおまえを放せるわけがないだろう。言いたいことがあるなら言え」
耳元を優しい声が通り過ぎて行った。

もうこれ以上優しくしないでほしい…。馬鹿な自分は間違いなく勘違いをして、榛名のそばに永遠と居られると思い込みそうだ。

「好き」という言葉が再びこぼれそうだった。そしたらまた驚かれるのだろうか。
榛名は『欲しいものは何でも与えてやる』と言った。
榛名の心が、想いが欲しいと言ったら、応えてくれるのだろうか。

ありえない…

目に見えるものだけをくれると榛名は言ったのだ。
英人の中で自己完結した想いを閉じ込め、ただ首を振り続けた。
榛名が迎える世界と自分が夢見た世界とではあまりにも違いすぎる。彼には藤原のように出来上がった人間が傍に寄ることを許され、子孫を残して世界を広げて行くという使命がある。
自分はどれだけ想いを寄せても、望む『形』を残すことなどできない。
みっともない自分をこれ以上さらしたくもなくて、ひたすら口を閉じた。開けた瞬間にでもきっと想いが零れる。そして疎まれて捨てられていく…。
捨てようと思った恋心は簡単にはがれおちてはくれなかった…。

「英人」
榛名は英人の背中をあやすようにさすり、言葉を紡いだ。
「おまえのためなら何でもしてやる」

全身に流れる血液が沸騰したかと思った。

欲しいのは榛名自身だ。
もらえるなどこれっぽっちも思っていなかった。
「ち…」

囁きかけた言葉が途切れた。
何もかもすべてを悟ったように、慈しむ瞳が英人を捕らえて奪い、行為の最中ですらもらえなかった情熱が英人を覆った。

「英人。全てを言え。何もかも受け止める」
英人の身体を持ち上げ、暗闇の中で視線を合わせてから、涙に濡れる英人の唇を奪った。

…愛している…愛している……!!だめだ、もうっ!…
「ちし…っ」
心が壊れると思った。
恋がこれほど辛くて悲しいものだったとは…。
ドラマの中のように、ウキウキやドキドキなどない。
ただ追い詰められて淋しい想いだけが全身を流れて行く。

「ァぁ…」
『好き』という言葉の代わりに嗚咽が漏れた。

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