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BLの丘
木漏れ日 19
2013-08-18-Sun  CATEGORY: 木漏れ日
八竜がペットの飼育なんて、まずやらないだろう…とは、母親だけでなく鳥海も予想していたことだった。
情だけはあるから、ちょっとでも『可哀想』などと思えば、拾ってきたりした過去がある。
おかげで血統書付きなどというものはいなかったが…。
可哀想なんて思うのは最初だけだ。
懐の中に入ったら安心するのか、いつの間にか相手もしなくなり、気付けば兄に命令されて世話をする鳥海を見て満足していたヤツだ。
だから今回もなんとなく予想はできていたけれど、白神がいたので、今度は自分が白神に押し付ければいいや、と簡単に考えていた。

案の定、八竜は仕事を理由に、段ボール箱から遠ざかっていった。たまに近づいた仔猫の頭を撫でるくらいで「遊んでもらえ」と撥ねのけられる。
白神だけが意気揚々と鳥海の家に足を踏み入れてくる。
白神をおだててその気にさせている八竜を、なんて酷い兄だと罵ってやりたかったが、白神は「僕の好きにさせてくれている優しいおにいさん」と喜んでいるのだから口をつぐんでいる
「一人暮らしでつまらない」と言う白神に料理をベタ褒めされて、気を良くした母は、大歓迎で白神を受け入れていた。
五城目家の男たちは、滅多に料理なんて褒めないのだ。
一時間も二時間も鍋の前で頑張ったって、胃袋に消えるまでは十分足らずである。
自分がテーブルに着席した時には皿の上が空っぽになっていたことも何度あったことか…。

毎日ではさすがに悪い…と言いながら、白神は一日置きに五城目家にやってくる。
そして猫と一頻り遊んでご飯も一緒に食べてからアパートへと帰っていった。
週末は泊まっていくこともあって、たまに父親に「引っ越してくればいいのに」と言われて喜んでいたけれど、鳥海と八竜に揃って「ありえないだろ~」と咎められてシュンとしていた。
単に鳥海も八竜も、猫っかわいがりされる白神が気に入らない息子心で不貞腐れただけだ。
家事はほとんど…というより、まずできない息子二人とは雲泥の差で、白神は細かいことに気がつく。
「おかあさん、買い物に行くんですか?ごゆっくりどうぞ。洗濯物たたむの、時間がかかるし、僕、やっておきますから」
鳥海など、そんなセリフは、小学生の頃『母の日』の感謝券に書いたきりだ。(実際やったことはない)

夕食を囲んでいる時に、八竜がどこで聞いてきたのか、大型のディスカウントストアでキャットフードの安売りをするらしいと言いだした。
話を聞いてきたのなら自分で買いに行けばいいのに、その役目は鳥海たちに回ってくる。
一番腰が思い理由は『先着何名様』と特売品だからである。並んでまで買う人間ではない。
「おまえら二人、いるんだから倍量買えるだろ。一回の買い物で済むし。ほら、あの高いヤツも特売だからこの際まとめて買ってくれば?毎回、半分こずつ食べさせるのも可哀想だろ」
以前ナントカという高額のキャットフードを分け与えていたのを見ては、「デザート食ってる時のおまえらか?!」と呆れられたことがあった。
そんなことを言ってもペットの食費もバカにならないのだ…と痛感しているこの頃で、どうしても安物に頼りがちだった。
白神など自分が言いだした手前、引っ込みもつかず、結構な量を差し入れてくれているが、自分の食費が浮いた分猫に回されているだけだろう、と鳥海は内心で思っている。
それでも明るい笑顔を見ると、なんとも言えない気分になってしまう。
充実している、と全身が語っていた。
一人暮らしではどことなくつまらなかったのだろう。
「鳥海~、鳥海~」となにかにつけて近づいてくる姿は、やっぱり弟ができたような気分でしかなかったけれど。
まぁ、そんなこともあって、白神と一緒にいる時間は増えたし、たまに声をかけてきた能代が「おまえら、目立つようになったなぁ」と意味深な言葉を吐いては、分け隔てなくからかって去っていった。
海で一緒に過ごして以来、親近感は増していたので、他の友人たちよりも親しくなった一人なのは確かだった。

キャットフードの大量買いの計画に、八竜が行くはずもなく、近所のおばあちゃんの掃除機が壊れたから見に行く理由をつけられて逃げられた。
カレンダー通りの休日は仕事も休みなので、父親に休日をゆずった形らしい。
「親孝行なおにいさんだ」と尊ぶ白神には何も言わない。
母親が友人宅に行く、というのでついでに車で送ってもらって、買い物で時間を潰して帰りも迎えに来てもらうことで話がついた。
買いたい『猫グッズ』は山ほどあったのだ。
なんていったって、二匹の猫にはいまだに首輪がないくらいだったから…。
ショッピングセンター内で目的のものを仕入れ、他にも数種類買いこんだのはいいが、想像以上に重かった。
カートを押して動き回ってもいいが、力がないせいか、いらぬ方に向かってしまう。
細々と見て回りたい鳥海たちにとっては邪魔なものとなってしまって困り果てた。
フードコートに寄り道して、ベンチで休憩と称してソフトクリームを舐める。
これくらいの大きさであれば白神も一人で食べきれることができるので、鳥海も堪能できた。
「『バニラ』は赤い首輪がいいかな」
鳥海は赤い舌を出してバニラソフトをぺろぺろ舐めている白神に聞いた。
ちなみに『バニラ』とは白い方の猫の名前である。
「赤だったら『ビター』にも似合うと思うよ」
チョコソフトに器用に舌を這わせる鳥海に、今度は白神が頷いた。
何かとお揃いのものを揃えたがるのはどうしてなのか鳥海にはやっぱり理解できなかったが、個々に選択するのも面倒なので従うことにする。

そうこうするうちに、白神はソフトを垂らし始めた。
「あっ」
「あー、もう。藤里、食べるのヘタ過ぎだってぇ。ほら、こっち、もうコーンからこぼれることないから交換してやるよ」
「どう見ても鳥海のほうが、食べる量が多い気がする」
縦に細く長くなったチョコソフトと、小太り気味なバニラソフトをそれでも文句なく交換した。
鳥海が食べる姿を見ていても、気持ちいいくらい綺麗に食べてくれると感心する。

食べ終わって一息ついた時、背の高い男がふたり、並んで目の前に立っていることに気付いた。
一人はニヤニヤして目尻が垂れ下がった人好きのしない顔で、もう一人は金髪に髪を染めた目つきのキツイ、ガラの悪い男だった。
「ボクたち~、お買い物~?疲れちゃったの~?オニイサンたちと一緒に『休憩』できるところに行こうか~?」
「ゆっくり横になれるイイトコ、知ってるぜ」
大事な商品の入ったカートを両脇から掴まれてはビクともしなくなっていた。
「オレたち、まだ買い物あるしっ」
そんな手に引っかかるか、と鳥海は睨みつけてみるが、ニヤニヤ男は全く怯む気配はない。
「そんなの後でいいじゃん。キミ、今、めっちゃくちゃ良い舌使いしてたからさ~。是非俺の『ア・ソ・コ』もお願いしようかな~と思って~」
カートに肘をついて身を屈めては顔を近づけて来ようとする。
「"ボクちゃん"は俺がじっくり教えてやるゼ」
白神に手が伸びようとして、咄嗟に鳥海は叩き落としていた。
「うるさいっ。あっち行けっ」
こんな時、気が強いのはいつも鳥海だった。冷静に物事に対応しない性格だから…ではなく、優しさが勝るのだと思っている。
キッと男の目つきが益々悪くなって、「ガキ~っ」と声が荒くなった。
通りすぎる客人が数人視線を送ってくるが、誰も関わり合いにならないようにとすぐに通りすぎていった。
どうしたって立っている男たちのほうが悪目立ちしている。
「お~、ボウヤ。手癖が悪ぃなぁ。縛りあげて可愛がってやるから覚悟しとけよ」
ひっこめたはずの手首をグイッと掴まれて、握力の強さに驚く間もなく立ちあがらせられた。
「…っ!!」
「鳥海っ!!」
白神の甲高い声が響いて、また周りの客の目を振りむかせた。
…誰かっ…!!
咄嗟に胸の奥で助けを求める。


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コメント

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もうー!
コメントちー | URL | 2013-08-18-Sun 06:26 [編集]
た、た、大変だわ。
可愛い可愛いモドキーズがっ!
まったく、にぃは役立たずなんだから。
あんな可愛い子が二人もいたらヤバいってわかってるでしょうが!
口だけ番長はいらないんだよー!

バニラとビター。
良い名前。可愛いなあ。
ちろ(白い方)は、もらう前は真っ白って言ってたから
ミルクかユキだったんだけど。
行ってみたら耳としっぽが茶色くなってて(笑)
いろいろでたけど、アラーキーさんちにいた猫さんの名前をいただきました。
マーブルはマーブル模様だったから。
(予定外でもらってきたから早かった)

さてさて、人間の仔猫達を助けてくれるのは誰なんでしょうねえ。たぶん、ミーンミーンと鳴いてるアヤツ。

ち「あ、ソフトクリーム食べてる。可愛い」
す「なんか見たくない輩が見てますね」
さ「やだ、こわーい」
ni 「 ハラハラ ハラハラ」
し「これで、ようやく・・・フフフ」

隊長!夏休みは終わりにして助けに来てー!
ちーさま こんにちは
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-18-Sun 13:49 [編集]
口だけ番長(爆)
もう、どうしようもないお兄ちゃんでしたね~。
生まれたての仔猫を展示していれば人が寄ってくるというものです。
ツメが甘いんだよ、にぃ~。
それで毎回弟に苦言を吐いているんだから、たちが悪いったらありゃしない。

やっぱり名付けは苦しみましたね…。
白玉と餡子にしようかな~とも思ったけれど(←どうしてお菓子???)もうちょっと可愛げのあるものにしてみました。
飼い主ふたりにみたいにあまぁぁい系で(´∀`;)

さぁ、こっちの仔猫の前に登場するのは(o´艸`o)
えぇ、そうでしょうとも。
木に貼りっついているだけじゃ助けられないからね。

~店内~
掃除腐「...〆(~~)今度の職場はエアコンが効いてるわ」
売店腐「ソフトクリームの売上が…アセアセo(^^;o)Ξ(o;^^)o」
腐監視カメラ「・・・(-_-)ジィー」

コメントありがとうございました。
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