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BLの丘
木漏れ日 16
2013-08-15-Thu  CATEGORY: 木漏れ日
翌日も晴天だった。
能代と森吉はダイビングをしに行くのだと、部屋の中でウェットスーツに着替えている。
「だーからさぁ…」
顔を真っ赤にした鳥海と白神は目のやり場に困って、俯いては畳の目を追いかけていた。
相変わらず気にしないふたりは全裸になってしまったのだ。
敷きっぱなしの布団を手繰り寄せて、こっちが頭を隠すのって、どうなのだろう…。

「おまえら、どうする?俺たちの雄姿を見に来るか?」
能代が着替え終わっては鳥海たちが潜っていた布団をはぎ取った。
口調は冗談交じりだが、放っておくことを危惧しているのが伝わってくる。
『預かった以上責任がある』とは、無防備に振る舞った昨日のことがあったからだろう。
声をかけられてはホイホイとついていきそうになり、雰囲気に飲まれては体を委ねてしまったことが、繰り返されてもおかしくない、と。
森吉が言葉を重ねてくる。
「一緒にいくだろ?鳥海たちも潜ればいいじゃん」
「え?そんな簡単にできるものなの?」
「インストラクターの資格くらい、持ってるよ」
淡々と答えられて、見かけ以上にしっかりした人なのかと、驚かされた。
少なくとも海辺で相手に困ることはない容姿と技術は備えている…。
昨日の手際の良さも甦って、喰った数は何人に上るのだろう…といらぬ妄想が湧いた。
ある意味、海の危険を知った男と来られて良かったのかもしれない。
身をもって教えてもらえたことに感謝も浮かぶ。
もうあんなに軽く身を預けることはしないだろう。

海の中は予想以上に綺麗だった。
ずっと森吉がついてくれているので不安もなく、自由に動けるようになると、これがまた楽しい。
自然の水族館に入れた気分ではしゃいで、能代がその光景を写真に収めてくれたのも嬉しかった。
動きに不自由がある水中で、能代にからかわれている白神も可愛い。
そんな数々を後で見せられると、楽しい思い出として残したくて、データをくれと強請った。
自分が被写体になるのはどうかと思っても、やっぱり自分が映っている光景は証拠として残したいのだ。
全員が機械に強いと言われる学部の人で、部屋に戻ればすぐにデータのやりとりは完了された。

夕方、自宅まで送り届けてもらった。
帰り道、すっかり車内で眠ってしまった鳥海と白神に、「おまえら、良く似ているよ」とは能代のセリフだ。
夕食をどこかで…と考えていたらしいが、あまりにも爆睡しているため、起こすのも憚られてこの後能代と森吉の二人で出かけるらしい。
家に着くと同時に八竜が顔を出してきた。
『弟が世話になった』挨拶をするのもいつものことだ。
気まずげな森吉のことを思っても、さっさと帰ってもらおうと身体が動く。
「にぃ、お土産」
「土産?なんだよ、この発泡スチロールは?」
「魚、買ってきたの。氷、いっぱい入れてもらったよ」
「そーゆー問題じゃなくてさ…」
生ものは早く冷蔵庫にいれてほしい。

「藤里、送っていこうか?」
能代が白神に声をかけたことで、そちらに気がそれる。
前夜は鳥海の家に泊まることで話がついていたが、帰宅した今は何の約束もされていない。
一緒に降りるのか、別行動をとるのかの確認に、白神が「えーと…」と鳥海と八竜を交互に見た。
能代がわざとらしく男の色気を今まで以上に撒き散らしての声掛けは、獲物を狙う熊にしか見えない…と思ったのは鳥海だけではないだろう。
白神の縋ってくるような目が余計に庇護欲をかきたてた。
…この熊、意外と演技派だな…というつぶやきは胸にしまっておく。
案の定、口を挟んだのは八竜だった。
「藤里くん、嫌でなかったら話でも聞かせてもらおうかな。一人暮らしだろ?また泊まっていけばいいよ」
こちらも羊の皮をかぶった狼である。
もっともらしい理由を述べているが、同時にふたりが嘘をついていないか、ボロをださないかの証拠を掴むために虎視眈々と狙っていた。
もちろん、アヤシイ出来事がなかったかの確認も含めて。
そんなことを脳内に過らせる雰囲気を、充分なほど、能代は醸し出していたのだ。

「じゃあ、またな」
森吉と能代は、鳥海たちと荷物を下ろして帰っていった。
発泡スチロールを持たされた八竜が、「随分重いな」と中身を訪ねてくる。
「うん、民宿のおじさんが船、持ってて、朝の獲りたてをお土産にしてくれたの」
「そうか。藤里くんもいるし、母さんに何か作ってもらうか」
「本当ですか~?僕、一人暮らしで滅多に手料理なんて食べられないから、すっごく嬉しいです~っ」
喜びを無限大に表した邪気のない姿は、もしかして最大の武器だろうか…。
ただでさえ、外面の良い八竜はニコニコと白神に応じていた。
「手作りのありがたみが分かる藤里くんは、しっかりしたいい子だね」
どうして歯の浮くようなセリフが吐き出せられるのか、普段の言動を知るだけに鳥海は舌打ちしたくなっていた。
何より、最初から母に作らせることを前提とした言動に、その母のありがたみを分かっていないのは八竜のほうではないかと…。

玄関に入ると、脇に段ボール箱があった。
その中に小さい物体が毛布にくるまれて埋もれている。

ねこ
ちー様からお借りしました。お持ち帰りは厳禁です。

「なに?」
「あー、貰い手探していた猫でさ。ずーとこの調子で寝ているんだよ。……なんかこうして見ると、お前たちに似ているなぁ」
しみじみとした口調で動かないものを覗き込む。
二人で寄りそって眠った最近のことが重なったのか。
栗色の頭髪を持つ鳥海と、黒髪の白神。
そんなふうに比べられたら愛着が湧いてしまうのは人情なのだろうか。
「うちで飼うの?」
「いや、親父の友達が明日朝一で見に来るってんで一晩預かったとこ。どっちにするか決めるらしい」
八竜の説明には白神が目を見開いた。
「え?離されちゃうの?」
一緒に遊んだこともあったから、白神はもらわれていく淋しさが瞬時に浮かんだようだ。
もらわれていくことは頭で理解していても、その現場に居合わせてしまったことは、白神の心を悲しみに落ち入れていた。
同時に何か思うものを八竜に植え付けたようだった。

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コメント

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可愛い~(*^^*)
コメントさえ | URL | 2013-08-15-Thu 00:57 [編集]
ちーちゃんちの子可愛い~(*^^*)
寄り添っていい感じ♪
小さいときの
コメントちー | URL | 2013-08-15-Thu 05:04 [編集]
仔猫の写真の方が良かったねえ。
しかも、あんまり可愛く撮れてない。
実物はもっと可愛いですよ←親バカ(笑)

にぃと藤里くん。上手くいくかなあ。
一途な藤里くん、頑張ってね。
まあ、ダメなら能代がいるさ(おいおい)
ニャッ♪(=^・・^)(^・・^=)ニャァ~♪
コメントけいったん | URL | 2013-08-15-Thu 09:29 [編集]
鳥海と白神が 寄り添って寝ている姿は 私の妄想と ソックリ!
さすが ちーカメラマン、バッチリです♪.。.:*・゚(*ゝ∀・)。.:ィィ゚.+:。

白神を挟んで 能代と八竜が 火花を散らしている様に見えたけど、
どう見ても これは 恋敵に対する態度!
八竜にとって 白神は もう一人の弟って感じで 恋愛対象では無かったよね?

鳥海が 誰かと恋愛する前に
もしかしてのもしかで 白神と八竜がーーー!(* >ω<)ウフフフ♪
 
みなさま こんにちは~
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-15-Thu 15:13 [編集]
熱さのせいかな。なんかパソコンが調子悪くてイライラしております…。

ちーさま、お写真ありがとー♪
寄りそって寝ている姿が、もうピッタリで使いたかったのです。
そういえば、藤里と八竜の出会いって猫だったっけ、と、こんなに都合の良い展開はないだろうと引っ張ってきました(←相変わらずこじつける)
鳥海は小さい頃は にぃと一緒に寝ていたのかもしれませんね。
藤里は元気いっぱいの子に見えるけど、本当のところは淋しがり屋さんかもね。

能代ってば良い仕事してくれますね(*^-')b
何の気も持たなかった八竜に藤里の存在を意識させたのですから。
可愛い弟に似た延長かもしれないけれど。
手のかかる弟が増えた感覚かもしれませんが。
今はまだ…ね。
きっと鳥海も応援してくれるでしょうから、藤里の想いは成就するかしら。
ウルサイ兄貴は熨斗つけてくれてやる勢いで(o´艸`o)

きえちんも贈り物まってま~す♪(←)
コメントありがとうございました。
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