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BLの丘
木漏れ日 28
2013-08-26-Mon  CATEGORY: 木漏れ日
【瀬見視点】
視点変更、どうか、お許しください。そして一回読まれた方、本当にすみません。玉手箱でも開けた気分でもう一回読んでみて…。
物足りない方は別宅に小言がありますのであさりにいって…(そんな暇はねぇって言われそうだね…)




定期的な波音が耳に届いてくる。
打ち寄せる波、引いていく波。
八竜につづいて浜辺に降り立ってみたけれど。
昼とは違う波の感覚が肌に吸いついて囁いてきた。
『襲う』という危機感は、闇と共に近づいた。
温度も湿度も、肌を撫でるものは違って、心地よい海風が通り過ぎていく。
呼ばれて、一緒に来なければ、知らなかった風かも…。
神秘的な『海』の一部だ。
だからこそ冷汗をかく兄の立場も理解する。
心配で、放っておけないんだな…。

目の前を元気に走りすぎる『弟』の姿を見ると微笑ましく思う。
自分にも、あんなに何かになりふり構わず突き進むことができた時代があったかと振り返り懐かしさが湧く。
「兄弟…っていいな」
ぽつりと瀬見がつぶやくと、いつものごとく憎まれ口が叩かれた。
「うるせぇだけだよ」
そう言えるところが、羨ましい。
他の同級生とは違って、高校生の時代だけを八竜と一緒に過ごした瀬見には少し壁があった。
幼い頃から知り合った人とは違うもの。
だけど、何一つ隔たりなどなく、包み込んでくれた人間関係とは、八竜が持つ、人間性そのものだろう。
瀬見には一つ年下の妹がいる。
いつのころか生意気になって、お洒落にも気をおくようになって、つながりなんてなくなった。
交わす会話は何の話だったか…。
下の子供を思って、頑張った成果は誰が認めてくれるか。
分かち合えるのは、"長男"という立場であるからなのかも。
八竜は表立つこともなく、ずっと控え目に佇む。それでいて存在感だけはあった。
もしかして、羨ましかったのだろうか。

『にぃ』と素直に、ありのままに縋ってくる存在はどれだけ可愛く映っただろう。
それも、八竜が見守ってきた結果だと分かる。
一つは憧れなのかもしれない。
守りたいと、思わせるものが近くにいる…。

くだらない会話が続いた。
波音に消えそうだけど確実に聞こえてくる声は、素直な想いを伝えてくる。
ずっと守ってきたものだ。
本人には聞こえないだろうけれど、こうして誰かに伝わっている。
幼いころの鳥海が人に襲われたと聞いた時のショックは言い表せない。
自分の妹が同じ目に遭ったなら…、相手を許せただろうか。
八竜は、「強くなれ」とけしかけて、弟を護った。
憎まれ口、憎まれ役、なにもかもを背負って護り続けた背中があまりにも大きいと思う。

身近な人が被害者になる現実。
どれほどの傷を負ったのかと心配しても、当の本人はいつまでも明るくて、暗闇など思い浮かばせなかった。
誰にも心配掛けたくない、健気な、それは、無意識の強がり…。
なにも、そんなに頑張ることはないのに…。

もしかして、淋しいのかと思わせる仕草があった。
正直に表してくれるところが、自分の家族とは違うところだ。
素直だからこそ…、構ってやりたくなる。
その反応も、隠すことがなくて、楽しい。
正直ではない"兄"の代わりに、兄の優しさを影から教えて上げたいのは、自分の独りよがりか。
誰かに知ってほしい、遠回りな表現は、同じ立場だから伝わる。自分が代わりに伝えられるのなら贅沢な存在になるのかもしれない。

…家族でもないのに…。

フフと何故か笑みが浮かんだ。
…なにを、どうしてあげたいのだろう…。
崩れない環境を守りたい。
それは、職場にいた、離されても繋がっている同僚を見たせいだろうか。
離れていくと分かる人でも真髄では揺るがない何かがある。
同じように築き上げたい、自分と誰かの存在。
強がりな兄をみるからこそ、正直な気持ちで答えてあげたいと思いもする。
どこまで近づけるかな…。

自惚れが襲った。
虜に出来るかもしれないと…。

鳥海にライトを持たせて、身体と同じに揺れ動く明かりは、幸せを運んできた。
そこにいるのだという安堵感。
見守っているのだという満足感。

ふぅと息を吐く八竜が、何を差し置いても弟を気遣っているのは端々から知れた。
「鳥海~、溺れるなよ~」
「ばかにすんな~っ」
かけあいが微笑ましい。
どんな悪態だって、直接聞こえてくるから安心するのだ。
立場は違っても護るものは同じ。

鳥海に預けた明かりが揺れた。
自分たちからは離れてもっと遠くに歩いていったのだと分かる。
どこまで、いくのか…。その元気さには舌をまくと、苦笑い。
「まったく…」
どちらの"兄"がつぶやいたのか…。
呆れて感心して、羨ましがる。
見守った口調に、波音が被さった。
幾度も打ち寄せる波音は岩肌に当たるものだ。

その時打ち寄せた波の一つが、大きかった。
「藤里っ」
波の間に響いた声が危機を知らせる。
自分よりも人を大切にする心を持てる人だからこそ、その叫び声が切羽詰まったものだと伝えた。
こんなときでありながら友人を気遣ったのは…兄と同じ血…?
そばにいた人を真っ先に護ろうとするのか…。
叫ばれる声にさそわれて、気を取られて振り向いた八竜は素早い動きで飛び出そうとしている。
暗い中で一際輝く電気の明かりが、揺れて波にさらわれていった。
それを追いかけようとして…。
「鳥海っ?!」
親友の声が波音と共鳴する。八竜は誰がさらわれたのかわかっている。
「うみっ!!」
弟と同じ道をたどろうとした八竜の体を止められたのは、偶然か、奇跡か…。
両手が行く先を閉ざしていた。

「だめだっ、お前がいったら、二の舞だっ」
殴ってでも動かせたくなかったのは、鳥海が大事にしたかった兄の存在を知っているからだろう。
どんなに憎まれ口をたたいたって、繋がって支えた感謝がある兄弟。

海に慣れた瀬見は、ライフセーバーの資格も持っていたからこそ。
飛び込む覚悟がある。
絶対に八竜には足をついて出迎えてほしいのだと…。

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コメント

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嬉しい 瀬見視点♪v(≧∇≦)v イェェ~イ♪
コメントけいったん | URL | 2013-08-26-Mon 09:57 [編集]
鳥海が 自身の気持ちを まだ はっきり気づいてない時点ですからねー 
瀬見も 八竜の「弟」として 見守っている…
まぁ そうだろうとは、思ってました。(笑)

私が思う瀬見って、「来る者は拒まず、去る者は追わず」の典型的な人
今まで 自ら積極的に アプローチをかけた事は 無いんじゃないの?

そんな瀬見が 劇的に変わる所を 見させてくれますか、きえちん?

今回の 海に落ちた鳥海を 助けに行く事で 
『激的ビフォーアフター』に なったりして~
ムフフッフ(*´ 艸`)(´艸 `*)腐腐腐 


 
けいったんさま こんにちは
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-26-Mon 15:54 [編集]
こちらはすっかり秋めいてきました。
夏が終わるんだなぁと感じています。
海水浴の話を書くのも季節外れか?!
いや、そろそろ海ともおさらばだからいいかぁ。

瀬見視点、喜んでくれて嬉しいです。
そうですね、どこか冷めた感じのある瀬見かもしれません。
それが何か変わるんでしょうか。
鳥海に対してどんなふうに思っていくのか。
そしたら、また瀬見視点が登場することになるのかな…。
鳥海の意識も漠然としたものからはっきりしたものに変化するのかしら。
まぁ、こちらものんびりした性格ですからね~(本人が思っている以上に他人の目はキビシイ…)
うまく伝えられるように文章頑張ります(`・ω・´)ノ

コメントありがとうございました。
ふふふ
コメントちー | URL | 2013-08-26-Mon 21:57 [編集]
師匠の思う瀬見ちゃんが、いつしか違う瀬見ちゃんになるかもしれないよねえ。
楽しみ楽しみ。

さてさて、王子は姫を助けられるのかな。
姫が目覚めるのは王子のキッスーぅ。

瀬見ちゃんて、案外?いや、やっぱり?
スゴい人?

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