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BLの丘
淋しい夜の果て 15
2009-12-12-Sat  CATEGORY: 淋しい夜
千城は指輪を受け取るとその場で英人の指に嵌めた。親にまで認めてもらった婚姻式のようだった。それから丁寧に父親に頭を下げていた。
英人も倣って共に指をついた。

「必ず『榛名』を継げ。その先のことはおまえに任せよう」
未来を託す言葉は、英人には信じられないことだった。
勘当すると言った言葉は跡形もなく消え去り、それどころか英人との仲までも認めた。どれほどこの父が千城を思っているのかを肌で感じる。
育て上げたのだと思った。『榛名』にふさわしい人間になるよう育てたから決して失いたくなかったのだろう。
この一族にどれだけの権力や富があるのかなど、想像の域を越えた。英人にはそんなものはどうでもよかったが千城が背負うとは自分自身にも降りかかることなのだとなんとなく理解した。
千城にただ抱かれていられるだけの存在ではなくなる…。恥じないよう自分を磨かなくてはならない。
現会長が退き、一世がその台に乗ったとしても千城が受け継ぐのはまだ先の話になる。
その頃までに子孫を残せる自信など全くない。第一生まれるはずがない。
それまでも受け止めてくれたのだと英人は頭を下げながら感じた。

「信じられん世界だ、息子が二人になるなど…」
溜め息と共に漏れたのは諦めの境地にも近い。
何がどう彼を変えたのかは英人には分からなかったが、『息子』と言われた言葉は胸の奥底まで響いた。
「親は子に弱いものだ…。千城にここまで泣きつかれては何も言えん」
一世は嬉しさと淋しさを湛えたような笑みを浮かべた。
一つの企業の主としては赦しがたい行為でも、一人の人間として、また親としては認めてやりたかったのだと漂わせていた。

千城はたぶん知っていたのだと英人は思った。父親の愛情の深さも流れ来る未来も。
まるで千城の思惑通りに動いた世界だった。
決して揺るがしようのない事実を突き付けるために先に戸籍を共にした。そして動く父を見越していた。さすがに英人に屈辱を与えるとまでは想定外だったのだろうが、結果をみればそれが功を奏している。
父の弱みを握ったと言うに値していた。

帰りの車の中で、英人は何度も指に嵌められた指輪をさすった。ようやく戻ってきた温もりのような気がした。
その手を千城にとられ、何度もくちづけを落とされる。

初めて一夜を共にしたホテルの部屋に案内された。
…全てはここから始まった…
久し振りに訪れた部屋は何も変わるところがない。
部屋に入るなり、英人を抱き寄せた千城は甘いくちづけを施しながらそっと囁いた。
「おまえが他の男に目を向けるのを見た時、言いようのない嫉妬が生まれた」

それが全ての始まりだと千城は打ち明けた。
この部屋に拘束するために必要だった「英人を抱く」という行為が、逆に千城を捕らえてしまった。最初は体の繋がりだったのかもしれない。それが第三者の登場で千城の独占欲に火を付けた。次々と溢れ来る才能を失いたくもなかった。
恋心など知らなかったから千城は嫌というほど英人を甘やかした。そうやって自分の檻の中に閉じ込めようとした。
「馬鹿みたい…」
英人が腕に抱かれながらぽつりとつぶやく。
お互いに惹かれながら片想いしていた期間が意外と長かったことを改めて知ると、苦しんだ時が何だったのかと思えてくる。けどこうして腕に抱いてもらえる今が幸せであることに間違いはない。

「レストランに行こうかと思ったが…。今の英人を人に見せるのはもったいない」
そんなことを言われればどんな顔をしているのかと思う。
英人はいつも人を誘うようだと皮肉に言われたことがある。現実に外で近づかれたり立川に言い寄られたりとする状況を思えば身に染みるものがあったが、本人にそんな気はもちろんない。
俄かに眉間に皺を寄せてしまえば「可愛い」と答えが返ってくるくらいで…。
「愛している。英人を愛している」
改めて伝えられる愛の言葉。絶えることのない抱擁と口付けの嵐に襲われた。

ネクタイがスルリと外された。食事などもうどうでもよかった。
与えられる口付けに体は反応してしまい、勃ちあがった性に千城の膝が擦り込まれる。
「んっん…」
悶え、身体を捩れば知りきった瞳が英人をのぞいた。
「英人の上で食事をとろう」

全く意味など理解できなかった。

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最終回にしたかったのに~っ!!ちーちゃんたら何を訳の分からんことをっ!!
じ、次回こそは最終回…???


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コメント

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コメントたつみきえ | URL | 2009-12-12-Sat 08:55 [編集]
T様
おはようございます。

>ちーさん、嬉しすぎて暴走モード突入ですか? この先、まだまだいろいろと大変な事もあるんだろけど、一つ一つ乗り越えて英人も強くなっていって欲しいですね。

応援ありがとうございます。
千城、暴走中?!
親にも認められて一安心状態でいますからね。
英人もひとつひとつと自信をつけていくことと思います。
いつもいらっしゃってくださってありがとうございます!
安堵
コメント甲斐 | URL | 2009-12-12-Sat 15:07 [編集]
千城サンえろいですわー。
最後まで。
「英人の上で食事」って何を食べるのやら・・・。
思いっきり喰われちゃうんですね、ひーちゃん。

でも、よかったです、英人君がもっと苦しむことなく千城父が改心(?)っていうか分ってくれて。
たぶん、半分はかわいい息子を誑かした男娼を懲らしめたい、というのと、後の半分は試したみたいな気もします。千城が『榛名』と引替えにしても欲しいものだと思うのか、英人がどんな屈辱にでも耐えるのかみたいなことで。
お仕事おろそかになってしまったツケをこの後払うことになりそうですね。
千城さんも英人君も。
がんばれ!
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コメント | | 2009-12-12-Sat 15:25 [編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Re: 安堵
コメントたつみきえ | URL | 2009-12-13-Sun 11:15 [編集]
甲斐様

こんにちは。レス遅くなりました。
昨日夕方から体調を崩しまして…。
最終回も書き上がっておりません(冷汗)

> 千城サンえろいですわー。
> 最後まで。
> 「英人の上で食事」って何を食べるのやら・・・。
> 思いっきり喰われちゃうんですね、ひーちゃん。

千城ってば何を言い出すのか…。
もうがっつりと頬張る気でいるんですかね~。

> でも、よかったです、英人君がもっと苦しむことなく千城父が改心(?)っていうか分ってくれて。

パパも息子の揺るがない気持ちに負けてしまったようです。
結局息子がかわいかったんでしょうね。

> お仕事おろそかになってしまったツケをこの後払うことになりそうですね。
> 千城さんも英人君も。
> がんばれ!
まったく二人して仕事を放り投げちゃっていますからね。
千城をまた海外に追いやっているうちに英人は本邸でパパから再教育されていようかと想像していました。
きっと英人は可愛がってもらえることと思います。

コメントありがとうございました。
Re: ほっとしました。
コメントたつみきえ | URL | 2009-12-13-Sun 11:22 [編集]
M様

こんにちは。レス遅くなりました。

> 千城パパに認めてもらえて良かったです。英人頑張りましたましたね。指輪を嵌めてもらうシーンにじーんときました。
> なのに千城さんどうしたんですか(゜Д゜)!!英人の上で食事?えっ次回最終回?わ~どうなるんですか~O(><;)(;><)O

体調崩して最終回、全く書けておりませんm(__)m
英人、指輪を返してもらえて良かったです。一緒にパパのところに行くことで二人の愛を改めて伝えることができたのだと思います。
そして舞い上がりすぎの千城サン…。
本日はお祝いですかね。

コメントありがとうございました。
Re:
コメントたつみきえ | URL | 2009-12-13-Sun 11:28 [編集]
MO様

こんにちは。レス遅くなりました。

>さすがの千城パパも、二人の揺ぎ無い愛を目の辺りにして、折れるしかなかったんですね。

はい。怒鳴り散らしてから頭を冷やしたようです。
可愛い息子に頭を下げられちゃ、頑固親父のままではいられなかったんでしょう。

>本当に良かった。緊張感も解けて、千城ったら 英人を堪能することしか頭にないようですね・・・早く続きを読みたいけど、もう終わっちゃうのは寂しいです。いつも ありがとうございます

すべて千城の思惑通りに進んで万々歳ってところです。
どこまでもこの人は自分の思い通りに物事を進めますからね。
次は何を考えているのやら…

コメントありがとうございました。
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