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BLの丘
策略はどこまでも 番外ヒサ編 9
2009-07-23-Thu  CATEGORY: 策略はどこまでも
那智との関係を「恋人」と呼ぶにはまだ無理があると思ったから、「片想い」とつぶやけば、心底驚いた感じの滝沢が大声を上げた。
周りの席についていた客が振り返ったくらいだ。思わず滝沢をたしなめる。
「おい。そんなに驚くなよ」
「えーえーえーえー、だって…えー」
絶えず「えー」しか出てこなくなった滝沢には笑うしかない。大方、落とせない相手はいないくらいに思われているのだろう。

「何で?へん?」
「いや、変っていうより…」
滝沢は言葉を区切った。誰もが羨むほどの容姿を持ち、また人から好かれる性格と知っているだけに、「片想い」と聞けば、久志の望む相手がどのような人物なのかと自然と頭を巡らせてしまう。
遊びでもいいと転がり込んでくる人だっていてもおかしくないだろう。何より、久志ほどの人に想われる人間を見てみたかった。

「高柳さんがそんなこと言うと思ってなかったので…。あれ?だって朝帰りって…」
そこまで言って滝沢は思い悩んだように口をつぐんだ。久志のプライベートを詮索するようでなんだか気が咎めたのだ。

久志は周りに会社の連中がいなくて良かったと思った。あの連中なら、間違いなくこの話題に飛びつき、それこそあらぬ詮索をされ根掘り葉掘り聞かれたことだろう。
あの後も何度か那智の家で夜を過ごし、黒川に嫌味な視線を送られたことが数度ある。当然その話はあちこちの部署に知られ渡っていて、滝沢が耳にしているのは不思議なことではなかった。
言われたことの意味を理解した久志は苦笑いを浮かべ、溜息まじりに視線をテーブルに落とした。
「どーしたもんかねー。ちょっち、複雑なの、俺たち」

言葉を濁す久志に、これ以上の質問を重ねてもいいものかと滝沢は考えてしまった。安易に話せる内容ではなさそうだし、仮にも年上に向かって話を促すなどできない。

新しく届いたビールジョッキに口をつける久志は話題になってしまった内容に思いを巡らせる。
どうにか那智の気持ちを聞かなければこの曖昧な関係が続くだけだと知っている。どうやったら秘められた胸の奥を知ることができるのか、那智に会うたびに悶々とする。
一度安住のことを聞いたのだが、「会ってない」とそっけなく言われただけだった。安住の名前を出した時に、那智が淋しそうな顔をしたので、久志の中に沸き立つ不安はより一層増していた。大人げなく彼のことを更に問い詰めたかったのだが、彼との関わり合いが途絶えていると聞けばこれ以上話題に上らせたくもなかった。それに、少しずつ自分に傾きかけているのではないかと思われる那智の態度に水を差すようで躊躇われた。
このまま自分のことに話を振られ続けて、また余計なことを口走って後々話のネタにされるのも避けたかった久志は、滝沢を問うことにした。

「滝沢は?付き合ってる人とかいないの?」
突然話を振られた滝沢は、話題を変えたがっている久志の気持ちを察した。フルフルと首を横に振りながら、聞かれたことに答える。
「いえ、俺は…」
「そうなの?俺が滝沢くらいの頃は遊んでたけどねー。今度女の子紹介してやろっか」
単なる冗談だったのだが…。第一、今更女の子を交えた席など開ける立場ではないし、気分も乗らない。
とはいえ、久志が言うと冗談に聞こえないので、滝沢は少々慌てた。
「いえ、結構です。俺、そういうの苦手で…」
遊んでいられたのは久志の容姿の良さにも関係しているのだろうに…。思ったことは滝沢の口からは出なかったが。

お酒が入ったせいだけではないだろう。滝沢の顔が俄かに紅くなるのを見ていた久志は、彼がそれほどの経験がないことを知る。
どちらにしても、こういった恋愛話からは逸れたほうが無難だな、と思い巡らせると話題を変えた。
そうやって時は過ぎ、アルコールはほどよく体にまわっていった。


泊まるホテルに予約はしてあったが、チェックインの手続きはまだだった。飲んでいた居酒屋を後にして、目の前のホテルまで歩いて行った二人は、ロビーに数多くいるサラリーマンの姿に驚いていた。先ほどの居酒屋にもいたことを思うと、やはりこの近くで何かが行われていたのかもしれない。
フロントに行き、予約を入れていたことを確認してもらうと、30代半ばと思われるフロントマンは一瞬眉間をピクンと揺らした。だがあまりにもわずかな反応で客に気付かせないところはさすがにプロである。柔らかくほどよい張りのある声で確認事項を告げた。
「高柳様、ご予約はいただいているのですが、こちら、ダブルベッドルームがお一部屋となっておりますがよろしかったでしょうか」
「え?」
久志は幾分酔いのある耳が聞き間違えたのかと思った。隣に立つ滝沢はさらに酔いが回っていたのでしばらく放心していた。

「だぶるべっど?」

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聞き返さなくてもいつも寝ている所より広いですから。
そしてお部屋の中にベッドはいっこしかありません。

M様

コメいただきありがとうございます。
お返事が遅れまして申し訳ございません。

ヤキモキしますよね~ぇ。
私もどうしたらよいものかと悩んでおります…(汗
ヒサは、強引なのはいいけど、肝心の言葉が足りてないし、
なっちは素直にならなくて内にため込んじゃってるし。

すれ違ってばっかりいますが、そのうちどっちかが折れるか爆発するんじゃないですかね(←他人事)
頼るは第三者?!

ぜひまたご訪問ください。
コメントを残していただき、とても励みになっております。
ありがとうございました。
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