大翔に対して思うものが何であるのか、まだ美祢は判断がつかない。
勢いで流れてしてしまった情事を駆が聞いたら何と言われるのだろう。
「ねぇ、本当に付き合うの?」
美祢は改めて尋ねてみた。
また気持ちが分からずに付き合い始めて過去の二の舞を踏むのは嫌だったし、何より大翔とは離れたくない。
『恋愛』という形で付き合えば、何かあった時に修復不可能のような気がしていたから…。
今なら一度の過ちで済む気がした。
駆にだって謝らなければならない。
だいいち、どんな面で顔を合わせればいいのだろう。
「美祢の好きにすればいい。幼馴染と言うのでもいいし、友達のままでも構わないし、恋人と位置付けられても困らない」
「それって、どういう意味…?」
どんな存在でもいい、という答え方に、疑問と不安が混ざる。
大翔にとって自分は何なのだろう。
頬を撫でていた手が背中に回って、両腕でぎゅっと抱き締められる。
「俺にとっての一番は美祢なんだよ。美祢が幸せになってくれるのなら付き合う相手が誰だろうと構わない。でも誰かに傷つけられるのは耐えられない。美祢が悲しんだり辛そうにしているのを見るのは嫌なんだ。それに俺から離れていかれるのも」
大翔が近くにいない生活など、これまで想像もしたことがなかった。
空気のように…というか、いることが当たり前だと思っていた。
誰かと恋をすれば当然のように報告して相談に乗ってもらったりもした。
喧嘩をしたと言えば一緒に怒ってくれたし、別れれば慰めてくれた。
『離れたくない』と大翔も同じように思っていてくれたことは嬉しさでしかなかった。
「言葉に出して言う『位置』なんてさ、俺にとっては何でもいいんだ。美祢が『これでいい』って言えば俺も納得する。…ただ、」
不意に言葉が切れて、どうしたのかと上目遣いで見上げれば、見たこともないくらい優しい瞳をした大翔が、美祢を愛おしそうに見つめていた。
その熱い眼差しに美祢の方が顔を赤らめてしまう。
「幼馴染や友達という立場ではこんなことはしないだろうし、だからって今日みたいに疼いていて、誰かに声をかけられて付いて行きそうになる様を見せられるのは御免だね。特に酔えば無防備になるし大胆にもなる美祢だからさ。今日美祢を抱いたことで余計に惜しさと後悔がある」
前髪をかきあげられて額に唇が落ちてくる。
大翔の中で、これまで持っていた『愛情』の意味合いが変わってしまったのだ。
それを美祢ははっきりと感じていた。
だけど大翔は、この件に関しては強引に物事を進めようとはしなかった。
あくまでも美祢の意思に任せた。
「付き合わなかったら、こんなこと、しない…もん…」
のこのこ付いていく、だとか、無防備だ、大胆だと、散々に言われて美祢は口を尖らせた。
そんなに尻軽な人間ではない…、と否定したいのだが、この状況で口にしても説得力はない。
「ふ~ん。じゃあ、ヤっちゃった俺って何?」
膨れた頬をつつく大翔の口調はからかいを半分含んでいた。
情事を思い出してかぁぁぁっと顔が熱くなる。
「だ、だって、大翔が…」
「最初に言い出したの、美祢じゃん」
「言ってないもん…」
口応えしたところで意味を持たないのは美祢が一番良く知っている。
多少強引な流れだったとしても、最初に泣きついたのは美祢だった。
なにより、大翔だから許したのだろう。
だからといって、『付き合う』ことへの不安は消えない。
「俺、兄貴と同じ台詞、言うのかな…。いきなりは考えられないだろうけど、待ってるから。どんな答えを出されても受け入れるし、これまでと変わらない生活を送ってやる。美祢が選べばいい」
大翔はもう、唇へのくちづけはしてこなかった。
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大翔、強引なくせに、一歩足りない(?!)
勢いで流れてしてしまった情事を駆が聞いたら何と言われるのだろう。
「ねぇ、本当に付き合うの?」
美祢は改めて尋ねてみた。
また気持ちが分からずに付き合い始めて過去の二の舞を踏むのは嫌だったし、何より大翔とは離れたくない。
『恋愛』という形で付き合えば、何かあった時に修復不可能のような気がしていたから…。
今なら一度の過ちで済む気がした。
駆にだって謝らなければならない。
だいいち、どんな面で顔を合わせればいいのだろう。
「美祢の好きにすればいい。幼馴染と言うのでもいいし、友達のままでも構わないし、恋人と位置付けられても困らない」
「それって、どういう意味…?」
どんな存在でもいい、という答え方に、疑問と不安が混ざる。
大翔にとって自分は何なのだろう。
頬を撫でていた手が背中に回って、両腕でぎゅっと抱き締められる。
「俺にとっての一番は美祢なんだよ。美祢が幸せになってくれるのなら付き合う相手が誰だろうと構わない。でも誰かに傷つけられるのは耐えられない。美祢が悲しんだり辛そうにしているのを見るのは嫌なんだ。それに俺から離れていかれるのも」
大翔が近くにいない生活など、これまで想像もしたことがなかった。
空気のように…というか、いることが当たり前だと思っていた。
誰かと恋をすれば当然のように報告して相談に乗ってもらったりもした。
喧嘩をしたと言えば一緒に怒ってくれたし、別れれば慰めてくれた。
『離れたくない』と大翔も同じように思っていてくれたことは嬉しさでしかなかった。
「言葉に出して言う『位置』なんてさ、俺にとっては何でもいいんだ。美祢が『これでいい』って言えば俺も納得する。…ただ、」
不意に言葉が切れて、どうしたのかと上目遣いで見上げれば、見たこともないくらい優しい瞳をした大翔が、美祢を愛おしそうに見つめていた。
その熱い眼差しに美祢の方が顔を赤らめてしまう。
「幼馴染や友達という立場ではこんなことはしないだろうし、だからって今日みたいに疼いていて、誰かに声をかけられて付いて行きそうになる様を見せられるのは御免だね。特に酔えば無防備になるし大胆にもなる美祢だからさ。今日美祢を抱いたことで余計に惜しさと後悔がある」
前髪をかきあげられて額に唇が落ちてくる。
大翔の中で、これまで持っていた『愛情』の意味合いが変わってしまったのだ。
それを美祢ははっきりと感じていた。
だけど大翔は、この件に関しては強引に物事を進めようとはしなかった。
あくまでも美祢の意思に任せた。
「付き合わなかったら、こんなこと、しない…もん…」
のこのこ付いていく、だとか、無防備だ、大胆だと、散々に言われて美祢は口を尖らせた。
そんなに尻軽な人間ではない…、と否定したいのだが、この状況で口にしても説得力はない。
「ふ~ん。じゃあ、ヤっちゃった俺って何?」
膨れた頬をつつく大翔の口調はからかいを半分含んでいた。
情事を思い出してかぁぁぁっと顔が熱くなる。
「だ、だって、大翔が…」
「最初に言い出したの、美祢じゃん」
「言ってないもん…」
口応えしたところで意味を持たないのは美祢が一番良く知っている。
多少強引な流れだったとしても、最初に泣きついたのは美祢だった。
なにより、大翔だから許したのだろう。
だからといって、『付き合う』ことへの不安は消えない。
「俺、兄貴と同じ台詞、言うのかな…。いきなりは考えられないだろうけど、待ってるから。どんな答えを出されても受け入れるし、これまでと変わらない生活を送ってやる。美祢が選べばいい」
大翔はもう、唇へのくちづけはしてこなかった。
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大翔、強引なくせに、一歩足りない(?!)
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カッコ良すぎるぜッ、大翔!どんな立場でも 受け入れるなんて!!
あまりにも 近すぎる存在同士な 美祢と大翔
この関係が 壊れる事だけが イヤみたいですね。
でも 微妙に変化しているのにね。
風邪菌に 現在 徐々に 侵食されてる私です。
きえ様も 気をつけて下さいね(^o^)ゞbyebye☆
あまりにも 近すぎる存在同士な 美祢と大翔
この関係が 壊れる事だけが イヤみたいですね。
でも 微妙に変化しているのにね。
風邪菌に 現在 徐々に 侵食されてる私です。
きえ様も 気をつけて下さいね(^o^)ゞbyebye☆
けいったん様
こんにちは。
カッコイイですか~???(疑問)
> カッコ良すぎるぜッ、大翔!どんな立場でも 受け入れるなんて!!
>
> あまりにも 近すぎる存在同士な 美祢と大翔
> この関係が 壊れる事だけが イヤみたいですね。
> でも 微妙に変化しているのにね。
近すぎて失えなくなったんですね。
どんな状態でもずーっと『今』を保ちたい。
大翔の気持ちが変化したことは認めました。
じゃあ、美祢は?!…な状態ですが。
> 風邪菌に 現在 徐々に 侵食されてる私です。
> きえ様も 気をつけて下さいね(^o^)ゞbyebye☆
ご無理なさらないでくださいね。
という私も頭痛に悩まされておりますが。
コメントありがとうございしまた。
こんにちは。
カッコイイですか~???(疑問)
> カッコ良すぎるぜッ、大翔!どんな立場でも 受け入れるなんて!!
>
> あまりにも 近すぎる存在同士な 美祢と大翔
> この関係が 壊れる事だけが イヤみたいですね。
> でも 微妙に変化しているのにね。
近すぎて失えなくなったんですね。
どんな状態でもずーっと『今』を保ちたい。
大翔の気持ちが変化したことは認めました。
じゃあ、美祢は?!…な状態ですが。
> 風邪菌に 現在 徐々に 侵食されてる私です。
> きえ様も 気をつけて下さいね(^o^)ゞbyebye☆
ご無理なさらないでくださいね。
という私も頭痛に悩まされておりますが。
コメントありがとうございしまた。
MO様
こんばんは。
>美祢のことが大事すぎて、体を繋げても、強引に出れない大翔ですが、本心は美祢にとっての一番でいたいんでしょうね。後は美祢の気持ち次第かな?今後の展開を楽しみに見守らせてもらいます♪
あくまでも美祢の意思を尊重ってことですかね。
まぁ、大翔も言うこと言ったし、これで美祢がなんて返すんでしょう。
チマチマと進んでいますが、もう少しお付き合いください。
コメントありがとうございました。
こんばんは。
>美祢のことが大事すぎて、体を繋げても、強引に出れない大翔ですが、本心は美祢にとっての一番でいたいんでしょうね。後は美祢の気持ち次第かな?今後の展開を楽しみに見守らせてもらいます♪
あくまでも美祢の意思を尊重ってことですかね。
まぁ、大翔も言うこと言ったし、これで美祢がなんて返すんでしょう。
チマチマと進んでいますが、もう少しお付き合いください。
コメントありがとうございました。
恋愛の範疇に治まらないんですねえ。
身内愛が含まれちゃってる感じなのかな?
確かに、恋愛初期のようなドキドキは薄いのかも知れないけど、それって、熟年夫婦と似た感情なんじゃないのかな。
恋人としては物足りないけど、結婚相手にはいい、ってヤツ(゜∀゜)パートナーにするには、いい相手だと思うけど、そういう関係に落ち着くには、ちょっとお互いに若すぎるのかもねー?
身内愛が含まれちゃってる感じなのかな?
確かに、恋愛初期のようなドキドキは薄いのかも知れないけど、それって、熟年夫婦と似た感情なんじゃないのかな。
恋人としては物足りないけど、結婚相手にはいい、ってヤツ(゜∀゜)パートナーにするには、いい相手だと思うけど、そういう関係に落ち着くには、ちょっとお互いに若すぎるのかもねー?
"どんな関係でもそばにいたい
幸せだったらいい"
なんだか不思議な関係ですが
この二人ならわかる気がします
幸せにするのが自分でも他の人でもいいからだなんて
究極の愛ですね
幸せだったらいい"
なんだか不思議な関係ですが
この二人ならわかる気がします
幸せにするのが自分でも他の人でもいいからだなんて
究極の愛ですね
かや様
こんにちは。
> 恋愛の範疇に治まらないんですねえ。
> 身内愛が含まれちゃってる感じなのかな?
> 確かに、恋愛初期のようなドキドキは薄いのかも知れないけど、それって、熟年夫婦と似た感情なんじゃないのかな。
> 恋人としては物足りないけど、結婚相手にはいい、ってヤツ(゜∀゜)パートナーにするには、いい相手だと思うけど、そういう関係に落ち着くには、ちょっとお互いに若すぎるのかもねー?
恋愛っていうくくりにはまだ遠いんですかね~。
けど、結婚相手にちょうどいい、その感覚はよーく分かります。
知りすぎてわかりすぎちゃって気を許しすぎちゃっている分、居て当然っていう存在でしょうか。
ドキドキよりも安泰なんです、きっと。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> 恋愛の範疇に治まらないんですねえ。
> 身内愛が含まれちゃってる感じなのかな?
> 確かに、恋愛初期のようなドキドキは薄いのかも知れないけど、それって、熟年夫婦と似た感情なんじゃないのかな。
> 恋人としては物足りないけど、結婚相手にはいい、ってヤツ(゜∀゜)パートナーにするには、いい相手だと思うけど、そういう関係に落ち着くには、ちょっとお互いに若すぎるのかもねー?
恋愛っていうくくりにはまだ遠いんですかね~。
けど、結婚相手にちょうどいい、その感覚はよーく分かります。
知りすぎてわかりすぎちゃって気を許しすぎちゃっている分、居て当然っていう存在でしょうか。
ドキドキよりも安泰なんです、きっと。
コメントありがとうございました。
甲斐様
こんにちは。
> "どんな関係でもそばにいたい
> 幸せだったらいい"
> なんだか不思議な関係ですが
> この二人ならわかる気がします
> 幸せにするのが自分でも他の人でもいいからだなんて
> 究極の愛ですね
不思議な関係かもしれないですね。
人に譲ってもいいって考えられるのはすごいのかなぁ。
そしてどこまでも、これまでの関係を続けていこうとする…
そんな相手なら安心して任せられるよって大翔は言いたいのかもしれません。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> "どんな関係でもそばにいたい
> 幸せだったらいい"
> なんだか不思議な関係ですが
> この二人ならわかる気がします
> 幸せにするのが自分でも他の人でもいいからだなんて
> 究極の愛ですね
不思議な関係かもしれないですね。
人に譲ってもいいって考えられるのはすごいのかなぁ。
そしてどこまでも、これまでの関係を続けていこうとする…
そんな相手なら安心して任せられるよって大翔は言いたいのかもしれません。
コメントありがとうございました。
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