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BLの丘
白い色 30
2010-11-16-Tue  CATEGORY: 白い色
一度目の性交を一旦終えて、ホテルのベッドの中で肌を寄り添わせながら、美祢は安堵のため息をついていた。
性への躊躇いは、一度外れてしまえば堕ちていくだけだった。
全てのカタチを知り得たように、馴染み合う。
相性というものはここまで似て求めるものなのだろうか。

大翔の胸に耳を寄せ、心臓の音を聞くのが美祢は好きだった。
その姿は甘え縋る猫にのようでもある。
自分の体をまさぐられることを嫌としない美祢同様、大翔も美祢が寄り添ってくることに抵抗もなく好きにさせる。
横になった大翔にピッタリとくっつく美祢の髪を、大翔の手が幾度も梳いた。

「美祢さぁ…、今の仕事、辞めてもいいと思う?」
突然湧いた話題に、何のことかと脈略も意図も掴めず、美祢の身体が上向いた。
冗談ではない、いたって真剣な眼差しが美祢を見ていた。
「辞める…って…?」
今となっては簡単に入社できるような企業ではなくなっている。
当時ですら、大翔とのコネがあったから入れたようなものだし、今まで美祢を可愛がってくれた社長を始め、多くの従業員に恩を仇で返すようなことはしたくない。
第一、辞めたところで次の仕事を探す気力もなかった。
「んー、この話はまだ未確定なんだけどさ。俺、今の場所から離れることになりそう」
それは『工場』から、という意味だろうか?
大翔のかつてを思えば、部署が転々と変わるのは誰もが知ることであり、美祢だって改めて告げられて驚くことではなかった。

首を傾げる美祢を抱えなおしながら大翔が続きを口にした。
「今はスーパーへの納品とか市場に卸したりっていうのがメインじゃん。争わないようにブランド名変えてみたり、納品している品を違うものにしたりって営業も頭を使っているだろ?だけど欲しい商品が一つの小売店で揃わないっていう現実もある。他社製品で補うってことかな。それに大量生産できない品っていうのもあってさ。直営店っていうか、うちの商品を全部取り揃えて販売できる店を持とうかって話が浮上してるんだよな」
大豆製品といっても幅は広い。
競合するスーパーに全く同じ商品を入れるのではなく、少しずつ差を設けているのが現実だった。
この商品は、ここのスーパーでは買えるがあちらのスーパーには置いていないということも発生する。
そこをうまく分配しているのが営業の仕事であって、悩みのネタでもあった。
全て同じものが並んでしまえば、客はどこに行っても変化がないし、価格競争だけが勃発する。
『あれ』を買いに行こうという意識がなくなるのだ。

「それがなんで僕の仕事と関わってくるの?」
美祢のこれまでにやってきた仕事に影響が出る内容ではないと思った。
直営店を持つとなったとして、何故自分が関わることになるのか、理解できない。
「俺、そっちの担当になったら、美祢、引き抜きたいんだよね」
「は?!」
「一つの会社として成り立たせるわけだからさ、当然必要な人員ってあるじゃん。販売員なんて研修して商品知識叩きこんで…って済むし俺もいるけど、裏方事情を任せられる人間って限られてくる。まぁ、美祢以外にも本社からあと2人くらい間引きたいんだけど、上の意見もあるだろうし。少なくても経理と商品管理を知識ない人間に預けるのは嫌でさ」
ここまで考えるからにはかなり具体的な案として進行しているのだと判断出来た。
国分寺家の中では最近上がった話ではないのだろう。
大翔と付き合うようになってから、…正確には駆と付き合うようになってから国分寺家での皆での晩餐は数えるほどしかなかったから耳にする機会もなかった。
水面下では確実に新しいステップを刻んでいたようだ。

「そりゃ…、上からこうしてって言われたら逆らいようなんかない立場だよ…」
大翔はともかく、社長や駆、営業部長などから辞令を出されれば、クビになりたくなかったら従うしかない。
たとえ、やりなれない仕事にぶち当たったとしても受け入れざるをえない。
「美祢だって今の仕事、慣れてやりがい持っているだろうし、取り上げるようでなんか嫌なんだけど。あとは目梨さんがなんて言うかな…」
入社以来、ずっと目梨に仕えてきた美祢には、言葉では言い表せないほどの『暗黙の知識』がある。
これを手放すのは目梨にとっても相当な痛手になるはずだった。
美祢が負う苦労が分かるから大翔も躊躇いがあるのだろうし、だが、頼られているのも良く分かる。
できることなら大翔の為に役立ちたかったが、こればかりは大翔の意見で進められることはないだろう。
「まぁ、まだ企画段階だし。どうなるのか俺もさっぱりわかんないけど。って、これ、社員、まだ知らないから黙っててよ」
今更念を押されることではない、と、返事の代わりに美祢は、頷いて大翔の背に腕を回した。
同じ場所で働けるようになるのだろうか…。

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仕事になんないと思う…
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コメント

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おはようございます
コメントmiki | URL | 2010-11-16-Tue 10:25 [編集]
これが現実になったらこの2人は本当に仕事にならない気がしますね。お互いが気になって仕方が無い、みたいな(笑) 私はもちろん無理矢理にでもそこへ付いて行きますけどね!(^.^)2人が居ない職場なんて何の意味もないもの(え、働けって?)
Re: おはようございます
コメントきえ | URL | 2010-11-16-Tue 14:30 [編集]
miki様
こんにちは。

> これが現実になったらこの2人は本当に仕事にならない気がしますね。お互いが気になって仕方が無い、みたいな(笑) 私はもちろん無理矢理にでもそこへ付いて行きますけどね!(^.^)2人が居ない職場なんて何の意味もないもの(え、働けって?)

鞭持った監視役を置いとかないとだめですよね~。
気になる、というよりはちょっかい出しまくって邪魔をするっていうほうでしょうか。
オー、mikiちゃん、付いてくのか。
(いえ、きっと事務所の人が手放しませんから 笑)
コメントありがとうございました。
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