2ntブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
冬の遠足 3
2011-02-25-Fri  CATEGORY: 『想』―sou―
ロープウェイが向かった先は、先程久志と龍太が滑っていた場所からまた離れた。
下をずっと見続けていたふたりは、間もなく山頂に辿り着くかというところで白い雪の上に散ったカラフルな”ソリ”を目にした。
ちょうどコースが二手に分かれる手前だ。
てんでんばらばらに散ったソリが主を無くして、ちょっとした雪の盛り上がりに引っかかっているといった具合だ。
人が滑った形跡が全く無いのは、今日の客が限られているせいだろう。
龍太「人間、見えるか?」
久志「全然見当たんねー。あの派手な色(ウェア)、隠れられねーだろーがっ」
焦りはどんどんと心を押し潰しそうになる。
ロープウェイから離れた方のコースに転がっていれば確かに見づらいが、こんなに天気の良い日だ。
例え転んだとしても、広いゲレンデの中で、原色が全て隠れきってしまうことはないと二人とも思っていた。
しかし、ソリだけが残され、神隠しにあったかのように、誰の姿も見当たらない。
焦れ焦れとしながらようやく辿り着いた着地点で、真っ先に龍太は係員に「ここに来た人たちはどうしたのか?」と所在の確認を求めた。
係員から返ってきた言葉はあまりにも意外なものだった。
係員「ソリを持ってきたので、慌てて止めたんです。直滑降で滑り降りられるものでもないですから。でもすぐ逃げられちゃって…」
ちょこまか動く連中の行動を考えると一人の係員で対応できなかったのは知れた。
子供の恐怖心の無さは時に恐ろしい。
ヒサ「っでっ?!!」
回りくどい説明はいらないと、久志のキツイ視線が係員を見降ろした。
係員「あ…、でも、ソリから手を離した途端、ソリだけ滑って行っちゃったんですよ…。すぐに下の方に転がっていって…。それで、滑って帰れないからって…これに乗って戻って行きました…」
龍太「これ?!ロープウェイに乗って?!」
係員「(タジタジ)は、はい。私もそのほうがいいと薦めて…」
ソリだけがゲレンデの上にあった理由をようやく知ってほっとする。
龍太「助かった…(首がつながった…)…」
久志「今度あの連中だけで来ても絶対に扉開けないで戻してよ!!観覧車気分で延々と回しておけばいいからっ!!」
龍太「同意…」
安心したところで、「じゃ」と、久志の切り替えも早い。
先程までの心配していた顔はなんだったのかという感じだ。
分かったように龍太も座りこむと「ソリの回収に行きますか」と、抱えていたボードを素早く足元に身につけた。
子供たちの安全が確認されれば、あとは楽しむだけだ。
ヒサ「こっち側とあっち側、どっちが難関?」
係員「え…、ボードで行かれるんでしたら、向こうの方が…。人もいないですし…(って今日は誰も来ないけど…)」
二人の行動はあまりにも慣れた様子で、係員は素直に答えてしまう。
両足を一枚の板に固定したにも関わらず、すくっと立ち上がった二人は、ゲレンデの雪質を確かめるように、正面を向いてズズっと少しだけ下に降りた。
動きの無駄の無さに、それだけで能力の高さを感じ取ったのだろう。
係員「あー、もし何でしたら、この山根の向こう側にボードパーク、ありますよ」
龍太:ヒサ「『ボードパーク』?!」
係員「きょ、興味なかったですかね…。ハーフパイプとキッカーがあるんですけど…」
単に滑りを楽しみたいだけの人間なら、用のない場所である。
利用するにはそれ相応の運動神経と技術力が要求された。
龍太:ヒサ「(目キラキラ)そんなのがあったんですかっ!!!!」(連れて来られただけの人、添乗員:把握しとけよ…)
係員「え、えぇ…(知らなかったのか…)」
ヒサ「龍太さん、行きましょうっ!!!」
龍太「OK!!」
急な斜面の上で見事なカービングターンを繰り返し、途中で互いに2基ずつソリを拾ってから麓を目指す。
華麗なる技の連続に、ここでも係員のハートを射止め(?)てしまったふたりだった。

ロープウェイを降りた5人は、今にでも転がって落ちていきそうな斜面を目の前にして顔を引き攣らせた。
滑り道具、何一つ手にしていない姿に、係員も滑りに来たことが目的でないのだと即座に判断できた。
係員「あの~…」
千城「子供はどこに行ったっ?!」
安住「来たでしょ?!それからさっき、男の子ふたり!」
佐貫「こんなところを滑らせたのかっ?!」
口々に責め立てられて、何のことかと係員はおろおろする。
佐貫の持つ端末の上では、ゆっくりとした動きで麓に向かっている点滅が確認できた。
先程もふたり組に行方を聞かれたことを思うと、後から追ってきた状況を理解して、今度こそ要点をまとめて伝えた。
係員「ソリを持った4人はソリに逃げられてロープウェイに乗って戻って行きました。先程のお二人はソリを回収しながらゲレンデを下って行きました!」
千城 安住 佐貫「「「戻った?!」」」
神戸「これに乗って?!」(ロープウェイを指さす)
日野「降りていったのかよ、ここ…」(急カーブを描く板の後を見下ろす)
千城「戻ろう!!」
ロープウェイに再度乗り込もうという5人に、係員から呑気な声が届く。
係員「お二人、ボードパークに行かれるって言っていましたよ」
千城「スピードを上げて動かせっ!!!」
ふたりの行方はどうでもいいが、この長い距離を移動するのに時間がかかることだけは確かだった。
緊急停止ならともかく、ジェットコースター並みに動かせるわけがない。
全員が乗り込んでここまで来てしまったことを後悔していたが、とにかく今はちびっ子を見つけ出すことが先だ。
佐貫「降り口のヤツにあの子たちをその場で待機させておくように伝えておけっ」
去り際、思い出したように怒鳴った佐貫の声に、返事をした係員だが、自分もするりとかわされてしまったことを振り返ると、難しい注文かもしれない…と思った。
でもここみたいに危険があるわけではないから、まぁいっかーと無線を手に取った。

ソリなどを両手に抱えて満足できる滑りができるはずもなく、それでも無事が分かれば心も軽い。
ソリを押し付けてもう一度昇ってもいいしな…とコースを振り返りながら二人は、ロープウェイを降りたばかりなのかウロウロする原色を発見した。
『逃がすか!』と、それこそ、勢い付いたまま、間近まで迫る。

ガーッという音が嫌でも聞こえた4人組だった。
自分たちを目指してくる二人の人間は一枚の板を両足に固定させて、どうバランスを取っているのかと思うくらいのスピードでターンを繰り返しながら迫ってきた。
那智「うわっ!!ぶつかるっ!!!」
あまりの驚きに一葉などひっくりかえって尻もちをついたくらいだった。
もちろんぶつかるようなヘマをする二人ではない。
龍太はさすがに手前でセーブをかけたが、久志は見事なくらい間近まで寄って、板で削った雪を4人に飛ばした。

ヒサ「心配かけんな、バカヤローッ」
英人「あ、ソリ♪」(怒鳴り声はどこをふく風…)
成俊「なくしちゃったと思ってた…」(貧乏性)
一葉「すのーぱうだー…」(雪ふっかけられてそんなことを思っている)
那智「勝手に落ちて行くんだもん…」
あの斜面じゃ当然だ…と言いたい気持ちも失せていく。
那智「さすがヒサ~。拾ってきてくれたんだ―」
おだてられているのだか、馬鹿にされているのだか判断がつかなくなる台詞だ…。
龍太「保護者は?」
英人「えー?知らない。どこに行ったのか分かんないんだも―ん」
ヒサ「この辺で待っていると思っていたんだけどなー(キョロキョロ)」
那智「さっきからロープウェイの人が、ここから動かないでくださいってうるさいんだもん」
ヒサ「まさか、俺たち追いかけて乗って行ったの?」(龍太を見る)
龍太「確認してくる」
添乗員は素早く行動に出ると、係り員から降り口で全員待機しているよう連絡を受けていることを知った。
肝心の保護者はロープウェイに乗って戻ってくるらしい。
滑って降りて来るよりもロープウェイの方が確実に時間がかかる。
その現実に、龍太と久志はひたすら笑いをこらえるしかなかった。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ
笑い転げているとそのうち殺されちゃうよー。
2← →4
関連記事
トラックバック0 コメント9
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
No title
コメントmiki | URL | 2011-02-25-Fri 11:24 [編集]
呑気という言葉はこの子達の為にある様な感じがします(笑) 保護者達の心配も怒鳴り声もこの子達には何一つ伝わってない…(-_-;)
楽しいのは分かるけど程々にしとかないと、後でお仕置きされちゃうよ~(^・^)
No title
コメントきえ | URL | 2011-02-25-Fri 16:28 [編集]
s様
こんにちは~。

>おはようございます~!。無事にロープウェイでUターンしてたなんて…、係員の言うことをちゃんと聞くなんて、保護者’Sには、考えられなかったんだ~(そういう私も思いつかなかったけど…(^^ゞ )。それに思わず「この手があったか!」と思ったのが、係員に連絡してみることに気がつかなかったなんて…。頂上で引き留めておくか、そのまま下まで降ろすように係員に伝えるとか出来たのにね。きっと今頃保護者’Sは、それぞれの胸の中でモンモンとしながら、下りロープウェイの中でしょうか(>_<)。

ソリで滑れなくなったら大人しく係り員のいうことを聞いたwww
保護者、相当慌てていたんでしょう。
ロープウェイに乗っているって分かっているんだから、麓にいた時に、「ドアを開けずに戻せ」って言えば済むことなのにね―。
思わず添乗員の後を追いかけたくなる心理がそこにはあったんでしょう(冷静な判断ができない、お子様前)
もちろん、ヤキモキしながら下ってますよ(笑)
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-02-25-Fri 16:32 [編集]
miki様
こんにちは。

> 呑気という言葉はこの子達の為にある様な感じがします(笑) 保護者達の心配も怒鳴り声もこの子達には何一つ伝わってない…(-_-;)
> 楽しいのは分かるけど程々にしとかないと、後でお仕置きされちゃうよ~(^・^)

どこまででもマイペース。最強のお子様です。
見守りがいがあるんだかないんだか…。
楽しいことには貪欲になるんですよね~。
制限なんて言葉は知らないし、ほどほどってなに?ですよ、きっと~。(頭痛いな~)
そこをどう守る(封じ込める)か、保護者の手腕にかかっていますね。(お仕置きはまぁ後で考えるとして)
コメントありがとうございました。
管理人のみ閲覧できます
コメント | | 2011-02-25-Fri 22:40 [編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
No title
コメントらぅら | URL | 2011-02-25-Fri 23:50 [編集]
保護者達の心配や怒鳴り声も何のそのって感じのお子様ですね(笑)
流石、フォーレンジャー(爆)

これで一応、一安心ですね♪ 午前?の部はですが。。。
これからランチ食べて、お昼寝?してぇ~・・・
まだまだひと騒動がありそうな予感がするのは私だけでしょうか・・・(~▽~;) アハッ

ヒサと龍太は、保護者達が降りた途端 笑いを堪えてそうですね( ´艸`)ムププ
で、睨まれる(爆)
のんきやな~
コメント甲斐 | URL | 2011-02-26-Sat 02:14 [編集]
ハー
何ごともなくてよかった
ゲレンデ中を振り回してやっと下山ですね
生きた心地がしなかった保護者達と
クビの危機を脱した何人かの人たちの気持ちも知らず
お子様たちは次の標的へ・・・?
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-02-26-Sat 05:55 [編集]
レ様
おはようございます。

> なんだか壮大な追いかけっこ(爆)
> 保護者達翻弄されっぱなし・・・(;^_^A
> 怒られても「えー、なんでー?」と分かってなさそうw
> お仕置きは決定ですw←

追いかけっこε=┏(; ̄▽ ̄)┛
保護者大変です。
子供、全然理解してませんからね。
でも子供には甘いんだ(笑)
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-02-26-Sat 06:00 [編集]
らぅら様
おはようございます。

> 保護者達の心配や怒鳴り声も何のそのって感じのお子様ですね(笑)
> 流石、フォーレンジャー(爆)

天下無敵!!
最強部隊です(笑)

> これで一応、一安心ですね♪ 午前?の部はですが。。。
> これからランチ食べて、お昼寝?してぇ~・・・
> まだまだひと騒動がありそうな予感がするのは私だけでしょうか・・・(~▽~;) アハッ
>
> ヒサと龍太は、保護者達が降りた途端 笑いを堪えてそうですね( ´艸`)ムププ
> で、睨まれる(爆)

一騒動どころか、二騒動くらいww
書いていないところは読者様の頭で妄想していただくということで…(汗)
保護者前にして子供同様怒られそうなのが二人追加ですね。
でもソリ拾って来てくれたから文句言えない(?)
コメントありがとうございました。
Re: のんきやな~
コメントきえ | URL | 2011-02-26-Sat 06:04 [編集]
甲斐様
おはようございます。
のんきです(笑)

> ハー
> 何ごともなくてよかった
> ゲレンデ中を振り回してやっと下山ですね
> 生きた心地がしなかった保護者達と
> クビの危機を脱した何人かの人たちの気持ちも知らず
> お子様たちは次の標的へ・・・?

貸切にしたまでは良かったですが、千城、指示が抜けていましたね。
子供を見かけたら捕獲しておくようにと…。
それでいてクビでは浮かばれませんが…。
どこまでもマイペースで行く『フォーレンジャー』
初参加、佐貫、現実を知る…。
コメントありがとうございました。
トラックバック
TB*URL
<< 2024/04 >>
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -


Copyright © 2024 BLの丘. all rights reserved.