かくして土曜の夜、強引に仕事を切り上げ(倉林部長は深夜勤務の連中を早出させるという無謀な策に出た)、俺と遠藤は倉林部長に連れられて、駅から少し歩いた洒落た店の中に入った。
もともと飲みの席が大好きな倉林部長が、黒川部長に誘われて断ることなどない。しかも今回は高柳さんの恋人まで拝めるという特典付きだったので、がっしりと現場で鍛えられた肉体はいつも以上に軽快だった。
外観は一軒家かと思ったが、入ってみれば中は広く、テーブル席が幾つかのパーティションで仕切られて配置されていた。
かといって席数が多い店でもなく、宴会とはいっても、どんちゃん騒ぎのできる居酒屋ではないと判断した黒川部長は呼び寄せる人数を最低限にして、結局運行部からは黒川部長と高柳さんだけの、合計5人というメンバーになった。
倉林部長と黒川部長は小学校の時の同級生らしい。お互い50歳になろうというのに、普段から若い娘と交流を深める二人はそんな年齢を感じさせない。しかもあちこち動き回っているせいか、肉体だって世間一般の人に比べれば10歳は若く見られそうだった。
なんだってこんなことになったのかといえば、事の起こりはあの、高柳さんの通路階段で怒鳴り散らしていた電話にある。
要するに、高柳さんの恋人が、高柳さんの嫌う人物と『お食事会』に出かけるということに憤慨していたらしいのだが、宥めに入った黒川部長が、
「だったらおまえも行けよ」
と同じ店の中での『お食事会』を提案したらしい。
パーティションがあるとは言っても申し訳程度で、立ち上がれば隣の席がのぞけてしまうような存在だ。
先に着いてしまったらしい俺たちは、倉林部長を前にして俺と遠藤が並んで座った。ほどなくして黒川部長と高柳さんが到着する。
分かっていたこととはいえ、高柳さんが入ってくるなり、店の雰囲気がどこか緊張したものに変わった。ほとんどの客が高柳さんに見惚れていたのだ…。
「ヒサぁっ?!」
突如、どこからか甲高い声が上がった。自分たちが座っていたすぐ隣のテーブルから、一人の男の人が立ち上がった。
俺たちと同じように6人でテーブルを囲んでいた中の一人。
大きな黒い瞳をこれでもかと目一杯見開いて驚きを表している。
先程声を上げた人物がこの人だと気付くまでにさほどの時間はかからなかった。
高柳さんもすごいいい男だと思っていたけど、立ち上がったこの人だって相当なものだ…。
まるで隠れるかのように大人しくしていたから全く気付かなかったが、改めて正面から見てみれば可憐な花のような輝きを秘めている。
透けそうな白い肌に可愛らしい顔つき。決して逞しいという雄のイメージではなく、中性的で妖艶な色香が全身を漂っていた。
高柳さんを初めて見た時も結構なショックがあったが、同じくらいの衝撃が俺の胸を叩いていた。
…これほどの扇情的な人をみたことなどない…
驚きは俺だけではなかったようで、一斉に目を向けた倉林部長も黒川部長も絶句していた。
「よぉ」
俺たちの驚愕など無視して、高柳さんはその人に片手を上げて見せる。それから、「会社の人」とこの場にいる理由を述べていたようだ。
高柳さんの視線はその人だけにとどまらず、隣のテーブルにいた人物を一通り見まわしてから会釈をした。
「お久しぶりです、安住さん」
鋭い双眼が光った気がした。
その瞬間に、高柳さんの恋人というのが誰なのか判断できた俺たちだった…。
にほんブログ村
ぜひポチッとしていってくださいナ。
もともと飲みの席が大好きな倉林部長が、黒川部長に誘われて断ることなどない。しかも今回は高柳さんの恋人まで拝めるという特典付きだったので、がっしりと現場で鍛えられた肉体はいつも以上に軽快だった。
外観は一軒家かと思ったが、入ってみれば中は広く、テーブル席が幾つかのパーティションで仕切られて配置されていた。
かといって席数が多い店でもなく、宴会とはいっても、どんちゃん騒ぎのできる居酒屋ではないと判断した黒川部長は呼び寄せる人数を最低限にして、結局運行部からは黒川部長と高柳さんだけの、合計5人というメンバーになった。
倉林部長と黒川部長は小学校の時の同級生らしい。お互い50歳になろうというのに、普段から若い娘と交流を深める二人はそんな年齢を感じさせない。しかもあちこち動き回っているせいか、肉体だって世間一般の人に比べれば10歳は若く見られそうだった。
なんだってこんなことになったのかといえば、事の起こりはあの、高柳さんの通路階段で怒鳴り散らしていた電話にある。
要するに、高柳さんの恋人が、高柳さんの嫌う人物と『お食事会』に出かけるということに憤慨していたらしいのだが、宥めに入った黒川部長が、
「だったらおまえも行けよ」
と同じ店の中での『お食事会』を提案したらしい。
パーティションがあるとは言っても申し訳程度で、立ち上がれば隣の席がのぞけてしまうような存在だ。
先に着いてしまったらしい俺たちは、倉林部長を前にして俺と遠藤が並んで座った。ほどなくして黒川部長と高柳さんが到着する。
分かっていたこととはいえ、高柳さんが入ってくるなり、店の雰囲気がどこか緊張したものに変わった。ほとんどの客が高柳さんに見惚れていたのだ…。
「ヒサぁっ?!」
突如、どこからか甲高い声が上がった。自分たちが座っていたすぐ隣のテーブルから、一人の男の人が立ち上がった。
俺たちと同じように6人でテーブルを囲んでいた中の一人。
大きな黒い瞳をこれでもかと目一杯見開いて驚きを表している。
先程声を上げた人物がこの人だと気付くまでにさほどの時間はかからなかった。
高柳さんもすごいいい男だと思っていたけど、立ち上がったこの人だって相当なものだ…。
まるで隠れるかのように大人しくしていたから全く気付かなかったが、改めて正面から見てみれば可憐な花のような輝きを秘めている。
透けそうな白い肌に可愛らしい顔つき。決して逞しいという雄のイメージではなく、中性的で妖艶な色香が全身を漂っていた。
高柳さんを初めて見た時も結構なショックがあったが、同じくらいの衝撃が俺の胸を叩いていた。
…これほどの扇情的な人をみたことなどない…
驚きは俺だけではなかったようで、一斉に目を向けた倉林部長も黒川部長も絶句していた。
「よぉ」
俺たちの驚愕など無視して、高柳さんはその人に片手を上げて見せる。それから、「会社の人」とこの場にいる理由を述べていたようだ。
高柳さんの視線はその人だけにとどまらず、隣のテーブルにいた人物を一通り見まわしてから会釈をした。
「お久しぶりです、安住さん」
鋭い双眼が光った気がした。
その瞬間に、高柳さんの恋人というのが誰なのか判断できた俺たちだった…。
にほんブログ村
ぜひポチッとしていってくださいナ。
きえ | URL | 2009-08-31-Mon 12:46 [編集]
M様
お越しいただきありがとうございます。
>また二人に会えて嬉しいです(*^^*)
妄想ばかり膨らむこいつらです。
今回は滝沢クン視点に変えてみました。
というか、キーワードは滝沢にあり!!みたいな感じです。
お楽しみいただければ幸いです。
ぜひまたお立ち寄りください。
お越しいただきありがとうございます。
>また二人に会えて嬉しいです(*^^*)
妄想ばかり膨らむこいつらです。
今回は滝沢クン視点に変えてみました。
というか、キーワードは滝沢にあり!!みたいな感じです。
お楽しみいただければ幸いです。
ぜひまたお立ち寄りください。
ヒサは職場に那智のことカミングアウトシちゃいましたね~(>_<)
ヒサはあんまり気にしないだろうけど…
那智的にはどうなんでしょうか?
そして一夜を同じベットで共にした滝沢の心境も気になりますね(^w^)
ヒサはあんまり気にしないだろうけど…
那智的にはどうなんでしょうか?
そして一夜を同じベットで共にした滝沢の心境も気になりますね(^w^)
メグミ様
こんにちは。お越しいただきありがとうございます。
> ヒサは職場に那智のことカミングアウトシちゃいましたね~(>_<)
>
> ヒサはあんまり気にしないだろうけど…
気にしていないですねぇ。ヒサのみならず、ご一緒の連中も当然のように受け止めている我が家です。
きっと部長二人は懐が大きいので、これくらいのことでは動じないです。
前後を見ても男ばっかりの職場なのでもしかしたら長年の『慣れ』もあるかもしれません!?
> そして一夜を同じベットで共にした滝沢の心境も気になりますね(^w^)
はいっ!今日のupで内心を一応綴ってみました。
とくに深く…とはなっていないようですが、重要な存在の滝沢君でございます。
ぜひまた遊びにいらっしゃってくださいね。
こんにちは。お越しいただきありがとうございます。
> ヒサは職場に那智のことカミングアウトシちゃいましたね~(>_<)
>
> ヒサはあんまり気にしないだろうけど…
気にしていないですねぇ。ヒサのみならず、ご一緒の連中も当然のように受け止めている我が家です。
きっと部長二人は懐が大きいので、これくらいのことでは動じないです。
前後を見ても男ばっかりの職場なのでもしかしたら長年の『慣れ』もあるかもしれません!?
> そして一夜を同じベットで共にした滝沢の心境も気になりますね(^w^)
はいっ!今日のupで内心を一応綴ってみました。
とくに深く…とはなっていないようですが、重要な存在の滝沢君でございます。
ぜひまた遊びにいらっしゃってくださいね。
| ホーム |