いつもお越しくださる甲斐様より、『被害者同盟の会』のリクエストをいただいたので(え?してない?!…ま、まぁ、そんなことを言わずに…)思いつきのSSです。
現在更新中の「かけがえのない日々の~」とは、頭を切り離して読み進めていただけたら…と思います。(あ、でも…ごにょごにょ…)
ストーリーは【バレンタインコラボ企画】の番外です。
静かな音色で流れるクラシックが、古風な趣を凝らした店内に心地よい空間を作り出していた。
全体的には近代の西洋になぞらえた感じのバーだった。
2月14日、バレンタインデーの夜ともなれば、『ふたりだけになれる場所』を求めてしまうのか、店内には閑古鳥が鳴いていた。
カウンターの席には、いつもであればスーツ姿で現れる二人が、休日とあってか見慣れない私服姿だった。
神戸長流(かんべたける)は美術系の仕事を扱うせいか、普段からカラフルなものを愛用していたし、一見どうしたらよいのかと躊躇うような服でもしっくりといくように着こなす術を持っている。
今日も肩口の大きく開いたVネックのざっくりと編まれたオレンジ色のセーターで身を包んでいた。
一方隣に座る野崎美琴(のざきみこと やっと名前ができました)は相変わらずダーク系の色を好むようで、黒のタートルネックを着用している。
日野ははっきりとした年齢を聞いたことはなかったが、神戸が千城と同い年だということと、野崎がその幾つか年上だとは耳にしていた。
だが、『榛名』に仕える身なのか、野崎の態度はいつもしっかりしていたし、他人に対しても崩れることもなかった。
「飛行船?!そんなものに乗りに行ったんですか?あのふたり…」
カウンターの奥で仕事を放り投げた日野尚治(ひのしょうじ)から呆れ返った声が上がった。
実際店内には2人の客と1人の店員しかいない、「貸し切り状態」だった。
神戸と野崎はよく連れだって店に顔を出したし、良く知った名前が出れば日野も耳を傾けてしまう。
神戸も野崎も、日野が千城や英人と持つ繋がりを知っていたから、嫌でも3人での会話をする状況が作り上げられた。
「正確には4人で…ってことなんですけどね。直前の予約だったので機体のスケジュールがかなり厳しくて…。でも間に合って良かったです」
全ての手配を執り行ったらしい野崎が安堵の表情を浮かべていたが、隣の神戸は「予約がとれませんでしたって言ってやったほうが良かったんじゃないの?」と辛辣な発言を繰り広げていた。
バレンタインデーの夜に、とある恋人たちが思い思いに策略を企てていたことを、この場で暴露している。
英人が手作りケーキを持って試食会をオフィスで開いていたことを今更ながらに神戸がこぼせば、野崎は「やっぱりその程度だったんですね」とすでに分かり切っていたことのように答えた。
「だいたいさー、英人君が千城に対してできることなんて高が知れているじゃない」
「私もそう思いましたよ」
「あの、…いくらかかるんですか、飛行船って…」
千城の金銭感覚の無さは日野でも知ってはいたが、目の前の二人があまりにも馬鹿馬鹿しげに語り合っているので思わず口を挟んでしまう。
双方が企てた予算には雲泥の差が生じているのは火を見るより明らかだが、日野としてはどれくらいの差があったのか気になった。
野崎はこともなげに口を開いた。
「イベント事で他県にあった機体をこちらに持って来させた移動費と整備代、4名分の乗車料、オリジナルのクルーズ代を全て合わせて250万円っていうところでしょうか」
「はぁぁぁ?」
「手作りケーキにかかる費用なんて、全ての材料を高級品で取り扱ったって2~3万円ってところじゃないの?100倍?!」
絶句する日野に続いて、頭の中でぱちぱちとそろばんをはじいていたような神戸から溜め息が漏れた。
「そうなんですかね~。社長が英人さんに食べさせるんだって、ベルギーだ、フランスだって7カ国から取り寄せたチョコレート代だけでも100万を越えましたけどね」
「「えぇぇぇぇっっっっ???!!!」」
平然と答えられた時には、店には神戸と日野の絶叫といっていい声しか響かなかった。
いくらなんだってやりすぎだろ…
そう思ったのは日野の一人だけではないはずだ。
一話で終わるはずが…(汗) 長くなったのでまた明日。
(バレンタインデーは過ぎているんです!!とか突っ込まないでね…)
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現在更新中の「かけがえのない日々の~」とは、頭を切り離して読み進めていただけたら…と思います。(あ、でも…ごにょごにょ…)
ストーリーは【バレンタインコラボ企画】の番外です。
静かな音色で流れるクラシックが、古風な趣を凝らした店内に心地よい空間を作り出していた。
全体的には近代の西洋になぞらえた感じのバーだった。
2月14日、バレンタインデーの夜ともなれば、『ふたりだけになれる場所』を求めてしまうのか、店内には閑古鳥が鳴いていた。
カウンターの席には、いつもであればスーツ姿で現れる二人が、休日とあってか見慣れない私服姿だった。
神戸長流(かんべたける)は美術系の仕事を扱うせいか、普段からカラフルなものを愛用していたし、一見どうしたらよいのかと躊躇うような服でもしっくりといくように着こなす術を持っている。
今日も肩口の大きく開いたVネックのざっくりと編まれたオレンジ色のセーターで身を包んでいた。
一方隣に座る野崎美琴(のざきみこと やっと名前ができました)は相変わらずダーク系の色を好むようで、黒のタートルネックを着用している。
日野ははっきりとした年齢を聞いたことはなかったが、神戸が千城と同い年だということと、野崎がその幾つか年上だとは耳にしていた。
だが、『榛名』に仕える身なのか、野崎の態度はいつもしっかりしていたし、他人に対しても崩れることもなかった。
「飛行船?!そんなものに乗りに行ったんですか?あのふたり…」
カウンターの奥で仕事を放り投げた日野尚治(ひのしょうじ)から呆れ返った声が上がった。
実際店内には2人の客と1人の店員しかいない、「貸し切り状態」だった。
神戸と野崎はよく連れだって店に顔を出したし、良く知った名前が出れば日野も耳を傾けてしまう。
神戸も野崎も、日野が千城や英人と持つ繋がりを知っていたから、嫌でも3人での会話をする状況が作り上げられた。
「正確には4人で…ってことなんですけどね。直前の予約だったので機体のスケジュールがかなり厳しくて…。でも間に合って良かったです」
全ての手配を執り行ったらしい野崎が安堵の表情を浮かべていたが、隣の神戸は「予約がとれませんでしたって言ってやったほうが良かったんじゃないの?」と辛辣な発言を繰り広げていた。
バレンタインデーの夜に、とある恋人たちが思い思いに策略を企てていたことを、この場で暴露している。
英人が手作りケーキを持って試食会をオフィスで開いていたことを今更ながらに神戸がこぼせば、野崎は「やっぱりその程度だったんですね」とすでに分かり切っていたことのように答えた。
「だいたいさー、英人君が千城に対してできることなんて高が知れているじゃない」
「私もそう思いましたよ」
「あの、…いくらかかるんですか、飛行船って…」
千城の金銭感覚の無さは日野でも知ってはいたが、目の前の二人があまりにも馬鹿馬鹿しげに語り合っているので思わず口を挟んでしまう。
双方が企てた予算には雲泥の差が生じているのは火を見るより明らかだが、日野としてはどれくらいの差があったのか気になった。
野崎はこともなげに口を開いた。
「イベント事で他県にあった機体をこちらに持って来させた移動費と整備代、4名分の乗車料、オリジナルのクルーズ代を全て合わせて250万円っていうところでしょうか」
「はぁぁぁ?」
「手作りケーキにかかる費用なんて、全ての材料を高級品で取り扱ったって2~3万円ってところじゃないの?100倍?!」
絶句する日野に続いて、頭の中でぱちぱちとそろばんをはじいていたような神戸から溜め息が漏れた。
「そうなんですかね~。社長が英人さんに食べさせるんだって、ベルギーだ、フランスだって7カ国から取り寄せたチョコレート代だけでも100万を越えましたけどね」
「「えぇぇぇぇっっっっ???!!!」」
平然と答えられた時には、店には神戸と日野の絶叫といっていい声しか響かなかった。
いくらなんだってやりすぎだろ…
そう思ったのは日野の一人だけではないはずだ。
一話で終わるはずが…(汗) 長くなったのでまた明日。
(バレンタインデーは過ぎているんです!!とか突っ込まないでね…)
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きえ | URL | 2010-02-16-Tue 07:16 [編集]
S様
おはようございます。
>3人の会話楽しい~♪大暴露大会ですね。今頃千城と英人くしゃみしてるかも!?明日も楽しみです。
はい。暴露大会。
神戸と野崎の愚痴を吐く場所…のはずなんですけど…
なんだか野崎は愚痴をこぼさない人になっちゃって焦っています。
こんなくだらないものを楽しみにしていただいて恐縮です。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
>3人の会話楽しい~♪大暴露大会ですね。今頃千城と英人くしゃみしてるかも!?明日も楽しみです。
はい。暴露大会。
神戸と野崎の愚痴を吐く場所…のはずなんですけど…
なんだか野崎は愚痴をこぼさない人になっちゃって焦っています。
こんなくだらないものを楽しみにしていただいて恐縮です。
コメントありがとうございました。
え~びっくりです。
私の密かな楽しみがこんな公の場に・・・。
うれし恥ずかしデス。
なんやかんやと英人の幸せのために東奔西走し手を差し伸べてくれる心優しい人黒子の皆様方にせめて不平不満ぐちでもこぼしてそれをこっそり聞こうと思ったのですけど、千城さんの金銭感覚にワタシも一緒に絶叫させてもらいました。
一粒うん万円のチョコおすそ分けにあずかりたかったです。
野崎さんにかわいい名前が付きましたね。
みこちゃん♪
やっぱりまだまだですね、恋人の手作りケーキの価値が分らないようじゃあ人間として半人前だぞ。
私の密かな楽しみがこんな公の場に・・・。
うれし恥ずかしデス。
なんやかんやと英人の幸せのために東奔西走し手を差し伸べてくれる心優しい人黒子の皆様方にせめて不平不満ぐちでもこぼしてそれをこっそり聞こうと思ったのですけど、千城さんの金銭感覚にワタシも一緒に絶叫させてもらいました。
一粒うん万円のチョコおすそ分けにあずかりたかったです。
野崎さんにかわいい名前が付きましたね。
みこちゃん♪
やっぱりまだまだですね、恋人の手作りケーキの価値が分らないようじゃあ人間として半人前だぞ。
甲斐様
こんにちは。
> え~びっくりです。
> 私の密かな楽しみがこんな公の場に・・・。
> うれし恥ずかしデス。
秘かな楽しみ…
でも期待を裏切るような内容になってしまったらゴメンナサイm(__)m
> なんやかんやと英人の幸せのために東奔西走し手を差し伸べてくれる心優しい人黒子の皆様方にせめて不平不満ぐちでもこぼしてそれをこっそり聞こうと思ったのですけど、千城さんの金銭感覚にワタシも一緒に絶叫させてもらいました。
> 一粒うん万円のチョコおすそ分けにあずかりたかったです。
黒子…。裏方さんたちですよね。
英人と千城が幸せな生活を送れるように、いっぱい、いーっぱい手を尽くしてくれる方々。
みんな、とっても優しいです。
千城の金銭感覚はまぁさておき、そんなことも知らずにただのえっちの材料にしかされなかったチョコレートが可哀想で…(思うところがちがうっ?!)
しかもパントリーに隠してあるので、消化するまでしばらくカカオの香りに包まれた密室です。
> 野崎さんにかわいい名前が付きましたね。
> みこちゃん♪
> やっぱりまだまだですね、恋人の手作りケーキの価値が分らないようじゃあ人間として半人前だぞ。
やっと名前をあげられました。
別宅で私と同じ意見を持つ甲斐様を発見した時はただ驚きでした。
手作りケーキの価値を『その程度…』と言ってしまった野崎。
まだまだです。
千城にしてみたら数億の価値があってもいい(いや、値段はつけられない)ものだっていつか知ってほしいです。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> え~びっくりです。
> 私の密かな楽しみがこんな公の場に・・・。
> うれし恥ずかしデス。
秘かな楽しみ…
でも期待を裏切るような内容になってしまったらゴメンナサイm(__)m
> なんやかんやと英人の幸せのために東奔西走し手を差し伸べてくれる心優しい人黒子の皆様方にせめて不平不満ぐちでもこぼしてそれをこっそり聞こうと思ったのですけど、千城さんの金銭感覚にワタシも一緒に絶叫させてもらいました。
> 一粒うん万円のチョコおすそ分けにあずかりたかったです。
黒子…。裏方さんたちですよね。
英人と千城が幸せな生活を送れるように、いっぱい、いーっぱい手を尽くしてくれる方々。
みんな、とっても優しいです。
千城の金銭感覚はまぁさておき、そんなことも知らずにただのえっちの材料にしかされなかったチョコレートが可哀想で…(思うところがちがうっ?!)
しかもパントリーに隠してあるので、消化するまでしばらくカカオの香りに包まれた密室です。
> 野崎さんにかわいい名前が付きましたね。
> みこちゃん♪
> やっぱりまだまだですね、恋人の手作りケーキの価値が分らないようじゃあ人間として半人前だぞ。
やっと名前をあげられました。
別宅で私と同じ意見を持つ甲斐様を発見した時はただ驚きでした。
手作りケーキの価値を『その程度…』と言ってしまった野崎。
まだまだです。
千城にしてみたら数億の価値があってもいい(いや、値段はつけられない)ものだっていつか知ってほしいです。
コメントありがとうございました。
きえ | URL | 2010-02-16-Tue 18:11 [編集]
MO様
>甲斐様の素敵なリクエストのおかげで、楽しいお話が読めて、とっても嬉しいです♪ できる男達が集う「日野バー」のお話は、大好物ですので、どんどん続けて欲しいです。神戸にとっても、野崎にとっても、日頃のストレスを解消できる、とっても貴重な隠れ家ですよね。確かに千城の金銭感覚は、理解し難いものでしょうが、英人を喜ばせたい気持ちが優先ですから、金額では無いんですよね。
『日野バー』、そろそろ名前でもつけてやらないと…なんて思っているこのごろです。
神戸、野崎、日野…と愚痴がこぼせる環境っていいですね。
でも書きながら、なかなか愚痴をこぼさない野崎でした。。。
金銭感覚の違いは皆さん、すでに了承済みなので…
ただ、今度ばかりはかなり許容範囲を越えたようです。
愛情たっぷり。それだけは誰にも阻止はできません。
コメントありがとうございました。
>甲斐様の素敵なリクエストのおかげで、楽しいお話が読めて、とっても嬉しいです♪ できる男達が集う「日野バー」のお話は、大好物ですので、どんどん続けて欲しいです。神戸にとっても、野崎にとっても、日頃のストレスを解消できる、とっても貴重な隠れ家ですよね。確かに千城の金銭感覚は、理解し難いものでしょうが、英人を喜ばせたい気持ちが優先ですから、金額では無いんですよね。
『日野バー』、そろそろ名前でもつけてやらないと…なんて思っているこのごろです。
神戸、野崎、日野…と愚痴がこぼせる環境っていいですね。
でも書きながら、なかなか愚痴をこぼさない野崎でした。。。
金銭感覚の違いは皆さん、すでに了承済みなので…
ただ、今度ばかりはかなり許容範囲を越えたようです。
愛情たっぷり。それだけは誰にも阻止はできません。
コメントありがとうございました。
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