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BLの丘
夢のような吐息 2
2010-04-10-Sat  CATEGORY: 吐息
水谷が犯罪ともいえるべき高校生と別れたとはなんとなく耳にしていた。
もともと長続きしない男である。
別に興味もなかったし、驚きもしなかった。
人肌が恋しい時に、たまたま居たのが自分なのだろうとも野崎は察しがついている。
だからといって今も流されるのもどうかと自尊心が唸っていた。

「美琴ちゃん♪」
「お断りしますっ!!従業員がいる前で何を考えているんですかっ?!閉店時間まできちんと表舞台に立ってくださいっ」
「終わるまでいるか?」
「冗談じゃありませんっ!私にも明朝から業務があるんです」
「坊やのお守だろう」
「仕事ですので」
「あっ、そっ…」

一瞬諦めたのかと思いきや、不意につままれた顎先と塞がれた唇に息が止まる。
ほんの僅かな時間だったはずなのに、ねっとりと口腔内を蹂躙される舌の動きに、抵抗も拒絶も忘れた。
「…ふ…、は…っ…ぁ…」
喉奥まで熱されそうな口付けを受けてかろうじて酸素を吸った時、突然コンコンと事務所のドアを叩く音がした。
中の返事を待つ間もなく、開けられたドアに、僅かに離れただけの野崎と水谷の視線が同時に入口を向く。
入ってきた男が宮原だと分かった瞬間、野崎は羞恥に顔を反らしたし、水谷は何事だと平然と見返していた。
「あ…、すみません。オーナーに、お客さんが…。日野さんって方と神戸さん…って…」
明らかに動揺したという態度で、用件を告げれば、宮原は戻っていった。
水谷は「すぐ行く」と答えただけだ。
間違いなくいらぬ誤解を招いたことは確かだった。

「今日は休みにでもしたかな、二人揃って現れるなんて」
水谷同様、日野たちも気まぐれで店を開け閉めしているとはなんとなく噂で聞いている。
真面目な日野の性格は規定通りの時間で営んでいたようだが、神戸はちょこちょことそれに水を差しているようだった。
二人して顔を見せたとは珍しい。

宮原に与えた誤解などどうでもいいことのように、水谷は立ち上がった。
「もう今日はいいよ。美琴も顔を出せ」
良く知った人間が店に顔を出したからにはこちらからも挨拶を…という考えは理解できても、部外者に等しい自分が姿を晒すのはどうかと躊躇いすらあった。
確かに神戸や日野ともこの店では何度も顔を合わせたことがあるが、あくまでも客としてだった。
彼らの再会に水を差すようでもある。

遅れて事務所を出たものの、水谷には悪いが…と、カウンター脇の裏口からこっそり帰ろうとすれば、気付いた宮原に止められた。
「美琴さん、待っていますよ」
水谷に影響されているのか、自分をファーストネームで呼ぶ人間に嫌悪すら抱く。
そっと隠れて出ようとした身体も、宮原の一言でカウンターに座った人間と向かい合った水谷の視線を一身に浴びた。
「美琴」
水谷の声に外に飛び出しそうだった身体が固まった。

「『みこと』?」
「あぁ、野崎さんの名前。ショウ、知らなかった?」
「すっげ…、超以外っ!」
カウンターで繰り広げられた会話は嫌でも耳に入ってきた。
予想外の反応はこれまででも慣れてはいても、改めて伝えられることに全身から冷や汗が吹き出そうだった。
冷や汗…というより、羞恥だろうか。
良く知る人間だからこそ、名を知られてそのギャップに困惑する。
こんなことなら、最初から名刺でも渡して馴染ませておいたほうが良かったか…と思う時すらある。

水谷に促されて、カウンター内のスツールを出された。
「どうせ、客で座るっていうのにも抵抗があるんだろう?それにふたりの邪魔をするなよ。この辺に適当に座っておけ」

あまりにも意外な状況だった。
日野自身も慣れたカウンター内ではなく、客として佇んでいる。
そこに多少の居心地の悪さはあるようだった。
いつも『客』としてしか来なかった野崎がカウンター内にいる。
新しく入ったバーテンダーの存在。
ここはもう、見知った店ではなくなったという思いが、野崎の中を駆け巡っていった。

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これ、まだ書いてもいいですか?
拍手でしか判断できないんですが、人気ないようなので…
つづきどうしようか…
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コメント

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コメントきえ | URL | 2010-04-10-Sat 09:10 [編集]
名無し様
おはようございます。
拍手コメ感謝です。

>できれば最後まで読みたいです!ですがそろそろ新作も読みたいです(^^)

応援ありがとうございます~。
『淋しい~』シリーズも結構増えてしまいまして、私自身どうしよう…と焦る部分もあります。
脇役に日を当ててやろうと勝手に動いてますが、そうですよね~。そろそろ新作も考えないと…。
いえねぇ、書きたいものはあるんですけど文章力がついていかなくて…。
小学生の作文以下なのにお付き合いくださっている方々がいて本当に嬉しいです。
ご意見ありがとうございました。
いらぬ誤解か?
コメント甲斐 | URL | 2010-04-10-Sat 15:29 [編集]
まだ書いてもいいですか?ですって!!
いいに決まってるじゃないですか。
っていうか、書いてください。
それとも放置プレイとか強請るまであげないっていうアレなんですかぁぁぁぁ。。。。

私としてはずっとやっててほしい『淋しいシリーズ』なんですけどね
新作が書かれても、英人&千城の甘い日常もいいし、また新たなる苦難も捨てがたいけど、独り立ちしつつある脇役達にもスポットライトをあててたまにはその姿を見せてほしいと思ってます。

野崎さんを”ミコト”と呼ぶ水谷さんに、この二人のビジネスでない部分の関係に日野ちゃん以外は気づきましたね。
大人の関係なのか、甘い関係なのかは別として。
Re: いらぬ誤解か?
コメントきえ | URL | 2010-04-10-Sat 15:56 [編集]
甲斐様
こちらにもどーもです♪

> まだ書いてもいいですか?ですって!!
> いいに決まってるじゃないですか。
> っていうか、書いてください。

お許しが出たので放出しますっ(あそこもっ)
ってか、無法地帯に近いですよ、ここんち。
イケナイ高校生とか、半分犯罪の行為とか。
野崎、喰われているし。

> それとも放置プレイとか強請るまであげないっていうアレなんですかぁぁぁぁ。。。。

あぁ、次は「放置」ですか。
甲斐様もホント鬼畜ですよね…(いじめるいじめる…)

> 私としてはずっとやっててほしい『淋しいシリーズ』なんですけどね
いっぱいかんがえるところはあります。
英人と千城の甘甘もかきたいな…とか、日野神戸のまた絶対に年下じゃない攻めくんとかも…。
キリないんですよ、ほんと、『淋しい~』は次から次へと浮かんじゃってね。

> 野崎さんを”ミコト”と呼ぶ水谷さんに、この二人のビジネスでない部分の関係に日野ちゃん以外は気づきましたね。
> 大人の関係なのか、甘い関係なのかは別として。

はい、日野ちゃんも気付いていそうですが。
そしてまた一人、感づいた人間が…。
こういった状況で気付かないのは英人くらいでしょう。
(男同士の関係に敏いのにどっか抜けているお子ちゃまな英人くん)
気付くのは宮原君です。
みことちゃんと水谷オーナーをどう受け止めるのか?!
コメントありがとうございました。
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