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BLの丘
ダブルデート 3
2011-06-26-Sun  CATEGORY: チョキチョキ
発つ前に本庄は数店の店から魚などを仕入れていた。
あちこち見比べに動きまわる本庄の姿に、すっかりうんざり気分な熊谷は休憩スペースとなった場所に座りこんでいる。
羽生も越谷に土産だと言って本庄と共に着いていく。目利きはどうしたって本庄の方が良く、教えてもらいながら数品を選ぶ。
興味深いことが多い春日は、熊谷を一人残すのはどうかと心配したが、「遠慮なく行って」という言葉に後押しをされて二人について回った。
こんなことも熊谷は慣れたものらしい。だけど決して止めることはしないのだから、この活き活きとした姿を嫌っていないのは伝わってくる。
それを取り上げたら本庄ではなくなる。
こうしてお互いを知りつくした関係っていいな…と春日は内心で思っていた。
本庄が選んだものであれば越谷が喜ぶのもなんとなく想像ができた。
本庄が持ってきたクーラーボックスはとても大きかったから、羽生が購入した分まで入れることができた。

海沿いの道を車で30分ほど進むと公園として整備された場所に辿り着いた。
奇怪な岩の門をくぐる遊歩道や、海の中にある奇岩までの吊り橋などもある。
熊谷はこういった観光場所に訪れたかったのか、また無邪気な表情に変わった。
春日も童心に返った気分で、自然の力で出来た場所に駆け上がってみたり、他の人をからかってみたりとしていると、結構な時間が過ぎていた。
公園を一周すればそれなりの体力も使う。
ただでさえ寝不足だったところに、お腹の満足と運動はかなり、きた。
休憩、とばかりに近くの休み処に入り、座敷に腰を落ち着けると、一番に本庄がくて~と横になった。
平日と言うこともあり、人があまりいないおかげで、広いスペースを使うことができる。
「うっわ~。マズイ。眠くなってくる~」
開け放たれた扉や窓から入ってくる海風が心地良く、春日も眠りに誘われた。
もうすぐ夕焼けがやってくる。
帰るまでの距離と時間を考えたら、早目に出発しなければならないのは誰もが思うこと。
だけど全員がまともに運転できる体力をのこしていないのも確かだった。
帰りこそ自分が運転しようと思っていた春日も、予想外の体力勝負にすでに負けている。
普段観光もせずに帰ってしまう、という本庄の気持ちがなんとなく理解できた。というより、日帰りで来るものではないと春日は思う。

出してもらった飲み物を口に含み、横になって黙ってしまった本庄を見つめながら羽生が熊谷に尋ねた。
「圭吾君って途中で仮眠をとったりするの?」
「ほとんど一気に走っちゃいますよ。家に着くと神経の糸が切れたみたいにぐったりしてますけど」
「今がその『神経の糸』が切れちゃった時か…」
遊びに連れ歩いたことは、本庄にとってはあまり嬉しくない出来事だったのかもしれない。
それでも熊谷や春日が楽しんだことを思えば後悔することでもない。

羽生もさすがに往復の運転はキツイだろう。
眠い体に鞭を打って道路を走れば、その先に見える世界はたやすく想像できる。
仕事に穴は開けない。昔から本庄の気合の入れ方はすごかったな、とふと振り返った。
オンとオフの切り替えを完璧なくらいに作り上げていた。だから短い睡眠時間でも過酷な労働条件でもやりこなせていられたのだろうか…。
とはいえ、長距離の移動を伴う現在は話が異なってくる。
「寝るのはやっぱり布団の中がいいみたい。次の日の勤務に支障が出るからって。余程のことがない限り途中で寝るとかしないですね」
「すごいね」
「自分の中で『配分』みたいなのがあるみたいですよ。この距離なら無理なく行けるって」
「今回は俺たちが同行したから、その配分を狂わせちゃったわけか…」
「あ、別に。今日は俺も楽しかったです。それに圭吾も楽しんでいたんですよ。いつもは自分で焼くっていう場所があっても、二人だと量が多すぎちゃってしないんです。店頭で買えるのばっかりだったから。人がいるって圭吾もはりきれるみたい」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
つまり、本庄のこの”ぐったり”は、必要以上に自分まではしゃいでしまった証拠か…。

しばし風に吹かれて無言の時間を過ごした後、羽生が一つの提案を持ち出した。
「ねぇ。もしなんだったら、今夜、この辺りで泊まっていかない?」
「え?でも明日、お店…」
「早朝に出れば開店までには間に合うでしょう。無理して動きまわるより、部屋に落ち着いて疲れを取った方が良くないかな」
さすがに元ホテルマンだけあって、その辺の事情には詳しい。
朝のチェックアウトは何時でも良いらしく、それこそ今朝のように夜が明ける前に出ても問題ないらしい。
店は11時の開店なので、逆算すれば出発時間も計算できる。
現在の体力を考えたら、羽生の提案に春日も熊谷も頷く。問題は眠ってしまったらしい本庄だったが…。
「文句言わせません」
熊谷の鶴の一声で、日帰り旅行は急遽一泊旅行に化けた。

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別宅、とりあえず機内食の写真、終わりました…。
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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-06-26-Sun 12:13 [編集]
なんかめいっぱい満喫したって感じですね
美味しい物食べて観光して…
私もどんよりとした都会の空の下ですが
ビルしか見えない窓の外をみながら
彼らの見た風景をちょっと想像して
うっとりほっこりしてしまいました

とうことで急遽、お泊りダブルデートだ~!
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-06-27-Mon 09:46 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> なんかめいっぱい満喫したって感じですね
> 美味しい物食べて観光して…
> 私もどんよりとした都会の空の下ですが
> ビルしか見えない窓の外をみながら
> 彼らの見た風景をちょっと想像して
> うっとりほっこりしてしまいました
> とうことで急遽、お泊りダブルデートだ~!

私が書くと、どうしてこう、目一杯詰め込み型…になっちゃうんでしょう。
しかもかなり端折って…。
全くの空想で書いているので、本当のところは知りませんが、想像されてくださったようで嬉しいです。
お泊りになっちゃいましたね~。
春日にも社員にも無理はさせたくない羽生だったりします。
いい答えを導き出したものですね~。
3(4?)人寄れば文殊の知恵???
コメントありがとうございました。
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