家で一人待たせていることが気掛かりだった。
岩槻の話具合を聞いていると、慎弥を心配しつつも、慎弥の件は皆野に一任するといったニュアンスが含まれている。
放り出したのではなく、あくまでも端から見守っている、といった感じか。
じっくりと説明をする前に慎弥が飛び出したせいで、岩槻の本音を慎弥はまだ聞いていない。
岩槻への依存が高かった慎弥にとって、兄が家を出ていくというのは、勘違いして受け止めてもおかしくなく、見捨てられた思いが強いのだろう。
皆野の存在があったとしても、同じ屋敷にいるのといないのでは安心感も変わる。
つい先日も、そんな言い争いの場を持ったばかりだ。
『共に住もうと思う相手がいるんです。慎弥も相手の事は承知しています。ただ、話が急だったもので受け止めきれていないんです』
岩槻のプライベートを聞く機会などなかったから驚きでもあった。
その後押しをしたのが皆野だったということなのか…。
ほんの数日でも、慎弥の言動はこれまでと変わったと岩槻は言う。僅かな変化すら見逃さない存在は、越えられないようで悔しくもあるが…。逆に、そんな人間に慎弥を委ねられたのは喜びとしていいことなのだろう。
また、皆野の背を押そうとしてくれるものでもある。
慎弥が皆野を頼ってきてくれたことも、岩槻を安心させた一つかもしれない。
長話をしていられる時間もなかったが、双方の気持ちが知れたことで皆野も次の対策を考えることができた。
状況が分かれば尚更、一刻も早く慎弥のそばに居てやりたかった。
単なる『淋しい』気持ちでいるのだろうが、岩槻が言っていたように、慎弥には心の準備ができていなかった。
いつか…と分かっていたことかもしれないが、皆野と出会って、話はあまりにも急展開ですすんでしまったわけだ。
その心の隙間に入り込むようでもあるけど…。
皆野は着々と仕事を片付け、定時であがることにした。
慎弥の存在をすでに知った同僚が気を利かせてくれたおかげでもある。
車でわずか15分くらいの移動が、なんとももどかしい。
玄関の鍵が閉まっているかと思えば開けっぱなしの状態だった。
自分の部屋でありながら心配したのは慎弥の体のほうであって、不用心だ、と咄嗟に思ってしまう。
「慎弥くん?」
リビングに明りはあるがいるはずの姿が見当たらない。
「慎弥くん?」
もう一度呼びかけると、ベランダからひょっこりと姿を現した。
こんな夜に何をしていたのか…と覗きこむと、ベランダの小さな明りだけを頼りに、プランターを見つめていたらしい。
そんな急に成長しないから…とまたもや思うのだが、一人でいた時間に気を向けるものが存在してくれていたのは良かったと言うべきだろうか。
「おかえりなさい…」
突然の訪問を、一応気にしているらしい。
おどおどとした態度でいる慎弥を部屋の中に入れた。
「ご飯は?何か食べた?」
あえて、事には触れず日常会話のようなものを投げかけると、驚いたように見上げてくる。
「何も、聞かないの…?」
「まぁ、大まかなことは岩槻さんに聞いたからね」
皆野が笑いながら告げれば、「そっか…」と俯いた小さな体があった。
慎弥のこととなっては、冷静に話をしてくれる岩槻と連絡をとっていてもおかしくないことに今更気付いた様子だった。
「慎弥くん…」
華奢な体に手を伸ばすと、素直に身を預けてきてくれる。
トンと皆野の胸に額をつけた慎弥の鼻が、スンと鳴った気がした。
「いつでもここに来ればいいから…」
囁きかけた体が小さく頷く。
嫉妬心が湧かないわけではないけれど、今は見守っていくしかない…。
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岩槻の話具合を聞いていると、慎弥を心配しつつも、慎弥の件は皆野に一任するといったニュアンスが含まれている。
放り出したのではなく、あくまでも端から見守っている、といった感じか。
じっくりと説明をする前に慎弥が飛び出したせいで、岩槻の本音を慎弥はまだ聞いていない。
岩槻への依存が高かった慎弥にとって、兄が家を出ていくというのは、勘違いして受け止めてもおかしくなく、見捨てられた思いが強いのだろう。
皆野の存在があったとしても、同じ屋敷にいるのといないのでは安心感も変わる。
つい先日も、そんな言い争いの場を持ったばかりだ。
『共に住もうと思う相手がいるんです。慎弥も相手の事は承知しています。ただ、話が急だったもので受け止めきれていないんです』
岩槻のプライベートを聞く機会などなかったから驚きでもあった。
その後押しをしたのが皆野だったということなのか…。
ほんの数日でも、慎弥の言動はこれまでと変わったと岩槻は言う。僅かな変化すら見逃さない存在は、越えられないようで悔しくもあるが…。逆に、そんな人間に慎弥を委ねられたのは喜びとしていいことなのだろう。
また、皆野の背を押そうとしてくれるものでもある。
慎弥が皆野を頼ってきてくれたことも、岩槻を安心させた一つかもしれない。
長話をしていられる時間もなかったが、双方の気持ちが知れたことで皆野も次の対策を考えることができた。
状況が分かれば尚更、一刻も早く慎弥のそばに居てやりたかった。
単なる『淋しい』気持ちでいるのだろうが、岩槻が言っていたように、慎弥には心の準備ができていなかった。
いつか…と分かっていたことかもしれないが、皆野と出会って、話はあまりにも急展開ですすんでしまったわけだ。
その心の隙間に入り込むようでもあるけど…。
皆野は着々と仕事を片付け、定時であがることにした。
慎弥の存在をすでに知った同僚が気を利かせてくれたおかげでもある。
車でわずか15分くらいの移動が、なんとももどかしい。
玄関の鍵が閉まっているかと思えば開けっぱなしの状態だった。
自分の部屋でありながら心配したのは慎弥の体のほうであって、不用心だ、と咄嗟に思ってしまう。
「慎弥くん?」
リビングに明りはあるがいるはずの姿が見当たらない。
「慎弥くん?」
もう一度呼びかけると、ベランダからひょっこりと姿を現した。
こんな夜に何をしていたのか…と覗きこむと、ベランダの小さな明りだけを頼りに、プランターを見つめていたらしい。
そんな急に成長しないから…とまたもや思うのだが、一人でいた時間に気を向けるものが存在してくれていたのは良かったと言うべきだろうか。
「おかえりなさい…」
突然の訪問を、一応気にしているらしい。
おどおどとした態度でいる慎弥を部屋の中に入れた。
「ご飯は?何か食べた?」
あえて、事には触れず日常会話のようなものを投げかけると、驚いたように見上げてくる。
「何も、聞かないの…?」
「まぁ、大まかなことは岩槻さんに聞いたからね」
皆野が笑いながら告げれば、「そっか…」と俯いた小さな体があった。
慎弥のこととなっては、冷静に話をしてくれる岩槻と連絡をとっていてもおかしくないことに今更気付いた様子だった。
「慎弥くん…」
華奢な体に手を伸ばすと、素直に身を預けてきてくれる。
トンと皆野の胸に額をつけた慎弥の鼻が、スンと鳴った気がした。
「いつでもここに来ればいいから…」
囁きかけた体が小さく頷く。
嫉妬心が湧かないわけではないけれど、今は見守っていくしかない…。
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そっかー
お兄ちゃんが取られてしまうみたいで
淋しくなっちゃったのかな
だけどしんちゃんにも一緒にいたい人とか
そばにいて和む人とか
淋しいときに会いたくなる人がいるんじゃないですか
皆野サン微妙ですね
お兄ちゃんが取られてしまうみたいで
淋しくなっちゃったのかな
だけどしんちゃんにも一緒にいたい人とか
そばにいて和む人とか
淋しいときに会いたくなる人がいるんじゃないですか
皆野サン微妙ですね
甲斐様
おはようございます。
> そっかー
> お兄ちゃんが取られてしまうみたいで
> 淋しくなっちゃったのかな
> だけどしんちゃんにも一緒にいたい人とか
> そばにいて和む人とか
> 淋しいときに会いたくなる人がいるんじゃないですか
> 皆野サン微妙ですね
しっかりブラコンしんちゃんですので~。
もうちょっとね、皆野とも仲良くなって時間がたっていたあとだったらまた違ったんでしょうが。
これからの皆野に期待を寄せているお兄ちゃんでもあるのかもしれません。
うーん。確かに皆野としてはビミョーなとこにいますけど…。
でもまぁ、慎弥も来ちゃったことだしね。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> そっかー
> お兄ちゃんが取られてしまうみたいで
> 淋しくなっちゃったのかな
> だけどしんちゃんにも一緒にいたい人とか
> そばにいて和む人とか
> 淋しいときに会いたくなる人がいるんじゃないですか
> 皆野サン微妙ですね
しっかりブラコンしんちゃんですので~。
もうちょっとね、皆野とも仲良くなって時間がたっていたあとだったらまた違ったんでしょうが。
これからの皆野に期待を寄せているお兄ちゃんでもあるのかもしれません。
うーん。確かに皆野としてはビミョーなとこにいますけど…。
でもまぁ、慎弥も来ちゃったことだしね。
コメントありがとうございました。
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