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BLの丘
見下ろせる場所 37
2011-08-10-Wed  CATEGORY: 見下ろせる場所
何もかもを受け入れてくれた可愛い存在だった。
皆野が満足するまで…、いや、慎弥を満足させるまで貪った時間。
夜の遅くまで抱き合って、寄り添いながら眠りに落ちる。
小さく狭いベッドであったことをなぜか喜んでしまった。
スィートルームのような大きな作りだったら、寄り添えなかったのではないかと…。
隣に並ぶしかないこの空間が、温かく心地良い。
「慎弥…」
囁きかければ肌の温もりを確認するように寄り添ってきた存在がある。
いつまでもいる…。この全てが慎弥のものなのだというように抱きすくめた。
慎弥にとって欲しいものは肌の温かさ…。
淋しい心をいつまでも抱えていることはないと、言い聞かせたかった。

眠りは浅い…。
しかし隣で安心して眠っていてくれる姿に見惚れた。
まだ幼い顔つきだ。長い睫毛が伏せられ、赤い唇は一文字に閉じられている。穢れを知らない無垢な寝顔。見ているだけで幸せな気分になれる。
ずっと守ってやろうと、再び強く思う。自分を頼ってきた体と心の全てを…。
彼の淋しさを忘れさせてあげられるなら何でもできそうだった。

朝方、皆野はそっと体を起こした。出勤まであまり時間がない。
こんなタイミングで渡すことになるとは…と、用意しておいた部屋の合い鍵をリビングのテーブルに置いた。
キッチンも寝室も、好きに使っていい、というメモと共に。
居場所がない存在ではない。虚勢を張って我が儘を演じて生きていく必要なんてない。ありのままの『慎弥』でいてほしい。
いつだって自分は受け入れる…。その思いを心に刻む。

午後までに戻ればいいと言っていたが、無事起きられるだろうか。
後で確認の電話を入れようと静かに玄関扉を閉じる。
岩槻はあれ以降、慎弥の携帯も鳴らさなかった。いや、電源が切られていたのだろうから連絡もつけられなかったのか。
しかし皆野に対しても同様だ。
何があったのか知られていそうな気もする。
皆野の元にいると信じられていることはありがたいことでもあった。
本当ならば、再三にわたり連絡を付けて、無事を確認したかっただろう。そこを皆野に信頼をおいて、沈黙を貫いてくれた。
彼なりの『子離れ』だったのかもしれない。
そもそも、愛しい人との同居を決めた時点で…。

慎弥が岩槻にどう告げるのかは気になったものの、あえて聞くのもなんだか気が引ける。
無事帰れたかの確認の電話をいれたとき、「どこまで子供扱いするのっ」と逆に叱られた。
慎弥としては甘やかされる岩槻とは違う存在として見て欲しい意思が伝わってきて、それも嬉しいことだった。
並べる…。そう。そんな感じだ。
たぶんまだどこかで、『岩槻』という大きさを感じていたのだと思う。
金銭面に対しても生活面にしても、引け目は付きまとってくる。
だけど『保護者』とは違う存在。
明らかな違いを見せられたようで、心が湧いた。

鍵を持った慎弥はもう、ホテルに来ることはなかった。
その代わり、家で皆野の帰りを待つ。
勤務表を完璧に理解していた慎弥は、絶妙なタイミングで現れてくれた。

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書けない…。
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コメント

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コメントたつみきえ | URL | 2011-08-11-Thu 15:52 [編集]
R様
こんにちは。またのご訪問嬉しいです。

>いえいえ書けています!あ~すてきなえちシーンありがとうございます。この2人萌え度高いです。

書けているんだか書けていないんだか怪しいものですが…。
萌えてくれるものがあったようでそちらにも喜びました。
なかなか進まない展開ですけど…。
コメントありがとうございました。
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