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BLの丘
ただそこにいて 10
2011-09-03-Sat  CATEGORY: ただそこにいて
脱いだどころの話ではない。身体を清めてもらうという目的があったにせよ、他人にはまず触れさせることのない場所までしっかり握りこまれた。その上、わずかではあるにしろ勃ちあがる兆しまでみせた。
それを思い出してはカァァっと顔を赤らめた俊輔に、ますます吉賀の機嫌が悪くなる雰囲気が見てとれた。
「俊輔っ!なんで先生の前で着替える必要があるんだよっ?!」
「え…、あ…、あっ、洗濯物、先生に聞いてみないと…」
その場から逃げだしたかったが、身を隠せる空間などありはしない。
ベッドへと戻ろうとする俊輔の背後で、「クソッ」という明らかな舌打ちが聞こえた。
それから「あのエロジジイ…っ」と悪態をつく言葉。
まるで俊輔がされたことを全て見られていたかのような恥ずかしさが浮かんだ。
吉賀は単に着替えただけと思っているようだから、それ以上のことは言わないに限る。
これ以上吉賀を不機嫌にさせるのも問題だった。

俊輔がベッドに戻ってしまうとその後を吉賀が追ってくる。
「俊輔、夕飯何食いたい?買ってきてやるし。一緒に食おうぜ」
自分なりに心を落ち着けようとしているようだった。気分を切り替えたいのが伝わってくる。
心配してきてくれているのに申し訳なく思ってしまう。
吉賀には食堂があるわけで、何もわざわざ外に買いに出たりここまで持ってくる必要もない。
一日ほとんど動いていない俊輔は、まだ空腹感もなかった。昼飯をしっかり食べたこともある。
「俺、いいや…。お腹すいてないもん」
「そんなこと言って~。ちゃんと食わないとダメだぞ」
「う~ん…。でももう少し時間がたってからでいい。だから吉賀、食堂に行っておいでよ」
「じゃあ帰りに何かもらってきてやるよ」
「うん。ありがとう」
俊輔が素直に従えば手を伸ばしてきた吉賀が静かに髪を撫でた。
こうやって気遣われて優しく扱われるから、勘違いしそうになるのだ…。
吉賀といつもよりスキンシップが多いことに気付いて、一度治まったはずの顔の火照りが復活しそうだった。

吉賀が出ていくと、カチャリと鍵の閉まる音がする。
「あ、そうだ。鍵…」
なんやかんや言ってまだ返してもらっていない。
吉賀は慣れて当然のように我が物顔でこの部屋を出入りしていた。
そのことが何とも言えないくすぐったさを生む。
規則では鍵を他人に渡すことは違反であったけれど、こんな時に役立つのにな…と漠然と思った。
ただそれは相手が吉賀だからであって、他の人間だったら全くもってお断りな話だ。
他の人間…と考えた時に、真っ先に浮かんだのが津和野だったのだが…。
吉賀は俊輔のことを考えて尋ねてから次の行動に出てくれるが、津和野は強引に事を進める。
その違いを、今回の騒動で強く感じ取ってしまった。
それとも、吉賀を好評価するのは俊輔の気持ちが加味されているからだろうか。
見てもいないのに、今日起きた津和野とのやりとりを知って、津和野に対して怒ってくれた態度も嬉しく思う。
津和野も決して悪い人ではないのだけれどな…。
大人としての経験があるから、先回りした行動がとれるのだろう。津和野の所作はどこをとっても無駄がない。

ベッドの中でそんなことを思っていると、うつらうつらとしてくる。
吉賀を待っていなければいけない…と思うのに、好きに入ってきてくれるという安心感が、俊輔の気を緩ませていた。

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ちょっと短いですが…。

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